ツール・ド・フランス2024 第5ステージでカヴェンディッシュが前人未到の35勝目!

  • photo A.S.O. /Billy Ceusters /Charly Lopez / ©SprintCycling

第111回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、7月3日にサン・ジャン・ド・モーリエンヌからサン・ヴルバまでの177.4 kmで平坦区間の第5ステージを競い、英国のマーク・カヴェンディッシュ(アスタナ・カザクスタン チーム)が集団ゴールスプリントを制して通算35勝目を上げ、遂に最多区間優勝記録のトップに立った。
 

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英国のカヴェンディッシュが遂に前人未到のツール区間通算35勝を成し遂げた (©SprintCycling)

 
カヴェンディッシュは2021年のツール・ド・フランス第13ステージで、マイヨ・ベールを着て通算34勝目を上げ、ベルギーのエディ・メルクスが長年保持していた最多区間優勝記録に並んだ。カヴェンディッシュは昨年引退を発表した後にツールで記録更新を目指したが、第8ステージで落車して鎖骨を骨折し、その夢は消えてしまった。

昨年10月にカヴェンディッシュは引退を1年延期し、アスタナ・カザクスタン チームと共にもう一度ツール区間優勝を目指す決意を固めた。そして今年5月で39歳になったカヴェンディッシュは、15回目のツール参加で遂に悲願だった35勝目を勝ち取り、ツール史上最も区間優勝した選手になった。
 

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ゴール直後にチームメイトと勝利を喜ぶカヴェンディッシュ (photo : A.S.O. /Charly Lopez)

 
その記録達成は、決して簡単なものではなかった。今年のツールは初日から過酷な丘越えステージで、カヴェンディッシュは最初の丘で集団から遅れてしまい、40分近く遅れてゴールし、制限時間ギリギリだった。最初のスプリントステージだった第3ステージでは、ゴール目前の落車事故に巻き込まれ、チャンスを失ってしまっていた。

そして第5ステージで遂に大記録を達成したカヴェンディッシュは、ゴール後に自転車を置いて徒歩で表彰台へと向かい、大勢の選手たちから次々と祝福を受けていた。そこには妻と4人の子供たちも観戦に来ていて、彼は記録への挑戦を見守り続けてくれた大切な家族と、喜びの瞬間を分かち合う事ができた。子供たちは彼と一緒に表彰台へ上がり、歴史的な瞬間の一部になった。

カヴェンディッシュはジロ・デ・イタリア(UCIワールドツアー)の区間で17勝、ブエルタ・ア・エスパーニャ(UCIワールドツアー)の区間で3勝していて、これで3大ツアー全てでの区間優勝数は55勝になった。彼よりも多く勝っているのは、64勝のメルクス、57勝のマリオ・チポリーニ(イタリア)だけだ。

歴史的な1日に総合成績での変動はなく、スロベニアのタデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)がマイヨ・ジョーヌを守った。
 

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父の歴史的な瞬間を見届けた4人の子供たちが一緒に表彰台へ上がった (©SprintCycling)


リヨン出身の2人が逃げた

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●第5ステージのコースプロフィール (MAP : A.S.O.)

 
第5ステージは174選手が出走。強い向かい風の影響で、スタート直後に飛び出す選手はいなかった。集団はティム・デクレルク(リドル・トレック)とシルヴァン・ディリエ(アルペシン・ドゥクーニンク)が先頭でコントロールを続け、アタックの試みがなかなか成功しないなか、25kmでフランスのクレマン・リュソ(グルパマ・FDJ)が遂に逃げ出す事に成功した。そこに31km地点でマッテオ・ヴェルシェ(トタルエナジーズ)が合流し、リヨン出身の2人のフランス人の逃げになった。

逃げは40km地点で集団に最大4分35秒差を付けたが、デクレルクとディリエが集団のコントロールを続け、タイム差はそれ以上にならなかった。104.6km地点のカテゴリー4の丘をリュソが先頭で通過した時、集団とのタイム差は2分20秒になっていた。リュソは123.2kmの中間スプリントも先頭で通過した。集団はデンマークのマス・ピーダスン(リドル・トレック)が3位で通過し、5位で通過したエリトリアのビニアム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ)とポイント賞総合で同ポイントになった。
 

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リヨン出身の2人のフランス人が逃げた (photo : A.S.O. /Charly Lopez)

 
ゴールまで残り35.8kmの2カ所目の丘でフランス勢の逃げは吸収され、カテゴリー4の頂上はマイヨ・ベールを着たノルウエーのヨーナス・アブラハムセン(ウノエクス モビリティ)が先頭で通過した。彼は中間スプリントで既にポイント賞総合首位の座を失っていたが、まだ山岳賞の総合では2位のポガチャルに5ポイント差を付けて首位をキープしていた。

国際自転車競技連合(UCI)は、レースの安全性を高めるために、今大会でゴール前のセーフティーゾーン(いわゆる3kmルール)を拡大するテストを行っており、この日はそれが4kmになっていた。幸いこの日は大きな落車事故はなく、集団はロット・デスティニーが引いてゴールスプリントへと向かった。

最後に列車を組めるチームはなかったが、目まぐるしい動きの中で左側から飛び出したカヴェンディッシュが、ヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク)やアレクサンドル・クリストフ(ウノエクス モビリティ)といったトップスプリンターたちの追撃をかわし、両手を上げてフィニッシュラインを通過した。その後方では、ピーダスンが左側のフェンスに激突して転倒した。彼はスプリントに参加できず、区間9位に入ったギルマイがポイント賞総合首位になり、マイヨ・ベールを獲得した。
 

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エリトリアのギルマイがポイント賞総合首位に立ち、マイヨ・ベールを獲得した (photo : A.S.O. /Jonathan Biche)

 
■遂に前人未到の35勝目を勝ち取ったカヴェンディッシュのコメント
「アスタナはこのツール・ド・フランスで我々が確実に良い成績を得られるように、今年大きな賭けに出た。ボス(ヴィノクロフ)は我々がここに来て、少なくとも区間1勝するという大きな賭けをした。それは彼が、ツールがどのようなものかを知っているかを示していた。全力を尽くさなければならないもので、我々はそれをやり遂げた。我々はまさにやりたかった事に取り組んだんだ。

ボクはこれまで15回ツールを走ったが、悪い1日を持つのは好きじゃあないし、苦しむのだって好きじゃない。でも、それは頭の中の問題で、頑張れば乗り越えられると分かっている。努力すればチャンスは得られるが、物事は自分の思いどおりにはならないものだ。チームとして望んでいたようにはならなかったが、彼らは即興で最高のポジションに導いてくれたから、ボクはどんな列車に乗っても勝つ事ができた。特に体力的に他の選手ほど優れていない時は、頭をちょっと使うのは間違いなく有益なのさ」
 

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マイヨ・ジョーヌはポガチャルが守った (photo : A.S.O. /Jonathan Biche)


■第5ステージ結果

[7月3日/サン・ジャン・ド・モーリエンヌ~サン・ヴルバ/177.4 km]
1. M. CAVENDISH (ASTANA QAZAQSTAN TEAM / GBR) 04h 08′ 46”
2. J. PHILIPSEN (ALPECIN-DECEUNINCK / BEL)
3. A. KRISTOFF (UNO-X MOBILITY / NOR)
4. A. DE LIE (LOTTO DSTNY / BEL)
5. F. JAKOBSEN (TEAM DSM-FIRMENICH POSTNL / NED)
6. P. ACKERMANN (ISRAEL – PREMIER TECH / GER)
7. A. DEMARE (ARKEA-B&B HOTELS / FRA)
8. G. THIJSSEN (INTERMARCHÉ – WANTY / BEL)
9. B. GIRMAY (INTERMARCHÉ – WANTY / ERI)
10. M. VAN DEN BERG (EF EDUCATION – EASYPOST / NED)

■第5ステージ後の総合成績(マイヨ・ジョーヌ)
1. T. POGACAR (UAE TEAM EMIRATES / SLO) 23h 15′ 24”
2. R. EVENEPOEL (SOUDAL QUICK-STEP / BEL) + 00′ 45”
3. J. VINGEGAARD (TEAM VISMA | LEASE A BIKE / DEN) + 00′ 50”
4. J. AYUSO (UAE TEAM EMIRATES / ESP) + 01′ 10”
5. P. ROGLIC (RED BULL – BORA – HANSGROHE / SLO) + 01′ 14”
6. C. RODRIGUEZ (INEOS GRENADIERS / ESP) + 01′ 16”
7. M. LANDA (SOUDAL QUICK-STEP / ESP) + 01′ 32”
8. J. ALMEIDA (UAE TEAM EMIRATES / POR) + 01′ 32”
9. G. CICCONE (LIDL-TREK / ITA) + 03′ 20”
10. E. BERNAL (INEOS GRENADIERS / COL) + 03′ 21”

[各賞]
■ポイント賞:B. GIRMAY (INTERMARCHÉ – WANTY / ERI)
■山岳賞 : J. ABRAHAMSEN (UNO-X MOBILITY / NOR)
■新人賞 :R. EVENEPOEL (SOUDAL QUICK-STEP / BEL)
■チーム成績:UAE TEAM EMIRATES (UAE)
■敢闘賞 : C. RUSSO (GROUPAMA-FDJ / FRA)
 

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(photo : A.S.O. /Charly Lopez)

 

ツール・ド・フランス 公式サイト

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