Jプロツアー第4戦 宇都宮清原クリテリウム 純粋なスプリント勝負、愛三工業 岡本の勝利
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3月24日、栃木県宇都宮市にてJBCF宇都宮清原クリテリウムが行われた。63㎞のレースで最後まで逃げはできず、岡本隼(愛三工業レーシングチーム)がスプリント力を見せて今季2勝目を飾った。
LRTと並走スタート
3月24日(日)、栃木県宇都宮市の清原工業団地周辺の周回コースを使ってJBCF宇都宮清原クリテリウムが開催された。冷たい雨が降り注いだ前日とは打って変わってすっかり晴天に恵まれ、気温も15℃前後まで上がり、暖かい日となった。
第4戦となるJプロツアーは、平坦3㎞のコースを21周回する63㎞で争われた。コースは、直角コーナーが6箇所、180°コーナーが1箇所で、あとは基本直線で構成される。
今回は、次世代型路面電車であるLRT(ライトレールトランジット)が開通してから初めてのレースということで、Jプロツアーのスタートをライトライン(車両の愛称)の時刻表と合わせ、今回のコースと並ぶ清稜高校前駅から清原地区市民センター前駅の一部区間を宇都宮ブリッツェン仕様にラッピングされたライトラインと集団が並走した。
スタートからアタック合戦が行われ、さまざまな選手が逃げに飛び出したが、逃げはなかなか決まらない。
地元である宇都宮ブリッツェンに応援の声も多く、チームプレゼンテーションの時点からフォン・チュンカイのスプリント一本に絞ると公言していたが、沢田時らが抜け出そうとする姿もあった。
「ただ地元というだけでなく、ブリッツェンはすごく応援をいただけるので、スプリントでフォンで勝負すると言いつつも、やっぱりそれだけで最後まで何もしないっていうのは、地元チームとしてそういう走りはしたくないねと話をしていたので。応援に応えるように、行っちゃいましたね」と沢田は振り返る。
しかし、向かい風や追い風などがレース展開に与える影響は少なく、コーナー以外では流れるコースとなったため、集団がすぐに逃げを飲み込むようなシーンが続いた。
この日はスプリントに絞っていた愛三工業レーシングチームは、當原隼人が集団前方で有力勢による危険な逃げに逐一対応していた。エースの岡本隼はこう話す。
「何回か危ない逃げが行きそうなところはあったんですけど、そこは當原がしっかり集団引いて、1人でやってくれました。本来であれば當原もゴールスプリント前に使いたい選手なんですけど、いろんな総合的な動きもしてくれたんで、それに任せっきりになったところはありました。終始、自分も真ん中よりは前の方をキープしつつ、危ない逃げがあったら、前に乗れる位置はキープできていたので、そんなに危ない場面はなかったです。でも全体的にスプリントにしたいチームも意外とあったのかなと思います」
終盤戦に入る頃、15周目に佐藤駿(イナーメ信濃山形)、次の周には前日3位に入った渡邉和貴(アヴニールサイクリング山梨)がそれぞれ単騎で集団から抜け出して少し差を開いたが、1周前後で再び集団に飲み込まれた。
集団スプリントへの位置取り
逃げができないままラスト2周、シマノレーシングがリーダージャージを着る石原悠希とU23ジャージを着る寺田吉騎のダブルエースのために集団コントロールを始めた。
「最初の作戦としては、よっちゃん(寺田)は逃げるとかそういうのはなしで最後にもがくだけで。自分はいつも通りなんですけど、フリーで展開に合わせてという形で。チームメイトたちが残り2周の間ずっと先頭固定で引いてくれて、完璧なアシストをしてくれました」と石原。
最終周、シマノレーシングの入部正太朗を先頭にスピードを上げる。3つのコーナーを終えて、ヘアピンコーナーで今度はマトリックスパワータグが先頭に立った。後ろにはシマノレーシング、愛三工業レーシングチームなどが続く。
ライトラインとの並走区間である最後のコーナー前、岡本を引き連れた草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)が一気に前に出る。草場はどこで前に出るべきかライン取りを含めて毎周回考えていたと話す。
「僕らは、理想はマトリックスみたいな感じで、先頭に出切って、1人1人が役割を果たしてはけていって、チームスプリントみたいな感じで僕らを発射、というのが理想だったんですけど、ちょっとまだチームが若手っていうのもありますし、それが無理だなという状況になったのを判断して、マトリックス、シマノ、僕らみたいな感じでうまくはまって、あとは最後の右コーナー2回でもう(先頭に)出切り始めないと、最後埋もれるなと思って。向かい風だったんですけど、結構そこまでに伸びる感じがあったので。
最後のホームストレートと、帰ってくる前のLRTと並走するところが路面の舗装で段差があって、そこが若干ストレスになるんですよ。だから、それを加味して全部どのラインでいけばいいかを周回を重ねるごとにイメージしていました。後ろが脚を少し休めて、右コーナーの立ち上がりから踏めるような発射の仕方が一番多分エースにとってはいいんじゃないかなと僕は思ってたので、そのタイミングで先行してうまいことを発射できました。
自分もスプリントをやろうと思えばできるけど、自分がここでこうしてもらったら、勝てるなっていうところの1個手前をやってあげることによって、岡本先輩がストレスなく発射できるかなと」
最後のコーナーを草場が先頭でクリアし、岡本を発射。
右側から岡本がスプリントを開始し、その後ろにはフォンや孫崎大樹(キナンレーシングチーム)、小野寺玲(ヴィクトワール広島)、寺田らがつく。左側からは石原がもがく。石原はこう振り返る。
「もがき出したときに、自分だけ左側にいて、全員をまくる感じでもがいていったんですけど、まくった先に岡本さんだけがいて、岡本さんは差せなかったですね。1人だけ伸びが違います。最後の位置取りとかも、やっぱりトラック(競技)をやってきた選手で一枚上手でした」と話した。
岡本がそのままフィニッシュラインへと突き抜け、後方では草場が先に勝利を確信し手を挙げた。
優勝した岡本は、この2日間で違う戦い方ができたことに満足していた様子であった。
「今日は最後のゴール勝負だけに集中するレースだったんですけど、昨日は(逃げで)思いっきり行けたので、積極的に行くのと、着実に脚を溜めて自分のいいところを出すのと、2パターンが出来た2日間だったかなと。今日は今日で、うまく決められたのが良かったですね」
2日連続で2位という結果で、リーダージャージは石原が、U23ジャージは今回6位の寺田がそれぞれキープした。
次回のJプロツアーは、4月20日~21日の群馬サイクルスポーツセンターでの2連戦だ。
Jプロツアー第4戦 宇都宮清原クリテリウム リザルト
1位 岡本 隼(愛三工業レーシングチーム)1時間24分59秒
2位 石原悠希(シマノレーシング)+0秒
3位 孫崎大樹(キナンレーシングチーム)+0秒
石原がリーダージャージ、寺田がU23ジャージをキープ
Jプロツアー第4戦 2024宇都宮清原クリテリウム
開催日:2024年3月24日(日)
開催地:栃木県宇都宮市
https://jbcfroad.jp/jprotour/