2024年Jプロツアー開幕 鹿屋・肝付ロードレース、岡本隼が2連覇
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2月24日(土)、2024年のJプロツアー開幕戦が鹿児島県鹿屋市にて開催された。リーグが再びJBCFに一本化されたことにより、プロトンの人数は増え、ここ最近とは違ったような展開が加わった。そんななかで愛三工業レーシングチームの岡本隼が勝ち切り、この大会2連覇を飾った。
鹿屋体育大のお膝元でのレース
三連休の中日であった2月24日、鹿児島県鹿屋市にてJBCFのレースが開幕した。前日まで冷たい雨が降り注いでいたが、この日は気温は11℃程度と低いものの朝から曇り空となった。
鹿児島県立大隈広域公園周辺特設コースの昨年第1回とは逆の右回りで1周は6.5㎞。Jプロツアーカテゴリーは20周回で争われた。会場には多くの出店やチームの紹介立て看板も出ており、周辺地域の人を中心に観客も集まっていた。
12時30分にスタートラインでセレモニーが始まると、地元のシエルブルー鹿屋のメンバーが最前列へと並んだ。後ろには、前年度チームランキング、個人ランキング共に首位のシマノレーシングが整列。
今年から分化していたもう一つのリーグ、JCLがなくなったことによって、JCLに所属していたチームがJプロツアーに復帰。さらにはヴェロリアン松山とチームサイクラーズ・スネルという新設チームも加わり、今回の大会には合計17チームが参戦し、この日のレースには105人が出走した。
12時40分にレースがスタートすると、早速多くのアタックが起こった。
3周目に入る頃、10人前後の逃げグループができるが吸収され、6周目には島野翔太(イナーメ信濃山形)と阿部嵩之(ヴェロリアン松山)が2人で飛び出すが、それも吸収。
その後も逃げを打とうと数人が飛び出しをはかるがなかなか決まらない。
逃げ切り一辺倒ならず
半分の10周目に入ると、畑中勇介(キナンレーシングチーム)、石上優大(愛三工業レーシングチーム)、柴田雅之(ヴィクトワール広島)、中井唯晶(シマノレーシング)、河野翔輝(チームブリヂストンサイクリング)、渡邉和貴(アヴニールサイクリング山梨)、新開隆人(ヴェロリアン松山)、マトリックスパワータグに新加入したアグロティス・アレクサンドロスと織田聖、そして小林海の10人のグループと集団の間が割れた。
マトリックスパワータグは最大の3人を逃げに入れ、逃げ切りを狙ったが、「できれば人数を入れて、と話をしてたんですけど、パコ(フランシスコ・マンセボ)とホセ(・ビセンテ)が入れなかったのはちょっと誤算でしたね」と小林は話す。
集団とのタイム差は1分ほどに開いた。
集団ではチームサイクラーズ・スネルやスパークル大分などが先頭を引く。その後もチームサイクラーズ・スネルが先頭を引き続け、先頭とのタイム差は最大でも1分半まで抑えた。
終盤に近づいていくと、先頭からは柴田と新開の2人が落ち、8人に。
16周目、集団先頭をキナンサイクリングチームや愛三工業レーシングチームが固め、牽引し始めると一気にタイム差が縮まり始めた。
18周目にタイム差が30秒程まで縮まると、捕まるのを嫌った小林が上り区間でアタック。
残された逃げのメンバーを集団が吸収し切る前に、集団から草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)が飛び出し、「ここで追いつかず終わっちゃうぐらいなら、もう行くしかないなと思って」と一気に先頭の小林まで追いついた。
強力な2人の逃げに対して、集団はキナンレーシングチームやシマノレーシングが猛追をかける。
「せめて2人でいければと思ったんですけど、やっぱり難しいですね。集団が有利なコースです。もう少し起伏があったら変わったかもしれないですけど。できることは全部やりました」と小林は振り返る。
19周目の上り区間で2人は捕まった。
草場はキャッチされた後も集団の最後尾で上り区間をクリアし、その後は前回大会覇者の岡本隼(愛三工業レーシングチーム)のスプリントアシストに向けて脚を溜めた。
最終周の上りでは山本哲央(チームブリヂストンサイクリング)が単独アタック。しかし、それも逃げ切りには至らなかった。
ラスト300mで集団はブツ切れに。先頭を引くのは石原悠希のスプリントを狙ったシマノレーシングの大仲凛巧。大仲のすぐ後ろには草場が岡本を引き連れて位置取った。その後ろには、ヴィクトワール広島に移籍した小野寺玲や宇多川塁(群馬グリフィンレーシングチーム)が続く。
ラスト200mを過ぎて岡本が発射すると、上り勾配をぐんぐんと踏み込み、後ろを寄せ付けずにフィニッシュラインまでの距離を詰めていく。
「これでまくられたらもう自分の実力不足だなっていうぐらい、思いっきりスピードに乗せてかけることができた」と、後続に1秒のタイム差すらもつけてフィニッシュラインを切った岡本は、この大会2連勝を示す2本指を掲げた。
勝利した岡本は今回、自分の役割であるゴールスプリントに向けて徹底して脚を温存したと話す。石上は逃げで、草場は最後の展開で、勝ちに行けるチームメイトたちがそれぞれチャンスを手にしつつ、最後に自分の持ち場で勝利を手に入れられたことは、昨年の勝利とはまた違った意味を持った。
「自分は最後だけに絶対脚を溜めておいて、他の動ける選手、石上は逃げてチャンスがあるなかで、草場は自分の最後のスプリントのことも気にしながらもチャレンジする走りを見せて、いろんなパターンで勝負できたというのは、去年と違ってすごく良かったと思います。いろんな戦い方ができるチームになりつつあるのかなという気持ちはありますね」
リーグ統合の恩恵
これまでのJプロツアーは、実力差に偏りがあったこともあり、有力な逃げグループができあがったらそのまま逃げ切ってしまうというパターンが非常に多かった。今回はコースの性質上もあるかもしれないが、いつものお決まりの形のような展開ではなく、どうなるだろうと毎周回ワクワクさせられる展開が繰り広げられた。
「いろんなチームが出てきて、集団牽引をして、一つのチームが終わったら他のチームが出てきて、自分たちもレースしながらすごく面白かったですね。読めないというか、ああ、そう来るか、みたいなところがあったので」と、岡本は振り返る。
リーグが一度分かれたことで集団の人数が減り、レースを成立させるためにも意図を持って逃げや集団牽引に加わろうとするチームが増え、実行力がついてきたというのもあるのかもしれない。そう考えると、リーグが統合した今、各リーグ、あるいは他のUCIレースなどで揉まれる形となったことはかえって良かったとも言える。
アジアツアーなどのUCIレースの遠征もすっかり解禁となり、Jプロツアー各戦に出場するチームやメンバーの入れ替わりは多くなるかもしれない。
今回のレースは、宇都宮ブリッツェンや現在トラックアジア選手権でメダルを量産しているチームブリヂストンサイクリングの主力メンバーも不在であった。彼らも加わり、さらにチーム戦が発展していったならば、もしかすると近年で最も面白いJプロツアーになるかもしれない。
第2回 鹿屋・肝付ロードレース リザルト
1位 岡本隼(愛三工業レーシングチーム) 2時間59分30秒
2位 小野寺玲(ヴィクトワール広島) +1秒
3位 宇多川塁(群馬グリフィンレーシングチーム) +1秒
Jプロツアー第1戦 第2回JBCF 鹿屋・肝付ロードレース
開催日:2024年2月24日(土)
開催地:鹿児島県立大隅広域公園周辺特設コース
https://jbcfroad.jp/jprotour/