ツアー・オブ・ジャパン2日目 相模原ステージ ホセ・ビセンテが逃げ切り勝利

目次

3ステージの短縮開催となった2021年ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)。感染対策のため、バブルで閉ざされたレースを外側からレポート。
 
5月29日の2日目、新設された相模原ステージで逃げ切り小集団スプリントを制したのはホセ・ビセンテ(マトリックスパワータグ)だった。
 
2021ツアー・オブ・ジャパン 相模原
 

16人の大逃げ

2021ツアー・オブ・ジャパン 相模原

ホームステージとなるチーム右京相模原のメンバーが前方に立った

 
TOJ2日目は、神奈川県相模原市を舞台とした初開催のコース。JR橋本駅近くの橋本公園をスタートし、ニュートラル区間を経て、宮ヶ瀬ダムを通るアップダウンが続く1周13.8㎞の周回コースを7周し、鳥居原ふれあいの館にフィニッシュする総距離108.5km。獲得標高は1728mだ。
 
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東京五輪ロードレースのコースも一部通過

 
 
リアルスタートを切ると、アタック合戦が始まり、10人ほどの逃げが形成された。さらにブリッジをかけた数人が追いつき、ほとんどのチームがメンバーを送り込む16人の大きな逃げとなった。
 
富士山ステージを終えて、総合2位のトマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)も抜け出そうというシーンも見られが、総合リーダージャージを着用する増田成幸(宇都宮ブリッツェン)がすかさずチェックに入った。
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周回コースに入りローテーションを回す逃げグループ

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逃げをひととおり行かせた集団はペースを緩める

総合上位勢からは、首位増田から2分51秒差で7位の谷順成(那須ブラーゼン)や2分57秒差の8位小石祐馬(チーム右京相模原)がチームメイトとともに逃げに乗った。また、総合優勝を目指したものの前日の富士山ステージで奮わず、3分59秒のタイム差をつけられていたホセ・ビセンテ(マトリックスパワータグ)もこの逃げに乗り、総合優勝は難しくともステージ優勝をと目論んだ。
 
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宇都宮ブリッツェンが集団を牽引し、増田の後ろをトマ・ルバがマーク

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新人賞ジャージを着用する留目夕陽も集団でチームメンバーとともにまとまって走る

 
周回コースに入ると、全員でローテーションを回していく逃げと集団のタイム差は徐々に広がっていく。
 
1周回目でタイム差が3分を過ぎると、逃げにいた谷が総合バーチャルリーダーに。
 
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序盤は総合上位選手がいる那須ブラーゼンやチーム右京のアシスト選手たちが3名で逃げ集団をコントロール

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コース中最も長いトンネル内で落車が発生。集団は混沌

 
宇都宮ブリッツェンがコントロールを行う集団では、残り50kmほどのトンネル区間で落車が発生。これにルバや総合3位の山本大喜(キナンサイクリングチーム)、5位の伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)も巻き込まれてしまう。状況整理を必要とした集団はさらにペースダウン。ラスト3周で集団とのタイム差が6分近くまで開いた。
 
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入部が宮ヶ瀬ダムのアップダウン区間で仕掛ける

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安原が単独で抜け出す

 
このタイム差で逃げグループの逃げ切りが濃厚になったことにより、逃げの中でも牽制やアタックの打ち合いが始まる。入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)やビセンテとともに逃げに入っていた安原大貴(マトリックスパワータグ)らがそれぞれ抜け出そうと試みたが、すぐに吸収という状況が続いた。
 

総合ジャンプアップのため

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ステージ優勝よりも総合のジャンプアップを目指していた小石は、タイムを稼ぐためにもペースを上げたがった。
 
ラスト1周に入る手前で小石がペースを上げると、期せずして単独で抜け出す形になった。
「何人かには絞られると思ってましたけど、1人になると思わなくて。ラスト1周に入るところは単独で。ただやっぱ集団の方が有利になるところもあるんで、上りとかその後で追いつかれることを想定していたから、全力っていうわけでは全然なく」
 
小石の想定通り、ラスト1周に入ってから山本元喜(キナンサイクリングチーム)とビセンテが追いつくと、さらにその後ろから小出樹(京都産業大学)と仮屋和駿(日本大学)が合流。5人での勝負となった。そこから、ステージ争いの牽制によって集団にタイム差を詰められることを嫌った小石は、ほぼ先頭固定で前を引いた。
 
「上り切ってから僕しか引いてなくて。やっぱり1個でも順位を上げられる方が良かったので、僕にはそれしかやることはないと思ったし、やったのは正しいと思ってるんですけど」
最終スプリントには加わらずステージ5位で終えた小石は、総合でも5位にジャンプアップしている。
 

「勝つチャンスはここしかない」

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ラスト150m

 
ステージ優勝争いは4人に絞られ、残り200mで山本元喜が先に仕掛ける。それに合わせるように他3選手もスプリントを開始。少し前に出た山本元喜の右側からビセンテが、左側からは仮屋が抜きに行き、横一線のスプリントに。フェンスとのギリギリの間を攻めたビセンテが若干の上りスプリントを制した。
 
なお、山本元喜は、ビセンテ側に斜行したと判定され、降格している。(タイム差+0秒のグループ最下位へ降格。2位→3位)
 
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わずかの差で勝利をつかんだビセンテ

 
 
ビセンテはスプリントのときの状況についてこう語っている。
「後半には逃げ切れるという自信は持っていました。最後のスプリントはとても危険な状況だったように思います。元喜選手がずっと右に寄ってきたんですが、自分も勝つチャンスはここしかないと思ったので、そこでペダルを止めずに突っ走りました」
 
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表彰式を前に増田と会話を交わすビセンテ

 
また、今回のステージ優勝について、
「僕個人としては、昨日よりコンディションが良かったので、走ってみたところ、後ろとの差もいい具合につけられましたし、今日はチャンスがあるのではないかと思っていました。勝てるかどうかというのは本当に最後の最後までわかりませんでした。
 
昨日の第1ステージでは僕はトップとの差がかなりつけられてしまっていましたが、その分自由に動けたんじゃないかと思います。チームメイトのパコ(フランシスコ・マンセボ)やマリノ(小林海)はもっと上位にいたので、彼らよりも自分が自由に動けたということで優勝につながったんだと思います」と話した。
 

垣間見る”脆さ”

2021ツアー・オブ・ジャパン 相模原

ラスト2周。ブリッツェンの西村大輝、愛三の大前翔、キナンの新城雄大がそれぞれチームメイトの総合上位キープのために集団を牽引

 
逃げ切りは容認する形になってしまったものの総合順位やジャージをキープしたい宇都宮ブリッツェン、キナンサイクリングチーム、愛三工業レーシングチーム、日本ナショナルチームが協力してラストスパートで集団を走らせた。ラスト1周の時点で3分ほどまでタイム差を詰め、フィニッシュでは先頭とのタイム差を1分35秒までに一気に縮めた。これにより総合4位までの順位と新人賞ジャージは変動なく終えた。
 
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チームメイトに守られながら走る増田

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総合リーダーを乗せた集団がフィニッシュへ向かう

 
増田擁する宇都宮ブリッツェンは、今シーズン若手中心の構成となった。今回のレースでは、これまであまり見ることのなかったチーム力の”脆さ”を垣間見せた。それでもリーダージャージを守り切ることができたのは、思惑が一致したためだと増田は言う。
 
「落車でうちのチームは一度3人とかになったんですが、もうとにかく前を追うしかないってことで少しでも縮めるためにやっていたら、利害関係が一致するチームが少しずつ出てきてくれて、そこで協力してもらえた結果、自分もこのリーダージャージ守れた形でした。
 
キナンだったり、うちのチームも僕意外全員で回って、あとはナショナルチーム、愛三が中心に回っていました。追いつかないのはもう分かってたんですけれども、少しでもタイム差を縮めようと。最後はおそらく(タイム差)3分弱で上りに入ったんですが、そこからそれぞれのエースも自分たちでローテーションを回ったりして、少しでもタイム詰めていこうとしました。今日のレース展開があまりいいレースではなかったのは事実です」
 
増田は少し表情を曇らせた。
「明日はもう上りがないレースですし、今日みたい大逃げを行かせないようにちょっと気をつけながらやりたいと思います」
 
最終日は一切上りがない平坦ステージ。それでも最後まで何があるかは分からない。
最終東京ステージもYoutubeにてライブストリーミングが予定されている。
昼間はTOJの、夜はジロ・デ・イタリアの勝負が決する瞬間を楽しんでもらいたい。
 

2021ツアー・オブ・ジャパン 第2ステージ 相模原 リザルト

2021ツアー・オブ・ジャパン 相模原
 
ステージ
1位 ホセ・ビセンテ(マトリックスパワータグ) 2時間38分44秒
2位 仮屋和駿(日本大学) +0秒
3位 山本元喜(キナンサイクリングチーム) +0秒
4位 小出 樹(京都産業大学) +2秒
5位 小石祐馬(チーム右京相模原) +9秒
 
総合(グリーンジャージ)
1位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) 2時間35分52秒
2位 トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム) +11秒
3位 山本大喜(キナンサイクリングチーム) +44秒
 
 
ポイント賞(ブルージャージ)
ホセ・ビセンテ(マトリックスパワータグ)
 
山岳賞(レッドジャージ)
増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
 
新人賞(ホワイトジャージ)
留目夕陽(日本ナショナルチーム)
 
チーム総合
マトリックスパワータグ
 
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