よってかれ、極上のうみとやま! 富山じてんしゃ旅 富山湾越しの立山連峰を望む絶景を目指す編
目次
富山に降り立った僕たちは、富山湾岸サイクリングコースを西へ。新湊大橋の架かる富山新港、湾越しの立山連峰が望める雨晴海岸、そして、新鮮な海鮮物が楽しめる氷見と、今回も楽しみてんこ盛り。ブルーラインをたどる富山じてんしゃ旅の最終回。
最高のサイクリングコース
ナショナルサイクルルートにも選ばれた富山湾岸サイクリングコースは、何がそんなに魅力的なのか。
一つはその走りやすさ。海沿いのほぼフラットな道を信号に邪魔されることもなく、走り続けられること。富山駅から北へ8kmほど走れば、富山湾まで出ることができる。コース上に一旦出てしまえば、東でも西でもどちらに向けて走っても充実した一日が楽しめるはずだ。
二つは富山の海の幸が、コース上の至るところで味わえること。サイクリングの旅先の楽しみといえば、その土地ならではの食! 行く先々にある漁港で狙いたいのは海鮮丼だ。
三つはこの独特な湾の形状から、3000m級の山々と海が同時に見られる絶景が待ち構えていること。このような景色が楽しめるのは、世界広しといえども3か所だけ。もちろん国内では、富山湾だけだ。
富山のじてんしゃ旅も今回で最後。昨年の春先は富山駅をスタートして、富山湾岸サイクリングコースを東の朝日町を目指したので、今回は西の氷見市を目指して走ることにした。「寒ブリ、もう食べられるかな」と花より団子のシマコ。「西には雨晴(あまはらし)海岸という、コース一番の景勝地があるらしいよ」と言ってもいまいちピンと来ていない感じだ。
富岩運河、神通川沿いを北上して、県道1号、国道415号を通って富山湾岸サイクリングコースに入る。自転車歩行者専用道は国道415号の一本内陸を通っているので、入り口を見落とさないように。しばらく海は望めないが田園の風景を見ながらのサイクリング。再び国道415号に出てから、新湊大橋へ向かう。
富山新港に架かる新湊大橋は、橋内部の歩道を自転車を押しながら渡ることはできるのだが、ここでお勧めしたいのはは県営渡船。約30分おきに、対岸まで無料の渡船が行き来している。自転車も積めるので、サイクリスト的にはとても便利。海風を受けながらの約10分程度の乗船時間だけれど、とても旅している気分に。対岸へ渡ると、新湊大橋と海王丸が映える海王丸パーク、そして、日本のベニスと言われる内川沿いの景観を楽しめる。
湾越しの立山連峰を見た!
海王丸パークから内川を経由したのち、庄川、小矢部川の2本の川を橋で渡ると、高岡市の伏木エリアに入る。伏木富山港の埠頭近くを抜け、国道415号のトンネルを抜けた先からはずっと海岸線の気持ちのいい道が始まる。その坂道を下った先が、富山湾岸サイクリングコースのイチ推しスポット『雨晴海岸』だ。道の駅雨晴に自転車を止めて目の前の海岸へ降りると、女岩の向こう側に立山連峰が望めるはず。視界が良いのは空気が澄んでいる季節になるので、自転車だと3月末~4月、10月~11月頭が狙い目か。
湾に沿って弧を描くように北上しているので、方角の感覚がまひしている。「あれは雲? いや、冠雪した峰々じゃない!」湾の向こうは南東に当たるので、海と3000m級の山々が同時にフレームに収まる奇跡の構図を目にすることができるというわけだ。翌朝の海岸線も楽しみたいので、サイクリストに優しい宿にも認定されている『女岩荘』に宿泊。そして、見ることができたのがけあらしの光景だった。
2日目はさらに海岸線を北上。島尾海岸で氷見出身のサイクリスト的場俊輔さんと合流。氷見の見どころを案内してもらうことに。的場さんいわく、氷見といえば『氷見うどん海津屋』。昼時ともなれば行列のできる人気店だそう。「でも、午前早い時間だったら、氷見漁港にある魚市場食堂がいいかもしれません」。獲れたての魚を食せるスペシャルな食体験も捨てがたい。「どちらも食べればいいじゃない」とシマコ。
また、氷見市はまんが家・藤子不二雄Ⓐ氏の出身地とのことで、町中に『忍者ハットリくん』『怪物くん』『プロゴルファー猿』など、 藤子Ⓐ氏が生み出したキャラクターたちが至るところにあって、ファンのみならず楽しい。的場さんに先導されながらブルーラインに沿って走ると、どんどんスピードも上がる。こうなったら、このブルーラインがどこまで続いているか見届けてやろう、と思った。
富山湾は旅人に優しい
氷見を過ぎると、エスケープできる鉄道路線もない自転車と僕らの脚力だけを信じるエリアに入る。季節は秋の終わり。柔らかい陽光に輝く海景が、コースを走る僕らの脇にずっと続いている。富山に行く前は全くイメージが湧かなかったが、季節を変えながら通うとじわりじわりとこの土地の良さが分かってくる。分かりやすくキャッチーな魅力やド派手なインパクトはないかもしれない。でも、ナショナルサイクルルートに選ばれるずっとずっと前から、この道は地元のサイクリストに愛されてきたことは実際に走ってみてよく分かる。立山連峰が毎日見えるかというとそうでもないし、だからこそ、晴れ渡った海の向こうに山が見えた時の感動はひとしおだった。
虻(あぶ)ヶ島を右手に見ながら海岸線を北上する。交通量も減っていき、海がとても間近に感じられるようになった頃、ブルーラインの終点となる石川県との県境までたどり着いた。「やったー、着いた!」とシマコも満足気。県境の標識には「ここからスタート 102km→朝日」とある。「てっきり終点だと思ったけれど、ここは新しい旅の始まりでもあるんだな」と僕。「さて、ここから戻って氷見うどんでも食べに行きましょうか」「それいい!」「賛成」。
じてんしゃ旅は気ままで自由であればあるほどいい。そんなに急ぐ旅でもないのだから、「氷見で泊まって、夜空を眺めるのもありなんじゃないの?」。「それもいい! 寒ブリまだ食べてない!」。何度行っても、いつ行っても、土地のうまいものが食べられるのは幸せなことだ。
富山の各地を巡ってみて感じたのは、ぜひ季節を変えて走りに行ってほしいということ。春の四重奏、ほたるいか観光、散居村の絶景、おわら風の盆など。季節ごとにしか見ることができない風景や体験が富山にはたくさんあった。そして、出会う人たちの優しさも旅する僕らにはありがたかった。深く豊かな宝物のような富山湾と、堂々たる富山の山並みが常日頃から人々を見守っていることが、優しさの源にはあるのだろうか。そんな特別な体験に出合いに、また富山に行こうと心に決めた。
田園サイクリングコースPR動画も公開中!
富山じてんしゃ旅が一冊のムックになります
いよいよじてんしゃ旅シリーズの第8弾、富山編のムックが2023年3月末に発売。本誌で4回に分けて紹介した富山各地のサイクリングコースだけでなく、富山の魅力がいっぱい詰まった一冊に。