東京発! サイクリング コース12 伊豆・沼津で自転車キャンプ×釣り
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自転車で荷物を運ぶには、自らが背負う、キャリアに乗せる、バッグを吊るすなどの方法が定番だ。それによってさまざまな趣味をサイクリングを軸に楽しむことができるようになる。荷物が積めるかどうかは、ふだん使いの便利さだけでなく、旅の可能性を大きく左右する。
自転車にはもう一つの荷物運搬方法がある。「牽引」だ。宅配業者などが用いるリヤカーが代表例だろう。しかし、搭載力と引き換えに、スポーツ自転車らしい機動力は薄れてしまう。そんな常識を打破してくれるアイテムが、「iruka」という折りたたみ自転車のオプションとして登場した「iruCart」だ。カート兼用のトレーラーであり、自重4kgと軽量だ。しかもワンタッチで着脱できる。そこに何を積むかは遊び手のアイデア次第。ここでは、キャンプと釣りに欠かせないクーラーボックスを積んだ小旅行を紹介しよう。
コース情報
走行距離 約58km
三島駅→(約50分・約10km)→沼津港→(60分・約13km)→内浦→(約20分・約4km)→木負→(約40分・約11km)→大瀬テント村→(約100分・約20km)→伊豆長岡駅
伊豆の入り口内浦を走る
三島駅から沼津港を経て、伊豆の入口といえるエリアを走るのが今回のコースだ。プランニングのポイントは、ほとんど平坦で坂がないこと。軽量なトレーラーを高性能な折りたたみ自転車で引いてるとはいえ、重量10kgに及ぶ遊び道具を満載しているので、坂は避けたい。伊豆を訪れるなら、絶景が広がる西伊豆スカイラインにも心がひかれるが、今回はキャンプと釣りを楽しむことを優先し、海沿いで平坦な県道17号を進む。こちらも絶景に恵まれたお気に入りのコースだ。目的と装備に応じて、コースプランを考えるのも旅の醍醐味だろう。
一泊する大瀬テント村までの距離は約38km。時間はたっぷりある。沼津港までひとっ走りしたら、10時から営業している海鮮食事処で早めの昼食をいただく。そして沼津御用邸記念公園の細道を縫いながら海岸線に出る。ここからは小さな漁港が次々と現れる。狩野川放水路の交差点から県道17号に入ると、交通量が少なくなって静かだ。路肩には自転車ナビマークが描かれており、安心して走ることができる。
コンビニがある三津で軽く補給を済ませ、キャンプに備えた最低限の食料も調達しておく。メインディッシュは、これから釣る魚である。まずは木負(きしょう)の堤防で竿を振ってみる。内浦湾に赤い灯台が映える人気の釣りスポットだ。
イカが釣れればいいのだが、時期と腕の双方で自信がないので(これまで沼津エリアで20回くらいイカに挑んだが釣果ゼロ)、サバやアジを狙ってルアーを放り込む。群れが回遊してくれば、短時間でぽんぽん釣れる……のだが、タイミングが悪いのかルアー選びが悪いのか、一向に釣れない。とりあえず木負の堤防には別れを告げ、キャンプ場がある大瀬崎へ向かう。その手前の江梨という集落にも実績ある堤防があるので、まだチャンスはある。いわゆる“ラン&ガン”だ。釣り場所を変えることで群れとの邂逅(かいこう)を狙うわけだ。
しかし江梨でも釣れず、いったん釣りは諦め、16時過ぎには大瀬テント村に入った。今回は荷物スペースに余裕があるので、ハンモック式のテントを持参した。適当な間隔の立ち木が必要だが、ポールなしで設営でき、寝心地がよくてイスも兼ねるのが魅力だ。
夕暮れ時は、釣れる時間帯といわれる。設営を済ませてから、再び江梨の堤防へ向かう。これで釣れなければ夕食が貧相になってしまう。しかし、一匹も釣れなかった。夜釣りなどしているとキャンプする意味が薄れてしまうので、ほどほどで諦めてテント村に戻った。新鮮な刺身やアツアツの唐揚げにありつくことはできなかったが、クーラーボックスのおかげでいつまでも冷たいビールに癒されたのだった。
翌朝も快晴に恵まれた。朝食は袋麺で簡単に済ませ、キャンプに使ったあれこれをしまっていく。こうした準備と撤収が面倒という声も聞くが、ソロキャンプに用いる道具はどれもシンプルなので、大した手間はかからない。出番がなかった唐揚げ粉や食用油を持ち帰るのはやや虚しいが致し方ない。
昨日と同じ道を戻る。進行方向が変われば景色も新鮮だ。irukaの美しいスタイルと軽快感を楽しみながら、のんびり進んでいく。せっかくなので、時折は竿も振ってみる。すると何匹か釣れたが、どれも小物だったし、家まで持ち帰るのもおっくうなのでリリースした。昨日釣れなかったことが返す返すも悔しいがしかたない。また来ればいい。
往路と同じように沼津経由で三島へ向かってもよかったが、三津から小さな峠を越えて伊豆長岡駅に出る。上りにさしかかると、トレーラーの存在感がグッと増すが、越えてしまえば駅はすぐそこ。さっとirukaを輪行袋に収納し、三島行きの可愛らしい電車に乗り込んだ。
使用バイク:iruka C
「モバイル変身自転車」が旅の可能性を広げる
iruka C
価格:19万7780円
問:イルカ
2019年にデビューし、そのスタイルと確かな走りが大きな注目を集めた「iruka」。優美にカーブしたメインフレームに大きなスリットが設けられ、そこに後輪が収まるという独創的な折りたたみ構造が特徴だ。これによって、走行時に欠かせないフレームの剛性感と、スリムな折りたたみサイズを両立している。そのirukaに待望のセカンドバージョン「C」が登場する。従来の内装8段変速ギアを5段にして価格を抑えつつ、より楽な姿勢が取れるハンドルとお尻に優しいサドルをセット。さらに18×1.5インチとやや太いタイヤを装備し、モデル名どおり“Comfort” な走りが楽しめる。
今回ピックアップした魅力いっぱいのコースだけでなく、他にもたくさんのコースを紹介しているサイクルスポーツ特別編集「東京発! サイクリング」は、都民や近県にお住まいで、自転車通勤や休日ライドによってサイクリングに関心が高まっている方へ贈るコースガイドです。都心から自走圏内、もしくは輪行で1時間〜2時間ほどでアクセスできる関東近郊での、超おすすめなサイクリングコースを紹介します。巻頭では、関東を代表する5つの自転車道を徹底リポート。輪行の方法もわかりやすく解説します。日帰りから一泊二日で楽しめる、自転車をとおした「大人の遠足」を提案します。