第10回最速店長選手権、初出場のRX BIKE・高岡店長が独走初勝利
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4月25日(日)に静岡県・小山町の富士スピードウェイで開催された《アミノバイタル® プレゼンツ 第10回全日本最速店長選手権》に、RX BIKEの高岡亮寛店長が勝利した。昨年の自転車日本縦断ギネス記録更新に続き高岡店長は、開店1周年となったこの日を日本スポーツ自転車店界における最高の栄誉を勝ち取り祝した。
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なぜ『最速店長』の称号が素晴らしいのか
日本一速い自転車プロショップ店長を決めたい! という主旨で始まった《全日本最速店長選手権》も今年で10回目の開催を迎えた。手前味噌だがこの店長選手権は、輪界(自転車業界)では高い注目度を集める、当誌自慢の企画である。
というのも輪界における「けっこう走れる」は、最大級の褒め言葉となるからだ。プロが速いのは当たり前だが、ショップ店長はあくまで一般人。ショップという販売の場を仕切るフルタイムワーカーだ。しかしそれでも走れているのは、スポーツ自転車を愛するものにとって尊敬に値する。
フルタイムワークなのに、けっこう走れる。リモートワークなんてあり得ないのに、練習を重ねてしっかり速い。ここに数字や言葉では表せない、オーラのような説得力が生まれてくる。その説得力が、数字や言葉で表せる何かとなって返ってくる。
最速店長選手権、その勝利で得られるものは
このレースの勝利で得られる具体的なものは、日本で最も速い店長という称号、そしてサイスポ本誌での1年間の連載である。
象徴的に言えば、最速店長のお店で商品を売り、誌面で自分のお店を売れるということだ。
そしてこのレースで優勝した店長の使った機材は、なぜかレース後店舗で売れていくそうである。
賞賛とプロモーションとは、プロクラスで走る選手が目指すまさにそれ。これを自分の脚で勝ち取って、勝利を数字に変えていく。2017年勝者の《56 Cycle》筧五郎店長は言う。
「このレースに勝つと『走れるやつ』として業界で認められるので、あのあとすごく楽になりました」。
その機会を利用できるのは、走りへの情熱と戦略を持ち、最高の体調をその日に調整し、勝利の神に愛された店長のみである。
一夜にして店長界のスターダムに駆け上ることができ、副賞もオイシイ。この一戦のためピークを合わせて挑む店長たちの姿勢は、まったく合理的で正しい。これこそ現代のスポーツマン・シップである。がっつり乗っ獲っていきたい。
節目の第10回大会は、『富士チャレ』とのコラボとなった
今年、第10回目を迎えたこの大会だが、その最初の開催は2010年。初開催から11年目となる。というのも昨年2020年大会を、中止するという選択をしたからだ。2021年はどうなるかと気を揉んでいた時に、コラボの話が持ち上がる。
一般参加型ロードレースイベントとして高い人気を誇る通称『富士チャレ』こと《富士チャレンジ200》が、一緒にいかが、とお声がけくださったのだ。100km単位の耐久レースである今年の富士チャレ、その午前の部と午後の部の合間にエキシビジョンレースとして開催してくださるという。
おかげで10回目という節目の大会は、富士チャレの会場であり東京2020オリンピック、ロードレースのゴール会場ともなる富士スピードウェイでの開催となった。
舞台は世界の富士スピードウェイ、本物の脚が勝つ
富士山麓のレーシングカーの聖地とも言えるこのサーキット、コースは8%の上り坂を含む全長4563mだ。
ロードバイクだと踏みごたえのある1km弱のホームストレートから、前半2km強はほぼ下り。最高速度80km前後の最速ラインを右左右と大きくつなぎ、後半を上り返していく。深くえぐるように曲がる上りコーナーで、最大8%の坂が脚を削る。上り切ってからのフィニッシュへストレート300m。このコースを11周、合計距離50.2kmを走る。
店長選手権これまでの開催コースはフラット基調、ラスト1kmまでの先行戦略から最後スプリント勝負になる展開が多かった。しかしここは世界の富士スピードウェイだ。乗るものはなんであれ、レースに賭ける本物が集う。本物の脚を持つものが勝つコースである。
短い準備期間と春需の忙しさの中で
通年は9月開催だった店長選手権が、2021年は4月開催となった。それに準じて開催発表と招待も(実は招待制ナノデス)レース開催の一ヶ月前ほどとなり、準備期間はほとんどなかった。
事情ありとはいえ申し訳なく感じながら招待状を送った店長たち、受諾いただいた店長はここで紹介した35人だ。
→『アミノバイタル® プレゼンツ 第10回全日本最速店長選手権スタートリスト発表! 4月25日開催』
これまでと全く異なる前倒しの開催スケジュールに、店長選手権での勝利を目指す店長たちは焦ったそう。2、3月は自転車ショップは年間でも最も忙しい。年度と暮らしの変化に備えあらゆる自転車がバシバシ動くいわゆる春需の時期である。
「ですから5週間で、4000km乗り込みました。大急ぎで体重を、77kgから71kgまで絞りました」(サイクル・フリーダム/岩佐昭一店長)
その繁忙期を縫って、その短い期間の中で最大限の準備をした店長たちが続々と、受付ともなる機材計量の場に集まってきた。
着目すべき店長たち
ではここで勝利に絡むであろう店長数名を、レース黒幕の編集長ナカジの見立てで紹介しておきたい。
◎まず本命が、初出場の東京都目黒区《RX Bike》の高岡亮寛店長だ。
日本史上最強のホビーレーサーとして数々の市民レースを勝利し、ギネス記録を更新してきた高岡店長は、昨年、満を辞してプロショップをオープンした。オーナーという立場で経営に携わる予定かと目されたが、「開店した当初のうちは、やはり自分が店頭にたたないと」と店長になったとのこと。だから初出場である。
なおそれに前後し、高岡氏よりナカジに「ショップオーナーでも店長選手権に出場できますか」と問い合わせがあった。これに対しナカジは「お客さまのいる現場で手を汚し、時間を工面した練習で脚を傷めてこその店長選手権ではないか」との旨をお伝えした。高岡店長はレース当日、スタート2時間前のがらんとした会場で1人、ローラー台を回していた。
◎もう1人の本命が滋賀県守山市《スクアドラ滋賀守山》の涌本正樹店長である。
前回2019年の勝者であり、2015年にも優勝している『2勝クラブ』会員の1人。最多表彰台も獲得しており、元プロ選手の、純潔スプリンター。史上初の連覇に挑んだ。
本命対抗が2名いる。
◯2016年と2018年、2度の勝負を制した『2勝クラブ』の一員、東京都日野市《エイジサイクル》岩島啓太店長だ。
ツール・ド・おきなわ市民210kmの部の優勝経験もある、「別名『超合金』」。由来はぜひ本人に直接聞いてほしい。
◯そして千葉県稲毛区《サイクル・フリーダム》岩佐昭一店長。
2013年の勝者であるが、その後、家庭を持ちお店を育てるフェーズに集中し、レース参加からは離れていたという。今大会が久しぶりの参加となる。先のコメントのように、短期でしっかり仕上げてきた。「台風の目となるか」。
単穴が3名。
▲参加最年長54歳にして現役プロロード選手である《サイクルポイントオーベスト》西谷雅史店長。
▲2017年勝者でレース界にその人ありと言われる系の選手。「トリッキーながらも正統派という経験値」を持つ《56cycle》筧五郎店長、NHKの番組《チャリダー》で全国にもおなじみだ。
▲《Bicicletta SHIDO》安藤光平店長、2018年の2位。先の西谷店長との関わりも深く「いわゆる『速い人』ラインの継承者」。
このすべての店長に勝利の可能性が潜む。招集時間となり、UCIルールに則ってバイク軽量を行う。機材の最低重量となる6.8kgを目安に、流行りの売れ筋と譲れないこだわり、その究極のバランスをこの日のために考え抜いてきた。11:20、移動開始。11:30、スタートラインで記念撮影。
そして高岡店長が最後独走で勝利した。詳報は5月20日発売本誌を待て!
ショップ店長が、店の看板と売上げを背負って走る《アミノバイタル® プレゼンツ 第10回全日本最速店長選手権》が4月25日、11時40分にスタートした。1周目から逃げる筧店長、それを即座に吸収する集団。2周目には8%の上りに跳ね返された店長たちを尻目に、じわりと先頭グループが構成される。全11周のレースは3周目、高岡店長が踏み始めて大きく動いていく。
そしてレース結果は、先にお伝えした速報の通り。勝利したのは高岡店長。2位には筧店長が、そして3位には岩島店長が入った。
結果こそがレースのすべてだという人がいる。しかしそんなことを本当に思うのは、本人とスポンサーだけはなかろうか。観客である読者は、レースの結果でなくその過程、プロセスにこそ萌えるのだ。
レースを伝える本質とはなんだ。何が知りたい、リザルトか、プロセスか。「これがレース取材の根源ですね」とナカジは実況中、力を込めてマイクに言った。第10回目の店長選手権、初出場の高岡店長はどう勝ったのか。詳細レポートは、2021年5月20日発売のサイクルスポーツ7月号に掲載される。震えて待て。
リザルト速報はこちら → https://www.cyclesports.jp/news/race/44609/
アミノバイタル®︎プレゼンツ 第10回全日本最速店長選手権2021
■開催日:2021年4月25日(日)
■開催地:富士スピードウェイサーキット(静岡県小山町)
■距離:4563m×11周=50.2km
リザルト
1. 高岡亮寛(RX BIKE)1:10:12
2. 筧 五郎(56cycle)+0:30
3. 岩島啓太(エイジサイクル)+0:30
4. 遠藤健太(サイクルワークス Fin’s)+0:30
5. 山崎泰史(Pedalist )+0:30
6. 中尾 峻(Bicicletta SHIDO 沖縄店)+0:31
7. 岩佐昭一(サイクル・フリーダム)+0:31
8. 西谷雅史(サイクルポイントオーベスト)+0:31
9. 井上大我(サイクルぴっとイノウエ刈谷店)+0:32
10. 高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)+0:33
11. 藤原龍治(チクリ・ピオニエーレ)+0:45
12. 普久原 奨(Cycleshop Ashiviva)+1:05
13. 成毛千尋(ALDINA cyclery)+3:02
14. 小南舘純(GROVE鎌倉)+3:03
15. 安藤光平(BiciclettaSHIDO)+3:18
DNF
向山浩司(A-CAP(AKIRUNO-Cycling Academy Project)
岩崎嶺(サイクルショップカンザキ千里店)
森俊夫(EURO-WORKS)
荒上光亮(ファンサイクル)
佐藤教行(BICYCLE STEP)
藤野智一(なるしまフレンド神宮店)
髙岡雅知(Rabbit Street 江坂店)
涌本正樹(スクアドラ滋賀守山)
武中研太(サイクルショップカンザキ阪急千里山店)
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
福本元(ペダリストピナレロショップ青山)
新保光起(Sprint)
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
森江康貴(サイクルギャラリーカヤマ)
布施啓富(サイクルショップスマイル)
横井渓(自転車人の店クロチェリスタ)
寺崎武郎(バルバワークスエチゼンストア)
井上和郎(バルバワークスハクサンストア)
山下勝司(自転車屋ちゅう吉福山店)
山脇靖宏(チクロ イプシロン)