関西ヒルクライムコースガイドpart4 奈良 with タイム
目次
奈良といえばまず寺社や仏像、 あるいは古墳といったものをイメージするかもしれないが、それは奈良のほんの入り口に過ぎない。奈良はその大半が山と森林に覆われた県であり、山岳信仰の聖地、すなわちヒルクライムの聖地なのだ。
ビギナーから健脚者まで楽しめる吉野山・多武峰の上りを目指せ
山ならいくらでもある奈良県だが、ありすぎて迷ってしまうのがぜいたくな悩み。まずは市街地や京阪神からもアクセスしやすい定番コース、吉野山と多武峰を奈良が地元の吉田隼人さんと案内しよう。
Rider
奈良在住のレーサー吉田隼人さん
奈良出身・在住のプロロード選手。10代の頃から頭角を現し国内トップで活躍。本場ヨーロッパのプロチームに所属したこともある。脚質はスプリンター系。
神の住む山々が深く連なる
近畿地方のほぼ中央に位置する奈良県は、海に接しない内陸県である。古代ヤマト王権が、国家の形を育んだのが奈良盆地。8世紀末の平安京遷都までさまざまな都が置かれ、古代から現代に至るまで幾世代もの人々の営みが重ねられてきた。
現代のわれわれが奈良と聞いて連想するのは、実は県全体のほぼ北西端の狭い範囲だろう。吉野山地の入り口である桜で名高い吉野山すら、ようやく県中央に近いといった位置。そこから先は神の領域とも言われた山々が連なっている。山岳信仰と仏教が結びついて成立した修験道においては、吉野・大峯が主な修行の場となり、これら霊場とそこに至る道は、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成要素となっている。
地質上は中央部を東西に流れる吉野川(紀の川の上流部)に沿って中央構造線が走り、北部の低地と南部の吉野山地に大別される。吉野山地は紀伊山地の中央部にあたり、奈良県の3分の2近くの面積を占める森林地帯。日本百名山にも選ばれた大峰山や大台ヶ原山が知られ、近畿地方最高峰の八経ヶ岳(八剣山)も奈良県内に位置している。
平野部から一歩奥に入れば豊かで険しい山地がはるか奥まで連なり、上級者もうなるヒルクライムを、心ゆくまで楽しむことができるのだ。
桜シーズン以外は車も少ない
奈良で山といえば、第一に挙がるのが吉野山だろう。大峰連山の北端約8kmの尾根を指し、桜の名所として全国的に知られている。尾根筋には修験道の本山、金峯山寺(きんぷせんじ)が7世紀に開かれ、信仰と修行の場となった。
平安時代から植え続けられた桜の木は、多く集まるところでは一目千本と呼ばれ、北側の山下から順に下千本、中千本、上千本、奥千本と称される。周辺の道路は桜の時期はとんでもない混雑となるが、シーズンを外れると車通りはほとんどなく、とても走りやすいそう。
吉野山のヒルクライムは、下千本を見上げる麓から奥千本入り口のバス停まで走る3ルートを紹介する。ライドの目的や坂の好みに応じて選んでみるといいだろう。ぜひ桜の時期に……と言いたいところだが、吉田さんに聞くと「桜のシーズンは絶対にやめた方がいい」とのこと。もし来るとしても、走ること自体はある程度諦めた割り切りが必要そうだ。
多武峰(とうのみね)は吉野より少し北、奈良盆地のほぼ南端でアクセスが良く、奈良の定番ヒルクライムスポットだ。ここは昔、中臣鎌足と中大兄皇子が蘇我氏討伐の談合をした地といわれる。ちょっとした場所に皆の知っている日本の歴史が絡んでくるのが、奈良を走る面白さでもある。
Route_01-A 吉野山
走りやすくトレーニングにオススメ
吉野神宮駅前から県道37号を上っていくルート。バス通りなので走りやすく、練習やタイムアタックならこちらがオススメ。前半は吉野杉に囲まれた涼しい2車線道路。3km付近から1kmほど若干急になるが、5km付近から約1km下って参道ルートに合流する。トンネルの先のT字路は左に。商店が並ぶ先、竹林院前の分かれ道を左(奥千本方面)に曲がれば、あとはゴールまで道なりだ。
Route Data_
吉野山
距離:11.9km 獲得標高:620m 最高標高地点:719m
Route_01-B 吉野山・参道ルート
見どころ一杯 ファンライドならこちら
吉野山の参道を突っ切るルート。途中、吉野山のシンボルである金峯山寺の国宝・蔵王堂や、黒門、銅の鳥居などを間近に見ながら上っていく。商店も立ち並ぶので、途中休憩しつつチャレンジするのもいいだろう。休日は人通りが増えるので、景色を楽しみつつゆっくり走ろう。竹林院前以降は吉野山ルートと同じバス通りを上る。
Route Data_
吉野山・参道ルート
距離:11.1km 獲得標高:589m 最高標高地点:719m
Route_01-C 吉野山・超健脚ルート
絶景と激坂を味わう上級ルート
基本の2ルートが合流する地点からすぐ、吉野上千本口のバス停前で左後ろに延びる急坂を上っていくルート。徒歩で奥千本に至る道で、参道ルートの本来の続きはこちら。雰囲気や景色は良いが勾配はかなりキツい。激坂好きなら楽しくてたまらない道だろう。景色だけ楽しむなら下りで通るといい。
Route_02-A 多武峰
奈良のサイクリスト定番の練習コース
週末は奈良のあちこちからローディーが練習に集まるという定番の上り練習コース。紅葉などの観光シーズンにも比較的道路が空いていて走りやすいそう。前半はほぼ直線で途中から勾配がキツくなるが、吉田さんによると、タイムを狙うならここでしっかり踏むのが大事だそう。後半の連続カーブは橋上となっており絶景も楽しめる。ラストは立体交差を目印に、スパートして力を出し切ろう。
Route Data_
多武峰:県道155号
距離:4.3km 獲得標高:368m 最高標高地点:526m
Route_02-B 多武峰・桜井ルート
後半に向けてキツくなる裏コース
桜井市の方から通常の裏側を上るルート。吉田さんが練習でよく走るのはこちらだそう。前半は緩斜面だが4km地点から200mほど急勾配があり、ここで頑張るとタイムが出る。ルート唯一の信号を右折して後半はラストまで急勾配中心となり、とにかく頑張るところ。勾配の変化が緩んだところで、少し力を抜く意識で対応しよう。
Route Data_
多武峰・桜井ルート:県道37号
距離:6.2km 獲得標高:416m 最高標高地点:526m
【談山神社】
Route Map_
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ルートはトータル85ルート以上が掲載されています。冬の間に下調べをして、ライドシーズンに備えよう!
峠BIKE:タイム・アルプデュエズ 01 ディスク
ブランド史上最軽量モデル
フランス・タイム社の、ブランド史上最軽量クライミングバイク。「アルプデュエズ」の名はロードレースファンならおなじみ、ツール・ド・フランスのヒルクライムの聖地から取られ、タイムの気合いと自信がうかがえる一台だ。
タイムのカーボンフレームで一貫して用いられるRTM製法は健在。あらかじめ樹脂を浸透させた基材を貼り合わせて作る一般的なプリプレグ方式ではなく、カーボン繊維を靴下状に編み上げ、樹脂を流し込み成型する。重量面ではやや不利と言われるが、独特のしなやかさと粘り強さがあり、その乗り味は「魔法のじゅうたん」とも形容される。タイム独自のライドフィールは、このアルプデュエズでも変わらず健在だ。
さらにアルプデュエズでは設計や製法を最適化し、既存モデルよりも軽量化。一方で剛性と快適性のバランスも変わらず強く意識され、上りだけではない、オールラウンドなレーシングバイクに仕上げられた。
ノーマルのカーボンフォークのほかに、フォーク先端部に低周波帯の振動を軽減するチューンドマスダンパーを内蔵したタイム独自のアクティブフォーク装備版も用意される。
IMPRESSION:プロからホビーまでカバーする至高の乗り味
乗ってみてまず印象的なのが乗り心地の良さ。硬くなりがちなディスクブレーキモデルでも、良いバランスを保っている。上り区間で息が上がっても、ペダルにそこそこ体重を乗せていれば十分前に進んでくれる感覚は独特。ソフトな踏み心地はパワーのあるライダーには心もとないかとも思ったが、プロ選手の吉田さんのダッシュにも十分反応するとのこと。レーサーから弱り目ライダーまで、幅広くカバーするオールラウンドな一台だ。
spec.
フレーム:RTMカーボン
フォーク:RTMカーボン・クラシックフォーク
サイズ:XXS、XS、S、M、L、XL
カラー:レーシング、ブルー、ダークグレイマット、ダークグレイグロス、レッドグロス
※アクティブフォーク仕様の価格は65万円(税抜)