Jプロツアー南魚沼ロードレース マンセボの単独逃げ切り勝利
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2023年9月18日(月・祝)に行われた南魚沼ロードレース。スタート時の晴天から一転して土砂降りに見舞われた144㎞のレースを制したのは、このコースで三度目の勝利となるフランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)だった。
敬老の日に活躍した最年長
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昨年獲得した弱虫ペダルサイクリングチームから経済産業大臣旗の返還がされた
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ツールド北海道にて亡くなった五十嵐洸太へ1分間の黙祷が捧げられた。所属した弱虫ペダルサイクリングチームの選手が喪章を身に付けて出走
三連休の最終日、敬老の日であった9月18日(月・祝)、新潟県南魚沼市にて第8回JBCF南魚沼ロードレースと第57回JBCF経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップを兼ねた大会が開催された。
1周12㎞の三国川ダム周回コースにてレースが行われ、Jプロツアーのレースは12時半にスタートし、12周、総距離144㎞で争われた。
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12時半にレースがスタート
1周目のリアルスタート後から数人の飛び出しがあったが、3周目にはシャッフル。
4周目に入る頃、フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)、留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)、孫崎大樹(キナンレーシングチーム)、風間翔眞(シマノレーシング)、草場啓吾と石上優大の愛三工業レーシングチーム2名の合計6人の逃げグループが形成された。
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序盤にできた6人の逃げ
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序盤、集団はさまざまなチームが先頭に立った
4周完了時には、タイム差は2分近くに広がり、半分の6周目に入る頃には3分50秒に広がった。
またしてもこのまま逃げ切りかと思われたが、7周目に入るタイミングで、集団でキナンレーシングチームがコントロールを開始。タイム差は3分程度に縮まった。
8周目完了時には1分10秒台に縮まったが、集団もかなり人数が絞られた。
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キナンレーシングチームが牽引し始めると、タイム差を減らしていく
逃げにいたマンセボはこう話す。
「いい逃げグループだった。有力チームの選手がいたし、愛三も2人いた。だから、前に行くこともできたし、交代することもできたんだ。問題はキナンが逃げに入れたのは1人で、集団を引っ張ってきたこと。この周回では基本的にライダーはあまりエネルギーを使わず逃げなければならないんだけど……」
リーダージャージを着用し、集団に残った中井唯晶(シマノレーシング)だったが、チーム力の差を痛感しているようであった。
「キナンのチーム力は僕らとは比べ物にならないくらいあって。僕らは追っかけて一つにしたかったというのはあるんですけど、それを実際にやってくれて、レースを面白くしてくれた。振り出しに戻してくれる方が面白いです。僕らはまだそれができない」
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集団とのタイム差が縮まってきた9周目の上り区間では、逃げグループからマンセボが抜け出す
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多くのメンバーを残したキナンレーシングチームが集団を牽引
10周目の上りでは、1分を切り、いよいよ集団が逃げグループを目視できる範囲にとらえた。逃げグループは石上、マンセボ、孫崎が先頭で粘り、風間、草場、留目は集団へと戻った。
チームメイトの前待ちのつもりで逃げへと乗った孫崎は、キナンが集団を牽引してタイム差を詰めていたため、逃げグループ内で休むことができていた。
「だいぶ集団とのタイム差が縮まって、僕も休めていた分、前(逃げグループ)を破壊する行動にして、後ろのチームメイトがジャンプしてきてくれてキナンが有利な展開を作ろうと思いました。監督もちょうど同じタイミングで”行こう”という指示を出してくれたので、僕は休ませてもらった分仕掛けた形でした。そうしたら、やっぱり脚のあるマンセボ選手と石上選手がついてきました」
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10周目の上り区間、逃げと集団は目視できる位置に
キナンとしても孫崎で勝負する形に変更したことで、またしても先頭に残った3人と集団とのタイム差は開き、残り2周時点で1分40秒となった。
晴天から一転、大雨のフィニッシュ
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補給所にいた安原監督の指示を聞きながらマンセボがペースを上げ、孫崎が食らいつく
ラスト1周に入った上り区間では、先頭のマンセボが猛攻撃を仕掛ける。まだ余裕のあった孫崎が食らいつくが、石上は離れた。さらにマンセボは踏み続け、孫崎も離れてしまう。孫崎はこう振り返る。
「(3人で)抜けた時点で僕は毎周回、上りだけを考えて、それ以外で脚的にもちぎられることはないと思ったので。ただここの上りって意外とパンチがあって、時間は短いんですけど、やはりマンセボ選手って踏める選手なので、斜度とか短さとか関係なく、その分高い出力が出せる選手だから警戒はしていて、しっかり反応はしたんですけど、力で引きちぎられたって感じですね。
(ラスト1周、)石上選手がきつそうで、前半からずっと彼は(ローテーションを)回していたので、離れて、これは僕はマンセボ選手と行けるかな!と思ったんですけど……グングン踏まれて離されて。僕も本気で踏んでるんですけど、離されていくような、ちょっと手に負えなかったです、力不足でした」
そのままマンセボは、一人後続とのタイム差を稼いでいく。
マンセボが残り3㎞を通過したと伝えられたとき、フィニッシュ地点では大粒の雨が降ってきた。三国ダムの頂上付近はまだ晴れていたという。
「雨は最後の下りの終わりだけだったので、とてもラッキーだった。それに自分一人で時間もあったし、落ち着いて下れた」とマンセボは話す。
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余裕をもって両手を大きく広げながらフィニッシュラインを切ったマンセボ
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ビセンテが集団を置き去りにして、単独の2位フィニッシュ
余裕を持ったままマンセボは、フィニッシュラインで両手を掲げた。
少し経ってから後ろから現れたのは、集団ではなくマンセボと同じジャージを着るホセ・ビセンテだった。
集団からは先行していた孫崎だったが、石上と合流して先頭を目指したが、途中でビセンテに抜かれたと話す。
「僕がマンセボ選手と離れた後、石上選手はペースで踏んでたので、合流して2人で追いかけ続けたんです。マンセボ選手に徐々に離されていって、ラスト5㎞で後ろからもう1人緑の選手が見えるなと思ったらホセ選手で、2人で飛びついたんですけど、ホセ選手もめちゃくちゃ踏めていて、ちょっと僕らも疲れもあるんですけど、力で離されました」
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集団に合流した孫崎が3位
集団の頭を孫崎が取ったが、1位、2位、11位に小林海(マトリックスパワータグ)がフィニッシュし、チーム総合の経済産業大臣旗は、マトリックスパワータグが獲得した。
シーズン終盤に絶好調
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終始強さを見せつけたマンセボ。いつもは若手選手に与えられる敢闘賞だが、敬老の日ということでマンセボが敢闘賞も獲得
ここ、南魚沼ロードレースでの勝利が印象に残るマンセボだが、このレースが好きだと話す。
「ここで勝つのは3回目。去年もそうだったし、その前もそうだった。去年はマシントラブルがあったけど、うまくいっていた。このようなタフなレースはJBCFでの最後のレースだと思うし、チームとしても楽しみにしていた。ツアー・オブ・イランでのレース後、いい(UCI)ポイントを獲得できたので、それを生かす必要があった」
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マトリックスパワータグ全員が調子の良さを見せた
今回の走りを見ても、一緒に戦った選手の話を聞いてもマンセボが調子がいいことは明らかだ。
「何度か背中に問題を抱えたが、今年の初めよりは良くなっている。夏の後、スペインでたくさんトレーニングしたし、ツアー・オブ・イランにも参加したんだ。そのおかげで、大分サイクルロードレース、ツール・ド・九州、ジャパンカップも出られるようになった」
さらにシーズン終盤の目標について、「ジャパンカップはとてもいいチームが来るので、とても難しいと思う。だけど、 大分と九州とジャパンカップで頑張りたい。それがチームの年末の目標」と話した。
リーダージャージは、5位でフィニッシュした中井がキープ。
「チーム総合はほぼほぼ決まっているようなので、あとは個人総合。今年はシマノレーシングが創設50周年で、その中でこのジャージを着られているのはうれしいですね。チャレンジできていることがうれしいですね。この位置にいられるような、そんな選手じゃなかったので。でも今年は、実は一つも勝ててないんです」
まだ勝利がない中井だが、「どこかで勝てれば」と話した。
第8回JBCF南魚沼ロードレース&第57回JBCF経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ リザルト
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1位 フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)3時間38分22秒
2位 ホセ・ビセンテ(マトリックスパワータグ)+56秒
3位 孫崎大樹(キナンレーシングチーム)+1分18秒
団体総合(経済産業大臣旗)
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1位 マトリックスパワータグ(1位フランシスコ・マンセボ、2位ホセ・ビセンテ、11位小林海)
2位 キナンレーシングチーム(3位孫崎大樹、6位ライアン・カバナ、10位津田悠義)
3位 シマノレーシング(5位中井唯晶、8位石原悠希、16位寺田吉騎)
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リーダージャージは中井唯晶(シマノレーシング)がキープ、U23ジャージは、津田悠義(キナンレーシングチーム)へと移った
参考サイト:全日本実業団自転車競技連盟(JBCF Jプロツアー)