福岡県は街と自然との距離が近く、少し足を延ばせばすぐにすてきな景観に出会えます。青く美しい海岸線に、緑あふれる山々。沿道の田畑は実り、輝き、小さな路地には昔ながらの町並みも。そんな“フクオカ”の魅力を体感できる10のサイクリングコースを2回にわたってご紹介。ロードバイクやクロスバイクを走らせて、さぁ絶景の「福10(ふくてん)ルート」へ。
【ルート1】福岡・糸島ルート
【走行距離】約78km
【獲得標高】約253m
福岡市の都心部から人気の糸島エリアへ、玄海国定公園に選ばれた美しい海岸線が見どころのルートです。糸島半島を周る途中で海へ抜ける小道や、緑が美しい田畑へ向かう農道などの寄り道もおすすめ。ライド中のあちらこちらでお洒落なカフェや、歴史に想いをはせるスポットも発見できます。人気の海岸線はもちろん、糸島のもう一つの魅力である豊かな田園風景、糸島富士(可也山/かやさん)の姿も眺めながら、心地良いライドを楽しんで。
①長浜海岸 糸島エリア入り口にある長浜海岸。松林を抜けて海に出れば、長い砂浜にさざ波が優しい。博多湾はこんなにきれいだったのかと、改めて美しい自然が身近にあることを実感できます。
②元寇防塁跡 鎌倉時代、1274年の蒙古襲来(文永の役)後、次なる襲来に備えて築かれた高さ約3mの石垣の跡。博多湾岸に約20kmも造られたという防塁の一部が松林の中に現存しています。
③桜井二見ヶ浦(さくらいふたみがうら) 櫻井神社の白い鳥居と御神体岩である夫婦岩の先に夕陽が沈む、糸島を代表する景勝地。美しい海岸線には多くのカフェやレストランも並び、四季を問わず多くの観光客が訪れます。
④可也山 穏やかな稜線を見せる可也山は「糸島富士」とも呼ばれ、糸島ライドでも目印になる山。ハマボウ群生地を抜ける小道からは、泉川を挟んで緑の田畑の先に美しい姿を楽しめます。
⑤深江漁港そば 二丈深江(にじょうふかえ)の海岸を、岬に向かって進めばドームテントと並ぶヤシの木が印象的なグランピング施設の横に出ます。透明な海の美しさが際立つ深江エリアの海岸線は、さらに先へと進みたくなります。
⑥姉子の浜(あねごのはま) 福岡・糸島ルートの最西端、国道202号沿いに広がる姉子の浜は「鳴き砂」と呼ばれるキメの細かい砂質が特徴。砂浜を歩けば「キュッキュッ」と音が聞こえる……はず。
【ルート2-1】 宗像・志賀島ルート
【走行距離】約51km
【獲得標高】約146m
玄海国定公園の美しい海岸線を走る、こちらも福岡県自慢の海沿いルートです。松林へ抜けて海に近づけるスポットや、寄り道して見つける絶景はまさにおすすめ。また古代から続く歴史を目の当たりにする世界遺産の古墳群、志賀島へ続く陸繋砂州の一本道、全国に知られる「光の道」も、このルートでぜひ確かめて。福岡県はこんなにスケールの大きな海がある、その新たな感動があちらこちらに。もう走らずにはいられません。
①新原・奴山(しんばる・ぬやま)古墳群 「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群の中で、内陸にポコポコと丘が並ぶような古墳群は歴史ロマンをかき立てます。草覆う古墳の隣をさっそうとライドする、時を超えた感動です。
②福間海岸(「光の道」入口) 1年に2度、宮地嶽神社からまっすぐ伸びる参道に沿って夕陽が沈む、その神々しいさまは「光の道」と呼ばれます。海岸線に一番近い参道には第一の鳥居が。まさに光を迎える入口です。
③花見海岸 福津市から古賀市へ、ルートから見えなくても海はすぐ側に。花見という地名に惹かれて寄り道すれば、海岸沿いの松林から輝く海へ向かう小道にテンションが上がります。
④三苫海岸(みとまかいがん) まずこの絶景に感動。福岡市東区という都心部にありながら際立つ美しい海岸線。コバルトブルーの玄界灘と白く輝く砂浜、絶景を見下ろす丘に向かう小さなわき道があるのです。
⑤奈多海岸(なたかいがん) 大都市福岡近郊と思えない砂丘が連なる圧巻の風景。外海で削られた断崖の砂丘は海の中道まで続き、パラグライダーが気持ちよさそうに空を舞います。のどかで雄大な風景をぜひ確かめて。
⑥海の中道 志賀島は玄界灘と博多湾に挟まれた陸繋島。島に渡る最後の一本道は、両サイドで違う海の姿が雄大です。海に挟まれる絶景から志賀島を一周するルートの終点まで楽しみましょう。
【ルート2-2】 宗像-直方ルート
【走行距離】約39km
【獲得標高】約54m
響灘(ひびきなだ)を見ながら走る県道300号は、松林を抜けながら波津(はつ)海岸へ。ここから芦屋町へは、遥かな海岸線を駆け抜ける快適ライドを約束。広がる絶景と波の音を独り占めできるサイクリングロードは全国に誇れる感動ルートです。また芦屋基地から飛び立つ戦闘機の姿も間近に見ることができるかも。続く遠賀川(おんががわ)河川敷にもサイクリングロードが整備され、川沿いに姿を見せる世界遺産や風情ある宿場町・木屋瀬宿(こやのせじゅく)に立ち寄りたいところです。
①さつき松原 「道の駅むなかた」をスタートし、潮風を感じながら松林を快走。かつて黒田藩が防風林として植えた松原は、長さ約5.5kmにわたって美しい緑を描きます。日本の白砂青松(はくしゃせいしょう)100選です。
②遠賀宗像(おんがむなかた)自転車道 波津海岸から芦屋町まで、青い海と空が交わる水平線を見ながら走り抜ける開放感バツグンの一本道。海岸線の絶景と潮風や波の音に包まれる、感動のサイクリングロードです。
③遠賀川河川敷サイクリング道路 直方北九州自転車道を兼ねる河川敷のサイクリングロードは、堤防を包む緑が鮮やか。穏やかな川面を見ながらのんびりと上流へ向かいます。春の菜の花、秋のコスモスも楽しみ。
④遠賀川堤防 遠賀川は福岡県の南北をつなぐ一級河川。堤防の幅も大きく、その上も一般道として整備されています。河川敷から少しだけ空に近づく気分で、広い川原を下に走ってみたくなります。
⑤遠賀川水源地ポンプ室 1910年、八幡製鐵所へ大量の工業用水を送るために遠賀川あたりに建てられた施設。世界遺産でありながら今なお現役。イギリス積みの赤レンガもモダンな、人気のフォトスポットです。
⑥木屋瀬宿 江戸時代に長崎街道の宿場町として栄えた木屋瀬の町並み。白壁美しい家屋がノコギリ状の「矢止め」に並んだ様子や、「く」の字に曲がる街道にも注目。風情たっぷりの一画です。
【ルート3】北九州・芦屋ルート
【走行距離】約44km
【獲得標高】約118m
工業地帯を走ると思われがちなルートですが、実は北九州の海がバツグンに美しいという発見に心躍るルートです。透明度の高い澄み切った海と夏のハマユウ、荒々しい岩の上に立つ白い灯台など海の絶景に加えて、ルート沿いには次世代エネルギーを生み出す風車が並ぶ未来的な光景が。また国指定重要文化財の若戸大橋を眺めながら渡船で移動する楽しみもプラス。人の営みと自然の対比が興味深い、北九州の現在を走ります。
①夏井ヶ浜 ハマユウ自生地 7月から8月にかけて芦屋町の海辺にはハマユウの白い花が鮮やか。九州では夏井ヶ浜が自生の北限とされ、夏の強烈な日差しを浴びて青い海と美しいコントラストを見せています。
②遠見ヶ鼻(とおみがはな) こんな絶景が北九州に! と驚かされる遠見ヶ鼻。空と海の二つのブルーが交わる遥かな水平線を背景に真っ白な妙見埼(みょうけんざき)灯台が建つという、鮮やかすぎるインパクト。夕日も美しい!
③響灘風力発電施設 北九州市若松区、響灘を望む次世代エネルギーパークで圧巻の風景がこちら。高さ65mで大迫力の風車が10基も並ぶ真下を走り抜ける、未来感バツグンのライドがおすすめです。
④若戸大橋 1962年開通、日本初の長大つり橋です。全長2.1km、洞海湾(どうかいわん)をまたぐ赤い橋の姿が格好良くて、やっぱり近くで見たくなります。2022年に国の重要文化財に指定されました。
⑤若戸渡船 自転車は若戸大橋を走れないので、橋と同じ場所で若松と戸畑をつなぐ市営渡船を利用。所要時間は約3分で、日中は1時間に4〜5往復。自転車込で大人1人150円です。
⑥大里宿跡 かつての長崎街道の大里宿跡。関門海峡を渡る渡船場に町が栄えた碑が点々と残っています。巨大な赤レンガの建物は、旧帝国麦酒(後のサッポロビール門司【もじ】工場)の醸造棟跡で近代化遺産の一つです。
⑦ニッカウヰスキー門司工場(旧大里製粉所倉庫) 1910年に旧大里製粉所として建てられた赤レンガ倉庫は近代化を支えた日本遺産の一つ。国道199号に沿って切妻屋根(きりづまやね)が連続してかわいらしく、撮影ポイントにおすすめです。
⑧片上海岸 門司港レトロへ間もなく到着しようとするあたりは、対岸に山口県・下関の街並みもしっかりと見えてきます。潮風を受け、関門海峡を真横に眺めながらライドする爽快感にワクワクします。
【ルート4】那珂川・大牟田ルート
【走行距離】約86 km
【獲得標高】約893 m
東脊振(ひがしせふり)トンネルを使って福岡県を北から縦断するルートです。那珂川市から筑紫耶馬溪(ちくしやばけい)沿いに南畑ダムまでヒルクライム。さらに五ケ山(ごかやま)ダムを経て佐賀県へ抜ける峠越え。美しい景色が待っているとはいえ、前半でかなり体力も必要です。佐賀県側から筑後川昇開橋(ちくごがわしょうかいきょう)を使って再び福岡県に入り、水郷・柳川(やながわ)では風情豊かな川下りを眺めて一休み。大牟田に着く間に実り豊かな田畑と漁村の風景が入り混じる、ユニークな筑後の姿をご覧ください。
①裂田溝(さくたのうなで) 水田の横をのどかに流れる水路は、実は1300年前に成立した「日本書紀」に記載される日本最古の人工用水路。きちんと整備され、那珂川の水を今も地域に送り届けているのです。
②筑紫耶馬溪(南畑公園) 那珂川の上流は流れも速く、巨石や奇岩も多い渓流で「筑紫耶馬溪」と呼ばれます。南畑ダムへ向かう険しいヒルクライム中に安らぎの公園を発見。水辺で足を休ませて、もう一踏ん張り。
③五ケ山ダム 南畑ダムのすぐ上流に2019年に完成した福岡県最大級のダム。えん堤の高さは102.5m、下流を望めば福岡市内までも見渡せる眺望です。ここまで来れば佐賀県との県境は間もなく。
④筑後川昇開橋 赤いトラスが美しい旧国鉄佐賀線の鉄道橋。現在は遊歩道として整備され、自転車も押して通行可。橋の中央部が可動橋で、船が通る際は23mの高さまで可動橋を上げて航行します。
⑤柳川堀割(やながわほりわり) “水郷”と呼ばれ、市街地を幾重にも堀割が巡る柳川の街。学校の横も、家の前も堀割という風景は異国情緒さえ漂います。川下りの船には笑顔で手を振るコミュニケーションを。
⑥矢部川大橋 矢部川の河口近くでハープのようなデザインが際立つコンクリート製の斜張橋。主塔間が261mという長さは日本一。橋の付近に海苔養殖の漁船が多数並ぶ風景も印象的です。
【ルート5】筑後周遊ルート
【走行距離】約55km
【獲得標高】約90m
筑後平野を潤す筑後川や矢部川の恵み、そこで暮らす人々の営みを身近に感じられるルートです。ここは日本有数の酒どころ、そして600年の長い歴史を持つ「福岡の八女茶(やめちゃ)」の里でもあります。三潴(みづま)・城島(じょうじま)・大川などに点在する酒蔵の風情や、八女中央大茶園に代表される清々しい茶畑の緑は必見。また矢部川に沿うように田園地帯を回ると力強いクスノキの姿に圧倒され、秋深まれば美しい黄色に染まる太原のイチョウもお見逃しなく。
①中ノ島公園 矢部川沿いに広がる緑の森は、柳河(やながわ)藩主の治水事業で植えられた樹齢300年以上と言われる国指定天然記念物のクスノキ林。何百本もが群生する、緑と木漏れ日に癒されます。
②矢部川浪漫街道 山々を避けるように清流が緩やかな蛇行する中流域は、堤防を覆うような生き生きとしたクスノキの姿に釘付け。秋は彼岸花も咲く堤防の道は「矢部川浪漫街道」と呼ばれます。
③八女中央大茶園 見渡す丘が全て美しく手入れされた茶畑という絶景。日本一の品質と高級茶として知られる八女茶の里を象徴する大茶園は必見です。展望所には八女茶カフェもオープンしました。
④太原(たいばる)のイチョウ 見頃は11月中旬くらい。広川町の一画に突然、鮮やかなイチョウ並木が現れます。木漏れ日を浴びてキラキラと輝く姿も、落ち葉でできた黄色のじゅうたんも。すてきすぎる絶景を、ぜひ。
⑤城島の酒蔵巡り 日本有数の酒どころである筑後エリア、中でも久留米市三潴町・城島町の一帯は初春の酒蔵開きも大にぎわい。そんな酒蔵が残る町並みは風情豊かで、地域の魅力を深く伝えてくれます。
⑥筑後平野の水田風景 福岡県の穀倉地帯である筑後平野は、夏には水田の緑が鮮やか。水田の中を通る農道にお邪魔して、緑の中を走る快感も味わいたいところ。クリーク広がる水路沿いも爽快です。
【後編】の記事はこちら
福岡県の絶景サイクリングコース10【後編】
※各ルートの距離と獲得標高は、コースデータ(Ride with GPS)で表示されている数値と多少異なっている場合があります。