女子Qリーグ、中学生Nリーグ2023-2024最終戦 しもふさクリテリウム3月・レポート
目次
3月3日(日)、千葉県成田市・下総運動公園内においてサイクルロードレースの女子リーグ「クイーン・リーグ(Qリーグ)」、中学生リーグ「ニュー・エイジ・リーグ(Nリーグ)」4季目となる2023-2024シーズンのリーグ最終戦「しもふさクリテリウム 3月」が開催された。
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コントロールライン上にある橋を背景に中学生男子クラスを走る出場選手たち photo: Takashi Saito
“しもふさクリテ”の通称で親しまれているこの大会はサイクルロードレース協会東日本(MATRIX)主催で、開幕戦として2023年5月7日に開催された「しもふさクリテリウム 5月」と同じく、会場内にある1周回・約1.5kmの常設サイクリングコースで行われた。
トップクラスはもちろん、ジュニアやキッズ、女子にも人気が高い“しもふさクリテ”には多くの参加者が集まったが、リーグ対象レースはQリーグとNリーグ中学生女子NWはレディースクラスを、Nリーグ中学生男子Nは中学生クラスを走り、それぞれのレースでは最終戦にふさわしく年間総合ポイントリーダーの座を決定する熱い闘いが繰り広げられた。
当日は朝から風の穏やかな天候のなか、大会ホストチームでJプロツアーを中心に活躍するチームマトリックス・パワータグの所属選手達が、朝のサイクルクリニックや第1レースとなる120分エンデューロで参戦ライダーをエスコートしながら大会を温める。
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朝は雲が多かったものの、昼からは晴れ間が見えた早春の下総を、試走時に毎回併催されるサイクルクリニックや、120分エンデューロ、出展ブースなど様々な企画で盛り上がる(Photo:QNリーグ事務局)
レディースクラスでNリーグNWの岡田愛裕來が3位入賞
120分エンデューロが終了し、個人タイムトライアル、キッズの年齢別クラスレースを経て、少し暖かくなってきた昼過ぎ12時15分から「レディース」クラスのレースがスタートとなる。
スタート地点には現在Qリーグのポイントリーダーである根本香織(Team一匹狼)や、Nリーグ中学生女子NWポイントリーダーの岡田愛裕來(ブラウ・ブリッツエン U15)、さらに現在 Nリーグ中学生女子NWランキング3位の西山千智(High Ambition女子サイクリングアカデミー)の姿もあり、賑やかな雰囲気。
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青空の下でスタートラインに揃うレディースクラスの選手たち(Photo:Takashi Saito)
定刻スタートしたレースにはエントリーした9人全員が出走。1周回1.5kmのコースを 5周回する最初の周回で集団はひとつで、前方は佐藤直美、篠塚萠依(AVENTURA)、そしてNリーグのポイントリーダー岡田が固める。しかし2周目からHigh Ambition・西山が単独で飛び出し、集団と最大4秒のタイム差をつけ、その西山を追いかける集団をQリーグのポイントリーダー根本が引っ張る。
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スタートから積極的に前に出る水色のバトルマリンジャージを着るNリーダー岡田(Photo:Takashi Saito)
3周目に西山が集団に吸収され再びひとつに。しかしペースは下がらず、残り1周となったコントロール地点を通過する集団はひとつのままだが縦に伸びていく状況に。
そしてゴールに向かう最後の駆け上がりで、うまくイン側に位置取りしていた佐藤がスプリントで抜け出し優勝。2位には市村愛(セマスR新松戸)、3位は岡田が入り表彰台をゲットした。
なお根本は惜しくも僅差で5位となったが「前回2月に走った大磯クリテリウム(第5戦)よりは走れるようになった」と手応えを感じていたコメント。
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イン側に位置取りしていた佐藤(一番左)がスプリントを刺しきり優勝を決めた(Photo:Takashi Saito)
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岡田は後半ペースを落とすものの最後の力を振り絞り 3位、根本は 5位に入る(Photo:Takashi Saito)
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レディースクラス表彰式、左から 2位・市村、優勝の佐藤、3位・岡田(Photo:Takashi Saito)
このレース結果により着実にポイントを積み重ね、4代目の年間総合ポイントリーダーとなった根本は、レディースクラス表彰式の後に行われたアメジストジャージ授与式で、この1年間の転戦を振り返りながら「Qリーグがあることで福島県のレースに出場したり、普段はエントリーしないヒルクライムレースを走ったりと、さまざまな大会にチャレンジするキッカケになりました」とポイントリーダーを守るためにシリーズ戦を闘うなかでの気づきを教えてくれた。
一方で「年間を通して女子レースの参加人数が少ないな、と感じていました」という言葉の裏には、今後の女子選手へ刺激を与えたいという気持ちも強いようだ。「来シーズンも頑張ります!」という宣言に、彼女が所属する Team一匹狼の皆さんも盛り上がってくれた。
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アスリチューン年間総合賞はポイントリーダー根本に合わせた特別セットを受け取った(Photo:Takashi Saito)
そしてレディースクラス3位の表彰台にも立ち、Nリーグ中学生女子NWの年間総合ポイントリーダーを決めた岡田は、今回のレース結果について「今日は最初の方は良い感じだったのですが、最後になるにつれて落ちて行ってしまったので、スプリントが上手くいかず惜しかったです」と事前に目標としていた昨年9月に続く同会場での優勝が実現できなかったことを悔やんでいたが、次回以降のレースに向けての課題は見えたそうだ。
4月から中学2年生になるので「Nリーグは来シースンも続けます!」とのうれしいコメントとともに「練習でパワーをもっと身につけて、もっと優勝をしたいです!」とバトルマリンジャージ姿で笑顔を見せながら、さらなる目標を教えてくれた。
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EXLUB年間総合賞としてオリジナルポロシャツなど特別セットを受け取る岡田(Photo:Takashi Saito)
ジュニア強化レースでNリーグ選手達が敢闘賞を受賞
この後、おこなわれたのが今大会に参加者する中学生と高校生の男女が無料で参加できるジュニア強化レース。コースを8周回して競われるが、ゴール着順だけでなくレース中の動きをチームマトリックス パワータグの所属選手や安原昌弘監督が選手の走りをチェックし「敢闘賞」を授与する趣旨のレースだ。
熱戦を繰り広げ、果敢なアタックなど目まぐるしい展開のなか、敢闘賞には15人が選ばれ、そのなかにはNリーグの岡田や西山の女子選手2人に加えて、「特別敢闘賞」としてNリーグ後半戦から登録し活躍する大藤優作(Team一匹狼)が受賞し、安原監督から走りを絶賛されていた。レース後には今ジュニアレース企画を協賛したメーカーのブース前で記念撮影に応じていた。
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Nリーグリーダーの岡田に敢闘賞を授与する安原監督は、ジュニア女子選手の走りにも注目していた
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特別敢闘賞としてNリーグ大藤(Team一匹狼)の積極的な走りを高く評価
安原監督からジュニアレースに参戦した選手たちへ、「表彰式には敢闘賞として集まってもらったけど、このジュニアレースを走ってくれた選手達はスタート前のワシの話を聞いてくれて、ちゃんと走ってくれた。最後までレースを見ていたけれど、皆さんの走りが良くてワシは涙が止まらんかった。本当は参戦してくれた全員に(敢闘賞を)差し上げたいけど、まあ、いろいろコレの関係もあるから(笑)涙を呑んで、この15人に絞らせてもらいました。皆さん、本当に良う頑張ってくれました!良うやった!これからも頑張りなさい!以上!」と熱い応援コメントをいただいた。
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ジュニアレース敢闘賞・受賞選手たちでレース協賛ブースを背景に記念撮影!(Photo:QNリーグ事務局)
中学生クラスはNリーグの落合隼が圧勝
さらに次々とレースがおこわなれ、最終ブロックの午後2時46分にスタートとなったのが、Nリーグ中学生男子Nの対象レースとなる「中学生」クラス。今回は37人のライダーがエントリーし、こちらも全員出走。特にこのレースは中学生最後レース出場となる選手が多く、スタートから気合の入った展開が繰り広げられる。
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スタートラインで号砲を待つ中学生クラスに出場する選手たちには緊張が走る(Photo:QNリーグ事務局)
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スタートからペースが速く、集団内ではお互いを細かくチェックしあう(Photo:Takashi Saito)
コース 6周のレースで最初の1周目こそは集団はひとつだったものの、かなりペースが速く2周回目に入るころから集団から遅れる選手がポロポロと発生。そのなかでもNリーグの現ポイントリーダーで、この日のレースでも「勝ち」を虎視眈々と狙う落合は、3周目あたりから集団前方をキープするように走る。
一方で落合の動きを知りつつも、やはり一矢報いたい選手たちが落合の周りを位置取りしている。落合の友人で良きライバルでもある石丸虎之輔(ラバネロ)や、Nリーグ坂本悠眞も集団の前に上がるが、決め手がないまま最終周回に入る。
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リーグシリーズ戦で 1戦を除き、全て優勝をしている落合は終始、冷静にレースを運ぶ
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中盤から集団前方に位置していた落合(左)と Nリーグ池田(右)がアタック!(Photo:Takashi Saito)
そして、最終周回に入るコントロールラインで落合とNリーグの池田竜雅(Team一匹狼)、そして野村慧晴(AVENTURA)の3人が集団から抜け出して、一気にアタック! 集団も逃がさないためにペースをますます上げていくがゴール手前まで3人を捕まえられなかった。
ゴールスプリントは3人、しかし頭ひとつ早めに抜け出した落合が2位以下に距離を取り、両手を大きく広げて優勝ゴールを決めた。そのバトルマリンジャージを纏った姿には神々しさがあった。
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勝利を確信し、両手を大きく広げてゴールに入るバトルマリンジャージの落合(Photo:Takashi Saito)
ポイントリーダー賞の授与式で、落合は有言実行の最終戦で優勝を獲得した感想として、「・・・難しかった」と短く、しかし冷静に振り返った。展開としては「ガツガツ行きたかったので、前に行きました」と果敢に攻めた胸の内を教えてくれた。
来年からは高校生となるので、目標を聞くと「高校生になってもたくさんレースに出て勝ちたいです」と力強くコメント。この中学生最後の年に年間総合ポイントリーダーを獲得した経験を活かして欲しい。そして落合、最後に「1年間どうもありがとうございました!」と感謝の言葉で締めくくってくれた。
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中学生クラス表彰式、左から 2位・野村、優勝の落合、3位・池田。落合と野村は 3月で中学卒業
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R×L年間総合賞として新製品のグローブや、ネットショップ用 1万ポイントが授与(Photo:Takashi Saito)
今シーズンも多くの中学生選手たちが対象レースを盛り上げてくれた。このNリーグ中学生男子で中学3年生の選手らは中学卒業とともにリーグも卒業となる。今後、高校生男子選手として活躍する元リーグ選手の皆さんの活躍にも注目してほしい。
この大会で 2023-2024年間総合ポイントリーダーが決定し、Qリーグ、そしてNリーグの 1年間にわたる長いシーズン全13戦をリーグ登録選手たちが熱い走りで盛り上げてくれた。会場でも多くの方々にご声援をいただけるようになり、選手らも非常に鼓舞されたと思う。リーグ事務局からは、このようなレースレポートなどを通じて女子そしてジュニア中学生たちの走りに注目してもらえるように日々活動をおこなっているが、来シーズンはさらに多くの方々がリーグ加入し、ご注目していただきたい。
そのためにもレースでの活躍を広めることはもちろんだが、現在も平行しておこなっている「スキルアップ!スクール」でのレーススクール活動、SNSを通じた国内外の女子やジュニア自転車レースの情報拡散、そして今後はバーチャルレースでのリーグライド企画や、女子やジュニアの育成に力を入れているクラブチームの連携をお手伝いする仕組み作りも考えている。
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Nリーグ中学生の岡田と Qリーグのエリート女子・根本は同じクラスで闘うこともあり良きライバル
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Nリーグ年間総合ポイントリーダー落合と岡田は今後、活躍する中学生選手の新たな目標になるだろう(Photo:Takashi Saito)
皆様には今一度、Qリーグ・Nリーグのポイントランキングをご覧いただきながら、その動向をご覧いただき来シーズンへの想いとともに、引き続き選手達の活躍にご注目いただければ幸いである。また来シーズンよりスタートする「リーグ賛助会」制度からも女子やジュニア選手たちのバックアップをお願いしたい。そして女子や中学生の選手にはぜひとも来シーズンのリーグ登録をご検討いただき、共にアメジストジャージ・バトルマリンジャージを目指して欲しい。
2023-2024シーズンの年間総合ポイントリーダーが決定
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<写真左より Qリーグ根本、Nリーグ落合、NW岡田の各・年間総合ポイントリーダー>
今大会の年間総合ポイントリーダー授与式では、Bioracerより「アメジストジャージ」「バトルマリンジャージ」各リーダージャージが提供された。また、Qリーグは株式会社隼より「アスリチューンQリーグポイントリーダー賞」、Nリーグ中学生男子Nは武田レッグウェアー株式会社より「RxL Nリーグ中学生男子ポイントリーダー賞」、Nリーグ中学生女子NWはアイリス株式会社より「EXLUB Nリーグ中学生女子 NWポイントリーダー賞」が、それぞれ年間特別賞も併せて提供された。
Qリーグポイントリーダー:アメジストジャージ、Nリーグポイントリーダー:バトルマリンジャージ提供:Bioracer
アスリチューン賞 Qリーグ(高校生以上女子)年間総合リーダー:根本香織(Team一匹狼)・277p
ランキング 2位:蒲原琴音(Team一匹狼)・55p
ランキング 3位:小田恵利花(フィッツ)・28p
RxL賞 Nリーグ・N(中学生男子)年間総合リーダー:落合隼・257p
ランキング 2位:渡邉公太(ブラウ・ブリッツエン U15)・166p
ランキング 3位:岡田來毘(ブラウ・ブリッツエン U15)・114p
EXLUB賞 Nリーグ・NW(中学生女子)年間総合リーダー:岡田愛裕來(ブラウ・ブリッツエン U15)・220p
ランキング 2位:小田島寛奈(#1-PRIMERA-)・112p
ランキング 3位:西山千智(High Ambition女子サイクリングアカデミー)・85p
※ランキングにおいて同点者が出た場合、最新のレース着順が優位の選手を上位とする。
※最終戦終了時において、同点者が出た場合は、最終戦直前のランキングで優位の選手を上位とする。
※最終戦については、ポイントテーブルに 5点ずつ加算した点数を付与する(最終戦ボーナス)。
<レポート概要>
写真撮影:Takashi Saito、QNリーグ事務局
テキスト:須藤むつみ(QNリーグ事務局)
協力:サイクルロードレース協会東日本(MATRIX)
しもふさクリテリウム 3月公式ホームページ
https://shimofusa-criterium.powertag.jp/2024/3/outline.html
近日、5期目の2024-2025Qリーグ・Nリーグの登録要項およびシリーズ戦のスケジュールを発表します。ぜひ注目と登録のほどお願いいたします。
http://www.jbrain.or.jp/q-n-league/