JCL TEAM UKYOが新体制で挑んだシーズン初戦「アルウラー・ツアー2024」レポート

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2024年、ボルピGMとボアロ監督を迎え入れ、イタリアを拠点に新体制となったJCL TEAM UKYO。シーズン初戦としてサウジアラビアを舞台としたUCI 2.1カテゴリーのステージレース「ALULA TOUR(アルウラー・ツアー)2024」に挑戦した。

JCL TEAM UKYO アルウラー・ツアー2024

昨年の「SAUDI TOUR(サウジ・ツアー)」の名を改めた同大会は、JCL TEAM UKYOが2年連続で参戦するステージレース。ワールドツアー9チーム、プロツアー5チーム、コンチネンタル3チーム、サウジ代表1チームを含めた全18チーム、総勢126人で行われる全5ステージ総距離811.2km。個人総合時間賞をはじめ4賞のリーダージャージが設定されている。

イスラムの聖地メディナから北に約300km離れた街アルウラー、多くの遺跡に広大な文明の痕跡があり、最終ステージのスタート地点となるオールドタウンの古い街並みはサウジアラビアの観光の中核として位置付けられている。レースはアルウラーを中心に切り立った砂漠地帯へ広がる道路を駆け抜けた。このレースの名物は砂漠の砂を巻き上げる強い風はレースに大きく影響を与えた。

コースは全ステージのうち3ステージがスプリントステージ、1ステージがミディアムヒルのステージ、そして最終ステージが総合上位を絞り込む山岳ステージ。 JCL TEAM UKYOはスプリントステージを狙う選手、総合成績を目指す選手、それらをリードしフォローする選手の7人で構成。ボアロ監督の指揮でチームはレースを戦った。

 

第1ステージはマルチェッリが7位

JCL TEAM UKYO アルウラー・ツアー2024

第1ステージの約150kmのコースは後半の周回に入るとフラットなゴールであることから、スプリンターのマルチェッリ・マッテオをエースに指名し、チームが有利に展開するために序盤からの逃げに山本大喜が入ってレースをコントロール、他の選手は山本やマルチェッリの動きのフォローに働くという戦略で望んだ。

スタートしてすぐにレースが動く。ファーストアタックで抜け出した4人のメンバーに日本チャンピオンジャージを着る山本が入る。5人の先行グループは向かい風を協力しながら80km地点で2分のタイムギャップを稼ぐが、ややメンバーの脚に疲れが見えたところでグループは分裂。一方、後方のプロトンではゴールスプリントに向けワールドツアーチームが追走体制に入る。

山本が逃げたことでプロトン内でのJCL TEAM UKYOのメンバーは終盤に向け、淡々と纏まった走りを展開した。残り30km、最後の小周回を前に山本がプロトンに捕まると、メンバーはマルチェッリを優位なポジションにするため連携を作る。特にラスト1周を強力にアプローチするのは小石祐馬とジョバンニ・カルボーニ。Uターンと直角コーナーが続くレイアウトにベストなラインをマルチェッリに導く。

こうしてマルチェッリはラスト300mのコーナーをレースの最前線に位置することに成功し、一気に横に広がったゴールスプリントに車輪を並べる。しかし、ワールドツアーチームのスプリンターが揃ったゴール勝負は非常にハードな展開となり、マルチェッリは前方を塞がれて7位でゴールとなった。しかしながら、山本のロングエスケープやゴールスプリトでのマルチェッリの一桁に手ごたえも感じる開幕戦となった。

JCL TEAM UKYO アルウラー・ツアー2024
JCL TEAM UKYO アルウラー・ツアー2024

1月30日(火)Stage 1
Al Manshiya Train Station (149.1km)
DST 149km、Ave 44.9km/h
1  VAN UDEN Casper(Team dsm-firmenich)3h18’55”
2  GROENEWEGEN Dylan(JAYCO ALULA)+00
3  MERLIER Tim(SodalQuick Step)+00
7  MALUCELLI Matteo(JCL TEAM UKYO)+00

 

第2ステージで岡がモーストアクティブライダー賞を獲得!

JCL TEAM UKYO アルウラー・ツアー2024

第2ステージは強い風とサファリパークの丘陵地を抜ける長いスパンのアップダウン、そして約200kmの長丁場のレースとなった。このステージに向けてボアロ監督からのオーダーは「小石選手がブレイクアウェイでレースを動かし、スプリントでチャンスがあればステージ優勝はマルチェッリ選手が狙う。」というもの。多くの選手が僅差でひしめいている第2ステージ、厳しい展開が予想される中レースはスタートした。

レースが動いたのは20km地点のボーナススプリントポイント。この地点を通過後、ペースが揺らいだ隙をついて小石を含む5人がリードアウトに成功する。強い追い風でリードを広げ、その差が最大で3分40秒となると、いよいよ暫定のリーダーチームが纏まって追走にかかる。

80km地点を過ぎ、コースの進路が変わると強い風は一気に向かい風となり、選手たちを苦しめる。小石らを追うプロトンもこの風でいくつかのグループに分断。しかし、絞られた追走が先頭をキャッチすると、スピードが緩みプロトンは一体化。そしてレースは98km地点で動く。単発の逃げがグループとなり岡を含む5人がエスケープグループを形成。非常に強い向かい風が吹き、後方のプロトンは残りの距離を図り一度ペースダウン、その差は最大で5分40秒まで広がる。

順調に逃げるエスケープグループは123km地点のスプリントポイントへ差し掛かる。すると、岡がこれを鋭い動きで捌いてトップで通過、もう一つの160km地点のスプリントポイントを獲ればイエロージャージとして大会で設けられているモーストアクティブライダー賞の可能性が見えてくる。

一方、後方のプロトンはゴール勝負に向けてスプリンターを擁するワールドツアーチームが纏まり追走に入る展開。スプリントポイントを前に40秒まで差が縮まるも、リードグループがこれを通過、岡選手が2度目の先着を果たす。 しかし、その直後にレースは振出しに戻り、一気にスプリント勝負への展開の流れが強くなっていく。

上り基調のラスト10kmをハイペースで進行したプロトンは人数を絞りながらゴールへ突き進み、強い牽引から飛び出したウノエックスのヴァーレンショルが両手を挙げてレースを制した。だいぶ人数が絞られた先頭集団であったが、個人総合成績(GC)狙いのトーマス・ペゼンティがタイム差なしの30位でゴール。ターゲット通りの活躍を魅せた。

JCL TEAM UKYO アルウラー・ツアー2024
JCL TEAM UKYO アルウラー・ツアー2024

1月31日(水)Stage 2
AlUlaWinter Park〜SharaanNature Reserve (199.1km)
DST 199.2km、Ave 42.352km/h
1  W.RENSKJOLD S.ren(UNO X)4h42’04”
2  MULUEBERHAN Henok(ASTANA)+00
3  EEKHOFF Nils(TEAM DSM)+00
30 PESENTI Thomas(JCL TEAM UKYO)+00

 

第3ステージ、小石がエスケープするも厳しい展開に

JCL TEAM UKYO アルウラー・ツアー2024

第3ステージは、やや平坦基調の170km。総合上位が僅差で並ぶことから後半の熾烈な展開が予想される。また、この日は前日活躍した岡がMost Active Riderジャージを着用しての出走となった。

ポイントが加算されるスプリントポイントは16.4km / 51.8km地点と前半に設置されていることから、ここに向けての流れも含めてチーム内でミーティングが行われた。内容は進行方向が変わると大きく変わる風向きを把握しレースに備え、ペゼンティの総合成績を守りながら、ポイントがかかる岡のスプリントポイントへのフォローとスプリントではマルチェッリで勝負をするというプランとなった。

スタートすると16.4km地点のスプリントポイントに向け岡が抜け出しを図る。しかし、同点で並ぶ選手とこの賞を狙っているチームの執拗なマークに抜け出すのが困難な状況が続く。そして、このカウンターで飛び出した2人に小石がここに対応し3人のリーディンググループが形成された。プロトンとは最大で5分差を付けたこの3人は2度のスプリントポイントを通過した事でポイントを奪取し、岡を逆転してしまう。

残るマルチェッリのスプリント勝負のため、ポジション争いに加わる。しかし、レース終盤は狭い道路を抜ける区間でハイスピードのまま縦に伸びたプロトンに追い打ちをかける強い横風、ここでプロトンの分断が起きるとスプリンターのマルチェッリと総合上位のペゼンティを含めたメンバーは35位集団に取り残されてしまう。 必死の抵抗を見せるが力及ばず、その差は開きゴールでは55秒のタイムギャップでレースを終えることとなった。

JCL TEAM UKYO アルウラー・ツアー2024
JCL TEAM UKYO アルウラー・ツアー2024

2月1日(木)Stage 3
AlUla International Airport〜AlUla Camel Cup Track (170.6km)
DST 170.6km、Ave 42.6km/h
1  MERLIER TIM(Soudal-Quick STEP)3h59’52″
2  DE KLEJIN ARVID(TUDOR PRO CYCLING)+00
3  VAN UDEN CESPER(DSM-Firmenich)+00
50 PESENTI Thomas(JCL TEAM UKYO)+55

 

第4ステージで岡がモーストアクティブライダー賞を奪還!

JCL TEAM UKYO アルウラー・ツアー2024

第4ステージはALULAを代表する古代都市HEGRAをスタート地点に、オープニングセレモニーが行われたMARAYAをゴールする142.2km。70km程の大周回を1周した後、半周コースを重ねてゴール地点を一度通過する小周回を1周するというレイアウト。昨年はこのゴール勝負においてマルチェッリが2位になっていることから、チームの作戦としても彼をゴール前に前方へエスコートする役割を最重要のテーマに、僅差でトップに並んでいる岡のモーストアクティブライダー賞の獲得を目指した。

スタートすると21km地点のスプリントポイントに向けてすぐにレースが動く。16km地点で岡など5人が抜け出す。しかし、このリーディンググループは同賞を狙っていることから、協調体制が築けず岡がスプリントポイントまでをリードする苦しい展開となったが、スプリントポイントの結果、岡選手は2位通過を果たす。

その後、岡の逃げが吸収されるとスプリンターのマルチェッリを守るメンバーは固まって40位前後のポジションをキープするという作戦でレース後半に備える。100km地点までの平均時速は45km/hと高速で展開していき、残り30kmを切るとプロトンは各チームがスプリントトレインが組まれスピードが活性化した。

JCL TEAM UKYOもトレインで集団前方にポジションを固めるが位置取り争いは激化、ラスト400mの上り坂、先行するクイックステップのメルリールがコフィディスのコカールの捲りを押し切り優勝。 縦にばらけたゴールスプリント、健闘したマルチェッリだがゴールは12位で迎えた。

チームとしては結果を残すことはできなかったが、ワールドチームのスプリントへの展開に必死に戦いを挑んだ。そして、この日前半を果敢に動いた岡がモーストアクティブライダージャージを奪還することに成功した。

JCL TEAM UKYO アルウラー・ツアー2024
JCL TEAM UKYO アルウラー・ツアー2024

2月2日(金)Stage 4
Hegra〜Maraya(142.2km)
DST 141.2km、Ave 44.19km/h
1  MERLIER TIM(Soudal-Quick STEP)3h11’43″
2  COQUARD Bryan(COFIDIS)+00
3  VAN UDEN CESPER(TEAM DSM-FIRMENICH)+00
12  MARCELLI MATTEO(JCL TEAM UKYO)+03

 

第5ステージはチーム一丸となって岡のジャージを死守!ペゼンティがUCIポイントを獲得

JCL TEAM UKYO アルウラー・ツアー2024

最終日の第5ステージは、アップダウンと終盤に総合成績が入れ替わる上りを含めたレイアウト。特に残り13kmのレイアウトは注目で、5kmで獲得標高450m上る激坂の後吹きさらしのストレートを8㎞走りゴールを迎えるクライム能力とスピードを求められるコースとなった。

JCL TEAM UKYOはクライマーのベゼンティをエースに、前ステージでモーストアクティブライダージャージを奪還した岡 のジャージキープを狙うステージとなった。

チームのミーティングでは岡のスプリントポイント獲得のフォローに小石、個人総合成績を目指すペゼンティにはカルボーニをメインに配置し、他のメンバーも彼らのフォローに回るという作戦。特に岡はポイント争いが僅差に6人いるため、57.6km/107.kmに設置されたスプリント賞に向けた動きにしっかりと対応してポイントを奪取する必要があった。

レースがスタートすると10kmほどでウノエックスの選手が飛び出す。さらに20km地点でこの2人に小石とQ36.5のコンカが合流し、4人のリーディンググループを形成する。 57.6km地点のスプリントポイントは3位までがポイント対象なため、ポイント争い圏外のこのメンバーが逃げ続ければ岡に優位な展開になる。

プロトンは4人を容認しUCIワールドチームが道幅いっぱいに膨らみペースダウン。しかし、このわずかな隙間をぬって岡と同点で争っているバッサイカンとゾルザキス(ROOJAI INSURANCE)が抜け出し、先行4人へブリッジする動きを見せる。岡はここに反応できず、マルチェッリがこの危機を察知してひとり飛び出して追いつき、リーディンググループは小石とマルチェッリを含む7人となる。

ここでの2人の目的はバッサイカンにポイントを取らせない事であったが、58km地点のポイント賞は彼に1位を奪われてしまい、2位マルチェッリ、3位小石が通過する。この時点で岡は次の107km地点のスプリントポイントを1位通過しなければジャージを失うことになった。この後方のプロトンでは山本とアールが牽引し展開を振出しに戻そうとする。

再び集団が一つになると99km地点でゾルザキスが再び単独アタック。山本が追走で抜け出す。最後のスプリントポイントまで8kmを切っている状況にJCL TEAM UKYOはトレインを作り、利害が一致するクイックステップ勢と猛追を始める。107km地点のスプリントポイントを前に展開を振り出しに戻し、岡が1位通過、マルチェッリも3位通過し、バッサイカンにポイントを取らせずに同点に持ち込む。これでゴール順で岡のジャージが決着することになる。

残すはゴールへの最終展開、カルボーニがペゼンティを守りながら残り30kmを切ると、先ほどまでアシストに徹していた山本がメカトラに見舞われ脱落、最後の山に差し掛かると総合を狙うクライマーたちが一気に前方に集結する。残り10km、15%を越える上りの連続に、リーダージャージを着るティム・メルリール(スーダル・クイックステップ)が脱落、間もなく岡も脱落してしまう。しかしポイント同点のバッサイカンはすでに遅れていることからトラブルがなければジャージを獲得できる状況になった。

前方では、スーダル・クイックステップのルセルフが急勾配をものともしない高ケイデンスで強烈にリードを始める。この動きに30人ほどの先頭集団は崩れ、ペゼンティも20番手あたりで必死に上る展開となる。レースはこの動きに乗り切った3人によるスプリントとなり、サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルウラー)がスプリントを制し優勝、総合優勝も手中に収める。

3人がゴールして34秒後、ペゼンティとカルボーニ、アールが12位集団でゴールし、ペゼンティの総合成績を23位と少し上げる結果となった。 そして45位で岡がゴール、見事にモーストアクティブライダーのオレンジジャージを手中に収め、全5ステージ総距離811.2kmのツアーを走り切った。

JCL TEAM UKYO アルウラー・ツアー2024
JCL TEAM UKYO アルウラー・ツアー2024

2月3日(土)Stage 5(Final)
AlUlaOld Town〜Skyviewsof Harrat Uwayrid(150.2km)
DST 150.2km、Ave 44.03km/h
1  YATES SIMON(JAYCO ALULA)+3h24′37”
2  LECERF WILLIAM(SodalQuick Step)+00
3  FISHER FINN(UAE TEAM EMIRATS)+00
23  PESENTI THOMAS(JCL TEAM UKYO)+34

 

 

アルウラー・ツアー2024(カテゴリー:UCI 2.1)

開催日程:2024年1月30日(火)〜2月3日(土)

開催地:サウジアラビア

ステージ数:5ステージ

総距離:811.2km

JCL TEAM UKYO参加メンバー:小石祐馬、山本大喜、岡 篤志、ネイサン・アール、ジョバンニ・カルボーニ、マッテオ・マルチェッリ、トーマス・ベゼンティ

総合成績
1. SIMON YATES(JAYCO ALULA)+18h37′05”
2. WILLIAM LECERF(Sodal Quick Step)+03
3. FINN FISHER(UAE TEAM EMIRATES)+03
23. THOMAS PESENTI(JCL TEAM UKYO)+1’52

Most active rider
ATSUSHI OKA(JCL TEAM UKYO)

チーム総合成績
1. BORA Hansgrohe
2. UAE Team Emirates
3. JAYCO ALULA
10.  JCL TEAM UKYO

ALL RESULT
https://www.thealulatour.com/en/rankings

J SPORTSオンデマンド
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