全日本ロード女子チャンピオン・植竹海貴の強さに迫る〜私のトレーニング履歴書
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自転車レースで活躍する有名レーサーたちは一体どんなトレーニングをしているのか? 彼らの“トレーニング履歴書”に迫る特集をお届けしよう。今回は現全日本ロード女子チャンピオンの植竹海貴(うえたけ みき)選手だ。
スポーツ自転車専門店スタッフでありトップレーサーでもある
植竹海貴選手は東京都出身で現在も都内在住。2022年9月現在で26歳と、若きロードレーサーだ。普段は大手スポーツ自転車専門店「ワイズロード新宿本館」でスタッフとして勤務している。まさに“走れるショップスタッフ”。
中学校ではバスケ部(しかし途中でやめた)、高校では剣道部に所属。「もともと体を動かすのは好きでした」と言う植竹選手は、高校を卒業して専門学校に通い始めると通学のためにクロスバイクを購入。そこからその楽しさにはまり、サイクリングをするようになった。
就職後(何と前職は保育士だったそうだ)、ロードバイクが欲しくなり、ワイズロードで初めてのボーナスを使って購入。そこからショップライドへ参加するようになり、仲間に誘われてレースに出始める。めきめきと強くなり、ついに2021年の全日本選手権女子ロードレースであの金子広美選手との一騎打ちをスプリントで制し、全日本チャンプとなったのだ。ロードバイクを始めてから約6年での快挙だ。
ちなみに、自転車愛が高じて保育士からスポーツ自転車専門店スタッフへ転職したという経緯がある。
植竹選手の身体的スペック〜バランス型で柔軟性も高い
「ロードレース以外は出場していないです」という植竹選手だが、ロードレーサーらしく均整のとれた体型で、若い世代だけあって手脚も長い。また、女性サイクリストとしては身長は高い方だろう。
「上りに突出しているでもなく、生粋のスプリンターでもない、そんな感じです」と謙遜して自らの脚質について言うが、要するにオールラウンダーだ。
●身長:169cm
●体重:56〜57kg
●FTP:非公開
●脚質:オールラウンダー
植竹選手の走り〜太い体感が作り出すダイナミックなフォーム
植竹選手の走りは、はたから見ていて非常に迫力がある。特に目を引くのは体感の太さ。ヨーロッパの速い選手に見られるような雰囲気だ。
そして、前傾はかなり深い。骨盤〜腰にかけてしっかりと前傾するうえ、さらに背中の中心から深く曲がっている。「平地で速度を上げて巡航するときはブラケットを持って肘を曲げ、同じ姿勢をとるのに疲れてきたら下ハンドルを持ちます」と植竹選手。
上り坂でのダンシングも特徴的。「上り坂はブラケットを持って基本はシッティングで走ります。ダンシングはアタックをかけたり体をほぐす意味で取り入れ、頻繁には使いません」と言うが、結構バイクを左右に大きく振っていくタイプだ。しかし、まったく体の中心はぶれず、ビシッと止まっている。
植竹選手の機材選び〜剛性・エアロ・ポジション出しのバランスをとる
自転車は、ツール・ド・フランスでの優勝実績のあるコルナゴ・V3-RSを使用。「ワイズロードではスタッフ向け試乗会を行っているのですが、そのときいろいろなブランドの自転車を試した中で、剛性感が気に入り乗りやすかったので、これにしました」と語る。
植竹選手のトレーニング〜インドアも組み合わせたメリハリある内容
さあ、気になる彼女のトレーニング内容についてだ。
「全日本選手権で優勝したときとはまたトレーニング内容が変わってきています。1週間の流れは、次のとおりです」。
●月曜(勤務日):コーチによるパーソナルトレーニング。筋トレを中心に行う。夜にはZwiftでワイズロード主催のグループライドを30分〜1時間。今、自分が弱いと感じている点を強化するメニューを日によって選ぶ
●火曜(勤務日):朝に実走。練習仲間と周回コースを7周し、ぎりぎりちぎれないよう維持する
●水曜(勤務日):休息日
●木曜(休日):100km〜150kmのロングライド。平地を中強度で淡々と走り、2〜3つ峠を組み入れ、上り区間は強度を上げて走る
●金曜(休日):休息日とするか、体力的に余裕があれば遊びに出かけたりする。木曜が雨ならこの日にロングライドを行う
●土曜(勤務日):休息日
●日曜(休日):100km〜130kmのロングライド
きちんと休息日を設けており、かつインドアトレーニングで弱点を強化するメニューを行うなど、メリハリのある内容になっていることが伺える。
強豪選手はひたすらに長い距離を走っているのではないか、というイメージがあるが、取材してみると決してそうではないことが多い。まさに彼女もそのとおりだった。
植竹選手のコンディショニング法〜バランスの良い食事とサプリの活用
トレーニングと合わせて重要なコンディショニングについて、どんなことに取り組んでいるのか。
「ものすごくシビアに気を遣っているわけではないですが、まずは主食・主菜・副菜とバランスの良い食事を心がけています。
また、それと合わせてスポーツサプリメントも摂るようにしています。トレーニングから帰ってきたら、プロテインにバナナと牛乳を入れてスムージーにして飲みます。とてもおいしいですよ。
そして、2021年にアミノバイタル®全日本最速店長選手権 in Zwiftへ出場したのをきっかけに、アミノバイタルシリーズを継続して飲むようにしています。私の場合は練習後に飲むことが多いです」。
植竹選手も使うアミノバイタルシリーズのおすすめアイテムをピックアップ
国内ビッグレースでの勝利を目指す
今シーズンはまだ重要なレースが残っているが、目指す目標は?
「まずは全日本選手権2連覇を達成したいです。そして、ジャパンカップ オープンレース女子と、ツール・ド・おきなわ市民レディースでの優勝です。ジャパンカップは初参加、ツール・ド・おきなわはまだ勝ったことがないので、全て出るからには優勝したいです。
ライバルはやはり金子広美選手ですね。今年はコンディションが良く体が仕上がっているようなので、手強い相手です。また、大学生でも強い選手が多くなってきています」。
若き女性レーサーの挑戦は、まだ始まったばかりだ。