ジャパントラックカップII 2日目 男女ケイリンは太田と佐藤、男子ポイントレースで山本哲央が初勝利
目次
2日目を迎えたトラックの国際レース、ジャパントラックカップ。この日は男女ケイリン種目と女子マディソン、そして男子のスクラッチ、エリミネーションとポイントレース、男女ジュニアの各種目が行われる1日となった。
パリ2024オリンピック種目である男女ケイリンでは佐藤水菜(チーム楽天Kドリームス)と太田海也(チーム楽天Kドリームス)が強さを見せて勝利、女子マディソンでは内野艶和と垣田真穂のチーム楽天Kドリームスが再び勝利をものにした。この3レースを中心にレポートをお届けする。
【女子ケイリン】佐藤が本領発揮、勝利への道筋を走り抜いた
ここ1年ほど、女子短距離では国内レースで負けを喫していない佐藤。世界シーンでもトップクラスであるが、「世界選手権で勝利を収めない限り、自分をトップであるとは認められません」と述べる佐藤。その本領とも言えるケイリンでの走りに注目が集まる。
先導車のつく3周回では一番後方、直前を走る太田りゆ(日本ナショナルチーム)から少し距離をあける。先導車が外れてから勝負が始まる残り3周でも最後尾のポジションを変えない。間合いとタイミングを図るように、むしろ少し車間を開けながら最終周回を待つように見える。
そして最終周回、佐藤は一気に加速し外側から集団全体に仕掛けていく。先行するのは梅川風子(チーム楽天Kドリームス)、バックストレートでも梅川には追いつかず、間に合うのかという気持ちすら起こさせるが、その加速は後半にさらに鋭く、最終コーナーで内側の梅川に並んだ佐藤はそのまま最終ストレートで先行、最後は後方を確認する余裕まで見せてのフィニッシュで勝利した。
これほどまでに圧倒的な強さを誇る佐藤。「厳しい練習が自分を見つめるのには良い機会です。練習でタイムを出せなかったり、きついことを繰り返していく練習の中で、自分を律しています」というストイックな内面を持つが自転車を降りれば、常に周囲に笑顔とユーモアを振り撒く気遣いを見せるのが印象的だ。
佐藤がでパリ五輪で金メダルを獲得できれば、そのキャラクターも相まって、自転車競技に対する印象も大きく変わっていくだろうと期待もされる。
*女子ケイリン リザルト
1. 佐藤水菜(チーム楽天Kドリームス)
2. 梅川風子(チーム楽天Kドリームス)
3. 太田りゆ(日本ナショナルチーム)
【男子ケイリン】太田が後方からまくり先行、力強い独走勝利
男子ケイリンの決勝、6人が並ぶそのスタートラインには、まさにオールスターと呼んで良いほどのライダーが揃った。
まず今期は驚くべき強さを見せ続ける太田海也、図太いトルクで最高速まで持ち上げていく速度感はあたかも高性能スポーツカー、日本短距離で世界に通用するホープである。
ここまでスプリントで太田と互角に勝負してきた小原祐太(チーム楽天Kドリームス)、特に独走力に優れておりスプリント予選では太田を上回るタイムを出している。
中野慎二(チーム楽天Kドリームス)は、周囲を全体的に見ながらチャンスを掴む能力に秀で、2日前のケイリンでは太田に競り勝っている。
そして山崎賢人(チーム楽天Kドリームス)、優れた加速力と判断力、さらに巧みなレース感性を合わせた総合的な走力で上位に食い込む、現在の日本ナショナルチーム員だ。
さらにマレーシアから参加している、東京2020五輪・男子ケイリン銀メダルを獲ったモハメッド・アジズルハスニ・アワン(Team Azizul)。世界短距離界で長くトップとして活躍、巧みな技術と最後のロケットのような加速力に世界が敬意を払うライダーだ。
先行車が外れた本格勝負の残り3周、先行していた中野が逃げの勝負に挑むも、残り2周の時点で後ろからアワンが追抜きリード。最終周回の勝負どころで最後尾から太田のトルクのある加速が始まる。先行のアワンもロケットを発揮するが、それを上回る速度で太田は進む。真っ向勝負して勝利を掴む太田のスタイルだ。その力強い加速に観客も沸く。
フィニッシュ100m前の時点ですでに太田は独走先行。衰えない加速力でフィニッシュまで踏み切った。アワンを後方から交わした山崎が2位に、アワンはそのまま3位となった。このレースで改めて証明した、太田の力強さと勝負強さ。もし太田がパリ五輪の代表候補選手に選ばれたなら、日本がメダルを獲得できる可能性は大きく高まることだろう。
*男子ケイリン リザルト
1. 太田海也(チーム楽天Kドリームス)
2. 山崎賢人(チーム楽天Kドリームス)
3. アワン・モフド・アジズルハスニ(Team Azizul)
【女子マディソン】内野・垣田ペアが流れを見切った強さで勝利
ジャパントラックカップIでのレースに続き、内野艶和と垣田真穂がペアを組むチーム楽天Kドリームスの強さが際立った。
10周回に一度あるポイント周回までは、レースを大きくリードすることもなく集団の中で脚を溜め、3周回ほど前から加速を始めて集団を揺り動かし、垣田の鋭いスプリントで1着ポイントを重ねていく2人。そこに池田瑞紀とゾー・メンハンが組んだMixed Teamが続き、池田が垣田のスプリントに続くがなかなか越えられず、何度も2着ポイントに甘んじる。
結果、全8回あったポイント周回で7回の1着ポイントを獲ったチーム楽天Kドリームスが他に大きく差をつけるポイント数で勝利。2位にはMixed Teamが続いた。
*女子マディソン リザルト
1. チーム楽天Kドリームス(内野艶和/垣田真穂)43ポイント
2. Mixed Team(池田瑞紀/ゾー・メンハン)21ポイント
3. チーム香港(リー・ジーウィン/リオン・ウィンイー)17ポイント
【男子スクラッチ】ラップを獲得したレアフと松田が勝利を競う
スタートから中盤まで速いペースで進むも決定的な動きは決まらず、警戒し合う選手たち。そんななか、先頭交代を繰り返し集団が緩んだ中でレアフ・コナー(Ccache x Par Kup)、ワン・ミンジー(Henan Cycling Team)が抜け出しラップを獲得。さらに終盤には松田祥位(チームブリヂストンサイクリング)が1人抜け出してラップを獲得。
最終周回を前に一つにまとまった集団だが、優勝はこのラップを獲得した3人の順位争いとなり、最終スプリントでの順位が上位だったレアフが勝利を勝ち取った。2位には松田が入った。
*男子スクラッチ
1. レアフ・コナー(Ccache x Par Kup)
2. 松田祥位(チームブリヂストンサイクリング)
3. ワン・ミンジー(Henan Cycling Team)
【男子エリミネーション】再び窪木と今村の優勝争い、窪木が勝利
日本ナショナルチームとチームブリヂストンサイクリングの選手たちが終盤近くまで残ったエリミネーション。緩まない高いペースで全体は走り続け、最終3人に残ったのは、窪木一茂(日本ナショナルチーム)、今村駿介(日本ナショナルチーム)、そしてイザー・カート(Ccache x Par Kup)。
窪木と今村が一気に高めた最終ペースにイザーはついていけず、ここで除外。前に出た窪木を今村が追いかけるも届かず、窪木が勝利した。
*男子エリミネーション リザルト
1. 窪木一茂(日本ナショナルチーム)
2. 今村駿介(日本ナショナルチーム)
3. イザー・カート(Ccache x Par Kup)
【男子ポイントレース】最終周回で山本が大量得点獲得で逆転勝利
男子ポイントレースは、数多くの選手がラップを成功させるスピーディな展開となった。序盤はこのポイントレースを得意とする兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)がラップと1着ポイントを重ねてリードを奪う。
その後に調子を上げたのが今村だった。窪木をマークしながら、ラップを獲るタイミングを図りながら、チャンスが来ればしっかりと獲得。スプリントでは1着ポイントを多く重ねるながら、暫定1位を長くキープした。
兒島と今村の作り出した速い展開の中、チャンスを伺っていたのが山本哲央(チームブリヂストンサイクリング)だ。序盤に1着ポイントを獲得したのちは、ポイント周回でのスプリントにしっかりと絡んでポイントを重ねていく。
そして最終5周を残したところで山本が独走にてアタック。後方を引き離して最終でのダブルポイントを狙う。ただその逃げの速度が上がり、集団が緩んでいたこともあって、残り1周回で山本はラップを獲得。ここで20ポイントを獲得してさらに速度を落とさず1着のダブルポイントも獲得し、最終周回で一挙に30ポイントを追加してトップポイント。優勝をその手にした。
*男子ポイントレース リザルト
1. 山本哲央(チームブリヂストンサイクリング)106ポイント
2. 今村駿介(日本ナショナルチーム)92ポイント
3. 窪木一茂(日本ナショナルチーム)71ポイント
【ジュニアクラス レースリザルト】
*女子ジュニアケイリン リザルト
1. 鶴蒼衣(祐誠高校)
2. 井関文月(高松工芸高校)
3. 山口成美(京都精華学園高校)
*男子ジュニアケイリン リザルト
1. チェ・テホ(Te Awamutu Sports Cycling Club)
2. 高橋奏多(日本ナショナルチーム)
3. 榊枝天旺(日本ナショナルチーム)
*女子ジュニア ポイントレース
1. ジャン・チュンルイ(Henan Cycling Team)15ポイント
2.白井愛美(広島工業高等学校)14ポイント
3. 西原夕華(日本ナショナルチーム)13ポイント
*男子ジュニア ポイントレース
1. 三浦一真(日本ナショナルチーム)24ポイント
2. 金井健翔(日本ナショナルチーム)15ポイント
3. 木綿崚介(日本ナショナルチーム)14ポイント
*女子ジュニア エリミネーション リザルト
1. 西原夕華(日本ナショナルチーム)
2. ジャン・チュンルイ(Henan Cycling Team)
3. 山口成美(京都精華学園高校)
*男子ジュニア エリミネーション リザルト
1. 金井健翔(日本ナショナルチーム)
2. 三浦一真(日本ナショナルチーム)
3. アビマンユー・ジュリアン(ASC Monsters Indonesia)
2024ジャパントラックカップ I/II 開催概要
開催日時:
ジャパントラックカップI :2024年5月9日(木)、10日(金)
ジャパントラックカップII:2024年5月11日(土)、12日(日)
開催場所:
伊豆ベロドローム(静岡県伊豆市)
出場選手:
トラック強化指定選手、海外4カ国以上の選手を含む世界のトップ選手たち
実施種目(男女共通):
スプリント/ケイリン/オムニアム/マディソン/スクラッチ/エリミネーション/ポイントレース
有観客:
5月9日(木)、10日(金)入場無料
5月11日(土)、12日(日) 有料/エントランスにて500円(現金のみ)
※高校生までは11日も12日も無料
ライブ配信:
More CADENCE YouTubeチャンネル
大会情報ページ:
https://japantrackcup.com/
▪️サイスポ・ニュース:
ジャパントラックカップ I 短距離は太田海也と佐藤水菜、中距離は窪木一茂と内野艶和が強さを披露
ジャパントラックカップII 初日/スプリントで太田海也と佐藤水奈が快勝、女子中距離で垣田真穂の活躍が光る
▪️サイスポ・トピックス:
日本で世界と渡り合う若手、兒島直樹はパリ五輪メダルを照準に定める