初開催! THE ROAD RACE TOKYO TAMA2023 男子エリートは兒島の逃げ切り独走勝利
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12月3日、東京オリンピックでのロードレースの舞台となった東京・多摩地域にて、ワンウェイロードレース「THE ROAD RACE TOKYO TAMA2023」が初開催された。
国内プロチーム合わせて全26チームが出走し、兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)が独走して勝利を飾った。
オリンピックレガシーイベント
環境にやさしく健康にも良い自転車をさらに身近なものとするために始まった「GRAND CYCLE TOKYO」。先週はレインボーブリッジを走るレインボーライドが行われたが、12月3日にはその関連イベントとして、東京・多摩地域を使ったラインレース「THE ROAD RACE TOKYO TAMA2023」が初めて開催された。
朝8時からはパラサイクリングのタンデムでの男子タイムトライアルがスタート。今後行われるワールドカップに向けて調子を上げていたと話すポーランドナショナルチームが優勝し、日本ナショナルチームは2位となった。
8時55分からはパラサイクリング女子タイムトライアルがスタート。男子と同じくポーランドナショナルチームが他チームに分差をつけて勝利を飾った。
ロードレースは、東京都八王子市の富士森公園を女子が9時、男子が9時10分にスタートし、東京オリンピックのロードレースで使用した都内コースを中心に1964年の東京オリンピックのコースも一部活用しつつ、調布市の武蔵野の森公園前スタジアム通りにフィニッシュする男子72.6㎞、女子49.8㎞のワンウェイでのロードレースが行われた。
スタート地点の気温は5℃と冷え込んだが、好天に恵まれ、沿道には多くの観戦者が集まった。
男子は、スタートから逃げに出ようとアタックが頻発。山本大喜(JCL TEAM UKYO)や「逃げしか勝ち目がない」と踏んだ金子宗平(群馬グリフィン)らが積極的に動きを見せる。しかし、なかなか決定的な逃げとはならない。
短いレースの半分が過ぎた頃、緩やかなアップダウンが続く東京オリンピックのコースの逆走となる南多摩尾根幹線道路にて山本と兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)の2人の逃げができ、徐々に集団とのタイム差を開いていく。
「前半からガンガンアタックして、集団が疲れたところでしっかりと逃げを作って、兒島選手と自分で逃げ切ろうと思って協力していました。
チームとしてはピュアスプリンターがいないので、最後、集団スプリントになれば岡(篤志の予定)でしたけど、それ以外のメンバーもアタックしてきつい展開にして、逃げ切れるんだったら逃げ切ろうという作戦でした。結果的に自分に良い展開が回ってきました」と山本は振り返る。
兒島もまた、チームとしての作戦をこう話す。
「僕か今村(駿介)選手が最初に抜け出す、そういうプランを立てていました。抜け出せなかったら最後、集団スプリントで取るというプランで、自分が抜け出すことができたので、そのまま僕は逃げ切ろうという思惑でした。走りを見ていて、山本選手も逃げ切りたいんだろうなというのがすごく伝わってきていたので、そこは2人で協力しながら逃げていました」
集団とのタイム差は10秒~20秒ほどを前後。
しかし、残り20㎞を過ぎた左直角コーナーで先頭にいた山本にアクシデントが発生する。
「思っていた以上にコーナーの抜けた先の道幅が狭くて、なおかつイン側にフェンスが急に出てきて、兒島選手も結構インに切り込んだタイミングで急に現れたのでぱっと避けていたんですけど、自分は後ろで避けきれなくて、インのフェンスに肩を当てながら粘って曲がって、出口で粘れるかと思ったんですけど、最後フェンスに突っ込むしかなくて」
山本は反対車線に飛び出してしまう形で落車。大きなケガはなく、集団には復帰したものの、勝負に絡むことは叶わなかった。
そこから兒島は一人旅。「普段だったらこのぐらいの距離すぐなのに」というほど長かったと兒島は話す。残り10㎞前後の是政橋では、集団も目視できる位置には捕らえたもののそこから兒島は再び20秒前後へとタイム差を開いていく。
「20秒というタイム差が僕の中ではどのぐらいなのか、ロードレースにあんまり詳しくないというか、その距離感がよく分からなかったので、ひたすら踏み続けたらずっと(タイム差)20秒前後で走っていました。このまま耐えればいけるかもと思いながら、やっぱり沿道からの応援がすごく多かったので、そのおかげで最後まで踏み切ることができました」
最終コーナーを曲がり、フィニッシュラインが見えるラスト1㎞も兒島が単独先頭のまま突入。遅れて集団が見える。兒島は最後の直線で何度か、後ろでゴールスプリントの態勢を作る集団を振り返り、ついに勝利を確信したラスト50m付近で両手を大きく掲げた。
集団の頭は、岡本隼(愛三工業レーシングチーム)が取り、3位にこのレースを最後に愛三工業レーシングチームを退団する佐藤健が入った。
シーズン最後のロードレース
集団でフィニッシュした山本は、「最低限の怪我で抑えられたのかなとは思いますけど、最後に兒島選手が逃げ切ったので、それがちょっと悔しくて。チームには申し訳ないなという感じですね」と、悔しさを滲ませながらもレース後、兒島を祝福した。
2位となった岡本はこう振り返る。
「このコースももちろん初めてですし、距離も初めてですし、季節的にもこの12月という、いろいろ初めてで。
どんな展開になるか分からなかったんですけど、スタートから結構スプリントにしたくない人は、かなり動く感じだったので、僕もそれに合わせて前にいたりとか、行けるチャンスがあれば、入っていったりしました。
ニュートラルのときにもだいぶまだ集団の人数が多いなと思って、やっぱりそこで一旦、全員心拍も脚も多分戻ったので、そこから先はゴールスプリントに切り替えて、最後だけに脚を溜めていくようにしていきました。
(結果的に)スプリントで2位にはなれましたけど、やっぱり一人、最後に逃したっていうのがちょっと……。逆に言うと、自分たちとしてはそこまでコンディションをこの季節まで持ってこられなかった。そこをチェックしたり潰したりするところまでは持ってこれなかったというのは今回の実力だと思いますし、今の結果はこの状態ではこれ以上はできなかったかなという気持ちもあります」
しかし、チームとしては表彰台に2人を送り込むことに成功し、賞金も獲得した。
「そこは手堅く。それも大事なので。あと、たくさん人がいる中で、集団スプリントを見せられたというのは僕としてはうれしいですし、ちゃんと最後にスピードの高い状態でのスプリントを見せられたかなと思うので、そこは良かったですね」
優勝した兒島がメインとする種目はトラック競技。今回、ロードレースとしては短い距離であったことは兒島にとって有利に働いた。
「それがすごく僕の中で良かったですね。あれが100㎞とか超えていたらさすがに逃げ切ることはできなかったので、そこが救いでした」
最後は、集団を後ろにして余裕のゴール。そのときの気持ちについてこう話す。
「やはり気持ちいいですね。後ろで集団がスプリントしていてガッツポーズしながら走るというのは、アンダーの全日本選手権以来だったので、やはり余裕を持ってゴールできるっていうのはすごくうれしいですね」
「ロードレースは詳しくない」とは言うものの、ツール・ド・九州でもクリテリウム、第1ステージで勝利を挙げ、今年は初開催のロードレースでの勝利が続いた。
「自分としてはロードレースは結構苦手意識を持っていたので、この1年、すごく大きなレースで優勝することができて、ロードレース自体にも自信をつけることができたので、これからもそういう第1回レースなどが開催されたらまた狙っていきたいなと思います」
今回のトップ3は全員、日本大学自転車部卒。自転車部の寮も近く、今回のコースの一部は、彼らにとってのホームコースでもあったそうだ。
「大学時代、毎朝通っていたところをレースで、向きは違ったんですけど、ここをレースで使うのはすごいな、と。普段は朝でもすごく車が通ったりするので、封鎖して僕らのレースのために、人が集まって見てくれているというのは、やっぱりすごく頑張りがいがあるというか、そこを通るときは特別な思いになりましたね」と岡本は話す。
3位に入った佐藤もまた、東京オリンピックで使用したコースで多くの観客の前で走れたことについてこう語る。
「東京オリンピックの際はコロナ禍でもあったんですけれども、そのコロナ禍が明けて、実際に沿道でも応援できるということで、僕ら自身も東京オリンピックで使われたコースを実際にレースで走ることができたというのはすごく楽しくうれしい経験でもありましたし、たくさんの方に観戦していただける、知っていただける機会を得られたというのはすごく良かったです」
エリート女子は少人数スプリント
49.8㎞で争われた女子のロードレースの出走人数は23人。
序盤に小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)や渡部春雅(明治大学)らが仕掛け、後半にいくにつれて人数を徐々に減らしていく。
フィニッシュラインの直線にあらわれたのは、7人。
横並びのスプリント対決で一番後ろからかけた渡部が前に出切って、優勝となった。
「ここのコースはホームコースなので、ここで勝てて本当に良かったです」と勝利した渡部は笑顔を見せた。
今回共催となった東京都としても、今後この大会を続けていきたいという意向があるそうだ。
東京オリンピックの中継で見せられたロードレースコースの景色は非常に素晴らしいものがあった。自転車のさらなる普及という意味でも、東京という街の魅力の発信という意味でも、今後の展開を楽しみにしたいところだ。
THE ROAD RACE TOKYO TAMA2023 リザルト
エリート男子 ロードレース 49.8㎞
1位 兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)1時間29分13秒
2位 岡本 隼(愛三工業レーシングチーム)+3秒
3位 佐藤 健(愛三工業レーシングチーム)+3秒
エリート女子 ロードレース 49.8㎞
1位 渡部春雅(明治大学)1時間16分27秒
2位 植竹海貴(ワイズロード)+0秒
3位 小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)+0秒
パラサイクリング男子 タイムトライアル
1位 ポーランドナショナルチーム(KOPICZ Karol、BIALOBLOCKI Marcin)31分0秒30
2位 日本ナショナルチーム(木村和平、三浦生誠)+3分59秒66
3位 タイランドナショナルチーム(PHUPHAP Somrak、HACHATURAT Surachai)+5分22秒56
パラサイクリング女子 タイムトライアル
1位 ポーランドナショナルチーム(PUTYRA Dominika、WOJCIKIEWICZ Kamila)28分9秒59
2位 リパブリックオブコリアナショナルチーム(LEE Seongsoon、BAEK Sun Young)+2分14秒14
3位 タイランドナショナルチーム(BOONMALERT Watcharobon、SAETENG Oatchara)+3分23秒46
THE ROAD RACE TOKYO TAMA 2023(GRAND CYCLE TOKYO)
日程:2023年12月3日(日)
ロードレース会場:富士森公園(八王子市)〜武蔵野の森公園前スタジアム通り
パラサイクリングロードTT会場:味の素スタジアムあじペン広場〜武蔵野の森公園〜スタジアム通り(周回コース)