ツール・ド・フランス2020 第12ステージはヒルシが逃げ切りプロ初優勝
第107回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、9月10日にショビニーからサランまでの218kmで、今大会最長で丘越え区間の第12ステージを競い、スイスのマルク・ヒルシ(チームサンウェブ)が独走で逃げ切ってプロ初勝利となる区間初優勝を果たした。
ヒルシは第2ステージでジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)とのゴール勝負で破れて区間2位になり、ピレネー山岳区間の第9ステージでは残り90kmから独走したものの、残り2kmで捕まり、区間3位でレースを終えていた。『3度目の正直』となった彼の区間優勝は、SNS上で誰もが称賛していた。彼は敢闘賞も受賞している。
メイン集団は2分30秒後にゴール。総合上位に変動はなく、マイヨ・ジョーヌはスロベニアチャンピオンのプリモシュ・ログリッチ(チームユンボ・ヴィスマ)が守った。
故プリドールの町を通過
全長218kmで今大会最長の第12ステージには161選手が出走。フランス中部を走るこのステージは、昨年11月に逝去した故レイモン・プリドールが住んでいたサン・レオナール・ド・ノブラを通過した。
スタートからアタックが続いた後、8km地点でイマノル・エルビティ(モビスター)、マックス・ヴァルシャイド(NTTプロサイクリング)、ルイスレオン・サンチェス(アスタナプロチーム)、ニルス・ポリッツ(イスラエル・スタートアップネイション)が逃げ出した。
さらにマチュー・ビュルゴドー(トタル・ディレクトエネルジー)とカスパ・アスグレーン(ドゥクーニンク・クイックステップ)がアタックし、先頭の4人を追走した。
51km地点の中間スプリントはポリッツが先頭で通過。追走の2人は1分10秒遅れだった。集団はマイヨ・ベールのサム・ベネット(ドゥクーニンク・クイックステップ)が先頭で通過し、この時点でポイント賞総合2位のペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)との差は70ポイントになった。最初の1時間の平均時速は51.4km/hだった。
ビュルゴドーとアスグレーンは63km地点で先行する4人に追いつき、先頭の逃げは6人になった。集団ではイルヌール・ザカリン(CCCチーム)がレースを棄権した。彼は前日のステージのニュートラルゾーンで落車し、胸部を負傷していた。
中盤に通過した2カ所のカテゴリー4の丘は、ビュルゴドーが先頭で通過した。タイム差は一時3分近くになったが、ボーラ・ハンスグローエ、CCCチーム、チームサンウェブが集団をコントロールし、残り50kmで1分に減っていた。
先頭グループではカテゴリー3の丘でアスグレーンがアタックし、エルビティが付いて行ったが、集団はすぐ後方に迫っていた。残り43km地点で集団からティシュ・べノート(チームサンウェブ)がアタックしたのをきっかけに、新たな6人の逃げが形成され、ヒルシはそこに加わっていた。
カテゴリー2の峠でヒルシがアタック
ボーナスタイムがかけられていたカテゴリー2のシュック・オー・メ峠の登坂が始まった時、6人の逃げと集団のタイム差は40秒しかなかった。この登坂でマルク・ソレル(モビスター)が一度先行したが、ゴールまで残り28kmでヒルシが彼を追い抜き、単独で先頭に立った。ヒルシが山頂を通過した時、集団は1分20秒後方にいた。
集団からはアラフィリップがアタックし、追走グループに加わったが、ヒルシは快調に独走を続け後続に47秒差を付けて逃げ切り、22歳でグランツールの区間優勝を手中に収めた。2018年のインスブルック世界選でアンダー23のロード世界チャンピオンになったヒルシは、昨年プロデビューし、今大会が初めてのグランツール参加だった。
■初参加のツールで区間初優勝したヒルシのコメント
「信じられない。2回、あとちょっとの所まで行っていた。今日勝てるとは全く思わなかった。最後の数100mは全力だった。自分の気持ちを説明できない。言葉が出ないよ。自転車の上では、いつも自分が勝てるか疑っていた。負けた2回の記憶が蘇っていた。ツールでプロ初優勝を獲得するのは…これ以上の事はない。ピレネーでは、今日勝つ事に挑戦する自信を得ていた。そうでなければ、山で単独アタックは決してしなかっただろう。自分が先週した事が、さらなるパワーを与えてくれた。ツールで2回表彰台に上がって、さらにプロ初優勝だなんて夢みたいだ」
■第12ステージ結果[9月10日/ショビニー~サラン・コレーズ / 218km]
1. MARC HIRSCHI (TEAM SUNWEB / SUI) 05h 08′ 49”
2. PIERRE ROLLAND (B&B HOTELS – VITAL CONCEPT P / B KTM / FRA) + 47”
3. SØREN KRAGH ANDERSEN (TEAM SUNWEB / DEN) + 52”
4. QUENTIN PACHER (B&B HOTELS – VITAL CONCEPT P / B KTM / FRA) + 52”
5. JESUS HERRADA (COFIDIS / ESP) + 52”
6. MAXIMILIAN SCHACHMANN (BORA – HANSGROHE / GER) + 52”
7. HUGO HOULE (ASTANA PRO TEAM / CAN) + 52”
8. SÉBASTIEN REICHENBACH (GROUPAMA – FDJ / SUI) + 52”
9. KENNY ELISSONDE (TREK – SEGAFREDO / FRA) + 56”
10. NICOLAS ROCHE (TEAM SUNWEB / IRL) + 56”
■第12ステージまでの総合成績(マイヨ・ジョーヌ)
1. PRIMOŽ ROGLIC (TEAM JUMBO – VISMA / SLO) 51h 26’ 43’’
2. EGAN BERNAL (INEOS GRENADIERS / COL) + 21”
3. GUILLAUME MARTIN (COFIDIS / FRA) + 28”
4. ROMAIN BARDET (AG2R LA MONDIALE / FRA) + 30”
5. NAIRO QUINTANA (TEAM ARKEA – SAMSIC / COL) + 32”
6. RIGOBERTO URAN (EF PRO CYCLING / COL) + 32”
7. TADEJ POGACAR (UAE TEAM EMIRATES / SLO) + 44”
8. ADAM YATES (MITCHELTON – SCOTT / GBR) + 01′ 02”
9. MIGUEL ANGEL LOPEZ (ASTANA PRO TEAM / COL) + 01′ 15”
10. MIKEL LANDA (BAHRAIN – MCLAREN / ESP) + 01′ 42”
[各賞]
■ポイント賞(マイヨ・ベール):SAM BENNETT (DECEUNINCK – QUICK – STEP / IRL)
■山岳賞(マイヨ・アポワ):BENOIT COSNEFROY (AG2R LA MONDIALE / FRA)
■新人賞(マイヨ・ブラン):EGAN BERNAL (INEOS GRENADIERS / COL)
■チーム成績:MOVISTAR TEAM (ESP)
■敢闘賞:MARC HIRSCHI (TEAM SUNWEB / SUI)
第13ステージは中央山塊の頂上ゴール
9月11日はシャテル・ギヨンから標高1589mでカテゴリー1のピュイ・マリー頂上までの191.5kmで、中央山塊山岳区間の第13ステージが行われる。ゴールのピュイ・マリー山は全長5.4kmで平均勾配は8.1%。そこに至るまでに、コースにはカテゴリー1の峠が1カ所、カテゴリー2の峠が2カ所、そしてカテゴリー3が3カ所の、合計6カ所の峠越えが設定され、このステージの累積標高は4400mに達し、今年のステージで最長だ。