2024世界選手権トラックでアルカンシェル3枚の快挙 メダリスト記者会見
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2024トラック世界選手権にて、男子ケイリンで山﨑賢人が、男子スクラッチで窪木一茂が、女子ケイリンで佐藤水菜がアルカンシェルを獲得。10月22日、羽田空港にて帰国後記者会見が行われた。
3枚のアルカンシェル獲得
10月16日〜20日にデンマーク・バレラップにて行われた2024UCIトラック世界選手権。パリオリンピックも終わったばかりだが、今回、日本ナショナルチームは19種目に15名の選手を派遣した。
初日には早速、男子チームスプリント(長迫吉拓、太田海也、小原佑太)にて日本史上初となる銅メダルを獲得。
さらに2日目には男子ケイリンで山﨑賢人が1987年以来37年ぶりの金メダルを獲得。そのレースの直後に行われた男子スクラッチでは昨年まで2年連続で2位が続いた窪木一茂が初の金メダル、2枚目のアルカンシェルを獲得した。
3日目には女子スプリントで佐藤水菜が銅メダル、大会最終日には佐藤が女子ケイリンで初めての金メダルを獲得し、初めてのアルカンシェルに袖を通した。
10月22日の朝に日本選手団は帰国し、羽田空港内にてメダリストたちの会見が行われた。
中野浩一氏は今回の世界選手権の結果についてこう評した。
「オリンピックが終わって結構短い期間で世界選手権が行われたということで、選手のモチベーション問題などいろいろあったと思いますが、各選手とも健闘してもらって、その結果として、史上初のケイリン金メダルを男女共に取ったり、チームスプリントも(銅メダル獲得で)本当はオリンピックで取りたかったんですけど、今回はリベンジを少しでも果たしたかなと思います。窪木くんも銀(22年)、銀(23年)ときて、やっぱりもう次は金しかないというところでしっかりスクラッチで金を取りました。
特にケイリンに関しては、今まで日本発祥の種目ということで、何とか金メダルというところを目標にやってきましたけども、銀メダルが今まで3回ありまして、その後銅メダルで、ここへきてようやく金メダルが取れました。今後、これをしっかりと継続していけるように今後強化の方にしっかりと力を入れてやっていきたいと思います」
流れを引き込んだ男子ケイリンでの金メダル
初日の男子ケイリンでアルカンシェルを獲得した山﨑は、「今まで皆さんのサポートや応援の力を形にすることがなかなかできずに悔しい思いをしていたんですけど、今回金メダルという形にしっかりできたので、すごくうれしく思います」と最初に話した。
パリオリンピック出場を目指していた山﨑だったが、国内選考の結果として悔しくもリザーブに回る形となった。だが、パリオリンピックまでは代表メンバーらと共にトレーニングを行いつつ、その後も世界選手権に向けてしっかりと気持ちを切り替えていた。
ケイリン決勝ではラスト1周を前に、山﨑は前が塞がれる形となったが、最終コーナー前で4番手の位置からアウト側で一気に加速し、そのまま先頭に立ってフィニッシュラインを切った。世界選手権で戦いをこう振り返る。
「予選からちょっと体が硬くて、緊張をしていたんだと思うんですけど全然動かなくて、もうギリギリ勝ち上がったような感じだったので、メダルを(狙う)っていうふうにはどうしても思えなくて。もう一戦一戦、目の前の戦いを戦い抜くことで、結果も出るのかなと思って、目の前のレースに集中していました。
決勝は、(スタート位置を決める)1番のくじを引いて1番から始まったんですけど、そこからは冷静に展開を予想して、ジェイソン(・ニブレット短距離ヘッドコーチ)やブノワ(・べトゥ テクニカルディレクター)のアドバイスがあって、もうそれを信じて、自分の目の前の展開で一瞬一瞬で反応して、力を出し切るしかないと思って走りました」
今回のアルカンシェル獲得について、そして今後について山﨑はこう語る。
「トレーニングでも、僕以外のメンバーが本当に強くて、トレーニングの段階でメンバーとの力の違いというか、みんなが強いので僕が引っ張られて、だんだん力をつけさせてもらったなという感覚があって。それでも世界と比べると、全然結果も僕は出ていないですし、メダル獲得っていうのはまだまだ遠いなと思っていました。
今回メダルを取れたのは、全然実力とかではなくて、本当にいろいろサポートがあって、応援の力やそういうものが結果に繋がっただけなので、まだまだ世界一というものには僕は見合ってないなと思います。
なので、これからまだまだトレーニングはしっかりやらないといけないですし、これから見られる立場にもなるので、しっかりと立場をわきまえて、実力をつけて頑張っていきたいです。
僕は元々は競輪選手から自転車競技者になったんですけど、競輪と自転車競技はどうしても分けて考えられるように言われていて。競輪選手と自転車競技者がどちらも盛り上がればいいなと僕は思ってるので、自転車競技として金メダルを取りましたけど、これから競輪界にもいい流れというか、何かそういういい影響が(与えられるように)、盛り上げていけたらなと思います」
競輪とロードレースで培った力での勝利
男子ケイリンの直後に行われた男子スクラッチには窪木が出場。
中盤のラップの取り合いに絡みつつ、窪木は1ラップを成功させる。ラスト14周で窪木は集団から先に出ていたデンマークの選手を追うべく一人飛び出した。そこから他選手の合流などもありながら窪木は集団に戻ることなく、ラスト3周には単独先頭となり集団と半周ほどの差をつける。集団から逃げ切ってフィニッシュラインを切った窪木が日本人男子で中距離種目初めてとなるアルカンシェルを獲得した。
「自転車競技を始めた16歳からの目標ではあったんですけど、まさか獲得できると思ってなかったですし、自分の優勝もうれしいんですけど、僕は山﨑選手が今回同じ部屋で、前のレースで優勝してくれて、本当に自分のレースはどうでもいいぐらいに思っていました。佐藤選手も横にいて一緒に喜んで、感極まっていた状態で優勝させてもらって、流れを作っていただけて本当にうれしかったですし、やっぱりナショナルチームの雰囲気というか、環境作りに本当に感謝してます。今、いい雰囲気で全員がいられることが今の結果に表れてると思うので、本当に環境に感謝してます」と窪木は話した。
優勝したスクラッチまでの思いについて窪木はこう語る。
「(スクラッチの)その前にチームパシュートの1回戦がありました。やっぱり団体種目っていうのは花形だと思っていますし、とても盛り上がる種目ですので、男子チームスプリントに続いて3位決定戦でメダルを取りたかったんですけど、取れなかった思いが、スクラッチにすごく影響したのかなと思います。
それと、やっぱり競輪で培ったスプリント力というか、スピードに関しては、中距離の中で本当にかなり自信をつけていまして、その武器があるからこそ、途中でアタックして逃げ切るっていう戦法にも切り替えられたのかなと思います。なので、自分としてはやはりロードレースと競輪という二つの種目を走らせてもらえることで、今回のメダルに繋がったと思っているので、本当に所属先だったり、ロードレースの環境にもすごく感謝しています」
アルカンシェルがもたらす意味、さらに今後について窪木はこう話した。
「自分はこの結果はまだ通過点だと思っていて、まだまだ世界で通用するスピードと持久力が求められるので、それを次の4年間で、今過ぎ去った4年間以上に1日1日を大切にして、すごく必要な練習はまだまだあるので、積み上げていって、もっと世界と差を縮めたいと思っていますし、今回の自分の中距離でのメダルというのは、初めてだと思うんですけど、これは本当に自分だけの喜びだけではなくて、これからの選手だったり、日本の中長距離界の若い選手だったり、これから世界を目指す選手に向けて、すごくいい影響を与えることができたんじゃないかなと思います。
やはり自分も成績が出ないときはありましたが、本当に積み重ねてきたことだったり、周りに支えられてきたこと、短距離ですぐそばで結果を出してくれたことだったり、東京オリンピックで梶原選手が銀メダルを取ったことも全てあったから今の結果があると思っていますし、これを弾みにに強い日本を世界にアピールできれば、より相乗効果で、絶対的に強い日本がアピールできると思っています。今回は本当にいろんな意味のある優勝をさせてもらったので、いろんな強化に繋げていけたらと思います」
4度目の挑戦で得たアルカンシェル
佐藤もまた、チームメイトたちのメダル獲得によって奮起していたそうだ。
「窪木さんが話したようにケイリンの優勝の瞬間を窪木選手と内野(艶和)選手とその他短距離の選手で見てみんなで喜んで、本当にレース前なのかなってぐらい窪木選手はすごく喜んでいて、『流れ来たな、俺も頑張る』って本当にその言葉を有言実行していました。
この流れでしっかりと自分も頑張りたいと思えて、その日はスプリントだったんですけれど、銅メダルを獲得することができました。やっぱりアルカンシェルというものをすごく着たいと思って、4回目に挑んだ世界選手権だったので、(女子ケイリンで)自分も続いてアルカンシェルを獲得することができてすごくうれしかったです。
初日のチームスプリントでは、本当にギリギリの力が拮抗している中でのハイレベルな戦いを見て、女子はやっぱり力が全然及ばないので、すごく憧れの存在でもありますし、来年から多分、また女子チームスプリントをやるとは思うので、しっかり男子に続けるように頑張りたいと思いました」
女子ケイリンの決勝には、オランダから2人、イギリスから2人、日本からは佐藤と梅川風子が勝ち上がった。最後尾からスタートした佐藤は、ラスト3周、2周と徐々に位置を上げていく。最終周に入る頃は2番手をとなり、バックストレートで一気に仕掛けた。最終コーナーで先頭の選手を捕らえると一番にフィニッシュラインへと飛び込んだ。
佐藤は決勝のレースをこう振り返る。
「ケイリンの決勝で、勝ち上がり(予選)で(位置を決める)くじ引きが悪かった分、いい番号を引けるよってコーチに言われて、自信を持って6番(最後尾)を引いたんですね。私もコーチも渋い顔していました。でもそこでどうやって勝つかをすぐに組み立ててくれて、私は窪木選手のような強い逃げ切り勝ちをすごくしたいなと思っていたんですけれど、6番だったのでしっかりと展開を見て、タイミングを見て、行けるところから行くという作戦があって、自分のタイミングがバックストレートできたので、そこからはもう後ろを突き放すような気持ちで思い切り踏み込んで走りました」
2つのメダルを獲得した佐藤は、今後についてこう話す。
「私はこの2つのメダルは一通過点だと思っていて、結果はすごくうれしいんですけれど、まだまだ自分の個の実力としては全然世界に及ばない大会で。私は(他の種目を)優勝した彼女たちとお話しすることがあるんですけど、だんだん自分が認められているなっていう実感があって。
ケイリンは実力と運といろいろな要素が含まれているレースですけれど、スプリントではやっぱり実力勝負のところが強い部分も多いので、そこで今回結果を出せたのはすごくうれしいんですけど、まだまだ上を目指すには全然力が足りないので、この結果を胸に次のステップに進みたいと思います」
男子チームスプリント、男子スプリントで銅メダル
男子チームスプリントで銅メダルを獲得した小原は、「今回の銅メダルというものは、太田海也くんと、今回ここには来られなかったんですけれども長迫吉拓選手の2人に助けられて、取ることができた銅メダルだと思っております。
それに今回チームスプリントに関しては、各国見てもフルメンバーというところではないので何とも言えないんですけれども、でもメダルはメダルとしてすごく自分の中で一つのターニングポイントになると思いますし、また今回メダルを取ったということで、来年、再来年とメダリストとしての責任であったりとか、そのメダルに乗ってくるものがあると思うので、それと向き合ってしっかり来年再来年、オリンピックに向けて、またメダルを取れるように頑張りたいと思います。
また、個人種目ではオリンピック、世界選手権共にベスト8までは行くことができたんですけれども、やはりなかなかメダルというものは取ることができていない状態です。でも、ありがたいことに、男子女子ともに世界チャンピオンが同じ日本チームにいるということで、それを目標に頑張ることができるので、まずは世界チャンピオンに追いつき追い越せの精神で頑張りたいと思います」と振り返った。
男子チームスプリント、そして男子スプリントで銅メダルを獲得した太田はこう話した。
「チームスプリントで銅メダルをまず最初に獲得して、そのときは、本当に個人種目にはない喜びがあるなと改めて実感できましたし、3人の状態が良くないとメダルを取るのはあり得ないので、すごく銅メダルの価値があるパフォーマンスが発揮できたなと思いました。
そして個人種目も銅メダルだったんですけど、個人種目に関しては今の自分の実力では銅メダル決定戦に毎回いけるか、いけないかというレベルで戦っていて、その中で今回は銅メダルを獲得できたんですけど、やっぱり今回も戦ったハリー・ラブレイセンを倒したいっていう気持ちがこの世界選を振り返ってみるとやっぱり一番強く思うので、やっぱり力の差っていうのがそこにはあるので、この銅メダルを来年どう繋げていくかっていうのがこの銅メダルの価値だと思っています。
僕自身、個人としてもチームとしても、パリオリンピックに出場して、本当に多くの方々にサポートされてるなと改めて実感できて、その中でパリオリンピックではメダルを取ることができず、どうやってみんなへ感謝の気持ちを形にできるか常に考えて、日本の競輪で結果を出すことはもちろんなんですけど、やっぱり競技の世界でもう1回メダルを取りたいと思ってこの世界選に挑みました。隣にいる選手たちが世界一になって、本当にすごくすごく刺激を受けて、夜も眠れないぐらいたぎって、スプリント3位決定戦に持ち込むことができて、本当に近くでチームメイトが世界一になってるからこそ、自分もメダルを絶対取れるという自信に繋がりました」