自転車日本縦断第5、6週目 風虎くん日本縦断達成!
11歳の富樫風虎(ふうと)君が46日間で日本縦断(3025km)を達成! おそらく自転車での日本縦断の最年少記録ではないか? 本土最南端の鹿児島県・佐多岬到着を取材してきた。
第4週目まではこちら
https://www.cyclesports.jp/news/others/52782/
本州の日本海側を走り、関門トンネルの人道を通って九州に入った富樫さん親子。暑さ、そして雨に悩まされながらもゴールが近づいてきた。「夏休み中に走り切れるとはもともと思っていなかった」(風虎くん)と言いつつも、「9月第1週くらいでゴールはできるかな、と思っていました」(お父さんの克美さん)。
彼らは東京オリンピックの開会式を稚内のライダーハウス・緑湯で見て、その翌日に宗谷岬をスタートした。そして6週間後、パラリンピックの閉会式を見たのは鹿児島市から垂水市に渡る鴨池・垂水フェリーの中でのこと。長いようで短かった(?)1カ月半。いよいよ佐多岬まであと70kmに迫った!
道の駅・たるみずはまびらを出て、次の道の駅・錦江にしきの里でどしゃ降りとなり、カッパを着用。大内山峠を越えたあたりでこの雨は止み、その次の道の駅ねじめに立ち寄って最南端道の駅のスタンプを押す(ちなみに道の駅は沖縄にもある)。南大隅町伊座敷にあるAコープにも「最南端」と書いてある。ここで風虎君はたこ焼き休憩をとった。
店頭のたこ焼き屋のオジサンと楽しく会話する。今走ってきた国道269号線の伊座敷トンネルは昨年できたばかりで、アップダウンがあるのではと旧道の通行は避けたのだが、そちらは晴れれば開聞岳を望む、ステキな道らしかった。
最後のアップダウンを越えて今日は大泊にテント泊。明日の晴れを期待して、あと8km地点で寝袋に入った。といっても寝袋は封筒型のやつで、1枚を広げて二人に掛けて寝る、というスタイルらしい。ちなみに、ほていの焼き鳥缶をいつも5、6個持って走ってきたが、「本当はいなばの焼き鳥缶の方が美味しい。でもなかなか売っていない」と風虎君。
9月7日火曜日、午前9時35分。北緯31度、本土最南端、佐多岬到着。
「あ〜、着いた〜。終わっちゃった……」。
しばらくの間、風虎君は黙ってこの時をかみしめているようだった。
144cm、31kg(走り出して身長が2cm伸びたそう!)。この小さな体のどこにこんな長い旅に耐える力があるのだろうか?
お父さんとともにパンクなし、もちろん落車もなし。46日間、寄り道を含めた走行距離は3025kmに及んだ。この距離は、サイクルコンピュータを使わないお父さんが地図とグーグルで手計算したものだそうだ。
「やればできるもんなんだね」、風虎君がそうつぶやいたのが耳に残った。
●動画
●コース
8/26島根県安来市〜出雲市
8/27出雲市〜出雲大社〜出雲市
8/28出雲市〜浜田市
8/29浜田市〜山口県萩市
8/30山口県萩市〜長門市
8/31長門市〜関門トンネル福岡側
9/1関門トンネル〜福岡県嘉麻市
9/2嘉麻市〜みやま市
9/3みやま市〜熊本県氷川町
9/4氷川町〜鹿児島県阿久根市
9/5阿久根市〜垂水フェリー〜垂水市
9/6垂水市〜南大隅町大泊
9/7大泊〜佐多岬
総走行距離3025km
●風虎君との一問一答
CS:一番楽しかった場所は?
風虎:ウポポイ(北海道白老町)が2番で、(石川県小松市の)自動車博物館が1番。あとは秋田犬会館かな。
CS:雨の日はどうだった?
風虎:楽しいときもあった。川みたいになっていたり、トラックからすごく水を被ったりして、笑えちゃうくらいのこともあった。
CS:一番暑かったところは?
風虎:秋田の大館で、持って行った温度計が47度を指した。
CS:坂はキツかった?
風虎:キツかったけど押すほどではなかった。押そうかなと思う山もあった。力と自分の体重で何とか上った坂もあった。前タイヤが浮きそうになった坂もあった。
CS:一番怖かったのは?
風虎:平らな道で、橋のつなぎ目で前輪が滑った。転ばなかったけれど。
CS:一番思い出に残る人は?
風虎:面白かったのは大間のキャンプ場であったカブとセローに乗ったお兄さんとオジサン。みんな北海道から来て、フェリーを下りてすぐのキャンプ場に泊まって、土砂降りで。
CS:イヤだったことは?
風虎:イヤで旅したわけじゃない。楽しいから自分で旅したいと言った。
CS:食べ物は何がおいしかった?
風虎:ラーメンは普通にうまかった。北海道でセイコーマートでしか売っていないガラナの炭酸とか牛乳とか、牛乳のアイスクリームとか、そういうのが良かった。でも、もうちょっと食べたことがないものを食べたかった。
CS:応援してくれた人から何をもらった?
風虎:食べ物も結構あったけど、とにかく飲み物と、一番多かったのはお金かな?(ここでお父さんは「エエ〜?」)
CS:今回の旅でもらったおこづかいの最高額は?
風虎:福岡で、8人家族のお母さんから1万円もらった。
CS:学校に戻ったら友達に何を伝える?
風虎:一番言いたいのは日本は広いんだよ、ということ。
風虎が行っているのはインターナショナルスクールだから、地球のことも日本のこともアメリカのことも学ぶ。地図を見ると、みんな日本って小ちゃいねと言う。風虎もそう思っていた。九州に入ってから、日本はでっかいなぁと、十分広いんだなぁと思って走った。旅に出るときはナメない方がいいなと思った。
お父さんの富樫克美さんは「長かったね。おそらく死ぬまでに、1カ月と2週間、こんなに長く24時間、子供といることってもうないと思う。その時間を作れたのはよかったかな。いろんな人との出会い、人とのふれあいが今回の旅でできればいいなと思っていた。一つのことをやり切る、それができればいいなと。一日一日、楽しく走れればいいなと思って走っていました。今度は、60歳を過ぎてから原付で世界一周をしたいと思っています」と感想を話してくれた。