ツール・ド・フランス2024 開幕 初日はバルデが優勝してマイヨ・ジョーヌ獲得
世界最大の自転車レースである第111回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)が、6月29日にイタリア中部トスカーナ州の州都フィレンツェで開幕した。
初日はトスカーナ州のフィレンツェからエミリア・ロマーニャ州のリミニまでの206kmで、丘越え区間の第1ステージが競われ、開催国フランスのロマン・バルデ(チームDSMフィルメニッヒ・ポストNL)が、チームメイトのフランク・ファンデンブルーク(チームDSMフィルメニッヒ・ポストNL/オランダ)の助けを借りて僅差で逃げ切り、4度目の区間優勝を果たした。
33歳のバルデは、ツール開幕前に来年6月のクリテリウム・デュ・ドーフィネ(UCIワールドツアー)後にロード競技を引退し、グラベル競技に転向する事を発表したばかりだった。そのため今大会は彼にとって最後のツールであり、11度目の参加で初めてマイヨ・ジョーヌに袖を通す事ができたのは、まるでおとぎ話のようだった。
フィレンツェからスタート
7月26日に開幕するパリオリンピックの影響で、史上初めて隣国イタリアのフィレンツェで開幕した第111回大会には22チームの176選手が参加。オフィシャルスタート前にはフィレンツェの有名なヴェッキオ宮殿で一度止まり、選手たちはヴェッキオ橋を渡って3週間の長い旅へと出発した。快晴で気温は36℃まで上がり、暑い1日となった。
総合ディレクターのクリスティアン・プリュドムがスタートの旗を振り落とすと同時にアタックが始まり、17km地点で7人が逃げ出した。その中にグランツール初参加のファンデンブルックも加わっていた。この日は7カ所の丘を越えるコースで、最初の丘で逃げに合流したヨーナス・アブラハムセン(ウノエクス モビリティ)が積極的に山岳ポイントを稼ぎ続けた。
前人未到の区間通算35勝を目指す英国のマーク・カヴェンディッシュ(アスタナ・カザクスタン チーム)は、最初の丘で集団から遅れてしまい、チームメイトや他のスプリンターたちと一緒にゴールを目指す事になった。彼と行動を共にしていた地元イタリアのミケーレ・ガッツォーリ(アスタナ・カザクスタン チーム)は途中でレースを棄権し、今大会リタイア1号になってしまった。
集団では、この日4つ目の丘だったバルボットの丘(カテゴリー2)でUAEチーム・エミレーツが先頭を引き始め、ダヴィド・ゴデュ(グルパマ・FDJ)や、この日の区間優勝が期待されていた世界チャンピオンのマチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)が遅れてしまった。ゴールまで残り70kmで、先頭の逃げから2分遅れの集団は60人程に減っていた。
バルデがアタック!
その集団からゴールまで残り52kmでバルデがアタックし、単独で逃げを追走した。彼は6カ所目のモンテマッジョの丘で、先頭を逃げ続けていたヴァランタン・マドゥアス(グルパマ・FDJ)、アブラハムセン、ファンデンブルークに追いついた。ファンデンブルークは上りでバルデを引き続け、アブラハムセンとマドゥアスは遅れてしまった。
チームDSMフィルメニッヒ・ポストNLの2人は最後のサン・マリノ共和国の丘を集団に2分近いタイム差を付けて越え、リミニのゴールを目指して坂を下った。集団はトスカーナ出身のイタリアチャンピオンを擁するEFエデュケーション・イージーポストやリドル・トレックが引き続け、タイム差は着実に削られていった。ゴールまで残り1kmのフラム・ルージュで、そのタイム差はたった11秒だった。
しかし、ファンデンブルークは仕事を続け、バルデを無事にゴールまで運び切った。ゴールスプリントを開始した集団を尻目に、バルデはファンデンブルークと一緒にゴールし、区間優勝とマイヨ・ジョーヌを手中に収めた。23歳のファンデンブルークは中間スプリントでポイントを稼いでいたため、ポイント賞のマイヨ・ベールとマイヨ・ブランを獲得し、この日の敢闘賞も受賞した。
最初の丘で集団から遅れてしまったカヴェンディッシュは39分12秒遅れだったが、何とか制限時間内にゴールする事ができた。
■区間優勝して初めてマイヨ・ジョーヌに袖を通したバルデのコメント
「自転車競技には、予想外の瞬間というものがまだある。それは崇高だ。ボクはこのツール・ド・フランスに、今までとは異なった心境でやって来た。アタックした時は、本能で行った。大勢の選手が苦しんでいるのを見たし、前にいるファンデンブルックを頼りにできると分かっていた。飛び出す時だという直感があった。
上手くいかなければ、最悪で20分失うだろうが、ボクはもはや総合成績の為にここにはいない。最後の数kmはクレイジーだった。向かい風でボクたちは時速48kmで走っていた。こんなシナリオは夢にも思っていなかった。でも、ファンデンブルックが優れた選手だと知っていたし、他の組み合わせでは同じようには行かなかっただろう。ボクと同じように、彼はこの勝利に値する。
マイヨ・ジョーヌは、少なくとも1日着るのがボクの競技キャリアでの夢の1つだった。それをちょっと逃していたが、異なった見方をしてやっと実現した。やっと本当の自分を見せる事ができる。まるでツール・ド・フランスではないかのように走った」
■ツール初参加でバルデを勝利に導いたファンデンブルックのコメント
「(オフィシャルスタート前の)ニュートラルではただ唖然としていたが、レースが始まったら他のレースと何も変わらないと感じた。気が付いたら逃げに加わっていて、ベストを尽くして更に先へ進む方法だけを考えていた。ゴールした後で、自分が何を成し遂げたのか気が付くものだ。
最初に自分の脚の調子が良いと感じたので、バルデにこの上りでペースアップすると伝えた。自分のペースには自分でも驚いた。その後、バルデはボクが最後の上りを越えるのを助けてくれた。そこからゴールまでのレースは本当にハードだった。本当に燃え尽きた。ボクたちがそれをやり遂げたなんて、とてもクレイジーだ。
最初のいくつかの山岳賞スプリントで負けた時には、確かに自分に腹を立てた。でも、このまま続ければ敢闘賞を狙えると思っていた。その為に逃げに加わった訳ではなかったが、バルデが合流した時は驚いた。そしてボクたちは全く異なった計画を立て、それは全て上手く行ったのさ」
■第1ステージ結果
[6月29日/フィレンツェ(イタリア)~リミニ(イタリア)/206 km]
1. R. BARDET (TEAM DSM-FIRMENICH POSTNL / FRA) 05h 07′ 22”
2. F. VAN DEN BROEK (TEAM DSM-FIRMENICH POSTNL / NED)
3. W. VAN AERT (TEAM VISMA | LEASE A BIKE / BEL) + 00′ 05”
4. T. POGACAR (UAE TEAM EMIRATES / SLO) + 00′ 05”
5. M. VAN GILS (LOTTO DSTNY / BEL) + 00′ 05”
6. A. ARANBURU (MOVISTAR TEAM / ESP) + 00′ 05”
7. M. PEDERSEN (LIDL-TREK / DEN) + 00′ 05”
8. R. EVENEPOEL (SOUDAL QUICK-STEP / BEL) + 00′ 05”
9. P. BILBAO (BAHRAIN VICTORIOUS / ESP) + 00′ 05”
10. A. BETTIOL (EF EDUCATION – EASYPOST / ITA) + 00′ 05”
■第1ステージ後の総合成績(マイヨ・ジョーヌ)
1. R. BARDET (TEAM DSM-FIRMENICH POSTNL / FRA) 05h 07′ 12”
2. F. VAN DEN BROEK (TEAM DSM-FIRMENICH POSTNL / NED) + 00′ 04’’
3. W. VAN AERT (TEAM VISMA | LEASE A BIKE / BEL) + 00′ 11’’
4. T. POGACAR (UAE TEAM EMIRATES / SLO) + 00′ 15”
5. M. VAN GILS (LOTTO DSTNY / BEL) + 00′ 15”
6. A. ARANBURU (MOVISTAR TEAM / ESP) + 00′ 15”
7. M. PEDERSEN (LIDL-TREK / DEN) + 00′ 15”
8. R. EVENEPOEL (SOUDAL QUICK-STEP / BEL) + 00′ 15”
9. P. BILBAO (BAHRAIN VICTORIOUS / ESP) + 00′ 15”
10. A. BETTIOL (EF EDUCATION – EASYPOST / ITA) + 00′ 15”
[各賞]
■ポイント賞:F. VAN DEN BROEK (TEAM DSM-FIRMENICH POSTNL / NED)
■山岳賞 : J. ABRAHAMSEN (UNO-X MOBILITY / NOR)
■新人賞 :F. VAN DEN BROEK (TEAM DSM-FIRMENICH POSTNL / NED)
(※第2ステージは M. VAN GILS (LOTTO DSTNY / BEL) が着用)
■チーム成績:TEAM DSM-FIRMENICH POSTNL (NED)
■敢闘賞 : F. VAN DEN BROEK (TEAM DSM-FIRMENICH POSTNL / NED)
第2ステージはパンターニの故郷からスタート
6月30日はマルコ・パンターニの故郷チェゼナーティコからボローニャまでの199.2kmで、丘越え区間の第2ステージが行われる。コースは終盤に有名なサン・ルーカの丘を2回越える。