自転車日本縦断第2週目 風虎くんインタビュー
都内在住の富樫風虎(ふうと)くん(11歳=小学5年生)はお父さんの克美さんと一緒にこの夏、自転車日本縦断に挑戦中だ。
コロナ禍の影響でキャンプ場や北海道ならではの宿泊施設であるライダーハウスが臨時休業しており、さらに猛暑が続いて楽な道のりではないが、すでに1000kmを走破。ここまでの行程はこんな具合だ。
7/30登別手前〜伊達道の駅〜豊浦
7/31豊浦〜長万部〜森町
8/1森町〜函館〜[函館〜大間フェリー]〜大間キャンプ場
8/2大間〜大畑〜むつ市早掛沼公園キャンプ場
8/3早掛沼キャンプ場〜野辺地町〜浅虫温泉
8/4浅虫温泉〜黒石〜碇ヶ関
8/5碇ヶ関〜矢立峠〜大館〜能代二ツ井
8/6二ツ井〜能代五城目線〜潟上市(天王温泉くらら)
8/7潟上市〜にかほ道の駅象潟
8/8象潟〜鶴岡
8/9鶴岡〜村上
JR羽越本線酒田駅に到着した富樫風虎(ふうと)くんに話を聞いた。
「今日は暑くない(注・32度でした)。昨日、おとといはすごく暑かった。北海道より暑かった」。秋田県大館市では、道路沿いの気温表示は35度くらいでも、バッグに取り付けた温度計は47度を示していたという(!)。
「お父ちゃんは汗っかきだから」と風虎くんが言うと、お父さんの克美さんは「お父さんは暑いのは耐えられる。坂が嫌い」と笑う。風虎くんは「涼しくて上り坂がキツかったら僕が先に行っちゃう。暑かったら(スピードは)同じだけど、涼しかったら先に行く」と、これまた涼しい顔だ。
飲み水2リットル以外や保冷ボトルにも凍らせたペットボトル数本を常に持ち運び、暑さ対策にぬかりはないが、それにしてもこの暑さ。「1時間に1本、30分に1本飲んじゃうこともある」。「それから、由利本荘市の女性の方がInstagramで見つけてくれて、いきなり『こんにちは』とジュース5本とアイスクリームを差し入れしてくれて、生き返ったよな」。
それでも夜は涼しい日が多く、1枚だけ持ってきた寝袋を掛けて寝ないと風邪を引きそうなくらいだったらしい。前の晩に宿泊場所で会った人と話しこんだり、朝もそんな感じで出発は遅くて8時半とか9時のようだ。ここまでのアベレージは1日70kmほどと決して速くはないが、小学5年生であることを忘れてはいけない。
「遅いけど、長い距離を走るのは大丈夫」と風虎くん。チャレンジしている日数はツール・ド・フランスよりも長い、3週間オーバーの日程なのだ。
「朝、ちゃんと食べても昼になる前にお腹空いちゃう」という風虎くんに好物のラーメンについて尋ねると、「どのラーメンが美味しかったか? いっぱい食べたから忘れた。ラーメンは、お腹空いているときは朝でも食べてる。ちゃんとした食べ物は朝、昼、晩と食べているけど、途中でお腹が空いちゃうから、おにぎりとかも食べている」。コンビニ、そして道の駅などもあるので、買い物には不自由していないよう。風虎くんは道の駅のスタンプも集めているそうで、この先も日本海沿いの道の駅で出会うことができそうだ。
「昔のランドナーのスタイルで走りたくて」とお父さんは話す。地図は紙の全日本道路地図、メーターの類いも一切付けず、その日走った距離さえ地図上で測って記録している。幹線突っ走り系ではなく、広い一桁国道などでは、横に村道などがあればそちらを走っているそうだ。日暮れ時になると反射ベストを着るなど安全対策にもぬかりはなく、「夕方のほうが涼しくなって走りやすかったりもする」らしい。「お盆を過ぎれば少しは涼しくなりますよね?」とお父さん。
お父さんの実家が新潟県、そしてお父さんの弟さんが山形県に住んでいるので、ここ2日間は宿泊の心配はない。キャンプ場のほか道の駅なども利用しながらの旅だが、時節柄、仮眠さえできない道の駅も多いので、ブログの記述にも気を遣っているそうだ。
お風呂は毎日、もし夜入れなければ翌朝入っているそうで、「入らないと体がベトベトになっちゃう」と風虎くん。「それから、水風呂がなかったら入らなくていい、ってくらいに水風呂が好き!」。
子供用の携帯電話のショートメールで連絡を取り合いながら、道の駅でスタンプを集める姿はいかにも今の小学生だが、東京に最接近する新潟あたりでは、友達が待ち構えてくれるらしい。「楽しみ」と微笑む11歳は、ブレーキレバーのストローク調整にも気を配っている。
風虎くんは言葉の端々に「旅」という単語を使う。彼のなかでは旅とツーリングはちゃんと峻別できているもののようだ。こんな小学生は初めてだ。
「(風虎が)晴れ男なんです」と笑うお父さんもすでに真っ黒だ。考えてみればお父さんも会社を特別休暇で休んでいるんだそうだ。