Jプロツアー2023最終戦 かすみがうらロードレース BS山本が制し、年間チャンピオンはシマノ中井の手に
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Jプロツアー最終戦となったかすみがうらロードレースは、序盤から有力勢ばかりの逃げグループができあがり、最後に抜け出した山本哲央(チームブリヂストンサイクリング)が勝利を飾った。
2023年シーズン全18戦を終えて、個人総合ランキングでは中井唯晶(シマノレーシング)が優勝となった。
秋晴れの霞ヶ浦での110km
10月22日、JBCFの最終戦として茨城県かすみがうら市坂・田伏の特設コースにてかすみがうらロードレースが開催された。当日は綺麗な秋晴れとなり、Jプロツアーがスタートした12時55分には気温も上がった。
今回、マトリックスパワータグ、愛三工業レーシングチーム、キナンレーシングチームの出場はなく、64人と少ない人数での出走となった。
かすみがうら市歴史博物館前に設定されたスタートラインには、個人総合トップの証であるルビーレッドジャージを着る中井唯晶(シマノレーシング)や個人総合2位の石原悠希(シマノレーシング)らチーム総合もトップであるシマノレーシング勢、さらには前日のタイムトライアルで勝利した金子宗平(群馬グリフィリンレーシングチーム)などが先頭へと並んだ。
コースは、スタートしてからすぐに下りへと入り、下り切るとつくば霞ヶ浦りんりんロードへと入って、霞ヶ浦沿いのほぼ平坦路を走ってから、200~300m程の坂を上ってスタート/フィニッシュラインへと戻る1周4.8kmを23周する総距離110.4kmで争われた。
2周目から早速有力勢が先頭に出ると、3周目に入る頃には、13人の逃げグループと15秒空けて後続集団という形に。先頭は、シマノレーシングが6人、チームブリヂストンサイクリングが4人と弱虫ペダルサイクリングチーム2人、シエルブルー鹿屋1人。今回出場した中のほぼ全員と言っていいほどの有力勢が逃げグループに入ったため、個人で逃げグループに追いつきたい選手は数人いたが集団で組織的に追えるチームがおらず、逃げグループは後続からどんどんタイム差を稼いでいく。
後半戦に入る頃には1分程度だったが、15周目には後続とのタイム差は3分程に広がっていた。
先頭集団から風間翔眞(シマノレーシング)がバイクを降り、12人となった。
終盤戦の攻防
16周目には、岩田星矢(弱虫ペダルサイクリングチーム)、石原、寺田吉騎(シマノレーシング)、大河内将泰(シエルブルー鹿屋)、山本哲央(チームブリヂストンサイクリング)の5人が先頭集団から飛び出した。17周目には後ろから一人で松田祥位(チームブリヂストンサイクリング)が合流し、先頭は6人に。
18周目に入る頃、先頭と兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)や中井らが入った追走集団とのタイム差は50秒ほどまで広がったが、21周目には、先頭と4人に絞られた追走集団とのタイム差は20秒ほどに再び縮まる。
4人の追走集団に残った兒島は「リセットしちゃっていいですか?」と補給所にいた監督に確認を取り、そのままペースアップ。
「本当はずっと待機して待機して、最後にバーンッて行こうと思ったんですけど何か性に合わなくて。耐え切れずウズウズしちゃって、いつの間にか踏んじゃってました」と兒島は振り返る。
兒島らが追いつく前に先頭の6人から松田と寺田がさらに抜け出した。第2グループに兒島ら第3グループがジョインし、2人を追う。そこから先に山本が一人飛び出し、ラスト1周に入ったあたりで先頭2人に合流。さらに兒島が単独で抜け出して合流し、先頭はブリヂストン3人対シマノ1人となった。
数的に圧倒的有利な立場に立ったブリヂストン側は、「波状攻撃で行こうと言っていて、行ける人が行ってという感じでした」と山本は振り返る。
ブリヂストンの誰かしらがアタックしては、「3対1になってしまってさばくのに脚を使ってしまったので、難しかったです」と言いながらも寺田がどうにか食らいつく。
ラスト500m、霞ヶ浦沿いから少しの坂区間に入るまでのカーブが続く区間で、兒島が寺田を後ろにつけた状態でスピードを下げてカーブを曲がった隙に一番後ろにいた山本がアタック。追う寺田に対して最後の坂も差をつけた状態で上り切ってフィニッシュラインに現れた山本は、ガッツポーズで最終戦を締め括った。
山本「最後に勝てて良かった」
自身の勝利はおよそ2年ぶりだった。今年2月末のJプロツアーのレースで落車し、鎖骨骨折から始まった今シーズン。
「体もメンタルもキツくて、9月の北海道の(事故が)あって、ずっと辛い時期が続いて、何かあまり練習にも身が入らなくて。最後に勝てて良かったです」と、山本は笑った。
今シーズンは、山口でのUCIレースに出場後、11月16日~18日に伊豆ベロドロームで行われるジャパントラックカップが続く。
「うまいことオリンピアンたちに絡めるように頑張りたいです」と山本は話した。
兒島は調子の良さを保ったままパリへの足掛かりに
一方でツール・ド・九州でステージ勝利とポイント賞を獲得するなど、ロードレースでも調子の良さを見せている兒島は、地元での開催でもあったツール・ド・九州に向け、ロードレース仕様として2㎏体を絞った。「その2㎏で全然違う」と話す。この後は、その状態でニュージーランドでのステージレースに参戦するという。
来年には、トラック競技の団体追い抜き(チームパシュート)でのパリオリンピックの枠獲得に向けて最後の戦いが始まる。国別ランキングで10位までが枠を獲得できる中で、現状日本は8位。
「まだ油断はできないです。でも何もなければ、頑張れば出られる。ぜひ出たいですね」
目標は明確だ。
多忙を極めた岡本がU23ジャージ獲得
U23のトップ、ネクストリーダージャージを獲得した岡本勝哉(チームブリヂストンサイクリング)は多忙な1年を送った。
「今年JBCFのレース1年目なんですけど、U23トップを無事に取り切ることができてまずはほっとしてます」と話す。
大学3年生の岡本は今年、学連のレース、JBCFのレース、UCIレース、時にはトラックレースなど、レース三昧なうえに大学の授業もあり、東京とブリヂストンの拠点である静岡を往復する日々が続いた。「練習をしている暇もなかった」と言う。
「1年かけて調子をキープするのが難しいなと感じたこの1年でしたね。レース数が異常に多かったんで、その中で体調と調子をキープするのはまだまだ課題です」と話した。
来年は4年生となり、まだレース過多の状況は続く。トラックナショナルチームに所属するチームメイトからも影響を受けつつ、その中でどう乗り越え強くなっていくか、楽しみにしたい。
リーダージャージ獲得の中井「ここからが重要」
2023年のJプロツアー個人総合ランキングでトップの座を守り切った中井だが、最終戦は、3位につけていた孫崎大樹(キナンレーシングチーム)の出場がなかったため、ポイントの逆転はあり得ない状態でレースをスタートした。
「最後もちゃんと勝ちたかったんですけど」付け加えながら、「年間総合を取れたのは個人的にすごくうれしいですね」と話した。
昨年は個人総合6位、シマノレーシングはチーム総合は4位で終え、悔しさが大きく残った。
「去年は今治クリテリウムで年間表彰があって、表彰式に登壇しましたけど、もうめちゃくちゃ悔しい思いでした。シマノレーシングという伝統のあるチームで、個人ランキングでトップ3にも入れず、チーム総合もトップ3にも入れず4位。さらにその年1勝もできてないっていう状態。
来年こそはまずは1勝という思いでここまでやってきて、入部(正太朗)さんが勝ってくれて(4/30東日本ロードクラシックday2)、後半戦は石川ロードレース(7/16)で僕がルビーレッドジャージを着られて、そこから南魚沼クリテリウム(9/17)で石原が勝ってくれて、総合も守りながら僕もジャージを着ながら群馬2連戦(9/23~24)、2連勝できて。
チームが総合的に強くなってるなっていう思いもありますし、僕個人的にもやっぱり勝って総合リーダーになって、初めてみんなから認められるのかなと。(群馬では)勝ち方も良い勝ち方ができたので、周りにも認めてもらえるようなルビーレッド(着用者)になれたかなという思いで今はちょっとほっとしてます。チームも個人もレベルアップできてるかなと」
今シーズンのJプロツアーは、レース展開を作ることが多かったマトリックスパワータグやキナンレーシングチームなどの継続的な出場がなかったのも事実だ。しかし、今シーズンのシマノレーシングのように出続ける意味もあると中井は話す。
「(彼らが)いたら分からなかったかなと思うんですけど、大会の価値を上げるっていう意味でも僕らは(Jプロツアーのレースに)出続けています。
UCIレースも本番ですけど、こっちのレースもやっぱりないがしろにはしないです。2年前、コロナ禍に入って、レースができることはすごくありがたいことだと思いました。レースがなかった時期もありましたし、僕らシマノは会社的にNGで出られなかった時期もあったので、僕らはどんなレースでも、やっぱりレースはレースだと思ってやってるので。その結果ですかね」
来シーズンに向けて、中井は継続の大切さを強調する。
「今シーズンまだ(UCIレースが)2戦ありますけど、とりあえずJプロツアーはこれでおしまいということで個人総合、チーム総合を取れたのは良かったなと思うんですけど、チームとして、シマノレーシングはあの年は強かったねって言われるだけじゃなくて、ここからが重要だと思うので。ここから最強チームって言われるように来年も気を引き締めてみんなでレベルアップしていけたらなと思います」
2024シーズンのJプロツアーは、新チームの参戦も決まっているが、どれだけのチームが、どれだけのプライオリティを持ってこのシリーズ戦に乗り込むかによって、レースの質は変わってくるだろう。
正直、現状ではこのレースを勝ったから、年間チャンピオンになったからといって海外のチームに移籍できる材料になるわけでもない。しかし、個人やチームがレベルアップしていく機会として、段階を踏むために必要となることはこのレースにもあるはずだ。
JBCFかすみがうらロードレース リザルト
1位 山本哲央(チームブリヂストンサイクリング)
2位 寺田吉騎(シマノレーシング)
3位 松田祥位(チームブリヂストンサイクリング)
ポイント賞
兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)
松田祥位(チームブリヂストンサイクリング)
敢闘賞
寺田吉騎(シマノレーシング)
2023年Jプロツアー 個人総合
1位 中井唯晶(シマノレーシング) 2827pts
2位 石原悠希(シマノレーシング) 2261pts
3位 孫崎大樹(キナンレーシングチーム) 2100pts
2023年Jプロツアー U23総合
1位 岡本勝哉(チームブリヂストンサイクリング) 1874pts
2位 津田悠義(キナンレーシングチーム) 1724pts
3位 寺田吉騎(シマノレーシング) 621pts
2023年Jプロツアー チーム総合
1位 シマノレーシング 7954pts
2位 キナンレーシングチーム 5612pts
3位 チームブリヂストンサイクリング 5383pts