第9回自転車利用環境向上会議inさいたま

目次

コロナ禍で社会が変化し続けるなか、安全で持続可能なモビリティライフと自転車についての話し合いが2日間に渡り、自転車のまち さいたまで開催された。

開催日時●2022年11月4日、5日
主催:さいたま市
協力:自転車利用環境工場会議全国委員会
後援:自転車活用推進本部/国土交通省/警察庁/埼玉県/埼玉県警察/(公社)土木学会/日本交通学会/自転車活用推進議員連盟/自転車を活用したまちづくりを推進する全国市町村長の会

 

自転車利用環境向上会議inさいたま

 

コンセプトは“安全で持続可能なモビリティライフと自転車”

「自転車利用環境向上会議」(Japan Cycling Congress:JCC)は、自転車を通じて人々の「幸せ」と「生活の質の向上」を目指し、全国各地の自転車関連の取り組みを広く発信・共有すると共に、具体的な自転車まちづくりにつなげていくための全国会議のことで、3年ぶり9回目の開催となる。

 

清水勇人さいたま市長

清水勇人さいたま市長

 

<清水勇人さいたま市長の開会挨拶>
新型コロナウィルス感染症の影響が長期化していることによる「新しい生活様式」への変化、また「持続可能な開発目標」、「カーボンニュートラル」が国際的な共通目標となっていることなど、社会情勢の変化を踏まえ、コンセプトを「安全で持続可能なモビリティライフと
自転車」~Beyond the COVID19 新時代の自転車ライフ」としました。
2日間を通じて全国の自転車まちづくりがこの会議を契機にさらなる発展を遂げることを期待したい。

 

自転車活用推進本部事務局次長の金籠史彦さん

自転車活用推進本部事務局次長の金籠史彦さん

 

1日目は自転車活用推進本部事務局次長の金籠史彦さんによる「自転車活用推進計画」についての基調講演。自転車活用推進法の概要、活用推進計画に対して4つの目標と22の施策についての説明があった。

続いて、警視庁 交通局 交通企画課 課長補佐の宮城卓志さんより、交通死亡事故の発生状況、自転車事故の発生状況、自転車の安全利用のための取り組みについての基調講演が細部にわたるデータをもとに行われた。

 

驚きのパリとオランダの自転車活用推進事例

パリの自転車レーンのスライド

パリの1000kmに及ぶサイクリングに適した自転車レーン

 

パネルディカッションの第1部は「コロナ禍における海外の自転車活用推進事例」。

<パリの自転車革命>
オックスフォード大学院のマリオン・ラガディックさんがリモートで事例報告をした。パリが車中心の都市交通から、自転車等の人を優先とした都市交通に変貌を遂げたことについて、背景、歴史的経緯、具体的な施策、批判に対する市長の決意等が紹介されたが、日本では考えもつかない事例で、ただただ驚くばかりだった。
中でも河川敷の道路の車の利用を禁止して、人を優先した空間に変えたことや、通勤、通学用に高速自転車レーンを恒久化したり、さらにはサイクリングに適したレーンは何と1000km。これらの施策(改革)は2007年のシェアサイクル導入から始まり、コロナ禍で一気に加速したそうだ。
パリの道を車から自転車に引き渡すという、まさに自転車革命だった。

 

オランダの過去と現在

オランダの過去と現在

 

<自転車政策を進める際の世論形成の手法について>
続いてオランダが誇る自転車活用の最先端の知識と経験を有し、オランダ政府や行政の専門家と連携して、自転車活用の推進を国内外で行う財団法人DCE代表理事のルーカス・ハームズさんより、オランダの自転車文化の形成プロセスや自転車施策を推進する際に重要な考え方などの事例報告があった。

オランダは昔からサイクリング王国だったわけではなく、自動車による環境破壊、悲惨な交通事故などのネガテイブな経験を経て、国の施策で1970年代から1980年後半にかけて、自転車中心の道へと変貌を遂げたそうだ。
日本でもそうだが、事故の発生場所は断トツで交差点で起こるので、交差点の設計が最も重要だと学んだ。

 

自転車利用環境向上会議inさいたま

 

パネルディカッション第2部は「これから日本が取り組むべき自転車活用推進施策とは」というテーマで議論がなされた。パネリストのピーター・テルプストラさん(オランダ王国大使館 経済部 公使参事官)、金籠史彦さん、さいたま市の清水勇人市長、小林成基さん(JCC全国委員会副会長、自転車活用推進研究会理事長)、片山右京さん(一般社団法人ジャパンサイクルリーグチェアマン)の5名がそれぞれの取り組み事業例と課題、展望を報告した。コーディネーターはモビリティジャーナリストの楠田悦子さんが務めた。

2日目は自転車利用環境向上のため、注目すべき6つのテーマ、①自転車通行環境整備、②シェアサイクル事業のあり方、③サイクルツーリズム、④自ら楽しく学ぶ自転車安全利用、⑤交通ネットワークの一員としての自転車、⑥「次、何しよう?」のヒント 自転車活用推進の事例とツボ、これらを題材にした分科会が開催された。

今回の参加者はリアル&オンライン合わせて352名。次回第10回は『宮城県仙台市・名取市』で開催予定。