東京発!1泊2日で巡る大人のビワイチ 一日目
目次
関東のサイクリストも一度は走ってみたい「ビワイチ」。一周200kmは健脚サイクリストなら1日で走れるが、大人サイクリストなら1泊2日で楽しみたい。
ビワイチの苦い思い出
筆者の初ビワイチは4年前の2018年春だった。きっかけは自身が担当した「ニッポンのじてんしゃ旅 vol.4 滋賀・琵琶湖サイクリングガイド」を発刊したにもかかわらず、実はビワイチ未経験者だったからだ。そして自ら走ると言った途端、当時の滋賀県観光振興局・ビワイチ推進室のT田室長他、数名の方にアテンドしていただくというたいそうなイベントへと進展してしまったことが思い出される(汗)。
その日は早朝に守山市のピエリ守山という商業施設の駐車場に車を止め(※公式に無料開放されている)琵琶湖大橋以北の「北湖(ほっこ)」一周160kmにいどんだのだが、いざ走り出すと、滋賀県庁・自転車部のレーサーである某若手職員さんによる高速鬼引き接待サイクリングだったのだ。もちろん彼は私を日没までにゴールさせるというミッションが発令されているに違いないので、彼を責めることはできない。しかし、あまりにも早すぎる……。あっ、このビューティホーな景観の写真を撮りたい、でも言い出せない……。ひたすら彼の後輪を見ながら必死について行ったのが、私のほろ苦いビワイチデビューだった。そして若手レーサーのおかげで、何とかゴールできたものの、体はぼろぼろ、あしたのジョー状態だった。そう、まっ白に燃えつきたのだった……(涙)。
4/26発売「ビワイチ公式ガイドブック びわ湖一周・滋賀じてんしゃ旅」
「なんやいきなり宣伝かいっ!」とは思わないでいただきたい。今回こちら(アマゾン)の編集を担当したのだが、150ページを超える原稿をチェックするうちに何度も取材で訪れたのはずのビワイチなのに、まったく知らない情報がたくさん出てくるやないか……。それもそのはず、この原稿はびわ湖や滋賀県各地をふだんから走っている地元のサイクリスト十数人が、自転車で走り回り、観て、食べて、集めた情報だからだ。レイアウトされた校正紙を何度も読んでいくうちにだんだんビワイチしたくなってきた。どこかの週末で一人旅でもするかと企んでいたところ、以前から親交のあった「ホテル琵琶レイクオーツカ(公式サイト)」の山極(やまぎわ)支配人から「海津大崎の桜も満開になりそうなんで、一度泊まりに来ませんか?」とお誘いいただいた。ホテルの場所を調べてみると新幹線の米原駅から約80km地点。ほぼビワイチの中間地点だ。これはもう背中を押されてるようなものやないか! と心に決め、締切と締切の合間の土日を利用して急きょ行くことにしたのだった。
人生初の一人旅でいきなりのトラブルにとまどうアラフィフおやじ
土曜の6:21東京発のひかり新幹線に乗れば、8:42に米原(まいばら)に到着する。米原駅では私以外にも4、5名のサイクリストが輪行で来ていた。一人旅やのに何だかほっとした気分になる。
10分ほどで愛車TCRアドバンスド・プロ0ディスクを組み立て、最寄りコンビニでドリンクを購入して9:00にスタートした。スタートして突如、胸の鼓動が高まる。実は生まれて54年間、一人旅をするのは初めてだと気づく(汗)。しかも今日は「旧街道じてんしゃ旅」の相棒もいない。いきなり不安を感じ始めたその直後、変速しようとしたら、何とDi2のリヤディレーラーが変速できないではないか……。何度も試してみたが、動かない。幸い、フロントは変速できたので「ままっ、ビワイチはフラットやし、何とかなるか! これも一人旅あるあるやな」と独りごちて、とりあえず進むことにした。
リヤはトップギヤのまま、20km走って最初の休憩ポイント「道の駅湖北みずどりステーション」に到着した。今日はトップギヤのまま走るしかないかと思いつつ、滋賀在住の「旧街道じてんしゃ旅」の相棒へ電話してみることにした。土曜の早朝にもかかわらず、面倒見のいい井上さん(ホンマ、スンマセン……)。電話口で「リヤディレーラーの配線を一度抜いてください」とか、いくつかアドバイスしてもらううち、ハンドルのジャンクションボタンを5秒以上長押しすることでみごとに復活したのだった。どうやら輪行途中にリヤディレーラーがセーフティーモードになったようだ。Di2デビューして間もない筆者にとって、必要なひとは嫁はんより、相棒やったようだ……笑
日本の桜名所100選、「海津大崎の桜」は散っていたが、それ以上の重要文化的景観に感動
道の駅湖北みずどりステーションからリヤの変速を手に入れたおかげで強烈な向かい風にもかかわらず、快適にびわ湖を北上することができた。事前にビワイチ公式ガイドブックでチェックしておいた西野水道へ寄り道。ここはビワイチのブルーラインから外れたところにあるので、1日で完走を目指すひとは見向きもしない隠れた名所。1泊2日ビワイチだから余裕をもってチェックできるのがうれしい。そこから進みビワイチ唯一の上り区間である「賤ヶ岳」もリヤディレーラーが動き出した筆者にとっては楽勝で上ることができた。
時計を見ると11時半。そろそろ、昼メシタイム。これまたビワイチ公式ガイドブックでチェックしておいた奥琵琶湖の名店「福島屋」へ向かう。こちらもビワイチのブルーラインから外れたとこにあるがコスパ最高の日替わり定食がいただけるので、おすすめしたい。
今回の旅の目的の一つにビワイチ公式ガイドブックでルートを調査、取材、執筆いただいた方に直接お会いしてお礼をするというミッションがある。そこで先ほどの「福島屋」の近くでライダースハウスを営む「ライダーハウス日本何周」の代表である乾さんを突撃訪問した。突然の訪問に乾さんは「目が点……」な感じであったが、「ここまで来たらガイドブックでも紹介している、国選定重要文化的景観『菅浦の湖岸集落』があるんで、ビワイチルートから外れて、遠回りになるんやけど、見たことのない景色に出会えますよ!」と言われ、一瞬ひるむも「そらあ編集魂で行きますわ~!」と予定変更して、往復約20kmの寄り道へ。これも宿を取ってるからこそできるビワイチだ。計画はあってないようなもの。旅はやはりこうでないと……。
そして、乾さんオススメの集落を目にした瞬間、言葉を失った。昭和のまま時間が止まっている感じだ。しかし、めちゃくちゃ生活感がある。つまり実際に住人がいるのだ。こんなところと言っては大変失礼なのだが、自分がここに住んでたら、どういう生活をするのだろうか?と考えてしまうような集落だが、おそらく住んでらっしゃる方は不便など感じないんだろう。これからも絶対に残すべき集落だと確信した。乾さん、ありがとう! せやけど、復路の向かい風はエグかったッス……涙。
1泊2日の大人のビワイチの真髄、ここにあり!
ビワイチルートから「菅浦の湖岸集落」へ寄り道し、再びビワイチルートに戻る。時間と強烈な向かい風によって貧脚オヤジのエナジーが消費されたものの、それ以上のものを見ることができてよかったやんか! と自分に言い聞かせ、本日の宿泊先へ向かう。海津大崎の桜が散っていたなんて、もうどうでもいいほど感動してしまった筆者だが、海津大崎に入った瞬間、数日前はホンマきれいやったんやろなと思いながら「タラレバを考えてもしゃあない。宿に入って温泉浸かって、おいしい地メシとハイボールが待ってるやないか!」と自分に言い聞かせ、約35km先にある近江舞子のお宿へと向かった。
マキノ、今津を通過し、高島あたりから、この日最強の向かい風と戦うこととなった。心がポキっと音を立てておれそうになったが近江高島で愛知県から来た20代の若者2人に引っ張ってもらい(写真撮り忘れ)、白鬚神社を通過し、本日のゴール地点、ビワイチサイクリングルート上に立地するホテル琵琶レイクオーツカへ到着したのは16:20だった。
ホテル琵琶レイクオーツカは、「滋賀県サイクリストにやさしい宿」(びわ湖一周サイクリングのページ)にも認定されている、サイクリストウエルカムなお宿だ。ちなみに認定の必須条件は以下の通り。
①自転車の客室への持込みまたは屋内の安全な場所での保管
②チェックイン前、チェックアウト後の手荷物の一時預かり
③チェックイン前、チェックアウト後の駐車場所の提供
④宅配便(自転車を含む)の受取・発送が可能
⑤スポーツタイプの自転車に対応した空気入れの貸出
⑥修理工具の貸出
⑦観光情報の提供
チェックイン後、早速温泉へとダイブ。小一時間ゆったりくつろいだ後、ハイボールを飲みながら部屋に常設されるマッサージチェアで疲れた体をメンテナンス。まさにサイクリストにやさしい宿だ。そして、待ちに待った夕食タイム。ご自身もサイクリストの山極支配人と念願の祝杯を交わした。食事も魚介、野菜、そして近江牛など、地元食材をふんだんに使ったオリジナル会席料理に舌鼓を打ちながら、ハイボールを流し込み、自転車談義に花を咲かせ、気づいたときには部屋のマッサージチェアで爆睡していた……。