イタリアで開催中の第111回ツール・ド・フランス（ＵＣＩワールドツアー）は、７月１日にピアチェンツァからトリノまでの230.8 kmで、今大会最長区間の第３ステージを競い、ビニヤム・ギルマイが落車事故で混沌となった集団ゴールスプリントを制し、アフリカの小国エリトリアとベルギーのアンテルマルシェ・ワンティにツール区間初優勝をもたらした。
 

ギルマイが落車で混沌となった集団ゴールスプリントを制した (©SprintCycling)

 
区間2位はコロンビアのフェルナンド・ガビリア（モビスターチーム）、3位はベルギーチャンピオンのアルノー・ドゥリー（ロット・デスティニー）だった。総合首位は落車を逃れて区間14位に入ったリチャル・カラパス（ＥＦエデュケーション・イージーポスト）になり、南米のエクアドルに初のマイヨ・ジョーヌをもたらした。
 

31歳のカラパスが初めてマイヨ・ジョーヌを着たエクアドル人になった (photo : A.S.O. /Charly Lopez)

最長ステージで前半はアタックなし

●第3ステージのコースプロフィール (MAP : A.S.O.)

 
第３ステージは175選手が出走。開幕から厳しい２ステージをこなした集団は、翌日に山岳区間が控えている事もあり、今大会最長ステージでスタートからアタックを試みる選手はいなかった。5km地点でポイント賞のマイヨ・ベールを初めて着たノルウエーのヨーナス・アブラハムセン（ウノエクス モビリティ）が、チームメイトのヨハンネス・キュルセット（ウノエクス モビリティ）と一緒に前に出たが、晴れ姿を沿道のファンに披露しただけで集団に戻った。

山岳賞でも総合首位のアブラハムセンは、70.8kmのカテゴリー４の丘を先頭で越えてポイントを稼いだ。集団の先頭はトラクターのあだ名を持つティム・デクラルク（リドル・トレック）とシルヴァン・ディリエ（アルペシン・ドゥクーニンク）が引き続けた。
 

集団をコントロールし続けた「トラクター」ことデクラルク (photo : A.S.O. /Charly Lopez)

 
94.3kmの中間スプリント地点はマス・ピーダスン（リドル・トレック）が先頭で通過。アブラハムセンは7位通過だったが、ポイント賞総合首位の座は安泰だった。最初の3時間の平均時速は39km/hだった。

グルイエが終盤に逃げて敢闘賞を受賞

残り66.5kmで逃げ出したフランスのグルリエがこの日の敢闘賞を受賞した (photo : A.S.O. /Charly Lopez)

 
ゴールまで残り66.5kmで、フランスのファビアン・グルリエ（トタルエナジーズ）が単独でアタックし、この日最初の逃げになった。彼は10数秒差を付けて逃げ続け、ゴールまで残り28.7kmでデクラルクがコントロールする集団に吸収されたが、この走りで敢闘賞を獲得する事ができた。

１つになった集団では、残り13kmでデンマークのカスパ・ピーダスン（スーダル・クイックステップ）が転倒する事故があった。彼はレースを続ける事ができて完走もしたが、ゴール後の検査で鎖骨を骨折していた事が分かり、ツールを去らなければならなくなった。

集団ゴールスプリントへの期待が高まる中、ゴールまで残り6.3kmでアルカンシエルのマチュー・ファンデルプール（アルペシン・ドゥクーニンク）がパンクに見舞われ、集団から遅れてしまった。これでヤスペル・フィリプセン（アルペシン・ドゥクーニンク）は重要なリードアウトを失ってしまった。

しかし、ゴールまで残り2.3kmで集団の右側で大きな落車事故が発生し、フィリプセンも巻き込まれて区間優勝のチャンスを失ってしまった。落車で混沌となった集団はアンテルマルシェ・ワンティが先頭を引いて残り1kmのフラム・ルージュを通過した。最後はピーダスンが最初にスパートしたが、右側からうまくすり抜けたギルマイが先頭に出てフィニッシュラインを通過した。

エリトリアのギルマイは2022年のジロ・デ・イタリア（ＵＣＩワールドツアー）で既に区間優勝していて、これがグランツール区間２勝目となった。彼は同じ年にベルギーのヘント～ウェヴェルヘム・イン・フランダース・フィールズ（ＵＣＩワールドツアー）でも初優勝し、アフリカ初の北のクラシック優勝者になっていた。

区間順位でカラパスが総合首位

総合成績は４選手がタイム差なしで総合首位を競っており、区間順位の累計で順位が決まっていた。落車事故でタイム差は付かなかったが、マイヨ・ジョーヌを着ていたポガチャルは区間38位でゴールしたため、区間14位でゴールしたカラパスが総合首位になり、マイヨ・ジョーヌに初めて袖を通した。
 

ギルマイがアフリカの小国エリトリアとベルギーのアンテルマルシェ・ワンティにツール区間初優勝をもたらした (photo : A.S.O. /Charly Lopez)

■第３ステージ結果
［７月１日／ピアチェンツァ（イタリア）〜トリノ（イタリア）／230.8 km］
1. B. GIRMAY (INTERMARCHÉ – WANTY / ERI) 05h 26′ 48”
2. F. GAVIRIA (MOVISTAR TEAM / COL)
3. A. DE LIE (LOTTO DSTNY / BEL)
4. M. PEDERSEN (LIDL-TREK / DEN)
5. D. GROENEWEGEN (TEAM JAYCO ALULA / NED)
6. P. BAUHAUS (BAHRAIN VICTORIOUS / GER)
7. F. JAKOBSEN (TEAM DSM-FIRMENICH POSTNL / NED)
8. D. BALLERINI (ASTANA QAZAQSTAN TEAM / ITA)
9. S. BENNETT (DECATHLON AG2R LA MONDIALE TEAM / IRL)
10. B. COQUARD (COFIDIS / FRA)

14. R. CARAPAZ (EF EDUCATION – EASYPOST / ECU)
38. T. POGACAR (UAE TEAM EMIRATES / SLO)
40. R. EVENEPOEL (SOUDAL QUICK-STEP / BEL)
68. J. VINGEGAARD (TEAM VISMA | LEASE A BIKE / DEN)

■第３ステージ後の総合成績（マイヨ・ジョーヌ）
1. R. CARAPAZ (EF EDUCATION – EASYPOST / ECU) 15h 20′ 18”
2. T. POGACAR (UAE TEAM EMIRATES / SLO)
3. R. EVENEPOEL (SOUDAL QUICK-STEP / BEL)
4. J. VINGEGAARD (TEAM VISMA | LEASE A BIKE / DEN)
5. R. BARDET (TEAM DSM-FIRMENICH POSTNL / FRA) + 00′ 06’’
6. P. BILBAO (BAHRAIN VICTORIOUS / ESP) + 00′ 21”
7. G. MARTIN (COFIDIS / FRA) + 00′ 21”
8. E. BERNAL (INEOS GRENADIERS / COL) + 00′ 21”
9. J. HINDLEY (RED BULL – BORA – HANSGROHE / AUS) + 00′ 21”
10. A. VLASOV (RED BULL – BORA – HANSGROHE / RUS) + 00′ 21”
17. P. ROGLIC (RED BULL – BORA – HANSGROHE / SLO) + 00′ 21”

［各賞］
■ポイント賞：J. ABRAHAMSEN (UNO-X MOBILITY / NOR)
■山岳賞 : J. ABRAHAMSEN (UNO-X MOBILITY / NOR)
（※第4ステージは V. MADOUAS (GROUPAMA-FDJ / FRA) が着用）
■新人賞 ：R. EVENEPOEL (SOUDAL QUICK-STEP / BEL)
■チーム成績：MOVISTAR TEAM (ESP)
■敢闘賞 : F. GRELLIER (TOTALENERGIES / FRA)
 

フランスへ入る第４ステージはガリヴィエ峠を越えるアルプス山岳区間

●第4ステージのコースプロフィール (MAP : A.S.O.)

 
７月２日はイタリアのピネローロをスタートし、カテゴリー２のセストリエール峠とモンジュネーヴル峠を越えてフランスへと入り、ヴァロワールにゴールする139.6kmの第４ステージが行われる。レース後半には全長23kmでカテゴリー超級のガリヴィエ峠（標高2642m）を越えるが、ゴールは長い坂を下った先にある。
 

(photo : A.S.O. /Charly Lopez)

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