BMXレース全日本、男子は長迫7勝目、女子は丹野が2連覇!

目次

10月25日(日)、大阪府堺市の大泉緑地内サイクルどろんこ広場にて第37回全日本自転車競技選手権BMXレースが開催された。男子エリートは3年ぶりに全日本に出場した長迫吉拓が7回目の優勝を飾った。女子エリートは丹野夏波(早稲田大)が大会2連覇を果たした。

BMXレース全日本

秋晴れの全日本BMX

BMXレース全日本

キッズたちも同じコースでレースを行った

BMXレース全日本

幅広い年代がBMXレースを楽しんでいた

BMXレース全日本

クルーザークラスやマスターズクラスなども行われた

雨模様が続いた平日の心配をよそにすっかりと晴れ渡った10月25日の日曜。気温20度ほどと過ごしやすい気候の中、大阪府堺市にある大泉緑地内サイクルどろんこ広場にて第37回全日本自転車競技選手権BMXレースが行われた。
東京オリンピック選手内定が決まっている長迫吉拓(JPF ドリームシーカー)が出場する男子エリートのほか、女子エリート、男女ジュニアや世代別カテゴリーを含めて総勢251人がその走りを披露した。
出場選手の家族エリアと有料観覧席が設けられた今回の大会では、感染症対策を講じられ、声を出しての応援は禁止。拍手での応援で会場を盛り上げていた。

BMXレース全日本

決勝のリズムセクション、吉村が長迫の後ろに迫る

トップカテゴリーの男子エリートにエントリーしたのは12人。午前中から各カテゴリーの予選が行われ、男子エリートはそれぞれ予選を3本走り、勝ち抜いた上位8名が決勝へ駒を進めた。
予選3本とも危なげなく1位通過した長迫も、ディフェンディングチャンピオンの中井遊馬(日本体育大)や4年前に同じ場所で行われた全日本で長迫を下している吉村樹希敢(GANTRIGGER)との一発勝負での決勝へ。
スタートから主導権を握ったのは、やはり長迫。第2バウムで吉村にイン側から並ばれたが、直線のセクションに入ると長迫が前に出る。迫る吉村とのわずかな差をキープしたまま最後のリズムセクションに入り、フィニッシュはハンドルを投げた。長迫は、7度目の全日本タイトルを獲得した。

BMXレース全日本

ハンドルを投げた長迫

「本当は出場したくなかった」

BMXレース全日本

一番高いところを通過するジャンプセクションは男子エリートと男子ジュニアのみが使用した

7度目のタイトルを獲得した長迫は、優勝回数にこだわりを持っていなかった。ただ、「今は勝ててホッとしています」と、会見で胸をなで下ろす。レース前に持ったのは、オリンピック内定選手としての自身のプライドやプレッシャーからくる負けることへの恐怖。
「正直、オリンピックの前に選考でもないのに出る必要はなかったんですけど、今シーズン2月からレースをしていなかったですし、かなりレースが遠かったので。日本にいるし、こういうチャンスもなかなかなかったので出場することになったんですけど、本当は出場はしたくなくて。どうか理由をつけて出場しない方向でコーチに話をしたんですけど、4年前にここの会場で負けていいイメージがなかったのと、オリンピックの前に負けたくなかったのと、負けるのが怖いということもあったんですが、イメージを壊すには出場して優勝する以外には方法がなかったので、そういったことをコーチから説得されて出場することに決めました」

BMXレース全日本

「少し刺激が入らないなと思ったので、予選から少し自分から飛ばしていった」と話した長迫

「今まで初めてこんなに緊張した大会」と話した長迫は、午前中の中井や吉村との公開練習で競り合いになり、転んだ。しかし、そこでスイッチが切り替わったそうだ。二人の単純に勝つことへの執念を感じた長迫も勝負へと集中した。
「経験もあると思うんですけど、オリンピックに行く以上はプライドもありますし、負けたくはなかったという思いが大きかったと思います。何回目とかじゃなくて、本当に勝ちたかったので、正直、汚いレースをしてでも優勝を取ろうと思っていました。
予選は、ミスが目立つような感じでいい感覚ではなかったんですけど、決勝の1本はまとめられる自信があったので、自信を持って挑みました」

BMXレース全日本

優勝を決め、笑顔を見せた長迫

自信をしっかりと形にして優勝。来年の東京オリンピックに向けて、こう話した。
「勝たなきゃ雰囲気で勝てたっていうのは自分の中ですごくいい経験になりましたし、日本に帰って6月、7月がフィジカル面で自分の中で底をついたんですけど、そこから上がってこれたので、一つの通過点としては良かったです」

トラックナショナルチームとしても活動を行う長迫。次戦は、前橋グリーンドームで行われるトラック競技で、チームスプリント他、個人競技にも出場予定だ。“こっそり”長迫の応援に来ていたトラックナショナルチームの新田祐大も「チームスプリントでは記録を狙いに行きます」と話していた。

BMXレース全日本

レースが全て終わって初めて新田と会話した長迫が笑顔を見せる

接戦の女子エリート

BMXレース全日本

エリート5人+ジュニア2人の混走で行われた女子レース

BMXレース全日本

競り合いつつも常に前に位置した丹野

女子エリートでは、東京オリンピック内定選手である畠山紗英は、トレーニングのために活動拠点であるスイスに戻っており欠場。5人の選手が全日本のタイトルを争った。女子エリートのレースは、3本のレースの合計ポイントで優勝者が決定するシステムに。全て1位でレースを終えたディフェンディングチャンピオンの丹野夏波(早稲田大)が全日本のタイトル2連覇を果たした。
丹野は、「3本とも1位でゴールして優勝するっていう目標を達成できたので、すごく良かったと思います」と話した。
また、ショーアップされた今までと違う会場の雰囲気に対して、「久しぶりにこういう大きい大会ということで、すごく緊張もしたんですけど、設営もカッコよく仕上がっていて、特別感があった大会だったので楽しみながらできたんじゃないかなと思います」と語った。
そして、連覇のプレッシャーを跳ね除けた感想をこう話した。
「今回歳下が多かったというのと、二連覇というのもあってプレッシャーは大きかったんですけど、それに打ち勝ってここからさらに上を目指したいです」

一発勝負の大会

BMXレース全日本

三瓶コーチが今回の大会を総括した

BMXレースのナショナルチーム三瓶将廣コーチは、今回の大会についてこう語った。
「長い間、日本も海外も含めてレースがなかったんですが、みんなこれにかける思いも強かったと思いますし、走りにも出ていたので、強化という立場としても良かったと思います」
また、久しぶりの長迫の全日本出場に関して、「やっぱりタイトルを取らなきゃいけないっていうポジションは非常に辛いと思いますし、怖いということももちろん聞いていました。彼がこれを挑戦してくれたというのは、東京オリンピックでも一つ上のステップで戦えると思うので、彼にとっても我々にとってもプラスな1日だったと思います」とコメント。
さらに、「一発勝負の大会っていうものに慣れていかないと、海外ではやっていけないと思うので、今回は演出も含めて、勝った負けた関係なくいい経験になったかなと思います」と今回の大会を締めくくった。

男子エリート
優勝 長迫吉拓(JPF ドリームシーカー)
2位 吉村樹希敢(GANTRIGGER)
3位 増田優一(大阪体育大)

女子エリート
優勝 丹野夏波(早稲田大)
2位 酒井亜樹(deux rouse elite team)
3位 早川優依(立命館大)

BMXレース全日本

男女エリート、ジュニアの優勝者が日の丸ジャージを身につける