増田成幸、TOJ富士山ステージを制す

目次

3ステージの短縮開催となった2021年ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)。感染対策のため、バブルで閉ざされたレースを外側からレポート。
 
初日富士山ステージは、宇都宮ブリッツェン増田成幸が優勝を飾った。
 
2021ツアー・オブ・ジャパン
 

雨上がりのクイーンステージ

2021ツアー・オブ・ジャパン

富士山の稜線がくっきりと形を見せていた

2021ツアー・オブ・ジャパン

周回コースでは宇都宮ブリッツェンが集団を率いていた

昨日一日地面を打ち付けた雨はすっかりあがり、気温も上がったツアー・オブ・ジャパン初日。朝から富士山の稜線もくっきりと見え、時折日差しが照りつけるほどの気候となった。
 
例年8ステージで構成されていたTOJであったが、今年はいきなりクイーンステージの富士山ステージからの幕開け。
 
富士スピードウェイの西ゲートをスタートし、7月に予定されている東京五輪のタイムトライアルのコースの一部を4周回し、おなじみふじあざみラインで富士山5号目を目指す総距離78.8km、獲得標高2602mのコースで行われた。
 
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スタートアタックを決めたのはこの5人

 
予定通り10時半にスタートした集団は、ニュートラル区間があけると、安原大貴(マトリックスパワータグ)のアタックをきっかけに5人の逃げができた。
 
愛三工業レーシングチームは、厳しい上りを前に2人を前に送った。そのうちの一人、草場啓吾は、「最後のあざみラインがきついので、前待ちにして、周回コースは前でペースで走ってた方が楽じゃないかなと自分の中では思ってたんで抜け出したら、たまたま大前(翔)選手と2人で先頭集団にという形になった」と逃げに入ったときの状況を振り返る。
 
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5人の中に愛三から大前と草場が入る

 
周回コース内に設定された1回目のスプリントポイントでは愛三の大前が1着、草場が3着に入り、ポイントを獲得。2回目のスプリントポイントでは草場が先頭通過し、今日のポイント賞ジャージを確定させた。
 
しかし、4回の周回コースを消化し切る前には逃げは全て集団に吸収される。最後まで逃げにいた草場はこう話した。
「最大でも1分ぐらいしか開かなかったんで。集団もなかなか逃げを許してくれなくて、逃げててもきつい展開でした」
 

一発本番の実力勝負

ふじあざみラインの上りに入ると、集団はすぐにバラバラとなった。
 
先頭は、フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)やトマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)など有力選手を含んだ10人ほどに一気に絞られる。
 
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初めてのTOJでアグレッシブさを見せた留目

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新人賞ジャージを獲得した留目は総合では9位フィニッシュとなった

 
その中から、今シーズン国内レースでもアグレッシブなアタックをよく見せている留目夕陽(日本ナショナルチーム)が残り7kmほどで飛び出し、一時独走に持ち込んだ。
 
「18歳で最年少ということで、恐れるものもなかったので、とりあえずガツガツチャレンジしてみました」TOJ初参加の留目はこう話す。
 
しかし、勾配が上がる馬返し付近で集団からルバが仕掛けると、増田がそれを追い、ベテラン2人は一気に留目をパスして行った。
 
留目はそのときの気持ちを振り返り、明日以降に向けても意気込みを語った。
「(追いつかれて)やばいな、やばいなと(思った)。その後は淡々とマイペースで上っていきました。総合でもっとステップアップできるように、少しでもタイム差を縮められるように頑張りたいと思います」
 
その後は、増田とルバの二人旅。後ろからは単騎で山本大喜(キナンサイクリングチーム)が飛び出し、2人の後ろ姿を捉えるほどまで追いついたが、そこから近づくことはできなかった。
 
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ラスト400m単独先頭で現れた増田

 
一方、増田はルバと走りながら考えていたことをこう話した。
 
「今日はトマ選手と2人で走る中で、どっちかというと自分の方が厳しいかなという印象で、今日は僕の日じゃないかななんて思いながらなんとか食らいついていって、最後の激坂フィニッシュのところで少しでも前に出られればと思ったんですけど。
 
僕もあまり予想してなかったんですが、あまり勾配がきつくないところでトマ選手が少し離れたのが見えたので、ちょっと思い切って踏んでみたら離れたので、そこからはもう全力で行きました」
 
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増田がルバを突き放す

 
ラスト1km付近で増田がルバを千切りにかかった。そのまま増田はルバとのタイム差をじわじわと広げ、単独で頂上フィニッシュを飾った。
 

1位 増田成幸「一つの自信につながった」

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例年のTOJの富士山ステージよりもかなりリラックスしている様子で勝負に臨んでいるように見えた増田だったが、余裕は残していたのだろうか。
 
「肉体的な余裕はもうなかったですね。もう全力でした。でも気持ち的には、例年だと、結構ピリピリしたムードで臨むんですけれども比較的リラックスして、レースを楽しむ余裕はありました」
 
前日の記者会見にて、オリンピックの240kmのレースに向けたトレーニングをしていると話していた増田。今日はそれよりも時間的にも距離的にも短いレースではあったが、ここで勝てたことに対してこう話す。
 
「短いレースでこうして結果を残せるっていうことは、やっぱり一つ自信になりますし、この富士山はシンプルな戦いなので、意外と展開とかじゃなくて実力通りになると思うんですけど、このレースで勝てたっていうのは一つの自信に繋がります」
 

2位トマ・ルバ「うれしさと悔しさが入り混じったレースになった」

2021ツアー・オブ・ジャパン
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「スタートから調子は良かった。残り6kmでアタックして集団の人数を減らそうと試みた。増田選手と一緒に後ろとの差を広げられ良いシチュエーションにできて、後ろには(山本)大喜も追っていたのでチームとしても好都合だった。終盤は増田選手と協調して上れて、最後は強さが足りなかったけど、うれしさと悔しさが入り混じったレースになった。大喜もよく走ったし、残り2ステージも前向きに臨みたい。
 
レース数が少ない状況下で、トレーニングだけで100%のコンディションを作り上げるのはなかなか難しい。増田選手は今季、私より数レース多く走っているので、そのあたりの差は今日の結果に表れたかもしれない。
 
 明日以降も攻めの走りを続けたい。東京のフィニッシュラインへ到達するまで全力を尽くすつもりだ」(キナンサイクリングチームリリースより)
 

3位 山本大喜「全力を尽くせた」

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「正直、前の2人には追いつきたかった。ただ、2人ともとても強かったので、無理に追いかけて失速することだけないよう心掛けて、自分のペースを守ることに集中した。3位という順位は大満足ではないけど、いまの実力やこれまで苦戦してきたことを思うと全力を尽くせたとは思う。
 
レースがあることが当たり前だった日々が一変して、いまの状況になったときに純粋に自転車に向き合おうと決めて日頃のトレーニングを行ってきた。限界に挑戦したいという強い思いをもって取り組んできたし、この大会に向けてもうまく調整できたことが今日の結果につながった。
 
個人的には総合でのチャンスがめぐってきたが、まずはチームとして個人総合のタイトルを獲ることが最優先。最後までアグレッシブに戦いたい」(キナンサイクリングチームリリースより)
 

2021ツアー・オブ・ジャパン 第1ステージ 富士山 リザルト

2021ツアー・オブ・ジャパン
 
ステージ&総合(グリーンジャージ)
1位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) 2時間35分52秒
2位 トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム) +11秒
3位 山本大喜(キナンサイクリングチーム) +44秒
4位 フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ) +1分24秒
5位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム) +2分2秒
 
ポイント賞(ブルージャージ)
草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)
 
山岳賞(レッドジャージ)
増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
 
新人賞(ホワイトジャージ)
留目夕陽(日本ナショナルチーム)
 
チーム総合
マトリックスパワータグ
 
 
日本自転車普及協会の公式YouTubeチャンネル「BPAJ ch」では、大会映像の完全無料ライブ中継を行う。