2023ジャパンカップサイクルロードレース 岡本隼、強豪ぞろいの中での15位の意味

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10月15日に行われた2023ジャパンカップサイクルロードレースにて15位という結果でアジア最優秀選手賞を獲得した岡本隼(愛三工業レーシングチーム)。昨年も同じく15位であったが、違った展開で成長を見せつけることとなった。

岡本隼 ジャパンカップ2023

 

雨の中、鬼門となった下り

これがシーズン最後のレースという選手も決して少なくはないジャパンカップサイクルロードレース。今年は、開催30周年ということで例年よりもさらに豪華なメンバーが顔をそろえたうえに、例年よりもさらに熾烈な争いであったように思える。

10月15日レースの朝、前日までの天気とは大きく異なり、会場となった栃木県宇都宮市の宇都宮森林公園の地面には雨が打ちつけていた。

「去年の反省として、スタートの時に後ろにいすぎてギャップを埋めるのに努力を要した」と話したマキシム・ヴァンヒルス(ロット・デスティニー)は、スタートラインでいる位置も重要だと言っていた。そのとおりに、スタートからペースが上がる形となったのは去年も同じ展開ではあった。

また、レース前、ジュリアン・アラフィリップ(スーダル・クイックステップ)など、多くの選手たちが上り区間というよりも“雨のテクニカルな下り区間”に着目していた。結果、やはり下り区間での差はクリティカルなものとなった。

岡本隼 ジャパンカップ2023

2周目にできた20人程の追走集団

岡本隼 ジャパンカップ2023

アラフィリップの追走集団に日本人で唯一入った岡本

 

2周目、少人数の逃げと20人程度の追走集団と、それらに遅れた集団に分かれた。その追走集団の中に入ったのは、岡本隼(愛三工業レーシングチーム)だった。

先頭でアタックが起こっていた2周目の上り区間もスピードは速かったものの集団は割れてはいない状態だった、と岡本は話す。しかし、下りで集団は割れた。下りが不得意な選手やどこまで攻めるべきかまだはかり損ねている選手もいるなか、反応できる位置にいた岡本は自分の技量と機材を信じて追いついた。振り返れば岡本がその後続集団の最後尾となっていた。もはやほぼ勝負が決まったかのようなメンバーだった。

「それが最後まで行くかどうか分からなかったです。でも前に乗っているだけでもアドバンテージになるので。そういう前々の展開にできて良かったです。
去年も集団の中でスプリントを制したってのもあったので、逃げに乗るとは自分の中では思っていなかったですけど、でもメンバー的に有力どころがかなりいっぱいいて、ワールドツアーの選手ばかりだったので、これから先のレース経験としても乗った方がいいなという感じでした」と、岡本は話す。

 

応援の声の後押し

岡本隼 ジャパンカップ2023

古賀志林道の途中に毎年設置されている自転車ショップ「YOU CAN」の元メンバーを応援するコーナーでは、岡本の名前を呼ぶ声が一際大きかった

 

ローテーションに加わることもあったが、人数も多く、有力選手ばかりの追走集団で岡本は常にローテーションを回っていたわけではなかった。

とにかく「毎周、上りだけ速かった」そうだ。しかし、その集団に乗ることができた日本人は岡本のみ。当然、古賀志林道に集まった観客たちも毎周回、岡本の名前を叫んだ。

「20人の集団にいる中で、僕だけ岡本!岡本!って名前を呼ばれて、ここでは千切れられないなと思って走りました」

岡本隼 ジャパンカップ2023

岡本はヘルマン・ペルンスタイナー(バーレーン ヴィクトリアス)と共に走り続けた

 

岡本は、「後半戦の大一番の大会」と位置づけたこのジャパンカップに照準を合わせ、古賀志林道の上りで耐えられるよう3分走などのトレーニングを行ってきた。さらに1.5㎏減量し、驚くほど上れるようになったとも話していた。

序盤の展開で遅れてしまい、チームメイトを引き上げるために脚を使った新城幸也(バーレーン ヴィクトリアス)も一時その集団に合流したが、そのタイミングで再びペースが上がり、ついていくことは叶わなかった。

「そこが自分もきつかった」と話す岡本。終盤の展開にこそ食らいつくことは難しかったが、一人にならずにバーレーンの選手と共に走り続けることができ、最後にはスプリントをして15位という結果で走り終えた。

岡本隼 ジャパンカップ2023

ペルンスタイナーらのグループからスプリントして15位でフィニッシュ

 

昨年は、集団の頭を取って15位。今年は強豪ぞろいのグループに入って粘りながらの15位。同じ順位ではあるが、今回の展開からすれば、その意味合いは違うように思える。

「本当に強い選手しかいなかった。一緒に最後まで走った選手もやっぱり強くて、上りとかでも毎周どこまで耐えられるかが勝負どころでした。前に乗っている日本人が僕だけだったので毎回名前を言われていて、また特別なものがありましたね。
この大会はスプリンターもチャンスがあるし、上りが得意な人もチャンスある大会なので、上れる岡本隼をちょっと見せられたかなと思います」

岡本隼 ジャパンカップ2023

アジア最優秀選手賞を獲得した岡本

 

昨年このレース後、今後ロードレースを続けるにあたって上れるスプリンターにならないと、という話をしていた岡本だが、それは変わらないと話す。

「本当にその思いは今も強くて。残った集団の中でスプリントすればそこで順位が上がるわけですし、スプリントは自分の得意な部分であって、どういう展開でもスプリントはしなきゃいけないと思います。だからこの大会はそういう思いをすごく駆り立たせてくれるというか、前(の順位)にまだいっぱい選手もいるわけですし、ここからどこまでいけるかっていうのが自分の勝負どころだと思います」

国内コンチネンタルに所属する選手たちがワールドチームのメンバーと走る機会は少ない。彼らが自分の位置を確認するという意味でもこのジャパンカップは非常に重要な大会なのだ。

 

参考サイト:
愛三工業レーシングチーム

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