イタリアで開幕するツール・ド・フランス2024 コース発表
アモリー・スポール・オルガニザシオン(ASO)が、10月25日にフランスの首都パリのパレ・デ・コングレで、第111回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)のコース発表会を行った。来年はパリ五輪の影響で、ツールは隣国イタリアで開幕し、最終目的地もパリのシャンゼリゼ大通りではなく、南仏のニースになる。
隣国イタリアで初開幕
ツールがイタリアで開幕するのは史上初で、パリ以外で閉幕するのも初めてだ。イタリアがグランデパール(開幕地)になるのは、1924年にオッタヴィオ・ボッテッキアが、イタリア人として初めてツールで総合優勝してから100年目になるのを記念している。
しかし、その開幕地に選ばれたのは、ボッテッキアの故郷ヴェネト州ではなく、中部トスカーナ州の州都フィレンツェだ。初日はフィレンツェをスタートし、エミリア・ロマーニャ州にあるアドリア海沿岸の街リミニでゴールする。コースには途中、サン・マリノ共和国の丘を含めた7カ所の山岳ポイントがあり、初日から累積標高が3700mという厳しいレイアウトになっている。
第2ステージはエミリア・ロマーニャ州にあるマルコ・パンターニの故郷、チェゼナーティコからスタートし、州都ボローニャで有名なサン・ルーカの丘を2回越えてゴールする。第3ステージはエミリア・ロマーニャ州のピアチェンツァをスタートし、フランス国境に近いピエモンテ州の州都トリノにゴールする平坦区間となる。
第4ステージはトリノ近郊のピネローロを出発し、セストリエール峠を越えてフランスへと入り、終盤にはガリビエ峠を越えるアルプス山岳区間だが、頂上ゴールではない。
イタリアからフランスに入った後、コースは一旦北上し、第7ステージで25kmの個人タイムトライアルを競った後、1週目を締めくくる第9ステージは、トロアでブドウ畑の未舗装路を走るグラベル区間が設定されている。未舗装路のセクションは14カ所あり、総距離は32.2kmだ。
頂上ゴールは後半戦に集中
オルレアンで最初の休養日を過ごした後、2週目は南下し、第11ステージは中央山塊のスキーリゾート地ル・リオランにゴールする山岳区間があるが、頂上ゴールはまだ登場しない。来年のツールは、頂上ゴールの山岳区間が後半戦に集中する独特なレイアウトになっている。
最初の頂上ゴールは、ピレネー山脈が舞台となる第14ステージで、ツールマレー峠とウルケット・ダンチザン峠を越えた後、標高1669mで全長10.6kmのサン・ラリー・スランがゴールになる。その翌日の第15ステージは標高1780mのプラトー・ド・ベイユがゴールだ。
ピレネーでの頂上ゴール2連戦で2週目は終了し、南仏のグリュイッサンで2度目の休養日を過ごした後、最終週はグランドフィナーレのニースを目指し、再びアルプスを通過する。頂上ゴールの山岳区間が後半戦に集中した来年のツールは、第19ステージと第20ステージが文字通り山場となる。
第19ステージは標高2024mのスキーリゾート地、イゾラ2000がゴールだが、その前に今大会最高峰となる標高2802mのボネット峠を越える。最終日前日の第20ステージは、ニース近郊の山を巡り、標高1678mのコル・ド・ラ・クイヨールでゴールする。
35年ぶりで最終日が個人TT
そして最終日は、実に35年ぶりで個人タイムトライアルが競われる。ツールは1989年にシャンゼリゼ大通りで競われた最終日の個人タイムトライアルで、マイヨ・ジョーヌを着た地元フランスのローラン・フィニョンが、米国のグレッグ・レモンにたった8秒差で逆転負けした、フランス人にとっては忌まわしい歴史があり、最終日に個人タイムトライアルを行わなくなったと言われていた。開催国フランスは、1985年のベルナール・イノー以来、母国の優勝者が出ていない。
舞台はパリのシャンゼリゼ大通りではないが、35年ぶりで競われる最終日の個人タイムトライアルが、新たなドラマを生む可能性は十分にある。モナコをスタートしてニースにゴールする34kmの個人タイムトライアルは、ラ・チュルビーとエズ峠を越えるレイアウトだ。ツールでは1989年以来、最終日の総合逆転は起きていないが、来年はその可能性もある。
第111回大会の総距離は3492km。全21ステージの内訳は個人タイムトライアル区間が2、平坦区間が8、丘越え区間が4、山岳区間が7で、そのうち4区間が頂上ゴール。累積標高は52230mでジロよりも長い。今年はフランスの全ての山岳地帯がコースに取り込まれていたが、来年はイタリアとフランスのアルプス、中央山塊、ピレネーだけになる。
7月21日の最終日に、パリのシャンゼリゼ大通りの代わりに表彰台が設置されるのは、ニースの有名なプロムナード・デ・ザングレに近いマセナ広場で、2024年の優勝者はマイヨ・ジョーヌをあしらった新しいデザインのトロフィーを、チームメイトたちと一緒に受け取る。
■ヨーナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ/2023年総合優勝)のコメント
(※レキップ紙より引用)
「これはとてもエキサイティングなコースで、非常に難しい3週間で、紙面上ではボクにとても適している。だからとても嬉しいし、とても楽しみだ。来年はグラベル、平坦、個人タイムトライアルを全てこなす事ができなければならない。ボクは標高が高ければ高いほど調子が良くなるから、(標高2000m以上の山が3カ所ある)第19ステージが自分には一番合っていると思う」
■タデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ/2023年総合2位)のコメント
(※レキップ紙より引用)
「このコースは楽しい。過去数年よりも少し難しい1週目が本当に好きだ。ツールの開幕に良い調子でやってくる必要がある。高低差、スプリンターのゴール、2回の個人タイムトライアルがあり、とてもエキサイティングだ。山岳ステージはごく普通で、特別な事は何もないが、ボクにはとても良いように思える。特に最後の3日間が決戦になると思うよ」
第111回ツール・ド・フランス全日程(総距離3492km)
6月29日(土) 第1ステージ[フィレンツェ(イタリア)〜リミニ(イタリア)]206 km (丘越え)
6月30日(日) 第2ステージ[チェゼナーティコ(イタリア)〜ボローニャ(イタリア)]200 km (丘越え)
7月1日(月) 第3ステージ[ピアチェンツァ(イタリア)〜トリノ(イタリア)]229 km (平坦)
7月2日(火) 第4ステージ[ピネローロ(イタリア)〜ヴァロワール]138 km (山岳)
7月3日(水) 第5ステージ[サン・ジャン・ド・モーリエンヌ〜サン・ヴルバ]177 km (平坦)
7月4日(木) 第6ステージ[マコン〜ディジョン]163 km (平坦)
7月5日(金) 第7ステージ[ニュイ・サン・ジョルジュ〜ジュヴレ・シャンベルタン]25 km (個人TT)
7月6日(土) 第8ステージ[スミュール・アン・ノーソワ〜コロンベ・レ・ドゥー・ゼグリーズ]176 km (平坦)
7月7日(日) 第9ステージ[トロア〜トロア]199 km (丘越え/グラベル)
7月8日(月) 休養日(オルレアン)
7月9日(火) 第10ステージ[オルレアン〜サン・タマン・モンロン]187 km (平坦)
7月10日(水) 第11ステージ[エヴォー・レー・バン〜ル・リオラン]211 km (山岳)
7月11日(木) 第12ステージ[オーリヤック〜ヴィルヌーヴ・シュル・ロット]204 km (平坦)
7月12日(金) 第13ステージ[アジャン〜ポー]171 km (平坦)
7月13日(土) 第14ステージ[ポー〜サン・ラリー・スラン(プラ・ダデ)]152 km (山岳/▲頂上ゴール)
7月14日(日) 第15ステージ[ルーダンヴィエル〜プラトー・ド・ベイユ]198 km (山岳/▲頂上ゴール)
7月15日(月) 休養日(グリュイッサン)
7月16日(火) 第16ステージ[グリュイッサン〜ニーム]187 km (平坦)
7月17日(水) 第17ステージ[サン・ポール・トロワ・シャトー〜シュペールデヴォリュイ]178 km (山岳)
7月18日(木) 第18ステージ[ギャップ〜バルスロンネット]179 km (丘越え)
7月19日(金) 第19ステージ[アンブラン〜イゾラ2000]145 km (山岳/▲頂上ゴール/スーベニール)
7月20日(土) 第20ステージ[ニース〜コル・ド・ラ・クイヨール]133 km (山岳/▲頂上ゴール)
7月21日(日) 第21ステージ[モナコ(モナコ公国)〜ニース]34 km (個人TT)
◆サイスポ・ニュース:
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