女子Qリーグ、中学生Nリーグ2024-25第9戦:大磯クリテリウム第4戦 結果
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サイクルロードレースの女子リーグ「クイーン・リーグ(Qリーグ)」、中学生リーグ「ニュー・エイジ・リーグ(Nリーグ)」2024-2025シーズン第9戦:大磯クリテリウム第4戦が2025年1月19日(日)、神奈川県中郡大磯町の大磯プリンスホテル特設クリテリウムコースにて開催された。

寒空のなか、スタートを待つ女子スポーツ選手達(Photo:Kai Sasaki)
今大会は株式会社ウォークライドの主催で、大磯プリンスホテル敷地内駐車場に特設コースを設定し、開催12年目を迎える地元密着型の自転車クリテリウムレース。
年明けにレイアウトを一部変更し、昨年に一旦なくしたクランク部分が復活。テクニカルな面も競うレース展開で非常に盛り上がった。 QNリーグのシリーズ戦は前大会の第2戦、そして今大会の第4戦、次回2月開催の第5戦が対象となり、Qリーグが女子スポーツ、Nリーグ中学生女子NWが中学生女子、そしてNリーグの中学生男子Nが中学生男子と、それぞれ対象の各クラスでポイント獲得を目指す。
大会当日は午後からの雨予報もあり、朝から曇り空で時折の冷たい風が気になるコンディション。長く真っ直ぐ伸びるゴールまでのホームストレートは向かい風。しかもゴールのあるコントロールラインに向かって左側から風が吹くので、後半にある小田原コーナーを若干、膨らみ気味に曲がると立ち上がりで楽ができるが、左周りコースのため追い越しが右側からになり、集団右側に踏まない選手がいるとカオスになりやすい。また風下には選手がいてタイヤを重ねているので、その後ろにいる選手は転びやすいから注意だ。このような理由で横風のときは風上へ向かって踏んで、先頭から退避して先頭交代するのが基本戦略となる。
大会スケジュール最初におこなう恒例の「集団走行セミナー」では時々雨がパラつくものの、昼過ぎには雲が切れてきて雨は免れそうな模様。大会名物のひとつでもある出店はコンパクトな会場内で、レースを見渡しながら地元グルメを味わったり、自転車関連グッズをチェックできる。ただ、この日は天気予報が雨であったため、いつもは多くのサイクリストがサイクリングやトレーニングの合間に会場観戦で集まっているのだが、今日は早々と引き上げてしまう様子も見えて残念であった。
しかし駐車場整理など運営スタッフが、近隣の散歩で立ち寄った方にもレース観戦の呼び込みや声掛けをしていたこともあり、そんな雨模様の雰囲気を吹き飛ばすような熱いレース展開が繰り広げられ、最後まで会場に残り歓声を送った観客は素晴らしい走りを目の当たりにできた。
午前中は脚力別クラスを中心にレースが進行。この大磯クリテリウムでは脚力別クラスにおいて「ピュアビギナー」「ビギナー」「スポーツ」「ミディアム」「エキスパート」「エリート」と順に上のクラスとなる。その昇格条件は原則としてクラス上位3位に入ることだ。最上位のエリートを目指して切磋琢磨するわけだ。
なお女子選手で、男子脚力別クラスに参戦を希望する場合は、事前に大会事務局に申し出れば参戦可能。また、中学生男子も脚力別クラスにダブルエントリーができて昇格も可能だが、大人達と競い合うことになるため保護者監督のもと、よく吟味してから申し込むことを大会側からも促している。 JCF公式レースや、それに準ずる大会の場合はできるだけ年齢別クラスに参戦し、同じぐらいの年代選手達と競って欲しい。それはジュニアの機敏さと若さゆえの走りやテクニックは、年齢や経験を重ねた大人達の走りと様子が違うと考えるからである。特に選手権大会に関わるようなレースでは、しっかりと年齢別で走ることで安全面も担保されると思う。
一方で、この大磯クリテリウムのような市民レースで、かつクリテリウムのような周長が短めのレースならば、力量は同じぐらいの様々な年代の選手と混ざることで、懐に飛び込むような思いきりの良い走りにチャレンジするのも、時々ならば経験の1つとして育成面で良いのかもしれない。

中学生男子クラスでも活躍したNリーグ茂木陽向はミディアムクラスで優勝(Photo: Kai Sasaki)

昨シーズンのポイントリーダー落合(右)と現リーダーの西澤(左)。バトルマリンジャージの魔法は、まだまだ続いているようだ(Photo:QNリーグ事務局)
今回は中学生男子クラスの前におこなわれたミディアム1組目のクラスに、Nリーグ中学生男子Nのポイントランキング 5位につける茂木陽向(#1-PRIMERA-)が出場し、なんと優勝を決めていた。
また今大会のトリとなったエリートクラスには現在、静岡北高等学校で活躍する昨シーズンのNリーグ中学生男子N年間総合ポイントリーダーであった落合隼の姿もあり、ラスト周回で切れの良い単独アタックを見せゴールスプリントの末、惜しくも5位となったものの最後まで会場を沸かせる走りを魅せていた。

スタートを待つ中学生男子クラスに参戦する選手達(Photo:Kai Sasaki)
昼頃からは自転車レースの未来を担うキッズ年齢別クラスがスタート。そしてNリーグ中学生男子N対象の中学生男子クラスへとスケジュールが進む。
今回のエントリーは19人でDNSが3人おり、その中にはスタート前の時点でポイントランキング2位の渡邉公太(ブラウ・ブリッツェン U15)の名前も。リーグシリーズ対象外の先月12月・大磯クリテリウム第3戦では同クラス2位に入っており、今レースでも注目の1人であったが、レース後に怪我をしているという情報が入った。今が正念場で辛いと思うが、一日も早い回復を願っている。
また今回も Nリーグ中学生女子NW対象の中学生女子クラスにエントリーがなく、レースが成立しなかった。これはQNリーグとしても対策を考慮し、次回はレースが成立するように尽力したい。
中学生男子クラスはNリーグ西澤がゴールスプリントを制す
11時51分、正午近くになっても気温が上がらない中、中学生男子クラスがスタート。ローリング周回の1周目を経て、コントロールラインに戻ってスグにスタートを切られたタイミングで飛び出したのは、現Nリーグポイントリーダーの西澤崇介(Vite Jambe)。
この西澤を先頭に集団は大きく1つのまま2周目を完了。3周目から西澤とともにNリーグポイントランキング3位の柬理日楠詩(Team FITTE)、4位の高橋祐樹(LINKVISION GIRASOLE CYCLING)、5位の茂木陽向(#1.PRIMERA-)、そしてリーグ未登録の稲寛太(埼玉ユース自転車競技部)の5人が集団から抜け出してペースを上げていく。
4周回目に入ると最大5秒差まで開けられていた5人を追う集団から、Nリーグに9月から登録しランキング9位につける平山智也(TEAM ONE RACING)、そしてリーグ未登録の吉田楓芽(フラムルージュ)と白須樹の3人が抜け出し、5周目に入ったところで完全に8人の先行集団を形成した。

ローリング周回を終えて早速、動き出す西澤に付いていくメイン集団(Photo: Kai Sasaki)

今レースでも積極的な動きを見せた柬理。経験を重ねて益々動きが良くなっている(Photo: Kai Sasaki)
そして8人となった集団で、今大会から復活したクランク箇所でLINKVISION高橋が単独でアタック。しばらくして集団に戻ると次の6周目で再び高橋、そして Team FYTTE柬理がアタック。先頭集団が活性化するなか、後続集団とのタイム差は開いていく。
さらに 7周目に入ったところで、今度は白須が単独でアタックし、追う7人の集団とのタイム差を広げていく。この白須の動きについて、ゴール後に西澤に聞くと「前回(QNリーグシリーズ対象外の大磯クリテリウム第3戦)でも速かった白須樹選手もマークして走った」と教えてくれた。
この残り2周回目では「(白須選手が)出てきたから垂れるかな?と思って逃がしていたんですけど、そしたら祐樹(LINE VISION高橋祐樹)が行って、白須選手が前にいたから詰まってしまったんです。それで祐樹が付けなくて白須選手が単独(アタック)で行って・・・」と難しい展開に手こずった様子だ。

思いきってアタックをする高橋は、後続を突き放すべく一気にペースアップを試みる(Photo: Kai Sasaki)

後半にアタックを決めた白須(写真右)の動きと思いきりの良さは、今後も要注目だ(Photo: Kai Sasaki)
しかし、この後に再び動いたのは西澤自身であった。「(白須選手の)動きに結構、焦って(ホームストレートに入る前ぐらいから追いかけて)ギリギリ追いつきました」というとおり、7人の集団全員で白須を捕まえ、そのままゴールスプリントに突入。わずかタイヤ差で西澤が見事優勝を決めた。
「ホームストレートまで、ちょっと距離があってよかったかな?」と聞くと、西澤は「ゴールまで距離があって助かりました」と安堵の表情。 また、最初からNリーグポイントランキング上位選手達との5人集団が形成されるような動きになったことについては、「とりあえずこのメンバーで行っちゃおう、という感じでした」と言う。
最後のゴールスプリントまでの局面を冷静に判断できたことについては「とにかく(先頭に)追いつくことしか考えていなかった。その追いついた勢いでゴールまで行けたので良かったです」とリーグシリーズ戦を重ねた経験も活かせているようであった。

ゴールスプリントにもつれ込む先頭集団に残れた7人(Photo: Kai Sasaki)
じつは当日は病み上がりだったと語る西澤。「先週の水曜日まで風邪で寝込んでいた」という体調で今レースに臨んでおり、2月は高校受験も控え、次回大会は受験期間の真っ最中での参戦となる。
しかし、そのような体調不良や大事な時期においても冷静な西澤は、ポイントリーダー授与式でも「残り2戦に向けての抱負として「とにかく積極的に動いて優勝を狙います!」と落ち着いてコメント。バトルマリンジャージの底力を、最終戦まで発揮してくれることを期待せずにはいられない。
この結果により西澤は優勝で28ポイントを獲得し合計197ポイントに積み上げ成功、またレース3位に入った TeamFITTE柬理が15ポイントを獲得し合計148ポイントでランキングを2位に上げた。ランキング3位にはブラウ・ブリッツェン渡邉が付いている状況だ。

中学生男子クラス表彰式。左より2位の吉田楓芽(フラムルージュ)、優勝 Vite Jambe西澤、3位 TeamFITTE柬理の3名(Photo: k.kazuma)

Nリーグ中学生男子Nの冠スポンサー、武田レッグウェアーの副賞パネルを手に笑顔の⻄澤

この3位入賞で獲得したポイントを積み上げ、Nリーグランキング2位に浮上した柬理(両写真ともに Photo: k.kazuma)
女子スポーツは筒井が優勝、Qリーグ根本は9位
中学生男子クラス表彰式やNリーグポイントリーダー授与式の後、14時01分にスタートとなったのがQリーグ対象の女子スポーツだ。
今回は15人のエントリー、14人参戦でレースは1周回のローリング周回後から、初代・2代目のQリーグ年間総合ポイントリーダーだった廣瀬博子(Pedalist)を先頭にして大きな集団で進んでいった。

2020年のリーグ初年度に中学生女子特別賞を獲得した筒井。現在は高体連選手として活躍(Photo: Kai Sasaki)

スタート直後に動く、初年度 Qリーグ女王の廣瀬(写真右)(Photo: Kai Sasaki)
次の2周目、この大きな集団から初年度のNリーグ中学生女子を牽引した筒井楓(山梨県立笛吹高等学校)、小野響子(team ZERO)、そして滋賀県から遠征の南芙美子(TeamZenko)の3人が飛び出し、一気にペースを上げた。
その動きに後続集団から西山千智(High Ambition女子サイクリングアカデミー)、山根菜穂(TEAMCSM)、野口真亜瑠の3人が少しずつ抜け出し、その後の2周回分をかけて徐々に追走集団を形成。6周目には、Qリーグランキング4位の根本香織(Team一匹狼)と仲谷あい(Roppongi Express)も追いつき、5人の第2集団ができあがった。

混沌とした集団から、いち早く抜け出すことに成功した3人。先頭から筒井、南、小野(Photo: Kai Sasaki)

先行する3人を追いかける中には、以前はNリーグでも活躍したHigh Ambition西山(写真中央)の姿も(Photo: Kai Sasaki)
この動きを先行する3人の集団が嫌い、第2集団に追いつかれないようにペースをさらに上げ、その影響で8周目には team ZERO小野がドロップ。諦めずに先行集団を追いかけ続けるが少しずつ遅れていき、残り1周回で先行集団との差が30秒まで開いて第2集団に飲まれてしまう。
一方で第2集団からも遅れていたPedalist廣瀬は単独で第2集団に追いつき、先頭集団は筒井と南の一騎打ち、第2集団は7人のゴールスプリントとなった。
会場が盛り上がるなか、優勝争いのスプリントでは落ち着いた走りの笛吹高校・筒井が先行のままゴールを決めて優勝! 2位に入ったTeamZenko南は、このレース直後にスタートしたビギナー2組目にも参戦し、見事完走を果たした。

周回ごとに後続との差を広げていく筒井(写真左)と南(同左)は、筒井リードでゴールスプリント、そのまま決着となった(Photo: Kai Sasaki)

第2集団のゴールスプリントは、粘ったTEAMCSM山根がゴールまで差し切った(Photo: Kai Sasaki)

最終周回まで第2集団に残ったTeam一匹狼の根本は、Qリーグランキングを3位まで上げた(Photo: Kai Sasaki)
この後の表彰台狙いの3位争いは、早めにスプリントを開始したTEAMCSM山根が3位を獲得。4位にHigh Ambition西山、5位に序盤の先頭集団で粘ったteam ZERO小野が入った。
Qリーグでは Team一匹狼・根本が最終周回まで第2集団で粘ったが、スプリントで力が及ばず9位に。しかし、根本までがトップ同一周回で、この後の選手は全員周回遅れとなるハイペースなレース展開だった。なお、このレース結果により根本は合計27ポイントとなり、リーグランキング3位に上がった。そしてQリーグのポイントリーダーは変わらず佐藤直美(Yahoo! JAPAN Cycle Racing team)となった。

女子スポーツの表彰式。左から2位の南芙美子(TeamZenko)、優勝の筒井楓(山梨県立笛吹高等学校)、3位の山根菜穂(TEAMCSM)(Photo: Kai Sasaki)
各リーグポイントリーダー
今大会の年間総合ポイントリーダー授与式では、ビオレーサーより「アメジストジャージ」「バトルマリンジャージ」各リーダージャージが提供された。
また、Qリーグは株式会社隼より「アスリチューン Qリーグポイントリーダー賞」、Nリーグ中学生男子Nは武田レッグウェアー株式会社より「RxL Nリーグ中学生男子ポイントリーダー賞」、Nリーグ中学生女子NWはアイリス株式会社より「EXLUB Nリーグ中学生女子 NWポイントリーダー賞」として、それぞれ賞品が提供された。

写真左より:Qリーグ・佐藤、Nリーグ・⻄澤、NW・岡田の各ポイントリーダー
Qリーグポイントリーダー:アメジストジャージ
Nリーグポイントリーダー:バトルマリンジャージ
提供:Bioracer
アスリチューン賞Qリーグ(高校生以上女子)
ポイントリーダー:佐藤 直美(Yahoo! JAPAN Cycle Racing team)・40p
ランキング2位:岡本 彩那(ブラウ・ブリッツエン)・28p
ランキング3位:根本 香織(Team 一匹狼)・27p
RxL賞 Nリーグ・N(中学生男子)
ポイントリーダー::⻄澤 崇介(Vite Jambe)・197p
ランキング2位:柬理 日楠詩(Team FITTE)・148p
ランキング3位:渡邉 公太(ブラウ・ブリッツエンU15)・137p
EXLUB賞 Nリーグ・NW(中学生女子)
ポイントリーダー:岡田 愛裕來(ブラウ・ブリッツエンU15)・83p
ランキング2位:小田島 寛奈(#1-PRIMERA-)・28p
年間総合ポイントリーダー特別賞:Airfly(株式会社ジゴスペック)
※ランキングにおいて同点者が出た場合、最新のレース着順が優位の選手を上位とする。
※最終戦終了時において、同点者が出た場合は、最終戦直前のランキングで優位の選手を上位とする。
※最終戦については、ポイントテーブルに5 点ずつ加算した点数を付与する(最終戦ボーナス)。
<レポート概要>
写真撮影:Kai Sasaki、k.kazuma、QNリーグ事務局
テキスト:須藤むつみ(QNリーグ事務局)
協力:株式会社ウォークライド
*大磯クリテリウム:公式ホームページ
https://walkride-cycling.info/oiso-c2024-25/2024-2025
Qリーグ・Nリーグ対象となる全 11戦のレーススケジュールはこちら。
Qリーグ、Nリーグは残り2戦!ますます目が離せない展開の全11戦、引き続きポイントリーダー争いに乞うご期待ください!
http://www.jbrain.or.jp/q-n-league/race-profile.html
次戦は 2月16日(日)「大磯クリテリウム第5戦」
https://walkride-cycling.info/oiso-c2024-25/
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3月には来シーズン2025-2026の要項発表を予定しています。
https://moshicom.com/102128/