2024ダウンヒルシリーズ第7戦・トレイルアドベンチャー・吉野ヶ里は羽口鉄馬が優勝
DOWNHILL SERIES 2024 第7戦 トレイルアドベンチャー・吉野ヶ里(佐賀県)が11月9日(土)〜10日(日)に開催された。
高知県宿毛市、北海道ニセコアンヌプリに続く、今シーズン3カ所目の初開催会場となったのは佐賀県にあるトレイルアドベンチャー・吉野ヶ里。現在、全国8カ所に展開するトレイルアドベンチャー。施設のトレードマークが亀であることに現れているとおり、初心者向けの快適で気持ちいい多目的フロートレイルを各地に作り続けている。
そんななか、ここトレイルアドベンチャー・吉野ヶ里には11年前のDOWNHILL SERIES初年度から参加者としてレースに出ていた九州ローカルのライダーたちがスタッフとして在籍しており、MTB上級者向けのコースも設定されている。そんな、長年マウンテンバイクによって繋がっていた縁が今回の大会開催のきっかけとなった。
コース造成にはMTBツーリズムを推奨するスイスのアレグラ社の正社員でもありDHトップライダーでもある浦上太郎氏を起用。2週間かけて作られたレースコースは、通常営業で使用されているロングコースをベースにしつつも既存コースと新設区間を行き来することで、普段走り込んでいる地元勢だけが有利になってしまわないようなレイアウトが考えられた。
通常はバームが多くテクニカルさを重視しているコースだが、「やるからにはダウンヒルバイクが活躍できるコースにしたかった」との浦上氏の思惑通り、真っ直ぐに速度を乗せられる区間を造成で追加。斜度をつけ、キャンバーを作り、縦のギャップが大きくスキルの差が出るコースが用意された。
土曜日は気持ちのいい秋晴れ。
予選はトレイルアドベンチャーからスポンサードを受ける田中航太(myX/trailadventure)が57秒150で1位。2位には58秒413で幾田悠雅(輪娯館/vittoria)、3位には今回のコースビルダーでもある浦上太郎(Transition Airlines/Cleat/ALLEGRA)が59秒298でランクイン。予選で1分を切ったのはこの3人だけだった。
日曜日、昼からの天気予報に雨マークがついた。
決勝が始まるころに降るか、逃げ切れるか。タイムスケジュールを少し早めて決勝を開始したものの、キッズクラスの決勝が終わる頃に雨は降り始めた。しとしとと降る雨はコースコンディションを刻々と変えていく。
今回の観戦ポイントだったコース中盤のキャンバー区間ではスリップダウンが続出、ゴール直前に造られたカチコミ左バーム(MTB DHIのワールドカップの舞台・フランス/レジェへのオマージュ)にもライダーたちが次々と飲み込まれクラッシュ続出。そのたびに大きな声援が上がり、会場は大盛り上がり。誰かが「吉野ヶ里スケートリンク」と呼び始めた。
そんななか、荒れたコースを攻略した羽口鉄馬(洛和会音羽病院)が予選4位からの大逆転、1分07秒509で優勝。2位に1分13秒099で小山航(BEYOND THE BOUNDARIES)、3位に1分14秒610で浦上太郎、4位に是枝陽翔(玄武)、5位に横山海空といつもとは少し違う顔ぶれが揃った表彰台となった。
羽口は今年3月の舟状骨骨折からやっと復帰したばかり。
「コースはめちゃくちゃ面白くて、練習のときからずっと楽しみながら走れていました。とはいえ、全然得意という感じではなくて、(田中)コータくんが速くて、俺は厳しいなーと思っていましたが、奇跡的な雨でうまくこなせました。今年は怪我がなかなか治らなくて、7月に海外遠征から帰ってきてから4カ月弱走れずにいました。海外に行っている間や怪我の治療中に国内の若手が速くなっていて、危機感があります(笑)。今回もビクビクしながらきたんですが、死守できて良かったです。」と話した。
3位に入った浦上氏はレース後、
「最後、観客の前に飛び出してくるセクションでは試走(ドライコンデュション)時に見つけていた最速ラインはフィニッシュ前のバームへの進入角度が深すぎて、雨によってみんな散りましたね。優勝した(羽口)鉄馬だけがスタート前にそれを予測していて、行ったことのないラインを使うと宣言していました。それを聞いて「そんなわけあるかい」と思っていたんですが、絶対いったほうが良かったですね(笑)。」と勝者を称えた。
「今回はコースを造成する側でしたが、事前にまともに走ったのは1本だけ。あとはイメージだけで作りました。来年開催時には岩などの障害物を足したいなと思っています。」と来年の展望も話してくれた。
エリート女子クラスは藤森美空(Transition Bikes/AST FOREST)が優勝。JCF未登録者向けのオープン男子クラスではトレイルアドベンチャーの西日本エリアを担当する久保諒策(CLEAT / TRAIL Adventure)がコース脇からの大声援を受けながら優勝を果たした。
決勝と同時に降りだした雨は運営サイドの心配をものともせず、初開催のレースをみんなの記憶に刻んでくれるドラマチックな演出となった。
初開催ながらエントリーは100人越え。地元・吉野ヶ里町役場からも大きな支援を得ており、観客向けの臨時駐車場からの送迎や地元飲食店のブース出店、地元の名産品の賞品をご用意いただいただけでなく、伊東健吾町長にはコース脇まで入って実際にレースを観戦していただいた。来年に繋がる大きな手応えを感じることができた開催となった。
エリート男子リザルト
1. 羽口 鉄馬(洛和会音羽病院)1:07.509
2. 小山 航(BEYOND THE BOUNDARIES)+5.590
3. 浦上 太郎(Transition Airlines/Cleat/ALLE)+7.101
エリート女子リザルト
1. 藤森 美空(Transition Bikes/AST FOREST)1:28.850
2. 渡邉 織枝(札幌かえる庭園)+0.636
3. 中川 弘佳(Lovespo/CANYON)+3.793
次戦は12月9-10日に菖蒲谷森林公園(兵庫県)にて今シーズンの最終戦・第8戦が開催される。
エントリーは現在、絶賛受付中。
https://dhseries.jp/2024-7-shobudani/
DOWNHILL SERIES公式instagram ※レース参加者が投稿したストーリーをシェアしています。