人気YouTuberのけんたさんと行く、 福島県いわき市一周「いわいち」ライド
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東北の玄関口、福島県のいわき市。仙台に次ぐ東北第2の都市であり、面積がとにかく広い。市の東側は太平洋に面しており、2021年には海岸沿いを通るサイクリングロード「いわき七浜海道」が全線開通した。そんないわき市を堪能できるいわき市一周ライド「いわいち」を、人気YouTuberのけんたさんが走るということで、サイスポ編集部も同行した!
晴れ男・けんたさん、いわいちへ出発!
2月末の平日、早朝7時30分。
福島県の太平洋に面した浜通りは、夏は比較的涼しく、冬でも雪が少ないため、県内でも過ごしやすいというが、さすがにまだ寒い。
「おはようございます!」
朝一番から元気よく登場したのは、約24万人のチャンネル登録者数を誇る大人気自転車YouTuberのけんたさん。愛車のスペシャライズド・Sワークス エートスを傍に、いつもYouTubeで見せる人懐っこい笑顔でこう切り出した。
「実は最近気づいたことがあるんです。僕、晴れ男なんじゃないかって、確信に近いものを感じてます。見てくださいよ、この青空!」
たしかに、雲ひとつない絶好のサイクリング日和だ。天気予報でも日中にかけて、気温はグングン上がるという。なんでもけんたさん、ライドのロケをするときは、たいてい晴れるという。あまりにも晴れが続くため、さすがに「晴れ男」を自覚したのだとか。
そんな晴れ男のけんたさんがこの日走るのは、福島県の玄関口であるいわき市の一周ライド、通称「いわいち」である。広大な面積を持ついわき市は、太平洋沿いに60kmの海岸線を持つ一方、内陸に入ればゆるやかな阿武隈高地が連なっており、海と山のどちらも楽しめる。
この広さと地形を生かした「いわいち」の距離は、約142kmある。1つの市で140km超えのルートを引ける自治体なんてそうはない。獲得標高も約1,500mと、海沿いの平坦区間30kmを考えれば走りごたえのある登りもある。
「いわいち」のコースをざっと紹介すると、スタートはいわき市が誇るサッカーチーム「いわきFC」の本拠地が置かれる、市の南にある「IWAKI FC PARK」を出発し海沿いの街・小名浜を目指す。そこから海沿いに自転車用に整備され、2021年3月に全線開通した「いわき七浜海道」を通って約30km北の四倉まで進む。ここで大きく西北へルートをとり、夏井川沿いに内陸へ進み、阿武隈高地の長い登り区間に入る。ここからゆるやかな登りがおよそ50km続く。その途中、ルートは大きく南に下がり、途中から長い下りがはじまる。古殿町との境界を通り、再び海へと続く道へと入り、「IWAKI FC PARK」へゴールする。
サイクリストへのやさしさ溢れる街
「IWAKI FC PARK」でライドの準備が整うと、まずはけんたさんのYouTube収録がはじまる。我々サイスポ取材チームも、邪魔にならないよう横で見ていたが、実に見事な収録である。喋りには澱みがなく、いわいちの魅力をテンポ良く紹介していく。その流れで、今回のライドのガイド役としてけんたさんと一緒に走る網野さんも紹介する。この網野さんこそ、いわいちのルートを引いたご本人で、いわき市の魅力ポイントを熟知した頼りになる存在だ。
朝一発目の収録は、けんたさんの元気いっぱいな「まずは七浜海道! それー!」で一区切り。いよいよ140kmのいわいちライドがはじまった!
朝7時40分、「IWAKI FC PARK」を出発して、しばらく市街地を走る。さすがに東北では仙台に次ぐ人口のいわき市だけあって、平日朝の自動車ラッシュがある。それでも、自転車で走りづらさはまったく感じない。30分ほどで小名浜の海岸沿いの道へ出た。この辺りは、工業地帯となっていて、道幅がとても広く気持ちがいい。“工場萌え”な人にもうれしい区間だ。
最初の立ち寄りポイントは、スタートから約16km地点にある「三崎公園」。小名浜港の東側にある高台の公園で、園内には海に突き出した展望台「潮見台」や、太平洋からいわき市までの大パノラマを一望できる「マリンタワー」がある。何より芝生が丘の上をずっと続いていて、とても気持ちがいい。けんたさんも公園までの登りを軽〜くクリアし、さっそく「潮見台」へ。
「なんか、鳥かごに入ったみたいな感じがしますね」と収録も順調にこなし、次なる目的地を目指すために、七浜海道へ戻り、朝の光にきらきら光る太平洋を真横に見ながら北上していく。
スタートから約2時間で、立ち寄りポイントの「いわき新舞子ハイツ」に到着。ここは、いわき七浜海道のハブ拠点となっていて、宿泊、天然温泉への入浴、食事ができるのだが、何が素晴らしいかというと、どこまでもサイクリストに優しいのである。入り口横には、レンタルサイクルが充実したサイクルステーションがある。ここはサイクリストおもてなし店舗としていわき市が認定する「サイクリストっぷ認定店」となっており、自転車で訪れた人はトイレやWiFiも利用できる。実際に、ライドイベントやブルベのスタート/ゴールとしても利用されている。「サイクリストっぷ認定店」は市内に81カ所(2023年3月現在)ある。また、宿泊する際には部屋まで愛車を持ち込めるというから安心だ。
いわき新舞子ハイツの管理者である倉田厚さんが、施設について紹介してくれた。
「ここは市営旅館として40数年前に創業しました。七浜海道の整備も進んでいた2020年に、内装もリニューアルして新たにオープンしたのです。七浜海道は、走りやすくて、海の景色を見ながら走れる、ビギナーでも楽しめるルートです。この新舞子ハイツは、七浜海道を軸としたサイクルツーリズムの拠点として、親子連れから、しっかり走りたい上級者にもご利用いただいています」
倉田さんご自身も実はガチのロード乗りということから、自転車乗りの要望が施設運営にはしっかりと盛り込まれている。すかさずけんたさんにも、サインを求めるところも抜け目がない。お土産売り場の一口羊羹で補給をして、新舞子ハイツを後にする。
けんたさん、ハンガーノックに!?
今回のルートでは、七浜海道の終点となる久之浜までは行かず、手前の四倉から内陸へと入っていく。そのポイントとなるのが、スタートから40km地点にある「道の駅よつくら港」だ。
カメラをまわしながら、けんたさんが解説する。
「ここから海を離れて登り区間に入りますけど、この道の駅がほぼほぼ最後の補給ポイントだと思ってください。みなさん、補給必至ですよ!」
と話していたのだが、この日は道の駅の売店がお休み。けんたさん、補給どうするの!?
そんな心配をしながらも、先を目指す(この後も、ルート沿いにはコンビニがあった)。
しばらく長閑な農村地帯を走っていると、景色はどんどん山っぽくなり、時折夏井川の流れが見える。さすが自転車YouTuberとして活動しているだけあって、けんたさんの脚も快調。途中、夏井川渓谷に下りて撮影をしたりと、山ライドを堪能しているご様子だ。
今回、けんたさんを撮影していて気づいたことがある。けんたさん、走っている間、ほぼ笑顔なのである。キツい登りに差し掛かっても、口元は楽しそうに笑っている。あらためて、「この人、本当に自転車が大好きなんだな」と思うのであった。
走り出してから、かれこれ6時間が経過した13時30分、距離もそろそろ90kmを超えたあたりで、ようやくランチ休憩のお店「きのことマサ」に到着。
変わらず笑顔ながら、こうこぼすけんたさん。
「いやー、途中で完全に脚が止まりました。上りが長すぎて、軽くハンガーノックになっちゃいました。一度、腹がへっちゃうとスピード出ないですよね。あー、やっとご飯だ!」
と注文したのは、店名のついた「きのことマサセット」(1050円)。おそばと天丼を楽しめるボリュームのあるセットメニュー。
ランチ休憩のあと、最後の登りを終えると、ここからは長い下り区間にはいる。ガイド役の網野さんに付いて、高速の下りをこなすけんたさんだったが、後で聞くと、「網野くん、下りなのに踏みまくるから全然休めなかったよ!」とのことだった。
長い下りがようやく終わる場所にあった和菓子屋さん「芝崎菓子店」のどら焼きで、最後の小休止をしてゴールへ向かう。
16時15分、ゴールの「IWAKI FC PARK」へ戻ってきた。
けんたさんが、1日を振り返る。
「いやー、さすがに144km(けんたさんのサイコンの距離)は疲れましたね! いわいちはずばり、最高の練習コースじゃないでしょうか。七浜街道はすごく気持ちがいいコースなので、ビギナーの方やファンライドにもいいと思います。そこから山に入ると、信号もほとんどない登りが60kmですからね。そりゃ疲れますよ。でも、走りに集中したい人にはおすすめです!」
あらためて、いわき市についての印象も聞いてみた。
「海のイメージがありますよね。ハワイアンなイメージというか。でも、今回いわいちを走って感じたのは、それだけじゃないなってことです。山の景色は、走っていてすごく気持ちがいいですし、あと自転車乗りにとってうれしいのは路面がきれいなこと。いわいちだけじゃなくて、市内には走りやすいルートが10コースあるそうなので、ぜひ走ってみてください。都内から最も近い東北のいわき市。気候もよく、一年を通して自転車で遊べますよね」
いわいちを走り終えたけんたさんは、疲れた体を癒しに温泉へと消えていくのであった。
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