宇都宮ブリッツェン「マイナビ ツール・ド・九州2024」参戦レポート
目次
宇都宮市を拠点とする地域密着型のプロ自転車ロードレースチーム「宇都宮ブリッツェン」は、九州地方の美しい街並みや自然の中を4日間にわたって駆け抜ける大規模なUCI国際自転車ロードレース「マイナビ ツール・ド・九州2024(10月11日〜14日開催)」に出場した。
小倉城クリテリウム
九州地方の美しい街並みや自然の中を国内外の強者たちが駆け抜ける大規模なUCIレース「ツール・ド・九州」。昨年に続き2度目の開催となった今回も、エキシビジョンレースである小倉城クリテリウムから幕を開けた。
国内ライバルチームだけでなく、世界で走るUCIワールドツアーチームやUCIプロチームも参戦する同大会。シーズン後半戦に入り、チームワークも個々のコンディションも好調で波に乗る宇都宮ブリッツェン。新城ロードレース優勝の沢田時、直近で出場したおおいたアーバンクラシック3位のルーベン・アコスタをはじめ、谷順成、花田聖誠、フォン・チュンカイ、ジェシッド・シエッラの6選手が出場した。
初日のクリテリウムは、小倉城を中心とした特設コース約1.8kmを25周回し、トータル約45kmを走る。コース沿いには小倉城庭園や勝山公園、松本清張記念館などが並び、まさに中心地といえるロケーションだ。観客にとっては、疾走する選手たちと風景の融合を何度も楽しめる魅力的なコースではないだろうか。
一方、選手目線でレイアウトを見てみると、複数ある直角ターンや180度ターンが目を引く。コーナーのたびに加減速が繰り返されるため、位置取りや立ち上がりに踏み出す力が勝敗を分ける鍵となるだろう。さらに石畳の敷かれた区間にも注意が必要だ。
チームプレゼンテーションで谷順成キャプテンは、「今年もチームとして参加できて光栄。来週はホームで宇都宮ジャパンカップがあり、そこに向けて取り組んできたので、今大会でも良い走りができると思っている。今日はフォン・チュンカイ選手でスプリントを狙いたい。明日からのロードレースは全員が上位に入れる力を持っているので、チーム力を活かして格上のチームと渡り合っていきたい」と意気込んだ。
青空の下、老若男女大勢の観衆に見送られてレースはスタートした。レースは序盤からぐんぐんスピードが上がり、ハイペースな展開に。コーナーでは激しい位置取り争いが繰り広げられ、直線に入ると集団は縦に長く伸びる。
海外勢を中心に各チーム積極的な動きを見せるなか、4周回直前には沢田時も単独で前へと飛び出す動きを見せて存在感を示した。前半は何度もアタックが繰り返されるが、決定的な逃げには繋がらず。集団は一つのまま周回が重ねられていき、レースはあっという間に折り返しを迎えた。
13周回直前、EFエデュケーション・イージーポストのルーカス・ネルーカーとトタルエネルジーのジョルダン・ジュガット、JCLチームUKYOの小石祐馬が抜け出す。14周目に入るタイミングで小石選手が逃げ集団を離れ、アスタナ・カザクスタン チームのアントン・チャーミーが先頭に追撃をかけた。
16周目にはルーカス、ジョルダンにチャーミーが追いつき、強力な逃げを形成。ゴールスプリントで勝負したいチームは終盤までに捕まえたいところだが、逃げに選手を乗せたチームにコントロールされ、思うように前を追えない。
17周回完了時のタイムギャップは約40秒。先頭3人は逃げ切り勝利を狙って協調体制に入り、メイン集団は徐々に引き離されていく。20周回完了時には差はさらに約45秒まで開き、逃げ切りが濃厚になった。
残すところ1周回、逃げとのタイムギャップは1分に迫るほどに拡大。メイン集団は集団内での上位争いに向けてポジションを上げ、スプリントに備える。エースを任されたフォン・チュンカイも集団前方に位置取り、虎視眈々とその時を待った。
優勝を勝ち取ったのは、UCIワールドチームのルーカス・ネルーカー(EFエデュケーション・イージーポスト)。格の違いを見せつけるかのような圧倒的な勝利だった。宇都宮ブリッツェンは、フォン・チュンカイがチーム最高位の9位でフィニッシュした。
レース後のフォンのコメント:
「スタートからハイペースで、いつもの日本のUCIレースと違うと感じた。ワールドツアーチーム中心にペースメイクが行われ、ポジションを上げようと前方に上がっても中々入れて貰えずに集団前方をキープするのが容易でない。今日のレースは強力な3人に逃げ切られてしまったが、セカンドグループでスプリントに参加して9位のシングルリザルトになれたのは悪くない。怪我からの復帰戦と言うこともあったので、不安はあったが、明日からのステージもチャンスがあれば狙っていきたい」
マイナビ ツール・ド・九州2024 小倉城クリテリウム
開催日:2024年10月11日(金)
スタート&フィニッシュ:福岡県北九州市・小倉北区小倉城周辺特設会場
コース:小倉城周辺特設コース 約1.8km×25周回 総距離約45km
▼リザルト
1位 ルーカス・ネルーカー(EFエデュケーション・イージーポスト) 0:59:59
2位 ジョルダン・ジェガット(トタルエネルジー) +0:00
3位 アントン・チャーミー(アスタナ・カザクスタン チーム) +0:00
9位 フォン・チュンカイ(宇都宮ブリッツェン) +0:34
14位 沢田時(宇都宮ブリッツェン) +0:35
71位 ルーベン・アコスタ(宇都宮ブリッツェン) +1:27
73位 ジェシッド・シエッラ(宇都宮ブリッツェン) +1:27
81位 花田聖誠(宇都宮ブリッツェン) +1:31
92位 谷順成(宇都宮ブリッツェン) -16周
第1ステージ 大分
第1ステージの大分ステージは、別府市から西へ進んで日田市をフィニッシュとする約138㎞ラインレースで、山岳地帯を走る厳しいコースでありながらも、最後は集団スプリントが予想されるという、チーム総合力を試されるステージである。
宇都宮ブリッツェンは、フォン・チュンカイ、沢田時、谷順成、ジェシット・シエッラ、ルーベン・アコスタ、花田聖誠の6人が出場。フォンは夏に練習中の落車で膝靭帯を部分断裂し、医師の診断ではジャパンカップの出場さえ危ぶまれていたが、必死の治療とリハビリでこのツール・ド・九州への出場を叶えた。
このレースはUCIアジアツアー1クラスに属し、全17チーム中7つが海外チーム、そのうち世界レベルで戦うチームが4チーム来日しており、前日もフォンに「いつもの日本のUCIレースと違うと感じた。ワールドツアーチーム中心にペースメイクが行われ、ポジションを上げようと前方に上がっても入れてもらえず、集団前方をキープするのが容易でない」と言わしめたほど。そんななか、宇都宮ブリッツェンはこの日も組織力を見せた。
ニュートラル区間を経てリアルスタートが切られたが、その後のコースの厳しさを考慮してか、すぐにアタックがかかることはなかった。ようやく2分ほど経ったところで日本チームを中心にアタックがあったが、すぐに繋がる。その後も決定的と感じる逃げも決まったが、アスタナ・カザクスタンチーム、EFエデュケーション・イージーポスト、トタルエネルジーなど海外チームが集団コントロールをして吸収していく。
最終的に集団が落ち着いたのは、残り70kmでクリスティアン・スバラーリ(コラテック・ヴィーニファンティーニ)が単独逃げを成功させてからだ。どちらかというとスプリンターだが、グランツール10回、クラシックレース20回の出場経験を持つ実力者。その力を信じてか、スバラーリとタイムギャップ2分がついた残り約50km地点で、フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)がアタック。それについて行ったのがシエッラだった。
この頃になると、宇都宮ブリッツェンはチームで固まり、集団の先頭2番手をコントロールするチームとして走っていた。結局シエッラの逃げは、マンセボが遅れることでつかまってしまったが、宇都宮ブリッツェンはこの日も存在感を示す走りでフィニッシュの周回に入った。
最後は日田の街を2周回半するが、残り2周回に入るフィニッシュラインで宇都宮ブリッツェンは6人全員を集団に残していた。これは国内チームでは唯一で、全体を見ても全員を残したのは宇都宮ブリッツェン、トタルエネルジー、コラテック・ヴィーニファンティーニだけだった。宇都宮ブリッツェンは存在感を示しつつも、谷がレース前にコメントしたように、「最低限、先頭集団でゴールするように」を有言実行できそうな様子になってきた。
レースの方は、やはりワールドツアーチームが仕掛けてきて、残り5kmの5人の逃げからエミリアン・ジャニエール(トタルエネルジー)がスプリントで優勝。
宇都宮ブリッツェンはその逃げに乗せることはできなかったが、後続集団のスプリントでフォンが13位に入り、沢田も18位。谷とアコスタも先頭集団に残り、チーム総合成績は4位に。個人総合成績もこの4人がトップとわずか20秒差におり、まさに翌日につながるステージとなった。
レース後のフォンのコメント
「僕自身にとってはケガから復帰直後で、感触はいいのだが、やはりハイテンポの上りはただついていくだけになってしまった。ケガからの3カ月、「たぶん僕は大丈夫だ」と思ったけど、時々とてもつらい瞬間があった。あまり考え込まないようにして前に進んだ。(明日の第2ステージはフォン向きだという質問に対し)それはわからないけど、ただ、いつでも大事なポイントや逃げは外さずに対応していく。(沢田)時のコンディションがとても良いと思う。チームとしてどう前で展開していくかを考え、リザルト上位に挑戦していきたい。
マイナビ ツール・ド・九州 2024 第1ステージ 大分(UCIアジアツアー2.1)
開催日:2024年10月12日(土)
スタート:別府市・立命館アジア太平洋大学(大分県別府市十文字原1-1)
フィニッシュ:日田市・大原八幡宮前(大分県日田市田島184)
コース:別府市(立命館アジア太平洋大学)→由布市→九重町→日田市(大原八幡宮前)約138km
▼第1ステージのリザルト
1位 エミリアン・ジャニエール(トタルエネルジー)3h17’28”
2位 ルーカス・ネルーカー(EFエデュケーション・イージーポスト)+0’00”
3位 アントン・チャーミー(アスタナ・カザクスタン チーム)+0’00”
13位 フォン・チュンカイ(宇都宮ブリッツェン)+0’10”
18位 沢田時(宇都宮ブリッツェン)+0’10”
35位 ルーベン・アコスタ(宇都宮ブリッツェン)+0’10”
39位 谷順成(宇都宮ブリッツェン)+0’10”
49位 ジェシット・シエッラ(宇都宮ブリッツェン)+1’18”
72位 花田聖誠(宇都宮ブリッツェン)+9’41”
▼第1ステージ終了後の個人総合成績
1位 エミリアン・ジャニエール(トタルエネルジー)3h17’28”
2位 ルーカス・ネルーカー(EFエデュケーション・イージーポスト)+0’03”
3位 アントン・チャーミー(アスタナ・カザクスタン チーム)+0’06”
16位 フォン・チュンカイ(宇都宮ブリッツェン)+0’20”
20位 沢田時(宇都宮ブリッツェン)+0’20”
36位 ルーベン・アコスタ(宇都宮ブリッツェン)+0’20”
39位 谷順成(宇都宮ブリッツェン)+0’20”
49位 ジェシット・シエッラ(宇都宮ブリッツェン)+1’28”
72位 花田聖誠(宇都宮ブリッツェン)+9’51”
第2ステージ 熊本阿蘇
マイナビ ツール・ド・九州 2024の第2ステージが熊本県阿蘇地域を舞台に開催された。このステージは南小国町から南阿蘇村までの全長108kmのコースで、南小国町の美しい自然から阿蘇山のダイナミックな景観を望み、アップダウンの多い厳しいコースが選手たちを待ち受ける。天候は穏やかだが、阿蘇特有の風がどのように影響するかも注意すべきひとつ。
さらにステージの難所は、周回コースに入ってからの山岳ポイントの上りと、その後に訪れる下り区間。これらの要素に加え、最後のゴールに向けての平坦区間でのペースアップが予測され、各チームの戦略が複雑に絡み合うことから予想が付きにくいレースとなるだろう。
宇都宮ブリッツェンは、谷順成、沢田時、花田聖誠、フォン・チュンカイ、ジェシッド・シエッラ、ルーベン・アコスタの6人で参戦。昨日のステージで人数を減らしたライバルチームも多いが、宇都宮ブリッツェンは全員が第2ステージに駒を進めた。
レースは序盤に、香山飛龍(シマノレーシング)のアタックをきっかけに4人が抜け出す。最初のスプリントポイントをコンポップ・ティマチャイ(ルージャイ・インシュアランス)が1位通過。その後、メイン集団からひとり追走をしてきたネイサン・アール(JCL TEAM UKYO)が追い付き、香山飛龍(シマノレーシング)、コンポップ・ティマチャイ(ルージャイ・インシュアランス)、ニコラス・セスラー(ヴィクトリア・スポーツ)、山本元喜(キナンレーシング)、ネイサン・アール(JCL TEAM UKYO)の5人の先頭グループが形成される。
先頭5人は1分25秒のアドバンテージを得たまま最初の山岳ポイント箱石峠(1級)に突入。メイン集団に吸収されることなく、27km地点のKOMは、ネイサン・アール(JCL TEAM UKYO)が1位で通過した。宇都宮ブリッツェンは、この箱石峠(1級)でフォンと花田が遅れてしまう。初日、第1ステージと調子が良かったフォンがこの時点で遅れてしまったのは、宇都宮ブリッツェンにとって苦しい状況となった。
先頭5人は箱石峠(1級)を下り、周回コースに入る手前でメイン集団に吸収されレースは振り出しに。
ゴールまで約72kmを残し、レースはアリエル・カルロス・サムディオ・カレーラ(コラテック・ヴィーニファンティーニ)のアタックをきっかけに再び動き出す。このアタックに、小石祐馬(JCL TEAM UKYO)、トマ・ルバ(キナンレーシングチーム)、 ホセビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)、ニコル・パレハ(ヴィクトリア・スポーツ)が反応。実力ある5人の先頭グループが形成される。
一方メイン集団は、リーダーチームのトタルエネルジーがコントロール。先頭グループの逃げ切りリスクを最低限に抑えるべく、40秒ほどのタイムギャップを維持しながらコントロールを行っていく。
周回コースに入った先頭グループは、設定される3つのKOMを先頭通過。さらにゴールまで残り20km地点の最後のスプリントポイントも小石が1位追加し、貴重なボーナスタイムを獲得した。
約70kmを逃げ続けた先頭グループだが、計算されたトタルエネルジーのコントロールにより、ついにゴール残り2kmで吸収される。そして、約50人が残る先頭集団のゴールスプリント勝負に持ち込まれた。宇都宮ブリッツェンは、ルーベン、谷、沢田の3人が先頭グループに残るが前方に上がれていない。
混戦のゴールスプリントを制したのは、エミリアン・ジャニエール(トタルエネルジー)。昨日に続き、今大会2勝目をマーク。個人総合リーダージャージも死守する結果となった。宇都宮ブリッツェンは、ルーベン・アコスタが19位でフィニッシュとなった。
レース後のルーベン・アコスタのコメント:
「今日もスタートからゴールまでハイアベレージで苦しめられた。それでも自分たちは最後のシーンまで先頭グループにチームメイトを3人残していた。最後は連携してゴールを狙いたかったが、うまく纏まることができなかった。明日の最終ステージは、上位の多くが同タイムなので、ボーナスタイムを1秒でも獲得できれば総合順位も大きく入れ替わる。また、周回コースで何度もKOMがあるから先頭グループに残れる選手も少ないはず。最終ステージでの総合順位アップを目指してチャレンジしたいと思う。」
マイナビ ツール・ド・九州 2024 第2ステージ 熊本阿蘇(UCIアジアツアー2.1)
開催日:2024年10月13日(日)
スタート:南小国町(瀬の本レストハウス 熊本県阿蘇郡南小国町満願寺5621−7)
フィニッシュ:南阿蘇村(南阿蘇村役場 熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陽1705)
コース:南小国町(瀬の本レストハウス)→産山村→阿蘇市→高森町→南阿蘇村(南阿蘇村役場)約108km
▼第2ステージのリザルト
1位 エミリアン・ジャニエール(トタルエネルジー)2h27’51”
2位 イヴァン・スミルノフ(アスタナ・カザクスタン)+0’00”
3位 ルーカス・ネルーカー(EFエデュケーション・イージーポスト)+0’00”
19位 ルーベン・アコスタ(宇都宮ブリッツェン)+0’00”
21位 沢田時(宇都宮ブリッツェン)+0’00”
36位 谷順成(宇都宮ブリッツェン)+0’00”
59位 ジェシット・シエッラ(宇都宮ブリッツェン)+3’14”
63位 フォン・チュンカイ(宇都宮ブリッツェン)+8’28”
76位 花田聖誠(宇都宮ブリッツェン)+8’28”
▼第2ステージ終了後の個人総合成績
1位 エミリアン・ジャニエール(トタルエネルジー)5h44’59”
2位 ルーカス・ネルーカー(EFエデュケーション・イージーポスト)+0’09”
3位 アントン・チャーミー(アスタナ・カザクスタン チーム)+0’16”
22位 沢田時(宇都宮ブリッツェン)+0’30”
28位 ルーベン・アコスタ(宇都宮ブリッツェン)+0’30”
37位 谷順成(宇都宮ブリッツェン)+0’30”
50位 ジェシット・シエッラ(宇都宮ブリッツェン)+4’52”
51位 フォン・チュンカイ(宇都宮ブリッツェン)+8’58”
69位 花田聖誠(宇都宮ブリッツェン)+18’29”
第3ステージ 福岡
マイナビ ツール・ド・九州2024最終ステージの舞台は福岡。岡垣町から宗像市までの約141kmで争われたが、今ステージのポイントは周回コースが存在する点だ。
9周する周回コースは、すべての周回に垂見峠の山岳ポイントが設定されている。また波津の中間スプリントポイントも3回。山岳賞で逆転を狙いたい選手にとっては9回の山岳ポイントはチャンスとなり、総合ジャンプアップを狙う選手にとっても3回の中間スプリントポイントは魅力だ。中間スプリントポイントでは通過順位で1位3秒、2位2秒、3位1秒が総合順位のタイムからそれぞれマイナスされる。
総合1~3位が16秒以内におり、総合39位までが30秒以内にいる状態での最終ステージ。中間スプリントポイントを3回1位通過すれば9秒引いてもらえるとなれば、例えば39位からトップ5入りも夢ではない。「ステージ優勝狙いだけではない戦い」が様々なところで起こる。
宇都宮ブリッツェンは最終ステージまで6人全員を残し、フォン・チュンカイ、沢田時、谷順成、ジェシット・シエッラ、ルーベン・アコスタ、花田聖誠が出走。沢田、谷、アコスタがトップと30秒以内に位置する。
このレースはUCIレースでもあるので総合25位までUCIポイントがつく。UCIポイントはUCIレースの出場権を得るためにも重要なため、できるだけ多くのポイントを取るのも各チームにとって大事なミッションだ。ここにも「ステージ優勝狙いだけではない戦い」がある。
岡垣町から約8kmのパレード走行後、周回コースに入ったのは87人。97人で開幕したマイナビ ツール・ド・九州2024だったが、集団は少し小さくなった。また今回の周回コースは玄界灘の波津海岸と標高105mの垂見峠を9周するので、その高低差がどう走りに影響するか。
スタートからアタック合戦が続き、決定的な逃げが決まったのは35kmを過ぎた頃。冨尾大地、入部正太朗(以上シマノレーシング )、小石祐馬(JCL TEAM UKYO)、安原大貴(マトリックスパワータグ)、山本元喜(キナンレーシングチーム)、ダニエル・ヴェン・カリーニョ(ヴィクトリア・スポーツ・プロサイクリング)という日本人選手中心の6人の逃げが決まり、特に山本は山岳ポイントを積極的に取り、結果的には今日1日で山岳賞を手中に収めた。また入部と小石は総合トップと30秒以内の選手であったため、中間スプリントポイントで激しい戦いを見せた。
集団のほうは、総合トップのエミリアン・ジャニエールを擁するトタルエネルジーが終始集団をコントロール。見事に計算尽くされた走りで、逃げとの差を1分30秒あたりに保って進む。宇都宮ブリッツェンは全員を集団に残し、トタルエネルジーに動きを委ねるしかなかった。
レースが動き始めたのは6回目の山岳ポイント手前。集団からカーター・ベトルズ、アドネ・ファン・エングレン(以上ルージャイ・インシュアランス)、ベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)が飛び出し、集団はこれを容認。前の6人は安原と冨尾がドロップして4人となっており、7周回目に入ってすぐに3人が合流して、7人の逃げとなった。
メイン集団は少しずつ加速を始め、前との差を徐々に縮め始め、8周回目の山岳に向けては集団がバラけて、トタルエネルジートレインが崩壊。前をキャッチし、7人から粘ったベトルズ、エングレン、ダイボールの3人だけ逃げ続ける状態に。この動きで花田が集団から遅れる。
やがて3人も捕まって最後は大集団でのゴールスプリント勝負となり、イヴァン・スミルノフ(アスタナ・カザクスタン チーム)が最終ステージを制した。
宇都宮ブリッツェンは5人が集団にいて、その中からフォンと沢田がスプリント勝負に加わる。並み居るワールドクラスの選手の中で、まったく怯むことなく加速していくフォンと沢田。フォンが12位、沢田が16位でフィニッシュとなった。新城ロードでスプリント勝利した沢田の実力は、伊達じゃないことが感じられた今レースだった。
4日間の激闘を制し、個人総合リーダーに輝いたのは、エミリアン・ジャニエール(トタルエネルジー)。
宇都宮ブリッツェンは沢田時の22位が最上位。貴重なUCIポイント(3ポイント)を加算することができた。チームは今大会で入れた刺激で弾みをつけ、宇都宮ジャパンカップサイクルロードレースに参戦する。
レース後の谷のコメント:
「今日は総合が絡んでいるアコスタ選手か沢田選手か僕が、逃げに入って中間スプリントポイントのボーナスタイムを取りに行くというのが第一の目標だったが、最初のアタック合戦が激化し、その中で3人で立ち回ったが、決定的な逃げを逃してしまい、集団コントロールするチームに委ねる形になってしまった。最後のゴールスプリントは、みんなで連携できていたが、最後の最後にはぐれてしまい、それぞれのスプリントに任せることになってしまった。沢田選手のみが22位でUCIポイント獲得となったが、レベルの高い大会だったとはいえ、もう少しできることがあったのではないか。チームとして悔しい。厳しい戦いのレースとなったが、6人全員が残って3日間しっかり戦えたので、反省点が多い中でもチームで得たものもあったので、それを今度、自分たちのホームの宇都宮ジャパンカップでこの雪辱を果たし、良かった点をつなげたい。」
マイナビ ツール・ド・九州 2024 第3ステージ 福岡(UCIアジアツアー2.1)
開催日:2024年10月14日(月・祝)
スタート:岡垣町・岡垣サンリーアイ(福岡県遠賀郡岡垣町野間1-2-1)
フィニッシュ:宗像市・宗像大社(福岡県宗像市田島2331)
コース:岡垣町(岡垣サンリーアイ)→波津海岸→垂見峠→宗像市(宗像大社)140.48km
▼第3ステージのリザルト
1位 イヴァン・スミルノフ(アスタナ・カザクスタン チーム)3h07’44”
2位 エミリアン・ジャニエール(トタルエネルジー)+0’00”
3位 ルーカス・ネルーカー(EFエデュケーション・イージーポスト)+0’00”
12位 フォン・チュンカイ(宇都宮ブリッツェン)+0’00”
16位 沢田時(宇都宮ブリッツェン)+0’00”
24位 谷順成(宇都宮ブリッツェン)+0’00”
46位 ルーベン・アコスタ(宇都宮ブリッツェン)+0’00”
50位 ジェシット・シエッラ(宇都宮ブリッツェン)+0’07”
58位 花田聖誠(宇都宮ブリッツェン)+2’17”
▼マイナビ ツール・ド・九州2024の個人総合成績
1位 エミリアン・ジャニエール(トタルエネルジー)8h52’34”
2位 ルーカス・ネルーカー(EFエデュケーション・イージーポスト)+0’14”
3位 イヴァン・スミルノフ(アスタナ・カザクスタン チーム)+0’23”
22位 沢田時(宇都宮ブリッツェン)+0’39”
30位 谷順成(宇都宮ブリッツェン)+0’39”
33位 ルーベン・アコスタ(宇都宮ブリッツェン)+0’39”
46位 ジェシット・シエッラ(宇都宮ブリッツェン)+5’08”
50位 フォン・チュンカイ(宇都宮ブリッツェン)+9’07”
66位 花田聖誠(宇都宮ブリッツェン)+20’55”