UCIワールドチーム使用のサーヴェロ・S5ディスクを試乗!
目次
創業当初からエアロダイナミクスを追求してきたカナダのサーヴェロが、2019年にリリースした革新的なエアロロードが第3世代の「S5ディスク」だ。UCIのチューブ形状3:1規則が撤廃されたこと、さらにディスクブレーキ専用となったことで、全てを大胆に刷新。専用のVエアロステムや大胆なカットアウトデザインなど、歴史に残る1台と言えるだろう。
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今回試乗するのはS5ディスク カメレオンカラー(フレームセット)を試乗用にシマノ・デュラエースDi2で組んだもの
2021年シーズンはユンボ・ヴィスマが使用
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サム・オーメン選手のバイク
2012年以前はラボバンクだったオランダのUCIワールドチームで、2015年にユンボがスポンサーに加わりチーム・ロットNL・ユンボに。そして2019年からチーム・ユンボ・ヴィスマとなった。2020年はプリモシュ・ログリッチのブエルタ総合優勝やツール総合2位、リエージュ~バストーニュ~リエージュ優勝、ワウト・ファン・アールトのミラノ~サンレモ優勝など破竹の勢いで活躍しただけに、サーヴェロに乗り換える今シーズンも期待大だ。
S5ディスクの特徴
翼断面のダウンチューブとシートチューブが特徴的なソロイストカーボンが、サーヴェロにおけるエアロロードのスタート地点だろう。2011年、その流れを汲む初代S5がデビューし、2014年には最初のモデルチェンジを実施した。この2代目はMTNキュベカやディメンションデータなどのトッププロチームに供給され、大活躍したことは記憶に新しい。
現行モデルの3代目は2年前の2019年に登場した。ディスクブレーキ化の流れやUCIの規則変更などを受け、2016年から約2年をかけて開発が進められたという。最大のポイントはエアロダイナミクスのさらなる追求で、前面投影面積を減らすために短いヘッドチューブと専用のVエアロステムの組み合わせが誕生した。乗り心地に関しては、シャーブルック大学との共同研究の結果、普遍的に受け入れられた定義はないとのことから、エアロダイナミクスと剛性アップをさらに推し進めることに。こうして世界最高のスプリンターの要求にも応えられる強靱なバイクが完成したのだ。
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専用設計のVエアロステムは80~130mmの6種類、AB08カーボンハンドルの幅は380~440mmの4種類を用意。フレームセットのオーダー時にはこれらが自由に指定できる。コラムスペーサーは最大30mmまで積むことができるほか、一般的なステムも使用可能だ
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タイムトライアル/トライアスロンバイクのP5などで実績のあるエアロヒンジタイプのフォークを採用。ヘッドチューブ内部を通る細い金属の棒とともに、剛性アップにも寄与する
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リヤタイヤとのクリアランスを最小限にするべくデザインされたエクステンデッド・シートチューブ・カットアウト。同様にダウンチューブにもフロントタイヤ用のカットアウトあり
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高い安定性と思いどおりのハンドリングを実現するため、先代S5のリムブレーキ仕様と比較し、BBエリアは25%、ヘッドチューブ付近は13%もの剛性アップを実現している
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試乗車はヴィットリア・コルサTLRの25Cを装着。このフレームの最大タイヤ許容幅は28mmで、フォークのクリアランスはご覧のとおり。エアロダイナミクスを追求した結果だ
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専用のSP20カーボンシートポストを採用。先代S5が翼断面だったのに対し、現行モデルでは後端をわずかに切り落としたデザインに。オフセットは51サイズ以下が0mm、54サイズ以上が25mmだ
S5ディスクインプレッション-ソリッドな走りとデザインは唯一無二-
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インプレッションライダー/大屋雄一 昨年、モダンロードのカレドニア5に試乗し、サーヴェロの引き出しの多さに感心したフリーランスライター。自転車はジャンルを問わず探究心旺盛で、モータースポーツにも造詣が深い。
2005年にソロイストカーボンをリリースし、今日まで続くエアロロードのブームを作ったサーヴェロ。その先駆者が生み出した最新のS5ディスクは、何度もレース中継でクローズアップされるほどコックピットが特徴的で、ゆえにどんな乗り味なのか非常に気になっていたのだ。
エアロロードのジャンルはソロイストの時代が第1世代とされ、この15年あまりで第4世代へと移行している。大きく進化したと感じるのは乗り心地で、今やラウンドチューブを採用するベーシックなロードバイクと遜色ないほどだ。ところが……。S5ディスクの走りはそれとは対照的にソリッドな印象で、中級者以下を寄せ付けない雰囲気すらある。具体的には、Vエアロステムを中心としたフロント回りの硬さが際立っており、ねじれ剛性はおそらくトップクラスだろう。開発期間が2016年からの約2年間であり、この時期にディメンションデータのトップスプリンター、マーク・カヴェンディッシュが先代S5を駆っていたことからも、彼の意見が反映されたであろうことは想像に難くない。
ただし、フロントまわりは比肩するモデルが思い浮かばないほど硬いが、リヤ三角についてはある程度バランスを取っているようで、世代の進化が感じられる。踏める人ならどこまでもそれに応えてくれるという圧倒的なポテンシャルの高さと、シルエットだけで判別可能な唯一無二のスタイリング。間違いなく歴史的なバイクと言っていい。
サーヴェロについて-カナダのオンタリオ州から始まる-
フィル・ホワイトとジェラード・ブルーメンという二人のエンジニアによって1995年に設立されたブランド。そのきっかけがTTバイクの開発であったことから、創業当初から特にエアロダイナミクスへの探究心が旺盛だ。2002年からデンマークのチームCSCへ供給を開始し、2009年にはコンチネンタルチームのサーヴェロ・テストチームを設立している。デザインからエンジニアリグ、そしてテストに至るまで、包括的に行う数少ないメーカーだ。
S5 Disc
●価格/59万円(フレームセット・税抜)、138万円(スラム・レッドeタップAXS完成車、税抜)、138万円(シマノ・デュラエースDi2完成車、税抜)、82万円(シマノ・アルテグラ完成車、税抜)
●フレーム/カーボン
●フォーク/カーボン
●メインコンポーネント/シマノ・デュラエースDi2 ※試乗車
●ホイール/エンヴィ・SES5.6ディスク
●タイヤ/ヴィットリア・コルサTLR G 25c
●ハンドル/サーヴェロ・カーボンAB08
●ステム/サーヴェロ・S5 VエアロステムCo28
●シートポスト/サーヴェロ・カーボンエアロSP20
●サドル/ プロロゴ・ディメンションナック