杭州アジア競技大会MTBで沢田 時が銅メダルを獲得
目次
中国で開幕したアジア競技大会で、MTBクロスカントリーに出場した沢田 時(宇都宮ブリッツェン)が、自転車競技メダル第1号となる銅メダルを獲得。起伏に富むハードなコースでパフォーマンスを発揮し、確かな自信を手にした。
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銅メダルを獲得し、表彰台で笑顔を見せる沢田 時(宇都宮ブリッツェン)
第19回アジア競技大会が、9月23日に中国・杭州で開幕した。本大会は4年に一度開催される“アジア版オリンピック”と呼ばれる大規模なスポーツイベントで、コロナ禍の影響により1年延期となったものの、今回は16日間にわたり40競技481種目が実施される。
自転車競技(MTBクロスカントリー、トラック、BMXクロスレース、ロードレース)は、メイン会場の杭州市内から南西方向に約200km離れた自然豊かな淳安県での開催となり、ヴェロドロームを含むすべての会場が本大会のために新設された。
9月25日、自転車競技の初日は、男女のMTBクロスカントリー種目が実施され、日本からは小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)と沢田 時が出場。起伏に富んだ1周4.94kmのコースを女子4周回、男子5周回する。
「これまで走ったことがないような厳しいコースで、急勾配のアップダウンを繰り返す」とコースの印象について、日本人選手2人は口を揃えた。
過酷なコンディション下で小林はリタイア
午前中の女子は、朝からの厳しい蒸し暑さのなかでスタートすると、その直後から中国人選手が激しいペースアップを行い、1周回目から後続を大きく引き離していく。
小林は4番手で1周目を終えようとしていたが、「体がオーバーヒートしてる感覚とともに体に力が入らなくなってしまった」と1周回目でリタイアとなった。優勝したのは中国のLI Hongfeng。
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レース序盤、集団前方で走る小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)
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女子では急勾配の登坂区間でバイクを押すシーンも見られた
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アップダウンを繰り返す厳しいコースを走る小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)
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暑さによりレース後に倒れ込む女子選手も多く見られた
悔しいレースになった小林だが、レース後に体調は回復。
「思い描いてた結果ではなく、本当に応援してくださった方には申し訳ないと思いますが、気持ちを切り替えて次のアジア選手権に向けて頑張っていこうと思ってます」と前を向く。
“自転車でプロになる”という夢に向かい、マルチに活躍する22歳は、挑戦を続けていく。
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MTBクロスカントリー女子の表彰台、中国勢がワンツーフィニッシュ
【MTBクロスカントリー女子】20.56km(スタートループ×0.8km+4周回×4.94km)
1位 LI Hongfeng(中国)1:30:59
2位 MA Caixia(中国)+5:46
3位 PARTOAZAR Faranak(イラン)+11:45
DNF ⼩林あか⾥(日本) ―
沢田は3度目のアジア競技大会で悲願のメダル獲得
午後になると日差しはさらに強さを増して、日本の真夏のような暑さに見舞われた。何もしなくても汗が出てくるような厳しいコンディション。スタートラインに並ぶ沢田の背後には、移動式の扇風機も登場した。
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笑顔でスタートを迎えた沢田 時(宇都宮ブリッツェン)
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チームジャパンのスタッフが万全の暑さ対策を施す
14選手が出走した男子のレース。沢田がスタートループを先頭で走り抜け、2人の中国人選手とともに3人の先頭パックを形成。その後、女子と同じような展開となり、2人の中国人選手がリードし、沢田との距離は少しずつ拡がっていった。
序盤、ハイペースを刻む中国人選手に付いていったことで、「かなりオーバーヒートしてしまって、そこからもう本当にきつくて早くゴールしたいという気持ちでした」と振り返った沢田だが、その後、単独で3番手のポジションをキープ。
一時、後続のカザフスタンが30秒差まで迫るシーンもあったものの、安定したパフォーマンスを発揮して、トラブルもなく、トップのMI Jiujiangから7分50秒差、3位でフィニッシュラインを通過。自転車競技第1号となる銅メダルを獲得した。
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スタートループを終え、沢田 時(宇都宮ブリッツェン)を筆頭に山岳コースへと向かう
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起伏のあるコースを3番手で走る沢田 時(宇都宮ブリッツェン)
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淳安会場は湖沿いで、自転車競技とトライアスロンがここでの開催となる
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厳しい暑さのなか、沢田 時(宇都宮ブリッツェン)が粘りの走りで銅メダルを獲得した
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3位でフィニッシュした沢田 時(宇都宮ブリッツェン)
沢田は2014韓国・仁川大会で7位、2018インドネシア・ジャカルタ大会で6位と、徐々に順位を上げながら、今回3度目のアジア競技大会出場にして、ついにメダル獲得となった。初出場時が弱冠20歳、年齢とともに着実に実力を高めてきたことも伺える。
「今まで2回は悔しい思いをしてきたので、本当は金メダルを獲りたかったんですけど、最低限メダルを持ち帰ることができて嬉しいです。この3年間は海外に行けなかったので、その間に、ロードレースも始めましたし、チームも移籍するなど環境を変えて、いろんな新しいことを自分の中で取り入れました。これまでと違うアプローチで競技に向き合えたことが、結果的に自分をすごく大きく成長させてくれたと思います」
そして沢田の次なる目標も、小林と同じく11月にインドにて開催されるMTBアジア選手権。今日戦った各国代表選手たちと、再び1カ月後に戦うことになるが、そこでの結果が来夏のパリ五輪出場枠に大きく関わるため、多くの国が例年以上に力を入れて参戦するだろう。
「優勝した中国人選手たちは、ワールドカップで日本チャンピオンの北林選手よりちょっと上で走っている。実力はうまくいって同じぐらいだったとしても、彼らはこのコースを走り込んでいるので、今日は難しいだろうなとは思っていました。でも序盤、彼らに付いていけたのは自信になり、3位という結果にも繋がったと思います。1カ月後のアジア選手権では、今日の結果を自信にして、次は勝てるように頑張ります!」
杭州アジア競技大会は、MTBクロスカントリーに続き、26日からトラック種目が実施される。
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MTBクロスカントリー男子の表彰台、中国は男女でワンツーフィニッシュ
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フィニッシュ後に笑顔を見せた沢田時(宇都宮ブリッツェン)
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どの選手にとっても過酷なコンディション下でのレースになった
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沢田時(宇都宮ブリッツェン)が獲得した杭州アジア競技大会の銅メダル、ずっしりと重たい
【MTBクロスカントリー男子】25.5km(スタートループ×0.8km+5周回×4.94km)
1位 MI Jiujiang(中国)1:32:37
2位 YUAN Jinwei(中国)+3:12
3位 沢田 時(日本)+7:50
リザルト
第19回アジア競技大会
開催地:中国・杭州
日程:2023年9月23日〜10月8日
https://www.hangzhou2022.cn/En/