雨で落車続出のツール・ド・フランス2020第1ステージはクリストフが区間優勝

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)の影響で延期になっていた第107回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)が、8月29日に南仏のニースで開幕した。

ツール・ド・フランス2020

初日の集団ゴールスプリントはクリストフが制した(©Bettiniphoto)

 
22チームの176選手が参加し、初日はニース・モワヤン・ペイからニースまでの156kmで第1ステージが競われ、ノルウェーのアレクサンダー・クリストフ(UAEチーム・エミレーツ)が集団ゴールスプリントを制して区間優勝し、33歳でマイヨ・ジョーヌに初めて袖を通した。
 
ツール・ド・フランス2020

●第1ステージのコースプロフィール(MAP : ©A.S.O.)

 
雨で落車が続出
 
フランス南東部のニースで開幕した第107回大会は、初日から雨のレースになった。0km地点からミヒャエル・シェール(CCCチーム)、シリル・ゴティエ(B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)、ファビアン・グルリエ(トタル・ディレクトエネルジー)がアタックし、この日の逃げになった。
 
25km地点から雨が降り出し、集団では落車が続出。50km地点ではパヴェル・シヴァコフ(イネオス・グレナディアズ)が転倒して負傷し、初日から大きく遅れてしまった。
 

残り58kmに設定されていたカテゴリー3の丘をシェールが先頭で越えた後、逃げは全員集団に吸収された。しかし、集団の後方では遅れる選手が続出していた。

ツール・ド・フランス2020

今年のツールは初日から雨に見舞われた

 
雨の下り坂でアスタナプロチームが攻撃を開始し、3人が飛び出したが、カーブでバランスを失ったミゲルアンヘル・ロペス(アスタナプロチーム)が転倒。集団はこれ以上の危険を冒すことを望まず、一時休戦となった。
 
雨のゴールスプリントでの危険を回避するため、選手たちのリクエストで主催者はこの日のタイム計測を残り3km地点で行うと発表した。その予感が的中したように、残り3kmのゲートを通過した直後に集団の真ん中で大きな落車が発生し、ティボ・ピノー(グルパマ・FDJ)が巻き込まれてしまった。
 
前方で難を逃れた選手たちが集団ゴールスプリントを競い、最後はクリストフが力強いスパートを見せ、世界チャンピオンのマス・ピーダスン(トレック・セガフレード)の猛追を寄せ付けなかった。区間3位にはオランダのケース・ボル(チームサンウェブ)が入った。
 
クリストフはツールで2014年に区間2勝し、2018年にはシャンゼリゼ区間を制していて、これが4回目の区間優勝だった。彼はトール・フスホフトに続き、マイヨ・ジョーヌを獲得した2人目のノルウェー人になった。
 
■初日に区間優勝してマイヨ・ジョーヌを初めて着たクリストフのコメント
「これ以上良いスタートを夢見ることはできなかった。目指していた区間優勝をするだけでなく、マイヨ・ジョーヌを獲得する夢まで叶った。最後の1kmでボクは1人だったが、自分が強いと感じていて、サガンの後ろに長い間付いていた。ツールまでの走りは素晴らしいとは言えなかったが、ボクはまだ仕上げる脚を持っていた。数日前に落車していたんだ。33歳でボクにとっては素晴らしい瞬間だ。これはボクの競技キャリアにも、子どもたちにとっても、大きな意味がある事だ」
 
ツール・ド・フランス2020

初日はクリストフが区間優勝し、マイヨ・ジョーヌを初めて獲得した

 
■第1ステージ結果
[8月29日/ニース・モワヤン・ペイ~ニース / 156km]
1. ALEXANDER KRISTOFF (UAE TEAM EMIRATES / NOR) 03h 46′ 23”
2. MADS PEDERSEN (TREK – SEGAFREDO / DEN)
3. CEES BOL (TEAM SUNWEB / NED)
4. SAM BENNETT (DECEUNINCK – QUICK – STEP / IRL)
5. PETER SAGAN (BORA – HANSGROHE / SVK)
6. ELIA VIVIANI (COFIDIS / ITA)
7. GIACOMO NIZZOLO (NTT PRO CYCLING TEAM / ITA)
8. BRYAN COQUARD (B&B HOTELS – VITAL CONCEPT / FRA)
9. ANTHONY TURGIS (TOTAL DIRECT ENERGIE / FRA)
10. JASPER STUYVEN (TREK – SEGAFREDO / BEL)
 
■第1ステージの総合成績(マイヨ・ジョーヌ)
1. ALEXANDER KRISTOFF (UAE TEAM EMIRATES / NOR) 03h 46′ 13”
2. MADS PEDERSEN (TREK – SEGAFREDO / DEN) + 04’’
3. CEES BOL (TEAM SUNWEB / NED) + 06”
4. SAM BENNETT (DECEUNINCK – QUICK – STEP / IRL) + 10’’
5. PETER SAGAN (BORA – HANSGROHE / SVK) + 10’’
6. ELIA VIVIANI (COFIDIS / ITA) + 10’’
7. GIACOMO NIZZOLO (NTT PRO CYCLING TEAM / ITA) + 10’’
8. BRYAN COQUARD (B&B HOTELS – VITAL CONCEPT / FRA) + 10’’
9. ANTHONY TURGIS (TOTAL DIRECT ENERGIE / FRA) + 10’’
10. JASPER STUYVEN (TREK – SEGAFREDO / BEL) + 10’’
 
[各賞]
■ポイント賞(マイヨ・ベール):ALEXANDER KRISTOFF (UAE TEAM EMIRATES / NOR) 
■山岳賞(マイヨ・アポワ):FABIEN GRELLIER (TOTAL DIRECT ENERGIE / FRA)
■新人賞(マイヨ・ブラン):MADS PEDERSEN (TREK – SEGAFREDO / DEN)
■チーム成績:TREK – SEGAFREDO (USA)
■敢闘賞:MICHAEL SCHÄR (CCC TEAM / SUI)

 

ツール・ド・フランス2020

ピノーは初日から残り3kmの落車に巻き込まれてしまった(©Bettiniphoto)

 

第2ステージは3つの峠を越える山岳区間

8月30日はニース・オ・ペイからニースまでの186kmで、山岳区間の第2ステージが行われる。コースはカテゴリー1の峠を2カ所越えた後、カテゴリー2の峠を1つ越え、終盤にはカテゴリーのない丘も越えなければならない。初日の落車で負傷した選手たちには厳しい一日になりそうだ。幸い日曜日のニースは快晴の予報になっている。

 
ツール・ド・フランス2020

●第2ステージのコースプロフィール(MAP : ©A.S.O.)

 

UCIのCOVID-19対策緩和をASOが拒否

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)が続くなか、国際自転車競技連合(UCI)は、ツール開幕前日の8月28日にCOVID-19対策プロトコルの改訂を発表し、グランツールの期間中に7日間で同じチームの2人以上の選手が陽性になった場合、健康上の理由でそのチームに失格を言い渡す許可を主催者に与えた。

主催紙レキップによれば、このルールは当初、30人で構成される1チームのバブルの中で2人の感染者が出た場合に適用される事になっていたが、チーム側の要望でスタッフは免除され、選手に限定されていた。

ところが開幕当日に、総合ディレクターのクリスティアン・プリュドムが、UCICOVID-19対策緩和を拒否し、当初の通りスタッフを含めると明言していることがAFPの取材で分かった。レキップによれば、この決定はフランス政府の危機管理部門の要請によるものだという。

これにより、直前にスタッフ2名が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のPCR検査で非陰性になったベルギーのロット・スーダル(UCIワールドチーム)のスタートが危ぶまれた。しかし、ベルギーのスポルザによると、このルールは第1ステージから適用されるため、ロット・スーダルはツールをスタートする事が許可されたという。

レース開幕後、主催者のPCR検査は最初の休養日まで行われないが、ロット・スーダルは8月31日に自主的に検査を行うそうだ。
 

ツール・ド・フランス2020

総合ディレクターのプリュドム(左)は、フランス政府の要請で厳格なCOVID-19対策を実行する事にした