チマ・コッピを越えたジロ・デ・イタリア2020 第18ステージはヒンドリーが区間初優勝、ケルデルマンが総合首位
イタリアで開催中の第103回ジロ・デ・イタリア(UCIワールドツアー)は、10月22日にピンツォーロからステルビオ国立公園にあるラーギ・ディ・カンカノまでの207kmで、カテゴリー1頂上ゴールの第18ステージを競い、オーストラリアのジャイ・ヒンドリー(チームサンウェブ)が、英国のテイオ・ゲーガンハート(イネオス・グレナディアズ)を一騎打ちのゴール勝負で下し、グランツール初優勝となる区間初優勝を果たした。
区間3位には46秒遅れでスペインのペリョ・ビルバオ(バーレーン・マクラーレン)が入った。マリア・ローザを着たポルトガルのジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)は4分51秒遅れでゴール。前日まで総合2位に付けていたオランダのウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ)が総合首位に立ち、29歳でマリア・ローザに初めて袖を通した。
チマ・コッピのステルビオでマリア・ローザが遅れた
標高2758mで今大会最高峰のチマ・コッピであるステルビオ峠を含めた4カ所の登坂の累積標高が5400mになる第18ステージには、135選手が出走。前日までルーベン・ゲレイロ(EFプロサイクリング)と山岳賞争いをしていたイタリアのジョヴァンニ・ヴィスコンティ(ヴィーニザブ・KTM)は右膝の腱炎が悪化し、スタートしなかった。
ゴールまで残り62.5kmからスタートしたチマ・コッピのステルビオ峠は、最もキツい斜面のルートを使用していた。全長は24.7kmで平均勾配は7.5%だった。決戦の場となったステルビオ峠のふもとで、メイン集団はすでに60人ほどに減っていた。
先頭はチームサンウェブが引き続け、頂上まで残り9kmでマリア・ローザのアルメイダは遂に遅れてしまった。メイングループはイネオス・グレナディアズのローハン・デニス、フィリッポ・ガンナ、ゲーガンハートの3人と、チームサンウェブのヒンドリーとケルデルマン、ヤコブ・フルサン(アスタナプロチーム)、ヴィンチェンツォ・ニバリ(トレック・セガフレード)の7人になっていた。
1km先でメイングループは更に絞り込まれ、デニス、ゲーガンハート、ヒンドリー、ケルデルマンの4人になった。ところがゴールまで残り45.5kmで、暫定マリア・ローザのケルデルマンが脱落。しかし、ヒンドリーは彼を待たなかった。
標高2758mのステルビオ峠頂上はデニスが先頭で通過し、オーストラリア人として初めてチマ・コッピ賞を獲得した。ここでケルデルマンは先頭の3人から47秒遅れで、1分44秒遅れでビルバオとフルサンが続き、マリア・ローザのアルメイダは3分49秒後方だった。デニスは先頭を引き続け、最後のカテゴリー1のトッリ・ディ・フラエレのふもとにゲーガンハートを送り届けて仕事を終えた。
トッリ・ディ・フラエレの登坂で、後方にエースが控えているヒンドリーはゲーガンハートの後方に付いていた。ケルデルマンはフルサンとビルバオに追い越されてしまったが、単独でゴールを目指してした。ゴールまで残り1.9kmのトッリ・ディ・フラエレ頂上で先頭の2人は、一人で追走してきたビルバオにまだ40秒差を付けていた。
最後は残り200mからのゴールスプリントで、脚を温存していたヒンドリーが難なくゲオゲガンハートを下し、区間初優勝を勝ち取った。ケルデルマンは何とか耐え、2分18秒遅れでゴールし、総合首位に立ってマリア・ローザを獲得する事ができた。しかし、総合成績でヒンドリーは12秒差、ゲーガンハートは15秒差という僅差だった。ここに来て好調なビルバオとのタイム差も、1分19秒しかない。土曜日にはまだ厳しい山岳区間が1日残っていて、最終日には個人タイムトライアルもあり、マリア・ローザ争いは混迷の展開になった。
■区間初優勝して総合2位になり、新人賞のマリア・ビアンカを獲得した24歳のヒンドリーのコメント
「いつもこういう勝利を夢見ていた。今日、両手を上げてフィニッシュラインを通過する事は、ボクと競技キャリアにとって大きな意味があった。まだ信じられない。たくさんのうちの最初である事を願うよ。ステルビオでは、ゲーガンハートに付いて行くように言われた。自分の好きなレースのやり方ではないが、これは結局プロのレースだからね。
このジロには、ケルデルマンを助けるために居る。彼はマリア・ローザで、最後の個人タイムトライアルは彼に向いている。彼が過去数年間にどんな事を経験したのか、このレベルに達するまでにどれほど努力したのかを知っているから、ボクは彼を選手としても一個人としても尊敬しているし、彼に勝ってほしい」
■総合首位に立ったケルデルマンのコメント
「我々の計画は、1日中エンジン全開で走り、ステルビオ峠でアルメイダを蹴落とす事だった。それは我々が行った事だったが、ボクはイネオス・グレナディアズの選手たちに付いて行けなかった。ヒンドリーはそれができた。彼はボクを待つこともできたかもしれないが、チームは異なった計画を持っていた。
沢山骨折した後で、マリア・ローザを獲得する事はボクにとって大きな意味がある。戻って来られて本当に嬉しい。戦いはまだ終わっていない。イネオスは本当に強いが、最後のタイムトライアルはボク好みだ。このジロで勝つために全力を尽くすよ」
■第18ステージ結果[10月22日/ピンツォーロ~ラーギ・ディ・カンカノ(ステルビオ国立公園)/207km]
1. HINDLEY Jai (TEAM SUNWEB / AUS) 6:03:03
2. GEOGHEGAN HART Tao (INEOS GRENADIERS / GBR)
3. BILBAO Pello (BAHRAIN – MCLAREN / ESP) +46
4. FUGLSANG Jakob (ASTANA PRO TEAM / DEN) +1:25
5. KELDERMAN Wilco (TEAM SUNWEB / NED) +2:18
6. KONRAD Patrick (BORA – HANSGROHE / AUT) +4:04
7. ALMEIDA Joao (DECEUNINCK – QUICK – STEP / POR) +4:51
8. NIBALI Vincenzo (TREK – SEGAFREDO / ITA) +4:51
9. PERNSTEINER Hermann (BAHRAIN – MCLAREN / AUT) +4:51
10. MASNADA Fausto (DECEUNINCK – QUICK – STEP / ITA) +4:51
11. MAJKA Rafal (BORA – HANSGROHE / POL) +6:43
13. POZZOVIVO Domenico (NTT PRO CYCLING / ITA) +8:17
86. ARASHIRO Yukiya (BAHRAIN – MCLAREN / JPN) +49:03
■第18ステージまでの総合成績(マリア・ローザ)
1. KELDERMAN Wilco (TEAM SUNWEB / NED) 77:46:56
2. HINDLEY Jai (TEAM SUNWEB / AUS) +12
3. GEOGHEGAN HART Tao (INEOS GRENADIERS / GBR) +15
4. BILBAO Pello (BAHRAIN – MCLAREN / ESP) +1:19
5. ALMEIDA Joao (DECEUNINCK – QUICK – STEP / POR) +2:16
6. FUGLSANG Jakob (ASTANA PRO TEAM / DEN) +3:59
7. KONRAD Patrick (BORA – HANSGROHE / AUT) +5:40
8. NIBALI Vincenzo (TREK – SEGAFREDO / ITA) +5:47
9. MASNADA Fausto (DECEUNINCK – QUICK – STEP / ITA) +6:46
10. MAJKA Rafal (BORA – HANSGROHE / POL) +7:28
12. POZZOVIVO Domenico (NTT PRO CYCLING / ITA) +9:34
84. ARASHIRO Yukiya (BAHRAIN – MCLAREN / JPN) +3:40:56
[各賞]
■ポイント賞(マリア・チクラミーノ):DEMARE Arnaud (GROUPAMA – FDJ / FRA)
■山岳賞(マリア・アッズーラ):GUERREIRO Ruben (EF PRO CYCLING / POR)
■新人賞(マリア・ビアンカ):HINDLEY Jai (TEAM SUNWEB / AUS)
■チーム成績 : INEOS GRENADIERS (GBR)