wahooはなぜUCIをサポートするのか?
2020年12月、スマートトレーナーやサイクルコンピュータのブランドとしておなじみのwahoo(ワフー)が、UCIロード世界選手権の公式サプライヤーになる旨が発表された。彼らのビジョンとは? ワフーのグローバル・マーケティング担当、副社長のコリン・ユースタス氏に話を聞いた。
チクリッシモ(以下C):ワフーが目指しているものをまずご説明ください。
ワフー(以下W):目標はズバリ、皆さんを最高なアスリートに作り上げることです。プロであろうとセミプロや愛好者、あるいは週末限定でスポーツに打ち込む人であろうと、皆前日よりもっと先へ、もっと速く、もっと強くなることを追求しながらトレーニングを行っているのです。向上心があって結果を重視し、スリルを追求するマニアというものは、自分たちの行動に対して大きな結果を熱望するものです。
ハードな設定目標を達成し、快適に暮らすための革新的解決法こそ、当社が創造しているものであり、全てがアスリート志向なのです。自転車によって世界はより良くなる、厳しい目標設定は人間性を高める、そう信じています。
C:今回、UCIとパートナーシップを締結するに至った経緯は?
W:UCIとは数年間協議しました。関係の端緒はトレーニング・プラットフォームのザ・サファーフェストを買収したことでした。ザ・サファーフェストはUCIのレース映像を使用して、2009年以来、没入感の高いサイクリングワークアウトを生み出してきました。イネオスグレナディアズ、ボーラ・ハンスグローエ、ドゥクーニンク・クイックステップといった数々のワールドチームの支援も長年行っています。UCIとのパートナーシップは、いわばこうしたハイレベルな自転車競技界との結びつきの自然な延長線上にあったと言えます。
ワフーにはエリートのアスリートたちがワールドツールや世界選手権で際立った成果を達成するお手伝いをしてきた高い実績があります。こうした経験をUCIとの新しいパートナーシップにもたらすことができて非常に喜んでいます。この関係性を特別なものにしている要素はなにより、ワフーとUCIが、同じゴールを目指している点です。そのゴールとは、全てのサイクリストのパフォーマンス強化であり、世界中のあらゆるレベルのサイクリストたちにとってサイクルスポーツが手軽になるようにしたい、というものです。UCIには、サイクルスポーツの近代化を図り、競技を一般大衆にとってもっと魅力的なものにしたいという野心とモチベーションがあります。UCIのこうした野心はワフーの本質的価値観と合致することから、各国で協力して必要に応じた援助を行う「連帯プログラム」とパートナーになりました。このプログラムは、チャンピオンの芽を育んだり、新しいエリアに新たな育成の機会を提供する一助となるのです。我々のパートナーシップは、エリートレベルのパフォーマンス強化と、サイクルスポーツを手軽にするという2つの側面のバランスを保ちながら推し進められます。
C:そのパートナーシップは具体的にどんなものでしょうか?
W:UCIロード世界選手権の新規公式サプライヤーとして、最低2年間の条件で、複数年のパートナーシップ契約に調印しました。
2021年9月にフランドル地方で開催されるロード世界選手権のウォームアップエリアとクールダウンエリアをサポートします。そこで機材提供を行うと同時に、世界選公式ドリンクボトルも用意します。さらにサポーターの体験コーナーを設け、その場でレースを体感できる機会を作る方向で進んでいます。
加えてUCIワールド・サイクリング・センター(WCC)や世界各国から来るWCCの研修生、あるいはコンチネンタル・サイクリング・センター(CCC)や各国連盟に機材を提供し、育成活動を支えることでUCIの連帯プログラムを支援します。WCCはUCIのコーチングとトレーニングのセンターで、スイスのエーグルにあります。
この革新的なパートナーシップを通じて、ワフーはUCIのレース映像を基にしたトレーニング・ビデオをメンバーに提供することも行っています。こうしたビデオはワフーSUFトレーニングと呼ばれる総合的トレーニング・プラットフォームを通じて利用できます。
C:なぜロード世界選をサポートするのですか?
W:ロード世界選は毎年開かれる自転車競技の頂点とも言えるイベントだからです。日程は9日間。五輪同様、選手たちが自国のために闘うまれな機会であり、巨大な世界的スポーツイベントのひとつ。世界中の500以上のメディアが取材し、300万人以上の視聴者に向けてライブ放送されます。
C:ロード世界選のほかに、サポートをする大会はありますか?
W:UCIとともに4月にフランドル地域を横断するレースの宣伝活動を行う準備をしています。世界選の予行演習という位置づけで、ファンにはインタラクティブな体験を提供します。ワフーがパートナーになっているイネオスグレナディアズ、ボーラ・ハンスグローエ、ドゥクーニンク・クイックステップ、AG2R、トレック・セガフレード、コフィディスといったワールドチームの支援や活性化も続けます。
C:今後、WCCやCCCなどへの機材供給も行われるわけですが、導入設備に関して教えてください。日本のCCC修善寺にも供給されるのですか?
W:今はこのパートナーシップが始まったばかりですが、ワフーは次世代のサイクリストが目標を達成するのに役立つ技術的な専門知識、トレーニング機材やサービスを提供していきます。無論、KICKRスマートトレーナー、ELEMNTGPSサイクルコンピューター、ELEMNTRIVALマルチスポーツGPSウォッチといったデバイスの提供も含みます。また、包括的トレーニング・プラットフォームのザ・サファーフェストの存在があります。当社の4次元パワープラットフォーム、いわゆる4DPも含む世界レベルのスポーツサイエンス開発プログラムと測定手法が使われており、アスリートを識別することで才能発掘・育成を促進します。日本のサテライトセンターは、有望な若手アスリートを育成し、アジアにおける自転車競技の発展を促すためのトレーニングキャンプを運営することが役目です。追加サテライトセンターも同様にサポートします。
C:UCIのレース映像を素材にしたトレーニング・ビデオを用いたトレーニング・プラットフォームとは、どのようなものですか?
W:ザ・サファーフェストは、世界レベルのスポーツ科学により設計されました。個人に合わせたエクササイズにヨガ、メンタルトレーニング、筋力トレーニングを合わせたもので、アスリートとしての潜在能力を開花させ、次のレベルへとパフォーマンスを上げるお手伝いをします。
4DPは最先端のスポーツ科学の上に成り立っています。研究機関において精力的に試験を行い検証し、世界中の生え抜きのレースイベントにおける勝利というかたちで実証しています。ワフーの主席スポーツ科学者ニール・ヘンダーソンは、イネオスグレナディアズ所属の元ロード個人TT世界王者ローハン・デニスのコーチでもあります。
C:UCI公式サプライヤーとしてのワフーのビジョンをお聞かせください。
W:UCIもワフーも、競技スポーツとレクリエーション目的の活動の双方を支援するという同様のミッションを持ち、世界中をカバーしています。UCIとワフーが手を携えれば、革新的技術ソリューションに基づいたトレーニング機材とサービスを提供することで未来の世代の役に立てると考えます。端的に言えば、世界でより多くの人が自転車に乗ることが、持続可能で健康的で幸福な社会の構築につながるのです。
C:最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。
W:日本は熱烈なサイクルスポーツファンがいる国です。日本に我々の製品を楽しんでくれるワフーリガン(ワフーとフーリガンの造語)が大勢いることを誇りに感じています。これからも革新的な製品を生み出し、そうしたファンをさらに楽しませ続けるよう頑張ります。
C:このたびはお話を伺う機会をくださいまして、誠にありがとうございました。