パリ五輪トラック代表候補記者会見/選手コメント、選考の疑問への回答、メダルの期待
目次
5月29日(水)静岡県伊豆市の日本競輪選手養成所内ホールにて、日本自転車競技連盟によるパリ2024オリンピックに向けた自転車トラック競技における日本代表候補選手の発表記者会見が行われた。
ここでは選手の発表と同時に出場種目の発表も行われ、選手たちがパリ2024オリンピック(以下パリ五輪)への抱負を語った。
パリ五輪トラック競技に男女15人が11種目に出場
日本競輪選手養成所内のホールで行われた代表候補選手の発表記者会見。ステージの上に選手が1人ずつ呼ばれて壇上に登る。全体での写真撮影の後、日本自転車競技連盟・選手強化スーパーバイザーである中野浩一氏より、日本選手が出場予定の自転車トラック種目と、その代表候補選手を発表した。
パリ五輪に向けて出場資格を獲得できたのは男子7人、女子6人+男女リザーブ各1人ずつの全15人。発表された種目とその選手は下記のとおり。
【短距離種目】
*男子チームスプリント:太田海也、小原祐太、長迫吉拓
*男子ケイリン:太田海也、中野慎二
*男子スプリント:太田海也、小原祐太
*女子ケイリン:太田りゆ、佐藤水菜
*女子スプリント:太田りゆ、佐藤水菜
【中距離種目】
*男子チームパシュート:今村駿介、窪木一茂、中野慎二、橋本英也
*男子マディソン:窪木一茂、橋本英也
*男子オムニアム:窪木一茂
*女子チームパシュート:池田瑞紀、内野艶和、梶原悠未、垣田真穂
*女子マディソン:内野艶和、垣田真穂
*女子オムニアム:梶原悠未
【リザーブ選手】
*男子リザーブ:松田祥位
*女子リザーブ:梅川風子
代表候補選手たちのコメント、パリ五輪出場種目/五輪出場履歴
代表候補選手に選抜された選手たちはそれぞれ、下記のコメントを述べた。
⚫︎太田海也(チーム楽天Kドリームス/日本競輪選手会)
(男子チームスプリント、男子ケイリン、男子スプリント/初出場)
「先輩たちが繋げてきたこのバトンを、このチームでメダルをいっぱい獲得して、次の世代につなげていけるように、パリオリンピックではしっかり一生懸命頑張りますので、応援よろしくお願いします」
⚫︎小原祐太(チーム楽天Kドリームス/日本競輪選手会)
(男子チームスプリント、男子スプリント/初出場)
「今回残念ながらオリンピックという舞台で戦うことができなかったチームのメンバー、スタッフやコーチ、チーム関係者、スポンサーの方々、またここまでバトンをつないでくださった先輩方の想いをメダルとして形に残せるように、精一杯がんばります」
⚫︎中野慎二(チーム楽天Kドリームス/日本競輪選手会)
(男子ケイリン、男子チームパシュート/初出場)
「パリオリンピックでは、今までやってきた自分の経験と努力の成果を生かして、最大限に力をつけて、メダルの獲得を狙っていきたいと思います」
⚫︎長迫吉拓(チームブリヂストンサイクリング)
(男子チームスプリント/男子BMXレーシングでリオ2016、東京2020に出場)
「僕は今回の3回目のオリンピックとなり、BMXレースから転向して今回が初めてのオリンピックです。かなりメダルに近いポジションでオリンピックに挑みますが、このチャンスをしっかり掴みたいと思います」
⚫︎佐藤水菜(チーム楽天Kドリームス/日本競輪選手会)
(女子ケイリン、女子スプリント/初出場)
「パリオリンピックでは、メダル獲得を目指して一生懸命頑張りたいと思います」
⚫︎太田りゆ(チームブリヂストンサイクリング/日本競輪選手会)
(女子ケイリン、女子スプリント/初出場、東京2020リザーブ選手)
「皆さんのサポートがあって、やっとここまで来れました。パリオリンピックでは、自分史上最高傑作な状態でメダルを目指して走れるようにがんばります」
⚫︎窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング/日本競輪選手会)
(男子チームパシュート、男子マディソン、男子オムニアム/男子オムニアムでリオ2016に出場)
「2度目のオリンピックになりますが、支えてもらったたくさんの方々に感謝して思いっきりレースを走っていきたいと思います」
⚫︎橋本英也(チームブリヂストンサイクリング/日本競輪選手会)
(男子チームパシュート、男子オムニアム/男子オムニアムで東京2020に出場)
「今回は2度目のオリンピックに出場させていただきます。今回はマディソンで金メダルを持って帰れるようにして、出られなかったチームメイトの分まで、しっかりとがんばって来たいと思います」
⚫︎今村駿介(チームブリヂストンサイクリング)
(男子チームパシュート/初出場、東京2020リザーブ選手)
「僕にとって今までの競技人生で一番大きな舞台になります。この2年間、チームみんなでチャレンジしてきた想いを胸に、がんばりたいと思います」
⚫︎梶原悠未(TEAM Yumi)
(女子チームパシュート、女子オムニアム/女子オムニアムで東京2020に出場)
「私は東京オリンピックに続き、2度目の夢の舞台に立てることを本当に嬉しく思います。パリオリンピックでは女子オムニアム種目で、感謝あふれる最高のガッツポーズで金メダルを獲得できるように、一生懸命がんばります」
⚫︎内野艶和(チーム楽天Kドリームス/日本競輪選手会)
(女子チームパシュート、女子マディソン/初出場)
「パリオリンピックが初めてのオリンピックで、とても緊張すると思いますが、精一杯みなさんの期待に応えられるようにがんばっていきたいと思います」
⚫︎垣田真穂(チーム楽天Kドリームス/早稲田大学)
(女子チームパシュート、女子マディソン/初出場)
「オリンピックという最高の舞台で、自分の実力を最大限に発揮して最高の走りができるようにがんばりたいと思います」
⚫︎池田瑞紀(チーム楽天Kドリームス/早稲田大学)
(女子チームパシュート/初出場)
「私は初めてのオリンピックという舞台で、チームパーシュートの約4分間の中で自分の力を全力で発揮できるように最後まで走り続けたいと思います」
⚫︎松田祥位(チームブリヂストンサイクリング)
(リザーブ選手)
「今はチームパシュートは非常にいい流れでオリンピックを迎えようとしています。必ずメダルを獲って帰ってこれるように、僕は全力で仲間をサポートしたいと思います」
⚫︎梅川風子(チーム楽天Kドリームス/日本競輪選手会)
(リザーブ選手)
「私はまだこの選考の状態を噛み砕いている最中で、パリオリンピックまで持つと言えるような状況ではないんですが、自分自身が本当にフォーカスしてがんばり続けたいと思います」
チームパシュートの代表候補が、ベストメンバーではない理由
また質疑応答の中で、代表候補選手発表後に、一部で話題となっていた事柄が尋ねられる場面があった。
男子チームパシュートの代表候補選手選考の中で、これまで日本記録を出しネイションズカップなどの世界大会で表彰台を獲得したメンバーではなく、3人の中距離選手と1人の短距離選手が選ばれている理由についてである。
これについて、HPCJCのテクニカルディレクターであるブノワ・べトゥ氏は以下のように述べた。
「国際オリンピック委員会が設けた倫理観に欠けたルールのためです。これらルールは、すべての選手を望むように使うことを許可していません。
したがって、すべての国が選択を迫られます。今回は、メダルの可能性を優先させたため、倫理観に基づいた選択を妨げられることとなりました。国際オリンピック委員会のルールに従う義務があるため仕方なく従っていますが、そのルールに満足していないのは確かです。責任を持つべきは、このようなルールを設けた国際オリンピック委員会だと感じています。
しかし、私たちは、チームの選手たちと共に、最高のパフォーマンスを発揮できるチームづくり試みたつもりです。この選考で行ったチーム内の変更、中野慎二をチームパシュートに採用したことが、素晴らしいサプライズを生み出すかもしれません。
前回の五輪では、ドイツの女子チームも同じことをしています。ですから、このチームがパフォーマンスを発揮できないとは思いません」
パリ五輪でのメダル獲得の期待について、取材記者の私見
メダルを獲得する可能性や期待については、各コーチとも明言を避けているが、これまでの世界大会における結果から予想すると、次のようになる。
短距離種目では、大きくメダル獲得の期待がかかる。特に近年コンスタントに表彰台を獲得している男子チームスプリントでは大きく期待していいだろう。
個人種目となるケイリン、スプリントでは、今年に入ってからのネイションズカップで、男子では太田海也と中野慎二が、女子では佐藤水菜が表彰台に上れる活躍を何度も見せているため、これら種目でのメダル獲得の可能性はとても大きい。
中距離種目の団体競技は、先の質疑応答内にもあったように、男子チームパシュートの選抜メンバーはこれまでのベストメンバーではないため、メダルへの期待は薄れている。一方で女子チームパシュートは、ここのところ一気にその持久力を上げてきたのが世界的な舞台で証明されている。その成績はまだ安定していないものの、メダルのチャンスは少なからずある。
中距離の個人種目では、東京2020五輪女子オムニアムで銀メダルを獲得している梶原悠未だ。今年序盤の怪我で一旦パフォーマンスを落としたが、そこから回復し確かな実績を残している。また持久力もここのところの団体種目での実績とともに向上しているのが見られるため、東京に続くメダルには大きく期待できる。
そして男女マディソンで、ネイションズカップでメダルを獲得している男子の窪木一茂/橋本英也、そして女子の内野艶和/垣田真穂。世界強豪の一角としてマークされるほどになったこのマディソンでの活躍が気になるところだ。
特に男子3種目に出場する、リオ五輪から2度目の五輪出場となる窪木である。2015年のロードレース全日本チャンピオンから海外チームに所属、トラック世界選手権では2年連続男子スクラッチ2位を獲得し、競輪界ではS級に所属するという、自転車競技での圧倒的な実績を残して来た彼が、その集大成とも言える今大会でどのような活躍を見せてくれるのか。ここにも大きく注目してしたい。
<参考サイト>
日本自転車競技連盟『パリ2024オリンピック トラック種目 日本代表候補選手のお知らせ』
https://jcf.or.jp/news-76657/?category=track