Q・Nリーグ「サマースクール&サマーレース」開催レポート/国内ジュニア普及と発展へのビジョン
サイクルロードレースの女子Qリーグ、中学生Nリーグを主催するQリーグNリーグ実行委員会では、2021年8月22日(日)茨城県の守谷自動車学校において、スクールとレースを合体したイベント「サマースクール・アンド・サマーレース守谷2021」を企画した。
このようなスクールとレースの合体企画は、すでに4月29日に千葉県成田市の下総運動公園で実施して好評を博し、その夏休みバージョンを再び、と考えていたものであった。
スクールとレースを併せて実施することで、開催場所の「守谷自動車学校」ならではの企画と実績を作り、今後のジュニアやキッズの走行会やレースへ繋げていきたいので、今回は初めての試みも行ってみた。そのレポートとともに、前後で行われ運営協力したキッズイベント企画での経験を通して、今後の自転車ジュニア育成の考察をしたいと思う。
すでに何度か守谷自動車学校での開催経験があるスマートコーチングより「4月と同じようなリーグレースとの合同企画の実施」の誘いがあり、8月の夏休み期間に開催となった今企画。4月と同じように午前にスマートコーチング主催のスクール、午後はQ・Nリーグ実行委員会主催のリーグレース(当日は練習記録会に変更)という内容で、「スクール・レースともに女子とジュニア、初心者を中心」とした企画内容で固めることが出来た。
朝9時からスタートはスマートコーチング主催のスクール。今回のスクール講師は3人。スマートコーチング代表でもある安藤隼人コーチは、オリンピアンから競輪選手、アマチュアライダーまで10年以上のコーチング経験をもとに、安全に楽しく走れるようにコーチング活動を行っている。
岸 崇仁コーチは、JPTチーム「さいたまディレーブ」所属のプロライダー。中学生時代からトラック・ロード競技を専門とし、スマートコーチングではサーキットトレーニングの担当コーチ。そして安藤 沙耶コーチは、JPTのフェミニンライダーでシクロクロス等でも経験豊富。普段は自転車ショップの女将としてのフレンドリーな対応でフォローにも回っている。
そんな3人の講師のもと、コーナーの多い自動車学校コースを利用したコーナーリング練習や左右差し込みなど様々な並走、2列ローテーションなどをおこなった。今回はジュニアというよりも更に年齢の若いキッズが中心のスクール参加メンバーで、コースが見渡せて何度も同じ箇所を周回できるコースということもあり、熟練のコーチからの丁寧な指導を受けやすかったようだ。一方で、かなりの実力高いキッズ選手の参加もチラホラあったので、スクール参加選手同士でも良い刺激になったようでもある。
そんなスクールのなかで「自動車学校でのスクール実施ならではの、何か特有なことはできないか?」という話から、「車の運転席から自転車が死角になる所を実感してもらってはどうか?」とアイデアがあり、実際の車道走行時の車と自転車の場所を再現して、コース脇に配置をしてみた。
スクール参加者たちは先ず、外側から車道を走るときの車と自転車の位置関係を見てもらい、自転車からの視点を確認してもらう。その後に運転席に座ってもらって、自転車が運転席から見えてない!という事を実感してもらう。更に、どうすれば運転席から外の自転車の動きに気づいてもらえるか?も実施してもらい、体の小さいキッズたちが車道走行で事故を防いでもらえるよう覚えてもらった。
スクールの締めには「デュアスロン」を実施。自転車スクールとなると、どうしても自転車走行ばかりになってしまいがちであるが、自分の脚で走る「ラン」をおこなえるデュアスロンで競争してもらうことで、同じコースを自転車で走ることと、自分の脚で走ることの違いを理解しながら競って楽しんでいたようだ。
昼休憩をはさんで、午後からはQ・Nリーグ実行委員会による練習記録会。本来はコロナ禍で中止となったリーグ第3戦の代替えとして募集開始と開催準備をおこなっていたが、新型コロナ感染者数が増加に転じてきてしまった。とくに関東を中心に増加が止まらないなか、居住地域や家族の職業等などの条件でレース会場に来られる選手と来られない選手とで不可解な差異が出るのは、リーグシリーズポイント獲得に不公平が出てしまうと考えて急遽「練習記録会」に変更し、開催することとした。
練習記録会もレース実施時と同じ「個人タイムトライアル」でおこなった。コースはコーナーが多いため立ち上がりのタイミングなど、うまく走行ラインを組み立てて走る必要があるが、14時15分から16時まで、何度も計測チャレンジできるので各自で様々な工夫してタイム更新を狙ってもらうことも目指す。
リーグで設定したコースが約560mと短いので、コース内走行は完全に1人づつで走ってもらった。おかげで安心して全速力でコースを走れたと思う。また、タイムチャレンジの3回目までは補助=ホルダー無しで走ったが、4回目からはホルダーを使ってスタート。初めて「ホルダー」を利用したスタートを経験したキッズ選手も多かったので、良い機会になったと思う。
先にスタートし、ゴールを確認してからスタート用意。ペダル位置を合わせてから、スタート5秒前にはサドルから腰を上げて!とコツも指導。写真はすでに、そのホールド手順と作法を知っている選手なのでスムーズ!参加選手たちにはレース実況でタイム読み上げとともに、注目してほしいポイントを細かくアナウンスして、チャレンジ待機中も他の選手の走りを見て参考にするように促した。
2時間近くのチャレンジ時間を設けたので、途中で「もう走らない!」という選手が出てくるかと思ったが、参加選手全員が時間いっぱいまで何度もタイムチャレンジをして、皆タイム更新に成功。午前、午後の企画ともに非常に有意義な1日となったようだ。
そして今企画の少し前、8月11日にJCLの関東5チームによる合同企画で、キッズ向けのイベント「サマートライドキッズアカデミー2021in下総」に運営協力として参加した。
当日は宇都宮ブリッツェン、那須ブラーゼン、レバンテフジ静岡、チーム右京相模原、さいたまディレーブの5チームが参加しエキシビジョンレースで会場を沸かせるなか、キッズが気軽に参加できる様々なプログラムを実施した。
プロチーム選手とともに集団走行を体験できる「プロトン・ローテ―ション体験」に、ロードレースでは不可欠な補給を実体験できる「ボトル渡し体験」、更にはアシストに守られて、最後のゴールをスプリントで飛び込む「エーススプリント体験」は、TVなどの観戦でした経験できないことを、コツやポイントを指導してもらいながら、万全の態勢で体験できる貴重な場となった。
参加していたキッズ達の本当に楽しそうな笑顔が非常に印象に残った一日であった。
一方で、いつもQ・Nリーグのシリーズ戦に参画している各レースについては、リーグ発足前から継続的にジュニアや女子のクラスを設け、日頃の成果を発揮できる明確な「目標」としての地位を築いている。
たとえば、チャレンジリーグは小学生と中学生、女子について長年クラスを分けて実施し、昨年からはWALKRIDEと提携し「小学生チャンピオン」のシリーズポイント賞を設けるようになった。JCRCについても、長年にわたりJクラスとして中学生、Kクラスとして小学生をレース実施している。
今後のジュニア育成には、何よりもまず優秀な選手を多く輩出するために分母を増やす「普及」が大前提だと考える。そして普及と育成・強化を出来るならば平行して計画と実施する必要がある。
昨今はすでに幼少期から自転車に慣れ親しんで、ある程度は実力をつけたジュニア選手も多くなっているため、そんな選手たちの実力を測り発揮する「ジュニアにクラスを設定しているレース」を横に結ぶプラットフォームが必要である。その中ではレース開催情報とともに、ジュニア選手には知ってほしい、例えばジュニアギアのことや、成長期における体の変化にあわせた練習とケアの方法など必要情報を共有できることも必須である。それは今後、Q・Nリーグでやらなければならない重要事項である。
そのジュニアに続くキッズについても、もっとレースだけでなく「遊びを通じた安全安心な自転車走行」をゲームやスクーリングで気軽に覚えてもらう場を設定することが必要だと考える。その参加には、普段乗っている軽快タイプの自転車でも楽しめるプログラムを企画し、会場に行けばレース用の自転車も体験できるスペースを設置する。それにはバーチャルレースプログラムによるローラー走行が最適だと思う。でも、もっと日常に落とし込んだところで気軽にできる方法はあるように思う。
たとえば、ではあるが少し昔のことを考えると、商店街にはゲームセンターがあって、学校の先生に怒られながらも通った記憶はあるだろう。そんな感じで、街中の自転車店の片隅にバーチャルレース走行ができるレーススペックの自転車がセットしてあるローラーがあって、いつでも1回100円で乗れるようにしたらどうだろう?記録を出していく友達の走りを皆で見守りながら、次々とチャレンジしていく子供たちを店主が横目に見ながら「お、これは凄い選手になるかもしれない!」という将来の有望選手を発見できる機会が増えるとしたらどうだろう。
様々なシチュエーションで自転車レースの世界に飛び込んでくる将来有望な子供たちが、集まって切磋琢磨できる場を用意できるように、今から私たちは準備を整えていく必要がある。
*8月22日:サマースクール・アンド・サマーレース守谷2021
スクール要項
https://20210822cycleschool.peatix.com/
Q・Nリーグ要項
https://gicz.jp/open/moriya21
※当日のQ・Nリーグ練習記録会タイム計測結果は以下です。
特に4回目以降はホールド有りでタイムトライアルした記録で、皆コツを覚えて記録が伸びているのが顕著でした。
http://www.jbrain.or.jp/q-n-league/2021-2022lanking/0822-TT-time.pdf
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今後のQリーグ・Nリーグシリーズ戦予定です。
第6戦:9/11秋のしもふさクリテリウム
第7戦:10/2平田村タイムトライアル
第8戦:10/10あぶくま洞ヒルクライム
第9戦:10/24大磯クリテリウム
第10戦:11/21大磯クリテリウム
第11戦:22/1/23大磯クリテリウム
第12戦:22/2/13大磯クリテリウム
最終戦:22/2/26リーグ主催成田下総
http://www.jbrain.or.jp/q-n-league/race-profile.html
現在、第5戦まで終了しており、まだ残り大会があります。
今からのQNリーグ登録ならポイントリーダー奪回に間に合うかも!
皆様のチャレンジとリーグ登録をお待ちしています!!
http://gicz.jp/open/qn2122t2
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