チームユーラシア-iRCタイヤ サイクリングアカデミー2024レポート

「チームユーラシア-iRCタイヤ サイクリングアカデミー」では、男子ユース選手(U17およびU19)の夏休み期間中の欧州遠征を2024年7月18日~8月29日に実施した。

Team Eurasia-iRC TIRE サイクリングアカデミー2024

参加選手
【U17】
大谷正太 (Outdoor Life Racing)
井上悠喜 (松山学院高等学校自転車競技部)
伊藤幹将 (松山学院高等学校自転車競技部)
中島真治 (Link Vision Girasole Racing)

【U19】
鈴木勇太 (Campione)
新藤大翔 (埼玉ユース自転車競技部)
安川尚吾 (Orca Cycling Team)
新藤想真 (駿台甲府高等学校)

 

U17:4人、U19:4人、総勢8人の選手が時期をずらしながら、41日間で計29レース、58回レースにエントリーした。今年のトップ10は以下のとおり。

【U17】
井上悠喜 4位 7月24日 Voortkapel
井上悠喜 8位 7月30日 Kooigem
中島真治 8位 8月19日 Kortemark
伊藤幹将 9位 8月18日 Vichte

【U19】
安川尚吾 8位 8月25日 Zwevezele
安川尚吾 10位 8月19日 Kortemark

 

今年は複数の選手が多数トップ10に入賞。

井上悠喜は「スプリントは苦手」としながらも、レース展開の読み、他の選手が動けないタイミングで集団から抜け出すセンスが絶妙で、基礎体力の高さも合わせて良い成績を残すことができた。

Team Eurasia-iRC TIRE サイクリングアカデミー2024

ベルギーのレース2戦目にして逃げに加わり4位入賞した井上。

 

中島真治はトレーニングでTTの走力を確認すれば「平均的な走力がある」事は確認できたが、多くのレースで1周目から遅れリタイヤとなるケースが多かった。エントリー数が21人と少ないレースでは8位入賞。全体の50%以上の成績を残している。このレースではエントリー数が少ないことから、集団内での位置取りや、コーナーの立ち上がりでの加速が求められることなく、「脚力勝負」が出来た事が良かったのだと推察している。

多くの日本人選手に当てはまるが、集団内の位置取りや、ドラフティングのテクニックを向上させることができれば欧州レースにおいても良い結果を残すことが可能であることが確認できた象徴的な1戦となった。

Team Eurasia-iRC TIRE サイクリングアカデミー2024

 

アカデミー参加3年目となる安川尚吾は、春に体調を崩し長期療養期間を経てからの欧州遠征となった。遠征の前半はリタイヤする事もあったが、それでも逃げに加わったり、自分の感性と実際のレースの動きを確認するような走り方が印象的であった。

後半にはコンディションを上げ、ラスト4レースではメイン集団から抜け出し、逃げ切るレースが3回。U17・1年目から「逃げに加わる」事にチャレンジし続け、一度も逃げ切る事は出来なかったが、3年目にしてようやく実を結んだ。

Team Eurasia-iRC TIRE サイクリングアカデミー2024

後半の4レース中、3レースで逃げ切った安川。アカデミー3年目となり目に見える成長をしている。

 

U19・1年目の新藤大翔は、トップ10は逃したが、毎レースごとに修正を行い、自らレースを動かすこともあり、成績で現れる数値以上の実力を垣間見ることが複数回あった。

Team Eurasia-iRC TIRE サイクリングアカデミー2024

最終周回を3人で通過する新藤。ラスト2周、逃げる2人を15秒のタイムギャップから単独でブリッジを決め3人のエスケープを形成した。この逃げはラスト5kmで集団に飲み込まれたが、このようなレースを続けていけばいつか必ず逃げ切れるはずだ

 

チームユーラシア-iRCタイヤ代表・橋川健氏からの報告

講習~落車の確率5.2% 最も低い確率

講習はレース後のミーティングも含め合計20時間以上行いました。特に力を入れていたのは「落車しない」こと。昨年はレース中の落車は10%を超え、トレーニング中の落車もあったので、今年は特に力を入れました。

その結果トレーニング中の落車はゼロ。レース中の落車は3回。エントリー数は58レースですので落車の確率は5.2%。アカデミーを開催してから一番少ない数値でした。今回参加した選手の中には過去2年で4回落車をしていた選手もいたのですが(落車の確率約25%)、今年はゼロ回。毎年アカデミーで「落車はしてはいけない」「落車の状況と原因の解明」を指導してきた成果があったと感じています。

今年起きた3回の落車は全て「初戦」でした。「初戦は特に落車が発生しやすい」ことは以前から認識していたので、今後は「初戦のレースでいかに落車を減らす事ができるのか?」を課題とし、落車ゼロを目指し取り組んでいきます。

 

自ら動いていく事の重要性

レース中の集団内での位置取りに関する講習は、主催者から許可を得てGoproを取り付け、レース後に検証を行いました。その映像を皆で客観的に観察しながら意見を交わす事で、自分では気付けない発見もあり次のレースで活かす事ができました。

また欧州のレースでは「小人数のアタックが繰り返され、気付いたら20人以上の集団が前にできていた」ことはよくあり、逆に言えば「アタックを成功させなければ前に残れない」のです。日本のレースでは「消耗戦」となることが多く、「アタックをすることが不利」とされる展開が多く見られますが、この考え方を根本から変え「アタックが決まらないことは失敗ではない」と野球選手に例えて「バットを振らなければヒットは生まれない」と積極的な走りを選手達には伝えています。

 

総評

チームユーラシア-iRCタイヤサイクリングアカデミーを始めて9年になります。初年度に警察、救急車を要請するようなトレーニング中の事故が2回、レース中の落車が11回あった事に危機感を感じ、それから落車の低減に取り組んできました。

過去にアカデミーで落車を複数回していた選手が今年はゼロだったり、初戦で落車した選手が3人いましたが、それ以降はゼロに抑える事ができ、「落車しないための意識」に改善できたと感じています。

またアカデミーに参加した選手は「逃げに加わる事の必要性」と「チャレンジする事」がどれだけ重要か気付く事になります。それにより即席で結果をで生むことは無く、結果を残せるまでには多くの日数と経験を要する事もありますが、方向性を示す事で欧州のレースと日本のレースを重ねていくなかで成長し、翌年アカデミーに参加した際に結果を生んでいます。

また来年、彼らがどれだけ成長し、どんな走りを見せてくれるのか?またアカデミーを卒業した選手たちが今後どのように成長していくのかを楽しみに期待しています。

 

協賛
高木秀彰サポートプログラム
井上ゴム工業株式会社 iRC TIRE

提携
ロード・トゥ・ラブニール(RTA)

運営者
Team Eurasia-iRC TIRE
代表 橋川健
UCI 公認コーチ