病を克服してマスターズ世界選手権2位入賞!

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2024年5月18日、オーストラリアのケアンズで行なわれたUCIマスターズ世界選手権のダウンヒルにおいて、60-64歳クラスでに出場した三山孝幸さんが2位入賞を果たした!

2024UCIマスターズ世界選手権ダウンヒル 三山

2006年の伊田井佐夫さん以来、18年ぶりに日本選手がマスターズ表彰台に登った 写真提供:三山孝幸

2024UCIマスターズ世界選手権ダウンヒル 三山

1962年9月生まれの三山孝幸さん

国内ダウンヒルシーンでは「日本最速の先生」として新聞にも取り上げられたほど。「このメダルが欲しかったんですよ~」

 

18年ぶりの日本人選手表彰台

26歳からマウンテンバイク競技を始めた三山さん、1998年、36歳のときにモンサンタン(CAN)大会に初参戦。36位という成績でフィニッシュしている。

「この時は30-39歳と10歳刻みのクラス分けで、この前までワールドカップのエリートクラスを走っていたような連中と同じクラス。コースも日本じゃ考えられないくらいハードで、なんとか走り切った感じでした」

その後、2005、2006、2017年とチャレンジして2017年のヴァルノルト(AND)大会55-59歳クラスで4位となる。

「さすがに同じ年のワールドカップで使ったコースとは違いましたけど、やっぱり斜度がきつくてハードなコース。4位というのは悪くなかったけれど、2006年に伊田井佐夫さんがチャンピオン(50-54歳クラス)になったところを見てるので、やっぱり表彰台。メダルが欲しかったですね」

2024UCIマスターズ世界選手権ダウンヒル 三山

1998年マスターズ初出場時の三山さん。当時、最もハードなコースと言われたモンサンタンの洗礼を受けた 写真提供:三山孝幸

2024UCIマスターズ世界選手権ダウンヒル 三山

2005年、全日本選手権ダウンヒル・マスターズクラス優勝。2位(右)が伊田井佐夫さん。「自分でも信じられず、表彰台で緊張してます(笑)。ここがターニングポイントになりました」 写真提供:三山孝幸

 

家族と友人の支えでレースに復帰

こうして60歳の時に5度目のチャレンジを目指し、準備を進めていた三山さんだが、新型コロナによるロックダウン。さらに目の不調に始まった闘病生活を送ることとなり計画は一時中断。

「定期検診で再検査を勧められて、前立腺に腫瘍が見つかった時はショックでした。幸いにもそれほど大きくなさそうだというので、放射線や投薬治療という選択もできたんですが、すぐ手術をお願いして2023年2月に摘出してもらいました」

手術は成功したものの、療養中、何かしていないと不安でしかたない心境に陥って悶々としていた時、「そうだ!マウンテンバイクに乗ることが自分の生きる道だ」と気づいて、4月のエンデューロ・ナショナルシリーズで復帰することを決意。

「この切り替えができるまで、本当にしんどかったんですよ。やはり体力は落ちてるし、気持ちの上でも再発の可能性とかいろいろ考えてしまってネガティブになってしまうんですよ。そういうマイナス思考から開放されるのが、仲間と一緒にトレイルライドやレースに出ている時でした」

その後、2024年のマスターズ大会が日本からも行きやすいケアンズであることを知り、出場を決意。

上半身の筋力強化やスキーでのスピードトレーニング。さらにはロードバイクでのトレーニング。マウンテンバイクシーズンの前に現地での下見と、できることをすべてやってきたという。

そして迎えた大会本番。1996年に世界選手権で使用されたのとほぼ同じ、斜度がきつい前半とフラットな後半というコースを、試走2日、シーディングラン(*)とこなしていった。

「試走でクリアできなかったセクションがあったり、シーディングでの転倒で痛みと不安の残る中、決勝でもスタート直後に足が外れてコースアウトしかかったりしましたが、持っているものを全部出し切ってゴールすることができ、2位になることができました」

*世界選手権では「予選」ではなく決勝出走順を決めるラン

2024UCIマスターズ世界選手権ダウンヒル 三山

ケアンズ大会にはDH3名、XC2名が出場。三山さんと同じクラスの斉藤晃弘さん、55~59歳クラス出場の館正訓さんは6位。XC35-39歳クラスの岡本紘幸さん6位、45-49歳クラスの古郡今日史さん18位という結果 写真提供:三山孝幸

 

60歳を過ぎても速さを保つ秘訣とは?

大学までソフトテニスプレイヤーだった三山さんだが、膝を痛めて引退。卒業後は地元である石川県で小学校の教師に。昨春34年間の教員生活を終え、現在は非常勤講師をしながら自転車三昧の生活を送っているという。

「平日午前中は学校に行って、午後から長年お世話になっているサイクルショップカガさんで、バイクの組み立てやスクールのお手伝い。週末はエンデューロ・ナショナルシリーズやダウンヒルシリーズに出かけてます。年を追うごとにケガや腰痛が出てきたので、朝晩入念にストレッチすることと、時々体幹トレーニングを心がけてます。58歳くらいからはバイクに乗りたい時に乗り、レース翌日は整体とサウナそしてビールですね(笑)

食事の内容は40代から気を付けています。朝は和食にフルーツヨーグルト、昼は学校の給食、夜は消化のいいモノ。どの食事でも野菜をたっぷり摂ることを意識してきました。冬場は朝一でスキーを2~3時間。雪がなければ午後からロードかトレイルライドですね」

2024UCIマスターズ世界選手権ダウンヒル 三山

ケアンズから帰ってすぐに、石川県白山市で行なわれたクップ・ドュ・ジャポンMTBのコースディレクターとして走り回った

2024UCIマスターズ世界選手権ダウンヒル 三山

海外でのメカトラへの対応力向上のため、サイクルショップカガでトレーニングを受けた。現在はスタッフとして組み立てなどを行なう

2024UCIマスターズ世界選手権ダウンヒル 三山

サイクルショップカガの店内には、レースで使用した機材、ギア、メダルなどが展示されている

2024UCIマスターズ世界選手権ダウンヒル 三山

「ちょっと疲れたから出るのを迷った」といいつつ、6月15-16日に行なわれたダウンヒルシリーズ第4戦白馬岩岳大会に出場。

2024UCIマスターズ世界選手権ダウンヒル 三山

「還暦を祝ってくれたり、一緒に走ってくれる愉快な仲間たちと、家族のおかげでしんどい時期も乗り越えられたと思います」写真提供:三山孝幸

 

2024 UCI Masters Mountain Bike World Championships(Cairns)
https://www.mtbmastersworldscairns.com.au