強豪ホビーレーサーがフックスシルコリンのチェーンルブを試す
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モータースポーツの世界で高いシェアを誇り、潤滑油のプレミアムブランドとして知られるフックスシルコリンは、2017年から自転車用ケミカルのジャンルに参入し、ラインナップを拡充している。現在販売されているチェーンルブは3種類あり、これらを強豪ホビーレーサーの紺野元汰(こんのげんた)さんに試してもらった。2018おきなわ210km覇者のジャッジやいかに。
フックスシルコリンのチェーンルブを“2018おきなわ”の覇者が試す
「開発に携わっていたこともあり、Jプロツアーを走っていた時代から使っているケミカルメーカーは変えていません」という一途な紺野元汰さん。チェーンルブについては、以前は抵抗の少なさを重視したが、最近は粘度が高めのものを好んで使っているとのこと。「こぎ方が変わったからですかね。昔よりもギヤを掛けるようになったので、粘り気のあるチェーンルブじゃないと踏ん張れないというか。あと、粘度が高いと変速ショックも少ないので、それも好んで使う理由の一つですね」という。そんな紺野さんに、フックスシルコリンのチェーンルブ3種類をそれぞれ使用してもらい、率直なインプレッションを語ってもらった。
試してもらうチェーンルブは3種類
試してもらうのはウェットルブ、ドライルブ、エブリデールブの3種類で、ルブを変える際にはフォームフィルタークリーナーで駆動系を完全に洗浄。ただしドライルブはアルカリ性のケミカルに対して耐久性があるため、ウォッシュオフで洗い流した。
ウェットルブ
潤滑効果の持続性と駆動系の摩耗軽減に優れたウェットタイプのチェーンルブ。雨天のロングライドをはじめ、シクロクロスやクロスカントリー、ダウンヒルなどの競技にも最適。
ドライルブ
ドライタイプのチェーンルブで、速乾性に優れるため汚れが付着しにくいのが特徴。またP.T.F.E.(フッ素樹脂)配合により摩擦抵抗が少なく、晴天時のロードレースなどに向く。
エブリデールブ
100%生分解性のため環境に優しく、その名のとおりデイリーユースに向いたチェーンルブ。持続性と低抵抗を高次元でバランスさせており、可動部の潤滑油としても適している。
ルブを変えるときには「フォームフィルタークリーナー」で完全洗浄
モーターサイクルの湿式エアフィルター用のクリーナーで、自転車ではチェーンなど駆動系の洗浄に絶大な効果を発揮する。水をかけると乳化し、油汚れをサッと洗い流せるのだ。
インプレッション〜特徴の違いが明確、好みなのはウェットルブ〜
「3種類のチェーンルブを使ってみての率直な感想は、それぞれのコンセプトが明確に異なっていて、うまく住み分けができているなと。つまり、使うシチュエーションや好みが分かっていれば、迷わずに選べると思います。
その上で、今の私の好みに最も近いのはウェットルブでした。粘度が高めなので踏み心地が優しく、また変速ショックや振動も少なめです。それと、今回はタイミング的に雨が降らず試せなかったのですが、ウェットコンディションでの持続性も期待できそうです。反面、洗車の際にやや落ちづらかったのと、3種類の中では比較的汚れが付きやすいのがデメリットと言えるかもしれません。
このウェットルブと対照的な特徴を持つのがドライルブです。粘度が低い分だけ浸透性が高く、塗布後のチェーンの表面はサラッとしています。これなら汚れは付きにくいでしょう。それと、回り方は非常に軽いのですが、持続性は低そうなので、クリテリウムなど短距離のロードレースに向いていると感じました。
そして、3種類の中で最もオールマイティな特徴を持つのがエブリデールブです。塗布しやすく、持続性もそこそこ長め。そして潤滑性能が高く、洗浄もしやすい。スポーツサイクルを始めたばかりの人から、ロードレースの下位クラスまでしっかりカバーできるでしょう。
なお、ウェットルブとエブリデールブを落とす際に使用したフォームフィルタークリーナーは、灯油臭がやや強めですが、一般的なチェーンクリーナーと比べて高い洗浄力があり、水をかければしっかり乳化するので使いやすいですね。
これまで違うブランドのケミカルをほとんど試したことはなかったのですが、初めて使ってみたフックスシルコリンはかなり好印象でした。今後のラインナップの展開にも注目したいですね。
そして最後に、今回は試せませんでしたが、シルコリンの3種類のルブはミックスが可能ということなので、ぜひ次回はそれを試してみたいと感じました」
フックスシルコリンとは
1931年にドイツで創業したフックス社は、現在40か国以上で事業所や製造拠点を展開する世界最大規模の独立系潤滑油スペシャリストで、1911年にイギリスで創業したシルコリン社を傘下に収めている。欧州の主要な自動車メーカーとエンジンの開発段階から携わるなど高い技術力を持ち、それゆえに数多くのメーカーが新車時に充填するオイルとしてフックスを選んでいる。そうしたノウハウが自転車用ケミカルにも余すところなく生かされているのだ。