ジロ・デ・イタリア2021第17ステージはマーティンが初優勝
イタリアで開催中の第104回ジロ・デ・イタリア(UCIワールドツアー)は、休養日明けの5月26日にカナツェーイから標高1246mでカテゴリー1のセーガ・ディ・アーラ頂上までの193kmで第17ステージを競い、アイルランドのダニエル・マーティン(イスラエル・スタートアップネーション)が独走で逃げ切り、区間初優勝した。
34歳のマーティンは、これで3大ツール全てで区間優勝した選手の仲間入りを果たした。区間2位は13秒遅れでポルトガルのジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)、3位は30秒遅れで英国のサイモン・イェーツ(チームバイクエクスチェンジ)だった。
総合リーダーのマリア・ローザを着たコロンビアのエガン・ベルナル(イネオス・グレナディアズ)は、ゴールまで残り3kmで、イェーツの攻撃に耐えられず減速したが、遅れは最小限に留める事ができ、総合首位の座を守った。
2度目の休養日のPCR検査も全て陰性
25日の休養日には、選手とチームスタッフを対象に行われた新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のPCR検査(592件)が、全て陰性だった事が発表された。快晴に恵まれた第17ステージは151選手が出走。第15ステージで区間優勝したベルギーのヴィクトール・カンペナールツ(チームクベカ・アソス)がスタートしなかった。
スタートからアタックが続いたものの、なかなか逃げ出せる選手は出なかった。下りという事もあって最初の1時間の平均時速が52.2kmという高速ステージになり、集団は早々に分断し、50km地点で19人の先頭集団が形成された。
そこにはジャンニ・モスコン(イネオス・グレナディアズ)、ルイスレオン・サンチェス(アスタナ・プルミエテック)、ドゥクーニンク・クイックステップの選手らが加わっていて、集団は先頭集団に選手を送り込めなかったチームバイクエクスチェンジが引き続けた。
レース後半、最初に越えたカテゴリー1のサン・ヴァレンティーノ峠を先頭集団が上り始めた時、30人ほどに減っていたマリア・ローザの集団はまだ3分以上離れていた。ゴールまで残り43kmで、先頭集団からマーティンがアタックし、モスコンとアントニオ・ペドレロ(モビスターチーム)がついて行き、3人で山頂を目指した。
追走グループからは、山岳賞のマリア・アッズーラを着たジョフレ・ブシャール(AG2R・シトロエンチーム)がアタックし、山頂手前1kmで先頭の3人に追いついた。彼は山頂を先頭で通過し、山岳賞ポイントを獲得した。山頂で先頭グループとマリア・ローザ集団のタイム差は2分53秒だった。
マリア・ローザ集団では、サン・ヴァレンティーノ峠の下りでジューリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード)が機材故障に見舞われ、自転車を交換して遅れてしまった。その数km後、集団で発生した落車事故に彼も巻き込まれてしまったが、すぐにレースに復帰できた。
この落車事故では、レムコ・エヴェネプール(ドゥクーニンク・クイックステップ)もフェンスに衝突して転倒するアクシデントに見舞われた。彼はしばらくその場に留まり、医療スタッフの検査を受けた後、レースに戻った。
ゴールまで残り11.2kmで、最後のセーガ・ディ・アーラの登坂がスタート。先頭は下りで2選手が合流して6人になっていた。しかし、上り始めて間もない残り10.4kmでマーティンがアタックし、独走を開始した。マリア・ローザの集団は1分後方に迫っていた。
セーガ・ディ・アーラでマリア・ローザの集団はイネオス・グレナディアズが先頭を引き続け、マリア・ビアンカを着たアレクサンドル・ウラソフ(アスタナ・プルミエテック)はすぐに遅れ始めた。残り5kmでは、第16ステージで区間2位になったロマン・バルデ(チームDSM)や、総合3位のヒュー・カーシー(EFエデュケーション・NIPPO)も脱落してしまった。
そのマリア・ローザのグループから最初にアタックしたのはアルメイダだったが、イネオス・グレナディアズは反応しなかった。しかし、ゴールまで残り4kmでイェーツがアタックし、ベルナルとダニエルフェリペ・マルティネス(イネオス・グレナディアズ)が付き従った。
マリア・ローザが失速!
アルメイダに追いついた3人は、先頭のマーティンに46秒差にまで迫っていた。ところが、ここでマリア・ローザのベルナルが失速してしまった。彼はアシストのマルティネスに励まされながら何とか走り続けたが、いつもの力強さは失われていた。ベルナルは遅れていた総合2位のダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス)に追いつかれてしまったが、カルーゾにはベルナルを追い越していく力はなかった。
先頭のマーティンは、残り1kmのフラム・ルージュを後続に30秒差で通過し、そのまま逃げ切って区間初優勝を果たした。その後方では、フラム・ルージュでアタックしたアルメイダがイェーツを引き離してゴールした。ベルナルは総合2位のカルーゾより3秒遅れてゴールしたが、総合でのタイム差はまだ2分21秒ある。
イェーツはこのステージで区間3位になり、再び表彰台圏内に戻ってきたが、マリア・ローザのベルナルとのタイム差はまだ3分23秒開いている。
■ジロで区間初優勝したマーティンのコメント
「この成功を言い表す言葉はない。ジロには総合で良い成績を得て、区間優勝を目指すために来た。今日はアタックを続けて逃げに入りたかった。集団はボクがアタックするのを許さないだろうと思ったが、チームはボクを助けるために素晴らしい仕事をした。彼らに感謝しなければならない。うまくやるには、こういう上り坂と太陽が必要だったんだ!」
■最後に失速したベルナルのコメント
「今日は最高の日ではなかったが、多くのタイムは失わず、カルーゾに数秒だけだった。今は明日の事を考えよう。イェーツはとても速く行き、印象的な上りだった。彼について行こうとしたが、すぐに彼に付いて行くのは間違っていたのかもしれない。このジロはミラノで終わるし、日々多くのタイムを得たり失ったりする。集中し続けなければならないよ」
■第17ステージ結果[5月26日/カナツェーイ~セーガ・ディ・アーラ/193km]
1. MARTIN Daniel (ISRAEL START-UP NATION / IRL ) 4:54:38
2. ALMEIDA João (DECEUNINCK – QUICK-STEP / POR ) +13
3. YATES Simon Philip (TEAM BIKEEXCHANGE / GBR ) +30
4. ULISSI Diego (UAE TEAM EMIRATES / ITA ) +1:20
5. CARUSO Damiano (BAHRAIN VICTORIOUS / ITA ) +1:20
6. MARTINEZ POVEDA Daniel Felipe (INEOS GRENADIERS / COL ) +1:23
7. BERNAL GOMEZ Egan Arley (INEOS GRENADIERS / COL ) +1:23
8. PEDRERO Antonio (MOVISTAR TEAM / ESP ) +1:38
9. BILBAO LOPEZ DE ARMENTIA Peio (BAHRAIN VICTORIOUS / ESP ) +1:43
10. BENNETT George (JUMBO-VISMA / NZL ) +2:21
14. BARDET Romain (TEAM DSM / FRA ) +2:52
17. VLASOV Aleksandr (ASTANA – PREMIER TECH / RUS ) +3:08
21. CARTHY Hugh John (EF EDUCATION – NIPPO / GBR ) +3:52
63. ARASHIRO Yukiya (BAHRAIN VICTORIOUS / JPN ) +22:29
■第17ステージまでの総合成績(マリア・ローザ)
1. BERNAL GOMEZ Egan Arley (INEOS GRENADIERS / COL ) 71:32:05
2. CARUSO Damiano (BAHRAIN VICTORIOUS / ITA ) +2:21
3. YATES Simon Philip (TEAM BIKEEXCHANGE / GBR ) +3:23
4. VLASOV Aleksandr (ASTANA – PREMIER TECH / RUS ) +6:03
5. CARTHY Hugh John (EF EDUCATION – NIPPO / GBR ) +6:09
6. BARDET Romain (TEAM DSM / FRA ) +6:31
7. MARTINEZ POVEDA Daniel Felipe (INEOS GRENADIERS / COL ) +7:17
8. ALMEIDA João (DECEUNINCK – QUICK-STEP / POR ) +8:45
9. FOSS Tobias S. (JUMBO-VISMA / NOR ) +9:18
10. CICCONE Giulio (TREK – SEGAFREDO / ITA ) +11:26
79. ARASHIRO Yukiya (BAHRAIN VICTORIOUS / JPN ) +2:47:58
[各賞]
■ポイント賞(マリア・チクラミーノ):SAGAN Peter (BORA – HANSGROHE / SVK)
■山岳賞(マリア・アッズーラ):BOUCHARD Geoffrey (AG2R CITROEN TEAM / FRA)
■新人賞(マリア・ビアンカ):BERNAL GOMEZ Egan Arley (INEOS GRENADIERS / COL)
※第18ステージは VLASOV Aleksandr (ASTANA – PREMIER TECH / RUS)が着用
■チーム成績 : INEOS GRENADIERS (GBR)
第18ステージは今年最後の平坦区間
5月27日はトレンティーノ・アルト・アディジェ州のロヴェレートから、ロンバルディア州のストラデッラまでの231kmで、今大会最後の平坦区間となる第18ステージが行われる。平坦区間と言っても終盤は丘越えがいくつもあり、スプリンター泣かせのレイアウトになっている。