2024全日本選手権ロード 男子エリートは小林海がスプリントを制して優勝
全日本選手権ロードレースのメインイベントたるエリート男子ロードは、6月23日定刻11時にスタートした。朝からの雨はほぼ止んだが路面はウエットで、8kmの特設コース上は強い風を受ける区間があった。エクストリームウェザープロトコルは適用されず、予定通りの20周160kmで行われた。
スタート前には昨年の優勝者、山本大喜(JCL TEAM UKYO)を最前列の中央に並べ、パリ五輪代表候補の新城幸也(チームバーレーン ヴィクトリアス)、橋本英也と兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)も先頭に出て、来場したファンたちの声援に応えた。
レースはスタート直後からその五輪代表・橋本が逃げを見せたが、すぐに捕まる。今度はバルバサイクルワークスの元プロ選手・井上和郎が、レース前の宣言通り独走を開始。しかしこれも長くは続かなかった。
アタック合戦の続くメイン集団は脚のない選手を容赦なく置き去りにしていく。5周を完了した時点でプロトンは26人にまで減っており、出走が108人だったことが嘘のようだ。
7周目に入るところでホームストレート前後の上りを利用して増田成幸(JCL TEAM UKYO)が一人抜け出し、快調にペースを刻んで逃げたが、1周ほど逃げた末に30秒ほど後方のメイン集団から宮崎泰史(キナンレーシングチーム)がアタックして増田にジョイン、クライマー2人の逃げとなった。レースは半分の距離を消化した。
さいたま佐渡サンブレイブの宇賀隆貴が追走集団から単独でアタックし前の2人を追ったがなかなか追いつかない。集団は20人も残っていないが、いずれも勝負の時を待っているようで、全開モードには入っていない様子だ。逃げと集団とのタイム差は2分を超えた。
12周目、逃げていた増田に不運が襲いかかった。パンクだ。ニュートラルシマノが対応するがその間に宮崎は先行、宇賀が追いついて増田と合流した。
この頃後方では2日前にTTチャンピオンになったばかりの金子宗平(群馬グリフィン)がライバルを振り落とそうと、上りのたびにペースを上げた。急加速ではないがかなりの速さで、中切れが起きるとそこを埋めるのは至難の業だ。やがてこの集団は宇賀と増田を飲み込んだ。先頭は宮崎ひとりだ。
そして13周目、2号橋への下り、左コーナーで新城が落車。「前の選手と同じラインだったのにいきなり転んだ」と擦過傷を負い、ドクターカーからの処置を受けた。クルマを走らせながらの治療は、日本ではなかなかお目にかかれない。
14周目に入るところまで宮崎の逃げは続いたが、そこで追走集団に飲み込まれた。治療を終えた新城も集団に復帰。残り7周、いよいよレースが始まる!
金子がアタック! これにつけたのは山本大喜と小石祐馬(JCL TEAM UKYO)、小林海(チームマトリックスパワータグ)で、留目夕陽(EFエデュケーション・イージーポスト)や石上優大(愛三工業レーシング)、落車したばかりの新城はコンタクトを失う。その差はすぐに45秒へと開いた。
上りと下りしかないコースなので、タイム差を計測する地点によって伸び縮みする(定点での差を測っている)。45秒、55秒、52秒。会場では競技無線からの情報をがらぱさんがアナウンスし、そのたびに観衆は息を呑んでそれを聞いた。Jスポーツでもオンデマンド配信が行われているようで、小俣雄風太さんがマイクを持っている。
先頭の4人は快調に走るが、上りのペースは相変わらず金子が作っている様子だ。追走は留目、石上、新城に加えて岡篤志(JCL TEAM UKYO)が残っていたが、やがて岡は脱落。最終周回に入る時点では新城も遅れをとって石上と留目が追走に残り、35秒ほどまで縮まった前を追ったが届かなかった。
山本(大)と小石、4人の逃げの中で同じチームから2人いるのは定石から言えば有利だ。表情を見る限り金子は上りで余裕があり、小林は終盤に来てもいつものポーカーフェイスだ。
勝負は最後の上りに持ち込まれ、先行する金子に対して「勝てると思っていなかったが、スプリントに入ってから『これは捲れる』と思った」と小林が見事な捲りを見せ、右手を挙げてフィニッシュした。小林は2016年にU23で全日本を獲っているが、エリートになっての初優勝だ。
2位は金子、3位山本(大)。小石が4位、石上は1分4秒遅れで5位。留目が6位に入った。
男子エリート結果(160km)
1. 小林 海(マトリックスパワータグ)4:47:25
2. 金子 宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)+0
3. 山本 大喜(JCL TEAM UKYO)+0
第92回全日本自転車競技選手権大会ロードレース
第27回全日本選手権個人タイム・トライアル・ロードレース大会
2024全日本パラサイクリング選手権・ロード大会
期日:2024年6月20日(木)〜23日(日)
会場:日本サイクルスポーツセンター(CSC) 静岡県伊豆市
日程:
6月21日(金)個人タイムトライアル(エリート・U23・パラサイクリング)
6月22日(土)個人ロードレース 女子エリート・男女U23
6月23日(日)個人ロードレース 男子エリート・マスターズ
大会ウェブサイト(日本自転車競技連盟)
https://jcf.or.jp/events/2024national_road_championships_rr/?category=road