関西ヒルクライムコースガイドpart3 大阪(東部・南部)with ピナレロ
目次
ベッドタウンのイメージがとかく強い大阪北部と比べ、東部・南部は各種製造業など雑多な要素が入り交じり、昔ながらの大阪らしい大阪の雰囲気があるエリアだ。しかし山の近さは北部と同様。三方を山に囲まれた大阪平野ならではのメリットだ。
大阪府は巨大な盆地である
大阪府の南側は堺の商人や鉄砲鍛冶が名高く、明治以降はそこから転じた自転車産業が盛んになり、世界に名だたる自転車部品メーカーのシマノも、堺に本拠地を置くのはよく知られるところだ。有名な岸和田のだんじりも大阪南部であるし、コテコテの大阪弁も含めて、古くからの大阪らしい大阪である地域といえる。
地理的には大阪平野の東側に生駒山地、大和川を挟んでその南に金剛山地、そして南側は和歌山県とを隔てる和泉山脈がつながる。大阪府はその大部分が大阪平野で占められている一方で、他府県との境界のほとんどが山地で区切られており、大阪府全体が巨大な盆地構造となっている。これが何を意味するのかというと、大阪に住んでいるならばどこでも大体山が近いということだ。都心から少し離れた丘陵側にベッドタウンが多く築かれていることからも、このことは顕著だろう。
ヒルクライムスポットとしては、東側の生駒山地のエリアと、南東側の和泉・金剛山地エリアに分かれる。生駒エリアは北大阪からも比較的アクセスしやすいだろう。山の向こうには奈良・和歌山の、こちらも古くから開けた地域につながる。突然何もないところに出るということもなく、そういう意味では走るうえで心強いのではないだろうか。
大阪南部のヒルクライムの聖地
和泉葛城山は大阪平野の南方、大阪府と和歌山県を隔てる和泉山脈の中央にそびえる標高858mの山だ。大阪平野から直接アプローチできる標高800m級の山は少なく、まずその時点で坂好きを引き付ける。
実は近くに葛城山の名を持つ山は複数あるが、もう一つ有名な大和葛城山は自転車で上れる道がない。したがってローディーにとって葛城山と言えば和泉葛城山のことになる。
舗装路での登坂ルートは7つを数え、北側の岸和田・貝塚方面から上るルートが3つ(塔原、蕎原、牛滝)、西側の府道62号・泉佐野打田線の途中から上るルートが2つ(犬鳴、神通)、南側の紀の川市から上るルートが2つ(粉河、中尾)ある。距離も難易度もバラエティに富んでおり、全てが同じ頂上に至るというのも面白い。ただし、山頂の売店は閉まっている。ごほうびを目指して上るというよりは、上り坂自体がごちそうなのかもしれない。
難関ルートは勾配20%級の激坂区間もある。ただ相当キツいので、初めてならまず標準的なルートから上ってみよう。
脚に覚えのある猛者たちへ 和泉葛城山の7ルート あなたはどれを選ぶ?
大阪南部屈指のヒルクライムスポットである和泉葛城山は、その標高もさることながら、それぞれ特徴的な7つもの登坂ルートを持っている。ぜひチャレンジしてみよう。
葛城山の7葛とは……
和泉葛城山のヒルクライムには7葛(ななかつ)というワードがある。登坂のルートが7つ。これを一日で全て走りきるのが7葛だ。総獲得標高は今回掲載のルートで計算すると4600m超。登坂距離で言えば約65kmだが、下りも含めると130kmを走ることになる。最近話題のエベレスティングにはさすがに及ばないが、富士山分ははるかに超えている。実際に挑戦するとなると確実に一日がかり。超人的な体力と精神力を要する。
Route_01 塔原ルート
アクセスの良い王道ルート
大阪の市街地からアクセスが良く、難易度もほどほどで、最もポピュラーなルートと言えるだろう。国道170号バイパスからのアプローチも含めれば、約13kmの上りを楽しめる。塔原の集落がある谷から抜け出すまでの前半がキツめ。中間地点を過ぎると全体に緩くなる。タイムを狙うなら中盤以降でスピードを上げる余力を残しておこう。
Route Data_
塔原ルート
距離:6.7km 獲得標高:585m 最高標高地点:845m
Route_02 蕎原ルート
激坂の連続に耐える大阪側の難関ルート
最難関ルートの一つ。平均勾配こそ約7%だが、キャンプ場のある1.7km地点から粉河ルートと合流する5km地点までは、コンクリート舗装で壁のような急勾配がそびえ立つ。特に前半の2kmは15%をほぼ切らないような直登で修行の気分。急勾配区間の後半はつづら折りとなる。粉河ルートと合流して以降の尾根筋は楽チン。
Route Data_
蕎原ルート
距離:8.3km 獲得標高:630m 最高標高地点:845m
Route_03 神通ルート
とにかく走りやすい最も平和なルート
府道62号の神通温泉前から上るルート。勾配はほぼ一定。片側1車線で道幅が広く、路面もきれいで走りやすい。3km過ぎに少しだけキツい区間があるが、それも勾配10%程度なので心配ご無用。6km付近で粉河ルートに合流する。
Route Data_
神通ルート
距離:10.3km 獲得標高:644m 最高標高地点:845m
Route_04 犬鳴ルート
トンネルを抜けると急勾配スタート
メリハリの効いた上り坂を楽しめるルート。車1台分の狭い道が続く。序盤からそこそこの勾配で上るが、トンネルを抜けると2kmほど10%超の急坂区間になる。7km過ぎに蕎原ルートと合流し、少し行くと粉河ルートに合流して尾根筋となる。
Route Data_
犬鳴ルート
距離:11.1km 獲得標高:713m 最高標高地点:845m
Route_05 中尾ルート
和歌山側の激坂フルコース難関ルート
蕎原ルートと並ぶ最難関で、平均勾配にだまされてはダメなのも同様。2km過ぎから勾配10%の直登が始まり、これが次第にキツくなって、最終的には20%のつづら折り激坂になる。果樹畑の間を縫うように上り、6km付近でコンクリート舗装が終わると、平坦や緩斜面が混じって終盤は少しだけ楽に。途中眺望も若干あるが、見る余裕は多分ない。
Route Data_
中尾ルート
距離:9.0km 獲得標高:725m 最高標高地点:845m
Route_06 粉河ルート
眺望が楽しめるロングヒルクライム
紀の川から上る2ルートのうちの楽な方。今回掲載のルートでは最長距離となる。序盤の果樹園付近のつづら折りは少々キツいが、それ以降はほどほどの勾配が続き、急坂もピンポイント。紀の川沿いを望む眺望が開けているところがいくつかあり、気分を高揚させてくれる。終盤の尾根伝いは平坦や下りもあり、天上サイクリングといった風。
Route Data_
粉河ルート
距離:11.5km 獲得標高:753m 最高標高地点:845m
Route_07 牛滝ルート
最初の急勾配が最大の難関
取材した2020年9月時点では、7月の降雨土砂崩れにより通行止めとなっている。最初がコンクリート舗装の激坂だが、ここさえ過ぎれば難易度は割と低めだ。
Route Data_
牛滝ルート
距離:7.1km 獲得標高:587m 最高標高地点:845m
Route Map_
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ルートはトータル85ルート以上が掲載されています。冬の間に下調べをして、ライドシーズンに備えよう!
峠BIKE:ピナレロ・プリンスFXディスク
ピュアレーサーが空力向上
イタリアが誇るレーシングブランドであるピナレロは、世界最高峰のロードレース、ツール・ド・フランスで最も成功を収めているバイクの一つだ。2011〜2020年の10大会の活躍は特にめざましく、個人総合優勝の回数は実に7度に上る。プリンスFXはドグマに次ぐレーシングモデルだが、セカンドグレードではなくプロの実戦にも耐えるハイエンドに位置づけられている。
2021モデルでフルモデルチェンジを果たした最新版は、T900カーボン素材を使用した軽量・高剛性のフルカーボンフレームに、最新の空力エッセンスを取り入れ、さらに戦闘力を向上させた。ディスクブレーキの採用もあって、ハンドルまわりのケーブルの完全内装が実現。一方でハンドル角度やステムの高さ調整も従来どおり行え、ユーザビリティに優れた設計となっている。サイズ展開が細かく、ベストフィットのフレームを選べる点も、レーシングモデルならではのこだわりだ。
同形状で素材違いのプリンスは、T700カーボンでリムブレーキモデルも用意される。こちらは少しマイルドな乗り味となり、ロングライドからレースまで幅広く使用可能だ。
IMPRESSION:レースブランドの矜持を詰め込んだバイク
ピナレロの特徴であるハンドリングの安定性は最新作でも健在。一方で運動性能が低いわけでなく、ダンシングもスムーズに行え、コーナーではレールに乗ったかのように狙いのラインをたどれる。剛性感は高く、鋭く加速して高速域も伸びる。ただしライダーの体力も要求されるので、プリンスFXに関してはある程度パワーのあるレーサー向きか。標準ホイールで満足できない場合は、お得な追加料金で高性能ホイールにアップグレードできる。ホイールアップグレードプログラムの利用を検討してみよう。
spec.
フレーム・フォーク:T900カーボン
メインコンポ:シマノ・アルテグラ
ホイール:フルクラム・レーシング800DB
ハンドル:モスト・ジャガーXA TiCR
サイズ:43、46、49、51.5、53、54.5、56、58
カラー:A232/レッド、A231/BOB、A237/グレースティール