変速を使いこなしてサイクリングをラクで楽しく!
目次
スポーツバイクの特徴は、非常に多くのギアがついていて、多段変速ができることだ。最初は「こんなにたくさんのギアをどうやって使ったらいいの?」と戸惑うかもしれないが、その仕組みを理解して使い方を覚えてしまえば、サイクリングがよりラクで速く、楽しいのものになること間違いなし!
コツさえつかめば決して難しくない!
モデルのときひろみさんはロードバイクを買って約1年が経つ。
「いまだにちゃんと乗り方がわかっていなくて、変速の使い方もいまいちよくわからないんです」
と、ときさん。そういう人は多いのではないだろうか。
「変速はスポーツバイクの要の一つです。まずはこの使い方の基本を覚えましょう。すると、よりスポーツバイクでサイクリングをする醍醐味が味わえるようになりますよ。最も一般的なシマノ製の変速機でレクチャーしましょう」
と、なるしまフレンド店長の藤野智一さん。初心者は必見だ。
生徒役
バイカーズモデル
ときひろみさん
10代の頃にモーターサイクルに魅了され、現在はそのジャンルを中心に「バイカーズモデル」として活躍している。自身も複数台のモーターサイクルを所有。スポーツバイクはまだ初心者だ。
先生役
なるしまフレンド
藤野智一店長
東京の有名スポーツバイクショップ、なるしまフレンドの店長。元プロ自転車ロードレーサーで、オリンピック出場経験や全日本選手権優勝などの実績があり、まさにスポーツバイクのプロだ。
なるしまフレンド
東京都渋谷区神宮前3‒ 35 ‒2
なぜスポーツバイクにはこんなにギアがついているの?
サイクリング中は上り坂になったり下り坂になったり、追い風になったり向かい風になったりと、さまざまな状況によって負荷が左右される。状況に合わせて細かくギアを変える、つまり変速をすることで、ペダルを回す“回転数”を保ちつつ、一定の負荷を維持できる。だから、スポーツバイクにはこんなにも多くのギアがついているのだ。「車は速いスピードになるとより重いギアに変わっていきます。それと同じ原理です。負荷が下がったらギアを重く、上がったらギアを軽くするのです」と藤野さん。
基本 スポーツバイクの変速機の操作法
前側には大きめのギアが1枚〜3枚搭載される。ロードバイク系は1枚〜2枚、クロスバイク系は1枚〜3枚が主流だ。外側の大きなギアをアウター、内側の小さなギアをインナーと呼ぶ。後ろ側には8枚〜11枚(が主流)のギアが搭載され、ギアが小さくなるほど重くなる(速度アップする)。前ギアは全体的に重く/軽くし、後ろギアは細かく重く/軽くするイメージだ。後ろギアと前ギアの組み合わせで、細かなギア調整をする。
ロードバイク系の場合→デュアルコントロールレバー(機械式)
ドロップハンドルと呼ばれる、ハンドルが曲がったタイプが採用されるロードバイク系のスポーツバイクには、ブレーキレバーと変速レバーが一体となった「デュアルコントロールレバー」が搭載されている。シマノ製の場合は、右側レバーで後ろ側の変速機、左側レバーで前側の変速機を操作できる。右側レバーと左側レバーで重く・軽くの操作が逆になっているのが特徴だ。
外側レバーはブレーキレバーも兼ねており、これを内側に押し込むと変速する。なお、手前に引けばブレーキをかけられる。内側にある小さなレバーも変速レバーで、これも下の写真のように押し込めば変速できる。
クロスバイク系の場合→フラットハンドル用変速レバー
まっすぐなハンドルバー(フラットハンドル)が採用されるクロスバイク系(MTB系も同じく)には、それ用の変速機が搭載される。右のデュアルコントロールレバーとはレバーの形状や構造が異なるが、基本的な原理はまったく一緒だ。こちらはデュアルコントロールレバーと違い、ブレーキレバーはブレーキをかける役割のみなので、理解しやすい。
※ シマノにはDI2という電動式の変速機もある。ここで説明しているのは最もオーソドックスなワイヤーで変速する機械式だ。
写真で登場のバイク
●ロードバイク
ジャイアント・ディファイアドバンスド2
問:ジャイアント
●クロスバイク
ジオス・ミストラル ディスク ハイドローリック
問:ジョブインターナショナル
変速機使いこなし術!
ここまででスポーツバイクの変速レバーの基本的な操作方法、そして前ギアと後ろギアの仕組みについて理解した。では、実際の走行状況でこれをどう使いこなすのか、について教えてもらう。
「ギアを軽くするシーンと重くするシーンの、2つのシーンに分けられます。ギアを軽くするシーンは負荷が上がったとき、重くするシーンは負荷が下がってきたときです。実際の状況で試しながら走って覚えていきましょう」
と藤野さん。
「わかりました。やってみます」
と、ときさん。
皆さんもどんどん試してみて、頭と体で使い方を覚え込もう。
POINT1 こぎ出し
信号待ち後の発進など、こぎ出すときにはギアを軽くしておく。重いギアのままこぎ出そうとすると、ペダルが重くてふらふらとしてしまう。大切なのは、信号などで止まる前にあらかじめギアを軽くしておくこと。POINT4でも説明するが、変速は自転車が停まった状態では行えないからだ。なお、ペダルを水平よりも少し高い位置にしてからこぎ出すと、スムーズに発進することができる。
POINT2 坂道などで負荷が上がった時
特に坂道になると重力が作用して負荷が上がり、ペダルの回転数も落ちて重く感じる。きっと、そのままでは坂は上りきれないだろう。そんな時は、負荷を下げるためにどんどんギアを軽くしよう。ポイントは、坂道を発見したらそこに入る前にある程度ギアを軽くしておくこと。前ギアをインナーに落としておくと、一気に軽くなるのでおすすめだ。
最も軽いギアの組み合わせは、前ギアがインナー状態、後ろギアが一番大きいギアの状態だ。“インナーロー”とも呼ばれる。「坂道は特に負荷が上がるので、前ギアはインナーに最初から入れてしまいましょう。勾配がきつければ、さっさとこの“インナーロー”状態に」と藤野さん。
向かい風の時も同じ
平地で向かい風がきつい時も、負荷が上がってペダルの回転数が落ち、重くなっていく。「坂道と同じで、きつい風で負荷が上がった時もギアをどんどん軽くしてください。アウターでも追いつかないときは、前をインナーに落として」と藤野さん。
POINT3 負荷が下がってきた時
ギアを重くするシーンは、負荷が下がってきたとき。平地でも追い風になったりだんだん速度に乗ってきた時、あるいは下り坂のときだ。「速度が上がっても軽いギアのままでいると、ペダルが軽すぎてこいでもこいでも進まず、疲れるだけになります。下り坂ではペダルが軽すぎてバランスを崩す危険性もあります。そういう時は、自分がちょうどいいなと感じる重さまで、ギアを重くしていきましょう」と藤野さん。
POINT4 注意したいこと
①ペダルを回していない時に変速レバーを操作しない
変速はペダルを進行方向に回さないとできない。しかもペダルを回さず停車状態で変速レバーを操作すると、こぎ出した時に突然変速してふらつきの原因になる。また、変速機にも大きな負担がかかって故障の原因にもなってしまう。ペダルを回していない時の変速操作は、行わないように注意する。
②“たすきがけ”に注意
下の写真の2パターンは、俗に“たすきがけ”と呼ばれ、使わないほうがいいギアの組み合わせだ。見てわかると思うが、チェーンがかなり斜めになって負担がかかりやすく、変速不良になりやすい。
③変速時に踏み込みすぎないこと
変速する時にペダルに力を込めるとチェーンに余計な負荷がかかり、変速トラブルを生みやすい。なので、変速時は踏み込みすぎに注意する。「シマノの変速機は性能がいいので、これをやってもちゃんと変速はしますけれども、積み重ねるとトラブルの原因になるので、避けましょう」と藤野さん。
指導を終えて
「今までスポーツバイクについては本当に最低限の簡単な知識しか持ってなかったんですけど、今回教えてもらって、実際にいろいろなシチュエーションで乗って操作してみて、体系的に理解できました。教えてもらったことを生かして、今後どんどん自分なりにサイクリングを楽しんでいきたいな、と思います」。
スポーツバイクの変速機は多くがシマノ製
日本国内で流通しているスポーツバイクは、多くがシマノ製の変速機を採用している。なので、この操作方法を覚えれば、ほとんどのスポーツバイクの変速操作はばっちりだ。他社の変速機も原理は同じなので、応用が利く。