ツアー・オブ・ジャパン2023 第8ステージ東京 窪木がステージ勝利、アールが総合優勝
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暑い最終ステージ
5月28日、2023ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)最終日の東京ステージは、ニュートラル区間と合わせ、1周7㎞の大井埠頭周回コースを16周する全長112㎞で争われた。少し曇りがかった空ながらも、暑い日となり時折強い風が吹いた。
パレード周回を終え、リアルスタートが切られると早速数人が逃げに出ようと飛び出す。
2周目にモハマド・ヌル・アイマン・モフド・ザリフ(トレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチーム)、山田拓海(EFエデュケーション・NIPPO・デヴェロップメントチーム)、阿曽圭佑(ヴィクトワール広島)が少しの間、前に出る形となったがそれも吸収。
その後飛び出した小林海(マトリックスパワータグ)、石原悠希(シマノレーシング)、橋川丈(EFエデュケーション・NIPPO・デヴェロップメントチーム)、佐藤光(さいたま那須サンブレイブ)の4人の逃げにジェス・イワート(トレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチーム)が合流し、5人の逃げが形成され、徐々にタイム差を開いていく。5周目完了時点で集団とのタイム差は53秒となった。
集団では、総合1位のネイサン・アールと3位の岡篤志を抱えるJCLチーム右京を先頭にして、後ろには総合2位のベンジャミン・ダイボールを擁するヴィクトワール広島が固める。
さらにその後ろにはスプリントをしたいトリニティ・レーシングやチームブリヂストンサイクリングなどもチームでまとまって位置取っていた。10周目通過時点でタイム差は1分52秒に開く。
集団では、ゴールスプリントを狙うソフェル・サヴィーニ・デュー・オムズ、グローバル・シックス、トリニティ・レーシング、マトリックスパワータグが前を引き始める。残り3周でタイム差は36秒に縮まった。逃げグループではイワートが踏み止め、さらに14周目の後半には橋川が離脱。逃げグループは3人となった。
ラスト1周に入るところでタイム差は15秒。コントロールラインのストレートからUターンを過ぎたところでいよいよ逃げ続けた3人は集団へと吸収された。
ゴールスプリントへ向けて
逃げを吸収すると、集団は横に大きく広がり、各チームが隊列を組む。
先頭を引いていたトリニティ・レーシングとキナンレーシングチームの1人が先頭を走り、その後ろをチームブリヂストンサイクリングが東京ステージまで残った4人でまとまった状態で陣取った。
キナンレーシングチームの選手が先頭での仕事を終えると、ラスト1kmまでを河野翔輝(チームブリヂストンサイクリング)が引き、その後のコーナーを兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)が先頭を受け継いで通過。
兒島が先頭を譲らないままラスト400mのコーナーでは今村駿介(チームブリヂストンサイクリング)に先頭をバトンタッチ。今村の後ろにはピタリとチームメイトの窪木一茂が付いていた。さらに後ろには宇都宮ブリッツェンやキナンレーシングチーム、愛三工業レーシングチームもつける。
今村からラスト150mで発射した窪木が左右に大きく動きつつ、スプリント。十分な差をもってフィニッシュラインを一番に切り、右手を大きく突き上げた。
ブリヂストントレイン、2度目の成功
美濃ステージでも、ゴール前に完璧なブリヂストントレインから段階的に発射された窪木。だが、ポイント賞のルーク・ランパーティ(トリニティ・レーシング)は他選手をうまくつかいながら位置取り、窪木を上回った。窪木は悔しさをあらわにしていたが、最後の最後で勝ち切ることに成功した。
「美濃の反省を生かして、(チームは)4人でしたけど、昨日からずっと、どうする、どうやって走るというのがまとまらなくて。走りながら結構無線でみんなで調整した感じでした。本当に美濃と一緒で想定通りのトレインで、もう僕も本当にここまでしてもらってという感じで。最後は後ろも見ながらもがいていたんですけど、もう来てなかったのでしっかりと勝てました。
でも本当にチームメイトの働きがなければ、全く勝てなかったです。途中で今村と『別で(もがく)!』と言ってたんです。ラスト1km、2kmぐらい。だけどもう1回、最終的に一つになって、そこから自分がもがいて」
最後の発射台となった今村は、「完璧でした」と満面の笑みを浮かべた。
「本当にもうちょっとだけスピードを乗せて、そしたらすぐ抜かれたんで、悲しかったですけど(笑)」
さらに今村は今回のTOJを振り返り、こう話した。
「成績も含めて、レースの強度的にもすごくきつかったけど、最後の最後にこうやって締められたのは、次のレース、トラックに向けてすごく弾みにもなりました。疲労が違いますから。やっぱり勝ったときと、負けたときは」
窪木もまた「勝つと疲れないんです」と笑い、勝利で締めくくられたことに意味があると話す。
「本当に良かった。でも欲を言えば、松田(祥位)くんと橋本(英也)くんもいれば、本当にもっと完全にコントロールできて、もっと良かったなと思うんですけど。(兒島の)山岳も守れた可能性もあるし。でも、残りの4人であとスタッフとみんなで協力して勝てたことは本当に意味があると思います」
前ステージで着続けた山岳賞ジャージを失い、意気消沈していた兒島だが、最後のチャンスに向けて奮起できたとも話す。
「最終日は、赤(山岳)ジャージを他の選手が着てるのを見て、あぁ取られたんだなとしみじみ思いました。すごく昨日は悔しかったので、明日は絶対やってやるという気持ちが出てきました。今日は集中しながら位置取りもやりつつ、最後に脚を溜めて、しっかりとうまい列車が組めたのかなと思います」
さらに兒島はこう振り返る。
「自分としては仕事として山岳賞を任せられたというか、自分から立候補したんですけど、僕の中では山岳賞を取ることが一番の目的だったので、すごくいい流れで来てたのに、最後の配点が高いステージ3ステージで、(レオネル・)キンテロ選手に取られてしまったのは本当にすごく悔しくて。
でもその中でも、最後の東京ステージでみんなで協力しながら、4人にはなってしまったんですけど、4人で協力しながらトレインを組んで、自分たちの持ち味であるスピードを生かしてステージ優勝を取れたってのは本当に素晴らしいことかなと思います」
そして、乗り続けた表彰台に最終日に表彰台に乗ることは叶わなかったが、彼らの主戦場での表彰台に立つことを目指す。
「このTOJが終わって、次の(トラック)アジア選手権は、2週間ちょっとぐらいなので。数日休んで、そこからはまた伊豆に戻ってしっかりとトレーニングを積んで、オリンピックポイントの配点も大きくて大事な大会にもなるので、そこでチームパシュートとあとは選ばれた個人種目でしっかりと優勝を狙って走っていきたいなと思います。
アジア選手権も大事なんですけど、ポイントレースで世界選手権でメダルを取るっていうのが、今年の僕の一番の目標であるので。そこはしっかりと優勝目指して頑張っていきたいと思います」
山岳賞 レオネル・キンテロ・アルテアガ
山岳ポイントが設定された最後のステージ、相模原でも全てのポイントを首位で通過し、山岳賞ジャージを実力で奪い取った。
昨年の4ステージ構成でのTOJではスプリント賞を獲得していたキンテロだが、今回は見た目にもかなり絞り込んで、山岳賞獲得となった。さらには総合順位でも6位。キンテロはこう振り返る。
「去年のTOJも参加しましたが、4ステージだけだったので8ステージのフルのTOJというのは、今回が初めての参加です。
とても長いこのレースは難しかったです。そして海外からのチームも多かったので、レベルも高いレースだったと思います。その中で素晴らしい経験ができて、山岳賞を取ることができたのはとてもうれしいです。十分な準備もしてきましたし、チームも私のことを信頼してくれて、このような結果を得ることができました。
個人としても総合で10位以内に入りましたし、いい結果を得られました。山岳賞については、個人としてもチームとしてもとても大切な賞だと感じています。TOJで去年に続いて2枚目のジャージを持ち帰ることができてとてもうれしく思っています」
ポイント賞 ルーク・ランパーティ
今回のTOJで3勝を収めたルーク・ランパーティは、こう振り返る。
「美しいレースだった。日本でのレースは初めてだったが、これ以上ないほど素晴らしいものだった。チームとして本当に楽しめたし、とても素敵な国なので、またすぐに戻ってきたい」
TOJ期間中にはワールドチーム入りの噂も流れたがそのことについては、「来年はワールドツアーに参加する予定ですが、今のところ、まだ正式に契約書にサインしていませんので」と話し、挑戦したいレースについてこう語った。
「クラシックの経験を積みたいですね。来年は、それを実現したいです。いつか、ヨーロッパで、ワールドツアーのチームで、大きなクラシックに勝ちたいと思っています」
またしてもTOJで活躍した選手が羽ばたく姿が見られるかもしれない。
個人総合優勝 ネイサン・アール
総合優勝を挙げたネイサン・アール(JCLチーム右京)だったが、今回のTOJは昨年9月の大怪我明けから初めて狙いを定めたレースとなった。
体調としてもバイクの上でのフィットネスや能力という面では100%戻っている状態だと話すが、腕が完全に真っ直ぐにならないなどの影響により、ポジションも変えなければならなかった。
「首や肩の痛みはまだ残っていて、特に腕はかなり痛みます。だから、この状況に適応することを学びました。将来的にはもっと良くなっていくことを期待しています。しかし、これだけ苦労してきた僕にとって、再びパフォーマンスを発揮し、レースに勝てると証明できたことは、とても特別なことです。だから個人的にもそしてチームにとっても大きな自信になりました」
コロナ禍から戻ったフルステージでのTOJ
ツアー・オブ・ジャパン 第8ステージ 東京 リザルト
1位 窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング) 2時間22分30秒
2位 岡本 隼(愛三工業レーシングチーム) +0秒
3位 小野寺 玲(宇都宮ブリッツェン) +0秒
2023ツアー・オブ・ジャパン 総合順位
1位 ネイサン・アール(JCLチーム右京) 17時間45分1秒
2位 ベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島) +45秒
3位 岡 篤志(JCLチーム右京) +55秒
2023ツアー・オブ・ジャパン スプリント賞
ルーク・ランパーティ(トリニティ・レーシング) 114pts
2023ツアー・オブ・ジャパン 山岳賞
レオネル・キンテロ・アルテアガ(ヴィクトワール広島) 41pts
2023ツアー・オブ・ジャパン 新人賞
リアム・ジョンストン(トリニティ・レーシング)
ツアー・オブ・ジャパン2023