東京発! サイクリング コース1 つくば霞ヶ浦りんりんロード[筑波エリア]
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都心から放射状に街が広がる関東平野は、世界最大の人口を誇る大都市圏だ。ここで爽快なサイクリングを楽しむには、クルマが入ってこない(もしくは少ない)自転車道を選ぶのがベター。幸いにも数多くの自転車道が整備されている。しかし、自転車道・サイクリングロードの定義はあいまいで、実態は千差万別だ。クルマも通る一般道が指定されることもあれば、河川敷の歩道が充てられることもある。距離の長短もさまざまで、一つながりの道に思えても、所轄する自治体によって名称が異なることも珍しくない。
そうしたさまざまな自転車道の中でも、走りやすさと休憩所など施設の整備状況が全国的にもトップクラスにすばらしいのが、茨城県の中部を南北に貫く「つくば霞ヶ浦りんりんロード」だ。特に筑波エリアに延びる約43kmの区間は、旧筑波鉄道の線路跡を活用しており、一般の車道とほぼ完全に分離され、ほとんどの区間でクルマを気にすることなく走ることができる。しかも平坦で坂は皆無。自転車で走ることの爽快さと達成感を、誰もが安心して体験できるのが魅力だ。そんな理想的な自転車道を、声優として活躍する東城咲耶子さんと一緒に紹介しよう。
東城咲耶子(とうじょうさやこ)
愛知県豊橋市出身。スタイルキューブ所属。アニメ、ゲームの声優として活躍中。サイクリングがテーマのアニメ「ろんぐらいだぁす!」に出演。各種サイクリングイベントでゲストライダーとしても活躍する正真正銘のサイクリスト。
コース情報:筑波山をお供に走る癒し系サイクリングロード
走行距離 約43km
岩瀬駅→(約50分・約10km)→真壁→(約60分・約11km)→筑波駅跡→(約40分・約8km)→小田城趾→(約70分・約13km)→土浦駅
鉄道跡らしく、地形が穏やかな平野をほとんどまっすぐに進んでいく。華やかな観光地はないが、風情ある城下町や素朴な田畑に癒されるコース。
どこまでも走りやすい鉄道跡に延びる道
筑波鉄道は大正から昭和の終わりにかけて、土浦駅と岩瀬駅を結んでいたローカル線だ。常磐線を補完する路線として、筑波山へ向かう観光客でにぎわう時代もあったという。廃線後、レールや運行施設を取り払った跡地は県道となり、自転車道として整備が進められた。これが「つくばりんりんロード」である。近年は霞ヶ浦自転車道との連絡が図られ、「つくば霞ヶ浦りんりんロード」と総称される。2019年には国土交通省が推進するナショナルサイクルルートに指定され、県内外から注目を集めている。
線路が一つだけ(単線)のローカル線は、一般の車道とするには跡地が狭く、すでに立派な車道が並行して存在することも多いため(だから廃線になる)、自転車道として再生されることが全国的に珍しくない。岩瀬駅から走り出すと、道は緩やかなカーブを描きながら筑波山麓の平野へ延びていく。線路は急カーブや坂を避けて敷かれ、特に筑波鉄道は線形がよく、自転車道になってからも「鉄道らしさ」が感じられる。
岩瀬駅から走り出すと、周辺には目立つ商店やコンビニがなく(国道50号沿いに出ればある)、都心から1時間半(常磐線内は特急を利用)の近郊とは思えないほど緑豊かで広い農村が広がる。一般道との交差点はあるものの、自転車道にクルマが入ってくることはないので、どこまでも静かだ。進んでいくと、行く先に見える筑波山が次第に大きくなり、駅のホームを活かした休憩所が点々と現れる。ほどなくして、戦国時代に拓かれた城下町、真壁に到着する。沿道で一番の見どころが詰まった街なので、思うままに見て回ろう。
真壁休憩所で自転車道からいったん離れ、西側の街中へ進んでいこう。すぐに古い街並みが現れる。伝統的建造物群保存地区には江戸時代末期から昭和前期の建物が数多く並び、目を奪われる。自転車を押し歩きながら、のんびり散策したい。まだ10kmしか進んでないが、真壁にはおいしい食事処も多いので、早めの昼食をいただくのもおすすめ。
筑波山の麓を走って土浦までストレスフリー
真壁を後にすると、筑波山の裾野が自転車道にグッと近くなり、ピークが二つあるM字型の山頂を間近に望むことができる。山が近づいても、自転車道はずっと平坦なので体力を気にせず走り続けることができる。上りが好きな健脚サイクリストは、自転車道を東へ逸れて筑波山に向かい、不動峠や風返し峠といった関東を代表するヒルクライムに挑むのもいいだろう。
つくばりんりんロードは、ロードバイクなど速度を出しやすい競技用の自転車で快走するよりも、クロスバイクや小径車でのんびり走るのが似合う自転車道だ。その証拠と言わんばかりに、あえて道筋を蛇行させたり、上下にうねるような緩いハンプを設けた区間もあり、その遊び心に思わず笑顔がこぼれるだろう。桜並木が続く区間もあり、春の見事さは筆舌に尽くしがたい。
真壁より南の大部分は、田畑が広がるシンプルな光景の中に淡々と道が続くので、集中して走ればあっという間に土浦へ着いてしまう。見どころには乏しいが、走った距離が大きな達成感を与えてくれ、サイクリストとしての自信につながるはずだ。
使用アイテム:deuter RACE EXP AIR
自転車用のバックパックで快適サイクリング
deuter RACE EXP AIR
価格:1万3200円
問:イワタニ・プリムス株式会社
ドイター公式インスタ
遠出サイクリングの荷物スペースとして、真っ先に思いつくのがバックパック。そして、自転車用のバックパックとして多くのサイクリストに選ばれているブランドが「ドイター」である。
求める容量や機能に応じて豊富なバックパックをそろえているドイターだが、ここで紹介するレース EXPエアは、ふだん使いから複数日程のツーリングまで対応する多用途モデル。通気性に優れた背面パッド・パネルを備え、夏場でも熱気がこもりにくく、発汗を抑えてくれるのが最大の特徴だ。基本容量は日帰りサイクリングに必要なアイテムの収納に十分な14L。側面のファスナーを開けば容量を3L増やすことができ、お土産も余裕で収まるだろう。
今回ピックアップした魅力いっぱいのコースだけでなく、他にもたくさんのコースを紹介しているサイクルスポーツ特別編集「東京発! サイクリング」は、都民や近県にお住まいで、自転車通勤や休日ライドによってサイクリングに関心が高まっている方へ贈るコースガイドです。都心から自走圏内、もしくは輪行で1時間〜2時間ほどでアクセスできる関東近郊での、超おすすめなサイクリングコースを紹介します。巻頭では、関東を代表する5つの自転車道を徹底リポート。輪行の方法もわかりやすく解説します。日帰りから一泊二日で楽しめる、自転車をとおした「大人の遠足」を提案します。