小林亮が150km初制覇を決めたニセコクラシック2024 コースリニューアルで世界選開催へ
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6月16日(日)、UCIグランフォンドシリーズの「ニセコクラシック2024」が開催された。
150kmロードレースは、小林亮(soleil de lest)が全体のトップでフィニッシュし、初の総合優勝を決めた。レースの模様とあわせ、今年の大会開催までの経緯と2026年に決まったグランフォンド世界選手権開催についての主催者の話をあわせてレポートする。
第11回ニセコクラシック 150kmクラス レポート
11回目の開催となった「ニセコクラシック」。近年はアジア圏内で唯一のUCIグランフォンドシリーズとして、国内にとどまらず海外からも認知される大会となった。
今年はコースの変更があり、150kmクラスはコース後半を従来と逆方向に走ることになった。昨年までは片側車線規制でレースを行ってきたが、ツール・ド・北海道での事故を受けて今年は全面規制して行われることになった。そのため、規制時間を早めに終えられるようコース周辺の住民に配慮した変更と主催者は説明する。
これにより、スタートからニセコパノラマラインまでの上りは変わらないものの、コース終盤の上りが減ったことで、150kmクラスの獲得標高は2609mから2479mに減ることになった。
また、2019年以来となる総合優勝の表彰が復活。UCIグランフォンドの年齢別カテゴリーの表彰とは別に、150kmクラスと80kmクラス全体の上位3人を表彰する。今年は総合優勝者に11月開催の「ツール・ド・おきなわ」への出場権が贈られることになった。
366人が出走した150kmクラスは早朝6時15分にパレードスタート。雲間から時折姿を見せる羊蹄山の下、大きな動きがないまま集団はニセコパノラマラインの上りへ向かう。
およそ50km地点に設定された山岳賞ポイントを過ぎ、ニセコパノラマラインを下りきったところからレースは動き始める。
70km過ぎのコース中盤、2人の先行に4人の追走が合流して6人の先頭集団を形成するも、ほどなくメイン集団が吸収。そのカウンターで小出樹(イナーメ信濃山形)、瀧聖人(TRYCLE.ing)、高岡亮寛(Roppongi Express)の3人が先行する。
その後、小出と高岡の2人になるが、残り40km付近から始まる上り区間で小出が遅れ、高岡が1人で先行する。
「小出君が調子良さそうなので2人で行ければと思っていたが、1人になってしまったのは予想外だった。残り距離を考えても、このまま行くのは厳しいと思い、集団を待った」と高岡が言うように、一時1分まで開いた差は徐々に縮まっていく。
残り30km付近に差し掛かると、高岡の直後に迫った集団から加藤大貴(COW GUMMA)と櫻庭悠真(MGM GROMA RACING TEAM)の2人が高岡に合流。しかしコース終盤の上り区間に入るとヒルクライマーの加藤のペースに高岡と櫻庭が遅れ、加藤が単独で先行する。
メイン集団との差は1分近くまで開いたものの、「足がつってペースダウンしてしまった」と言う加藤は残り10kmを過ぎて追走してきた20人ほどの集団に吸収される。
残り5km、高岡がチームメイトを引き連れてアタックするも決定打とはならず、勝負は残り500mの「ゴンドラ坂」でのスプリント勝負へ。
「先行していた選手を捕まえようと飛び出したら思ったより早く追いついてしまい、早駆けしたようになってしまったが、退くわけにはいかないので踏み切った」と言う小林亮(soleil de lest)が、2位以下との差を広げてフィニッシュ。昨年に続き2度目の150km出場で初の総合優勝を決めた。
ツール・ド・北海道での事故から今年の開催へ そしてグランフォンド世界選手権開催に向けて
前述のとおり、昨年9月のツール・ド・北海道での事故を受け、今年のニセコクラシックは大きな変更があった。一時は開催自体を危ぶむ声もあったが、意外にも警察とは今年の開催を前提に話が進められていたという。
ニセコクラシックを主催する一般社団法人北海道イベンツの前田和輝さんに話を聞いた。
「昨年のツール・ド・北海道での事故のあと、地元の警察からすぐに連絡がありました。起きてしまったことは仕方ないけれど、今までと同じように道路使用許可を出すわけにはいかなくなった、と。それで来年はどうしますか?と聞かれたので、継続したいと即答しました。それなら開催できるような安全対策を一緒に作っていきましょうという話になったのが昨年の10月頃でした。
ニセコクラシックとして使用するコースはそのままの前提で、競技の安全を確保するためには全幅規制にするという方針を決めたのが昨年末。そこからはコース周辺に住む地域の皆さんに迷惑がかかりずらいレイアウトを考えました。その結果が、今回の後半部分の逆回りという結論に至りました。従来は山から蘭越町の市街地に向けて走ってきたのを、市街地から山に向けて走るようにすることで、出来るだけ早い時間に規制を解除することが可能になり、別の道へ誘導することも可能になります。
この案を元に警察と話を詰め、今年の春先にコースを決定しました。獲得標高を下げたことに加え、昨年までの85kmクラスを80kmにしてスタート直後のアップダウンをカットして全体のペースを上げることで、早めに規制を解除できるようにするのが狙いです。」
「交通規制の方法が変わることで、チラシをいっぱい作って配り歩きました。周辺住民の皆さんにも改めて説明して回りましたが、応援してくれる方もいますけれど、交通規制で喜ぶ人はいないですよね。特にニセコ周辺は、雪のないこの時期は観光よりも農作業がメインなので、その邪魔をしないようにすることが重要になります。
各方面から交通規制の情報を発信したけれど、やはり全体に行き渡らせるのは難しいので、立哨を1.5倍に増やしてガードマンを含め約500人を配置しました。さらに集団に先行してエスコートバイクを走らせたことも、安全対策に大きく寄与したと思います。おかげで無事終えることが出来ました。
ツール・ド・北海道とニセコクラシックは運営母体が別組織ですし、ツール・ド・北海道の方が歴史も知見もある大会ですが、僕らが今回やったことが復活開催へのひとつの標(しるべ)となったと感じています。その他の北海道内のレースについても良い影響を及ぼせたなら嬉しいですね。
2026年のグランフォンド世界選手権開催については、今回の大会前に決定の連絡をいただいていました。しかし、まずは目の前のことを安全にして、そこから次の年やもっと大きな話をしようと警察とも話をしていましたので、発信を控えていました。
今回大会を無事終えることが出来たので、ひとつのベースが出来たと思います。コースレイアウトは世界選手権を開催するに資すると評価をいただいているので、タイムトライアルやチームリレーなど他の種目についてもこれから2年間の間に準備していきたいと思います。」
ニセコクラシック2024(第11回大会)
開催日:2024年6月14日(金)〜16日(日)
メイン会場:ニセコ グラン・ヒラフ会場