東京サイクルデザイン専門学校卒業生の就職先で見た職人魂
東京・渋谷にあるサイクルデザイン専門学校では、自転車メーカーや販売店への就職支援はもちろん、ものづくりを志望する学生に向けても、業界への発信力を武器に幅広い仕事の選択肢を提供している。既に社会に出て働いている卒業生の話からは、職人として充実した日々を送る姿が見えてきた。
日本初の自転車の学校として、2012年に開校して以来、既に多くの人材を自転車業界に輩出している東京・渋谷の東京サイクルデザイン専門学校(以下、TCD)。
日本を代表する現役のフレームビルダー陣をはじめ、業界の第一線で活躍するプロを講師陣に迎え、学生に技術やアイデア、経営ノウハウなど自転車に関する学びを幅広く教えている。
とりわけフレームビルディングのカリキュラムでは、学生自らパイプの溶接までこなしフレームをゼロから作り上げていく。そうして学校で得た技術は、自転車業界からも“即戦力”として高く評価されている。
今回、話を聞いた3人も、ものづくりの魅力に取り憑かれ、それを生きる道として選んだ卒業生。競技用車いすのトップブランド・オーエックスエンジニアリングで働く津島智泰さんは、はじめて会社訪問したときのことをこう振り返る。
「企画から設計、パイプの加工、製造とゼロから製品の仕上げまで行うものづくりの環境を見て、学校で培ってきたことを生かせると思い、この会社で働きたいと思いました」
彼らの職人魂に、さらに迫りたい。
オーエックスエンジニアリング:競技用車いすメーカーのトップランナー
――皆さんは、なぜこの会社で働こうと思ったんですか?
越地 僕が入社しようと思ったきっかけは、あるとき、パラスポーツの大会で選手が競技用の車いすをとても大切に扱っているのを見てかっこいいなと。僕もそういう選手のためになる仕事をしたいと思いました。それで会社のことを調べたら、TCDの卒業生である津島さんが働いているのを知り、入学を決めたんですよ。
津島 僕の場合は、学校でもデザインとビルディングの授業が面白くて、就職活動のセミナーでうちの会社が来ていて、競技用車いすのかっこよさを見て、これは作ってみたいと思ったことがきっかけかな。
小塚 僕は会社訪問のときに津島さんが溶接するのを見て、「これがプロの溶接か!」と、その美しさに驚きました。自分もそうなりたいと思ったんです。今は部品の溶接担当ですが、いずれはフレームの製造をやりたいですね。津島さんが仕事でうれしかったことって何ですか?
津島 あるとき、世界的にも有名なパラアスリートが来社して、座面の調整をしたいと。そのとき、僕しかおらず緊張しながらも調整したら、その選手がそれまでの不調から一転、次の大会で上位に入ったんだよね。あの活躍に僕も少しは貢献できたのかなと思えたことかな。
後輩2人 おー、それは確かにうれしいですね。僕らも頑張ります!